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『異世界職能レビュアー』 ~元・管理職のおっさん、鑑定スキルで有望株を「青田買い」して、最強の快適生活をプロデュースする~  作者: レイフォン


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13話。 死闘と慰労の話。

「来ますよ!

ラベルさん、立ち止まらないで!

足を活かして、まず突進をいなして下さい!」


ラベルはその場でピョンピョンと左右の足を交互に動かしフットワークを踏んでいるかの様に動き出す。


「たくっ!?

簡単に言ってくれるよな・・・。

盾役がいないんじゃ、一発でも喰らったら俺達二人共あの世行きだっつーのに!」


こちらを見る事はしなかったがラベルの声にも、どことなく覚悟のような物が宿っていた気がする。

回り込んで彼のイケてる顔面が今、どうなっているか見てみたい気もするが、流石にそれをしたら、ダメだという事がセオリーだという事位、俺でも解るから自重した。


ラベルの短槍のグリップからグギィィィという音が鳴る、それ程に強い力が短槍に伝わってるのだろうか。


俺の喉がごくりと鳴る。


「フゥ・・・あったまったぜ」


ラベルがそう言うや否や、ビックボアはスタートを切る。


「ブロロロロォ!!!」


間にラベルを挟んでも感じる程に絶望的な、、。

まるで暴走トラックが突っ込んでくるようなプレッシャー。

ラベルも一瞬気圧されそうになるが、その脚がまるでバネでも仕込まれたかのように弾けた。


「!?」


ラベルは自分の変化に違和感を感じつつも、その抜群の戦闘センスは瞬時にその変化にラベルの身体を対応させた。


彼は俺の指示通りにビックボアの突進をいなし、左に回り込む、その際の速度は一瞬だったが明らかにただの人間とも思えない凄まじい速さだった。

漫画やアニメで見る、「それは・・・残像だ。」を体現したかの様な、速度。


「すげぇ、、、。」


解析結果を・・・「推奨」として対象に流し込む・・・ッ!


だが、これはただの助言じゃない。

それは、言葉を発するたび、俺の身体の奥底から何かがゴリゴリと削られていく感覚が証明していた。


「次は右!

牙を避けて下さい!!

頭を大きく振ってきます、その隙に空いてる懐にっ!!!」

「・・・うっしゃ!!」


ラベルの動きがさらに加速する。

俺の助言が重なるたび、ラベルの短槍は鋭さを増し、本来なら届かないはずの角度からボアの皮を裂いていく。

本来なら二突きのところが三突きと手数も増えていく。

これが俺の新しいスキル「推奨」


指示を出せば出す程、ラベルがそれに応えただけ「ありえない補正」がかかっていく。


「・・・つぅ」


だが、やはりそう都合のいい物では無いようだ。


頭が割れそうだ。

視界がチカチカと明滅する。


職能レベルが低い今の俺にとって、このスキルの連続使用は、俺から何かを奪っていく。

恐らく、この何か、この感覚が、これが魔力なんだろう。


「グオォォォォン!!」


ボアが苛立ちを募らせ、広範囲をなぎ払うような牙の横振りを放った。


「伏せて・・・潜り込め!

顎の下が・・・・ガラ空きだっ!!!!」


視界が赤いサングラスでも掛けたかのよう赤く染まる。

凄まじい頭痛がこめかみを突き刺し、膝がガクガクと震えだした。

俺は倒れそうになる意識を、奥歯と唇を噛み締めて繋ぎ止める。

口の中に鉄の味が広まった。


「おおおおおっ!!」


俺の声に導かれるように、ラベルがボアの懐へ深く沈み込んだ。


・・・突き立てろ!!


敢えて最後の一言は口に出さなかった。


最短、最速。

迷いのない一突きが、ビッグボアの喉笛を深々と貫いた。


巨体が地響きを立てて崩れ落ちる。


それを見届けた瞬間、俺の視界はぐるりと反転した。


「・・・リオ!?

大丈夫か、リオ!!」


駆け寄るラベルさんの声が遠い。

俺は草むらに倒れ込れ込んだ。


次に目を開けた時、日はもう傾きはじめていた。

少しずつ魔力が身体の奥底を脈打つのを感じ、感じていた頭痛も引いていく。


その気配に気付いたのか、ビックボアの解体作業をしていたラベルの手が止まった。


「おっ!

気付いたかリオ!?」

「ええ、なんとか。

ラベルさん、解体も出来たんですね。」

「まぁ、一応な、メンバーにはよく雑って言われて、やらせてもらえないけどな。」

「雑って。

ラベルさん・・・。」

「流石にこのデカさの獲物を二人じゃ持って帰れないだろ?

一番美味い部分と牙、後、高く売れそうな部位だけ持って帰る。」


俺はようやく体を起こす。

だが、回復と共に、今度は別の倦怠感が俺を襲ってきた。

胃袋が燃料を入れろと猛烈な抗議の声を上げている。


「ラベルさん・・・・俺、死ぬほど腹が減りました。

早く帰りましょう。」

「・・・だな。」


そう笑いながら答えるとラベル君は作業に戻った。


その日の夕方。

帰宅した俺達を待っていたのは


「・・・ただいま。

母さん、今日はステーキを、山盛りで頼むよ。

腹が・・・背中とくっつく・・・。」


マーサは帰宅した俺達を見るなり、仕事中だった手を止め俺に駆け寄る。


「リオ!

どうしたの?

顔色が真っ青じゃない!」

「いや、ちょっと、貧血っていうか?」

「貧血?」

「うん」

「え、まぁ、ラベルさんも・・・何か・・・ボロボロね」

「たはっ!

ボロボロ・・・っすかね?」

「母さん、俺達なら大丈夫だから、これ、これで美味しい物・・・お願い。」


マーサはひとしきり俺の身体中を調べ上げ、俺の無事が知れると、俺が差し出した肉をマジマジと見つめる。


「え?

これって?

もしかして?」

「はい、ビックボアの肉です。」

「まぁ、しかもこの肉質、お肉屋さんじゃ手に入らない、いいお肉じゃないの。

んふふ。

・・・・すぐに準備するから、二人とも石鹸で身体を洗って座って待ってなさい。

あ、リオ、お父さん、お店にいると思うから呼んできて頂戴。」

「うん」


慌てるマーサだったが、差し出された見事なビッグボアの肉を見るなり、主婦の血が騒いだらしい。


ラベル君は、体を洗うと、ついでだからと、テオを呼びに店に行ってくれた。

いつの間にそんな気遣いの出来る男になったんだラベル君よ。


小一時間程経ったか、家族全員とラベル君で俺たちは賑やかな食卓を囲んでいた。


メインは、マーサ特製、ビッグボアの香草パン粉焼きと、厚切りステーキ。


「いただきます!」


俺はもう、礼儀もかなぐり捨てて肉にかじりついた。

野趣あふれる強い旨味、香草の爽やかな香り。


「美味いっ!!」


一口噛むごとに、空っぽだった細胞にエネルギーが充填されていく。

前世、一人で冷めたコンビニ弁当を胃に流し込んでいた頃には、絶対に味わえなかった命の還元。

そして、家族の暖かさ。

ラベルさんはガハガハと笑い、つられてテオも、マーサもそして俺も笑い合う。


家族団欒


前世で諦めていた、諦めてしまっていた光景を、再び

今、俺はリオとして生まれ変わり、形は大分違うが、この手に取り戻した。


俺の力、新しい力の意味。


この、温かく騒がしい食卓。

この幸せな日常位は守り抜いてやる。

そう、俺は今日心に誓った。


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