星奈
なーんだ、夢か。
びっくりした。
あーびっくりした。
夢を見るならさ、もっとこう、ふわっとした楽しい夢がいいなあ。
スイーツ食べ放題とか?
逆ハーレムとか?
いや、いや。逆ムニャムニャ。それだけはやめとこう。
心身ともに、つかれそう。
私には対処しきれませぬ。
ベッドから起きあがって、一階に降りていく。
とんとんとんってね。
お母さん、おなかすいたよお。
お母さん。
洗い物してる。蛇口の水、だしっぱ。
いつも、もったいないでしょって怒るのにさ。
どうしたの。お母さん。
ねえ、どうして泣いてるの。
ああ、ドラマ。見たんでしょ。
お母さんはさあ、すぐに感情移入しちゃうから。
もう、はっずかしいなあ。
鼻水でてるよ。よだれも出ちゃってるよ。
ねえねえ、号泣じゃん?
まずはさ、水を止めようね。
あれ、この蛇口、手応えなし。
あれ。さわれない。
こわれてる?
玄関のチャイムが鳴った。
お母さん、はっとして水止めて、顔を拭いて、キッチンを出てく。
あのう。
ムスメに気づかないの?
「おばさん、すいません、お忙しいところ」
誰かと思えば、ユミだった。
幼稚園からのつき合い。高校は別だけど、家が近いからいまも時々遊んでる。つけ爪いつもかかさないし、髪の毛は色を抜いてカールさせてる。 見た目はギャルなんだけど、少年マンガ好きなんだよね。
「あの」
ユミらしくないなあ。
どうしちゃったの。
マスカラした目元から、おっきな涙がぽろんと落っこちた。
「おばさん、あたし、困る。困ります」
なんだ、どうした。もう。
「星奈ともう会えないなんて、やだよお」




