第22話 世界創生魔法(グランドオーバーホール)
世界創生魔法ーーー世界の四季を順当なものに戻し、致死性の海洋微生物を死滅させ、北の海の異変を強引にも正常に変えうる究極魔法。
死の星と極星ギアの願望器的な役割を人工的に再現した魔法がそれだ。
とはいえ、人を生き返らせることはできない。
時間遡行も不可能。
だからこそ、その究極魔法は魔術師タナデス・フォンリードにとって失望の権化だったはず。
それは人を生き返らせることができないことと、ある副作用からだ。
カマルは焦りながら言った。
「そんな……ダメです! 私は、あなたを助けようと!」
「知ってたか。副作用は、行使した術者の死去。光の三極星の適格者や無尽蔵の魔力を持っていても死に至るというものだ」
けれど、本当にそうなるかは分からない。だから協力してくれないか? と。
魔術師は困ったようにして笑った。
「ダメですって! そうだ、魔水晶を探して……イデオロンドに戻れば……魔水晶の店があるはずで! 」
「いいんだ」
「どうして!? 唯一の例外になるかもしれないのに!」
「ーーー私の罪滅ぼしに、きみの善意を使うことはできない。
それに、私は魔術師だ。プライドが許さない」
「そんな」
待って、とカマルが止める間もなく、フォンリードは魔法を発動した。
カマルは魔術師に光の三極星「流星」と無の魔法を明け渡して、世界創生魔法の解放に助力する。
しばらくしてーーー。
別空間が崩れ去りーーー魔界の荒野に2人は立っていた。
空を見上げれば、満天の星々が輝きーーーその星々に対するように魔術師の身体が膨大な熱量を帯びた光を放っていた。
少しずつ、魔術師の身体がほつれていく。
その度に、世界に彩りが生まれーーー最後には、虹の色をたたえた光が、世界全体を暖かく照らした。
魔術師が消えていく。
光の残滓となって、消えていく。
その時、涙を流すカマルに魔術師は懐からペンと仮面を取り出して渡し、告げた。
「きみが、次代の『リゲイル』だ」と。
言い残し、光の粒子となってタナデス・フォンリードは魔界の風に解けるように消えていった。
カマルは泣きじゃくった。
両足が軋むように痛む。
もうしばらくしたら両足が使い物にならなくなるだろう。
けれど、そんなことはどうでも良かった。
魔術師に生きて欲しかった。
しっかりと地に足をつけて、自分の足で立って歩いて欲しかった。
なのに、消えた。世界を救うことに殉じた。
カマルは、しばらく泣いたあとーーー魔術師の杖をついて立ち上がる。
痛む体に鞭打って歩き出す。
まだすることがあると。
そしてーーー人間界へと繋がるゲートへと足を踏み入れた。




