最終話 人の輝き
魔術師タナデス・フォンリードの犠牲により、世界は四季の順当な巡りを取り戻した。
致死性の微生物も死に絶え、北の海の異常も元へと戻る。
しかし、人々は殺し合っていた。
互いに互いを信じられない。
イグニション・バーンを使い、敵国を滅さんとして逆に潰される国もあった。
悲しみに暮れる民衆
怒りとともに、それを抑えられない。
カマルは魔術師タナデス・フォンリードの遺産である仮面、ペン、杖をそれぞれ持って、
今まさに殺し合ってるーーー戦時中の場所へと、銀色の雷を全身に纏って現れた。
驚く兵士達。しかし、殺し合いが止まるのは必然だった。
突然、現れた少女。それが絶大なる魔法と共に現れたのだから。
泣き腫らした顔のまま、カマルは叫ぶ。
「やめてください!」
心が落ち着いたのか、兵士が嘲笑うように言った。
「武装解除してないお前に言われたくねえよ!
子どもだろうが容赦なく殺すぞ、魔法を解いて武器を捨てろ!」
カマルは素直に従った。
魔法を解く。杖や魔王の剣も捨てる。
そこに兵士が殴りかかってきた。
カマルは頬で受け止める。
ガツっと痛々しい音が響いた。
「満足ですか?」
「……っ 信用できるか」
兵士が後退りする。
カマルは叫ぶようにしていった。
喉を切ったのか唾に血が混じる。
それでも構わなかった。
全神経を使って言葉に変える。
「タナデス・フォンリードの思いを!もう踏みにじらないでください……! お願いですから!
魔界には危険因子もあります
逆に平和を望んでいる民もいました。幽霊になった魔王ですら!
けれどそれは人間だって同じです。
狂気を内包した科学者のせいで闘争本能を刺激されて、お互いを信じられなくなり、殺し合った。それをロストという魔物に突かれて死の星の条件を満たすことになった。
それはみんなの本意じゃないでしょ!?
このまま負けていいんですか!
人間は! こんなところで終わるほど、やわじゃないはずでしょ!
魔界と人間界は、和平を結ぶべきです!」
血を吐くような、魂を叫ぶようなそんな想いをぶち撒ける言葉だった。
「今さら手を取り合えってのか」
「お前だって武力で俺たちの戦いを止めただろうが!」
「魔物も敵国も!信じられるわけねえだろうが!」
言いたいことは分かる。
そう簡単に信じられるわけがない。
「それでも! それでも……! まずは人間がまずはお互いを信じるために歩み寄るべきなんです!」
「綺麗事ばっかり言ってんじゃねえよ!!
聞くに耐えねえ、死ね!」
剣を振りかぶる。
ーーーなんで届かない 私は……!
カマルは目を強く閉じる。
その時だった。
ブオンッと激しい駆動音がした。
同時に声が聞こえる。
「武器を帯びてねえ、女の子を痛ぶろうってんだ。殴り合いなら、まだ平和だろうよ!」
レイドの声
そして、バキッと強く殴る音がした。
見ると斬りかかろうとしている兵士が倒れている。
「レイド……」
「カマルーーーやっと追いついた。いっつもいつも背ばかり見せやがって。いい加減、一緒に歩けよな」
斬りかかろうとする兵士に蹴りを入れて、レイドは続ける。
「お前がーーー今、世界の希望なんだ。前を向けよ。お前は間違ってねえ」
カマルの両肩に手を置いて顔を突き合わせていった。
「お前が好きだ。だからーーー俺と歩いてくれ。俺と、一緒に魔界との和平の橋渡し役になってくれ」
「こんなところでいうこと?」
カマルは吹き出した。
笑いながら言う。
「でも、ありがとーーー元気出た。さあーーー頑張ろう。もう一踏ん張り!」
2人は肩を並べて歩き出すーーー。
そして、カマルとレイドは戦争をなんとか切り抜けて抑えることができた。
けれど、2人だけじゃない。
所長やルーク達の協力もあってこそ。
人間達同士の戦争が終わるのに5年以上の年月かかり、それから魔界との和平を結ぶのに20年あまりかかった。
途方もない平和への道のり。
けれど、1人じゃない。
みんなとの協力のもとになんとか形になった。
そしてーーー再び10年の月日が経った時。
帝国の中央都市に平和公園ができた。
平和記念碑が太陽に照らされる。
カマル達、討伐隊メンバーが書き記されていた。
また、魔界と人間界を繋ぐゲートにゲートオブトレインという列車が開通する。
そのことで、貿易が盛んになった。
両界はさらなる文明の発展を遂げていくことになる。
そうして、世界はーーー平和を少しずつ取り戻していった。
以後の話。
ケルト 魔導探偵として活動中に反平和派の魔物と人間の闘いに巻き込まれ、死亡
レイド 亡きケルトの意志をつぎ、警察をやめて探偵へと移籍。カマルに探偵業の仕事を教える。
カマル 魔導探偵団を非公式に設立。団長を務める。
日々の作業の傍、次代リゲイルとして銀色の雷シリーズを執筆する。
ルーク、コガネ、サクヤ
黒騎士ゲイラーを死闘の末に撃ち倒して魔物と人間の双方の信頼を得たことで、魔界と人間界両方で活躍する商売人となる
機械王国復興に尽力する
オーガル 亜人テイルを討伐しに魔界へ。生死不明のまま失踪。堕天使ミカエルと遭遇して死闘を経た形跡が後に発見される。
第二部 了




