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『異世界職能レビュアー』 ~元・管理職のおっさん、鑑定スキルで有望株を「青田買い」して、最強の快適生活をプロデュースする~  作者: レイフォン


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9話。 劇的ビフォーとアフターの話。

石鹸の試作完成から、何日かが過ぎた。

俺はカウンターに座り、布で包んだ「試作1号」を眺めていた。


そろそろタイミングかな?


数日前の万歳三唱の余韻は薄れ、俺はすでにこの「爆弾」をどう運用するかのシミュレーションに入っている。

まずは無料配布。

数が限られているので、一番声が大きくて、変化が分かりやすい奴に。

そう考えていた矢先、チリンチリンと間の抜けたベルの音が響いた。


「よう、リオ!

スライムオイル、また持ってきたぜ!」


現れたのは、先日よりもさらにドロドロに汚れたラベル君だった。

どうやら早朝から一稼ぎしてきたらしいが、デーモンの返り血と泥が混じり合い、正直言って「野営地帰りの大型犬」のような臭いがしている。

消臭剤の作り方なんて検討もつかんぞこのバカチンがっ!!


「・・・ラベルさん、お疲れ様です。」

「どした?元気無いな?」


そりゃ店内の床を現在進行形で汚しているうえに、異臭を撒き散らかしているお客様が若干名いらっしゃいますからね。


「いえ、全然いつも通りですよ。

今日も成果が良かったみたいですね。」

「おうよ!

でもさ、前から言ってる『いい物』ってのはまだか?

実は今日、これから例のあの子と街の広場で会う約束があってさ。

この格好じゃ、また『野性味が溢れすぎてる』って苦笑いされちまう。」


(・・・来た。

最高のタイミングだ!!)


俺は無言で、カウンターの下から布包みを取り出す。


「ラベルさん、これが、約束の「いい物」です。

試供品だからタダでいいですよ」

「しきょう?」

「タダです。」

「おお、タダか!

ん?

本当か!!

でもなんだこれ?

平べったい 石っころ・・・じゃないな。」


言いながらラベル君は石鹸を鼻に近付ける。


「いい匂いがする!!」


「石鹸って言います。

裏の井戸で、これでゴシゴシと体と顔を洗ってみてください。

・・・・あ、耳の後ろも念入りにね。

あ、もう面倒だから頭の天辺からつま先迄洗って下さい。」

「・・・りょーかい。」


半信半疑のまま、ラベル君は裏庭へ向かった。


・・・・・数分後。


裏庭から


「うおっ!?

なんだこれ!

泡が! 泡が止まらねぇ!」


という叫び声が聞こえてくる。


・・・・・・・・・・さらに数分後。


「リオ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


戻ってきたラベル君を見て、俺は思わず「鑑定」を実行する。


【対象:ラベル・エンケ(洗浄済み)】

・清潔感:☆☆☆☆

・魅力:☆☆☆

・総評:★泥汚れと獣臭が完全に消滅★

★ラベンダーの香りを纏った「爽やかイケメン」にクラスチェンジ完了★

★(これでフラれたら性格の問題)★


「・・・リオ、これ、ヤバいぞ!!

肌がキュッとするし、何より体が軽い!!!!

それに見てくれよ、この腕!

泥も返り血も跡形もなく落ちてる!」


店の売り物である手鏡を特別に貸し与えると、ラベル君は自分の顔を二度見、三度見しながらオホオホと吠えつつ笑っている。


ゴリラか!!


髪も石鹸で洗ったのか、いつもよりフワッとしていて、立ち姿が劇的に「映えて」いた。


「これ、本当に貰っていいのか!?

悪いな、リオ!

行ってくる!

恩にきるぜ!」


うん?


「ちょっ、ラベルさん!!!!!」

「?」

「服、着て下さい」

「あ、わりぃ」

「装備は置いていって貰って大丈夫ですよ」

「おう!!」


はぁ・・・マジで大丈夫かこの広告塔。


嵐のように去っていく「走る広告塔、もとい今はラベンダー。」


俺はその後ろ姿を見送りながら、ニヤリと口角を上げた。


・・・・・数時間後。


街の広場で何が起きたかは、俺が直接見るまでもなかった。

昼過ぎには、冒険者たちが次々と店になだれ込んできたからだ。

「おい! ラベルの奴が急にピカピカになりやがったって噂だぞ!」

「あいつ、ミランダ嬢に『今日はすごく素敵ね』って言われたんだってよ!

羨ましすぎるだろぉ!」

「あのラベンダーの香りがする『魔法の塊』を売ってくれぇえええええぇ!!!」


(よし。想定以上の食いつきだ)


口コミの力は、いつの時代も「嫉妬」と「欲望」で加速する。

商品在庫をここ数日で増やしておいて正解だったな。

主にマーサが不休で頑張ってくれたおかげだな。

感謝。

・・・・しかしこのままじゃ。


ん?


半ば落ち着いてきた群衆の中に混じって革鎧を血で汚したベテラン冒険者が一人、真剣な顔で石鹸を手に取った。


「・・・坊主、これ、これの匂いのしない物もあるのか?」

「・・・・ええ、こちらに。」


棚に置いていなかったプレーンの石鹸を差し出す。

こんなリクエストも見越して、プレーンの石鹸も勿論用意してある。

前世じゃ特別なプレーンの石鹸以外、売れ残り商品もいいところだから並べてなかったけど。


「ああ。

俺達「偵察職」にとって、体臭は命取りだ。これがあれば、風下に立っても魔物に気づかれにくくなる。

・・・小僧、これは『武器』だぞ。」


・・・そんないい声で言われても。


しかしこりゃ、ヤバいな。

はっきり言って舐めてた。

勿論ラベル君の事じゃない。

石鹸がもたらす波及効果だ。

もし実体の無い物にも解析が出来たなら。


【解析:スライム・ソープの波及効果】

・需要:爆発的。

・用途の拡大:美容、衛生、および対デーモン用ステルス効果。

・アラート:商人ギルドおよび教会が動くまでの推定時間・・・・残りわずか。


ってとこかな。


「レビュアー」として放った一石は、予想もしない巨大な波紋となってエブンの街を飲み込もうとしていた。

でも、今は目の前のお客様をさばかない事には。

俺はテオに目配せをし、店の奥から石鹸の在庫の箱を出してきてもらった。


「大変お待たせしました。

セブリオン特製、スライム石鹸です!」


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