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第21話 満ちろ、極光②

「まだ終わりじゃないですよ、フォンリード」


 七色に輝く極光を放つ剣。

 それを宙に掲げる。形作るは、彼らの旅路。

 銀色に輝き、空から降りる稲妻。


「複合魔法 silvers thunder (銀色の雷)!」


 その名を高らかに叫んだ。

 銀霊晶魔法の光を左手から天へと放ちその、天上より雷を呼ぶ。


 銀色に輝く数多の結晶体が互いに擦れ合い、電気を帯びる。

 その熱で溶かされ、塵となり舞う銀の結晶が電気に纏わりつき、幻想的な「銀色の雷」となるのだ。

 それが天上より落ちーーー魔王の剣に纏わらせる。

 銀色の紫電が、火花を散らした。


 ーーー私たちの旅路の


 驚愕するフォンリード。

 その杖めがけてカマルは雷を纏う剣を叩き込んだ。

 フォンリードの体が銀の光で包まれる。


 声にならない悲鳴をあげーーーフォンリードは倒れ込んだ。

 それでも、魔術師は立ち上がる。

 失った右目の、眼窩(がんか)が、痛々しい。


 魔術師は床に放られていた杖を拾い上げて、掲げようとする。

 けれど、その杖を捨ててカマルの頬を殴った。

 そしてカマルの胸ぐらを掴んで叫ぶ。


「さっきからなんなんだ! 私への当てつけか、ふざけるな!」


「違うーーー! あなたに過去を思い出させて、楽しかった頃を再確認してもらおうと思ったんですよ! 悲しい過去もあるかもしれない!

 だけど!! 全部ひっくるめてそれが人生じゃないんですか? だから! あなたは勇者一行との冒険を小説家リゲイルとして書いたんじゃないんですか!?」


「っーーー舐めた真似を!」


「いい加減、目を覚ませ! タナデス・フォンリード! 」


 そう、カマルはフォンリードの頬を平手打ちして叫んだ。


「私は、あなたの書く小説が大好きだから! だから! ちゃんと生きて欲しいんだ!」


 2人ははあ、はあ、と互いに荒い息を吐いて向き合っていた。


 静寂が痛い。


 全身が痛い。


 その静寂を最初に破ったのは、魔術師タナデス・フォンリードだった。


「私はーーー間違っていたのか」


 ぽつりと呟く。


「私はカルデアの仕事に殉じ、ルクスやユークハルトの死を嘆きーーーそして、世界が人の死で、血の海で溢れた時に、死の星の発動条件に基づいて破滅がくるように設定した。

 そうすることで死の星と極星ギアが連動して『願望器』としての役割を果たすようになって、勇者一行が生き返ってきてくれると思っていた。でも……それは間違っていたのか?」


 私は、また間違えたのか


 そう言って魔術師は両膝をついた。

 涙が、血の涙が、溢れ出て止まらない。


 それほどまでの絶望だった。


 カマルは痛いほど分かった。


 けれど、カマルは分かった上ではっきりと言う。


「はい、間違ってます。あなたは選択を間違えた」


 ーーーっ


 息をのむ声が聞こえる。

 魔術師の心を剣で切りつけて傷つけるくらいの物言いだろう。

 けれど、


「けれどーーーでも、あなたはまだ生きてる。

 生きてるんです。ーーー私とともに、生きてください」


 そう言って、優しく微笑んだ。


 カマルの笑顔が眩しい。

 魔術師は目が眩むような思いだった。

 なんでそんなに前を向けるーーー君は、なんで絶望しない。


「個人的には、あなたの書く小説の続きが読みたいってのもあるんですけどね」


 カマルはそう言ってクスッと笑う。

 魔術師もつられて笑った。


「なんだそれ……」


「さ、立ってください」


 カマルに手を引かれて魔術師は立ち上がる。


「顔を引っ叩いたことですが、すみませんでした」


「いいよ。私も君を殴ってしまっていたし」


 そして、魔術師は尋ねた。


「世界創生魔法、使うよ。魔力が足りないから君の三極星と無の魔法の魔力を私に渡してくれないか?」

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