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第21話 満ちろ、極光①

 二世界の狭間にて睨みあう2人の姿があった。

 1人はカマル。

 腰に下げているのは、魔王テオドラから授かった龍の鱗を装飾された鞘に収められた剣だ。

 それは解句を叫ぶことで秘められた魔法を放つことができる特殊な剣。

 だが、まだその時ではない。

 カマルは目の前のもう1人の人物ーー魔術師を睨みつけた。

 魔術師は自身の持つ銀色に輝く杖を振り上げる。

「イリーガルブラスト」

 そう、怖気が走るような声色とともに。


 瞬間、地獄が広がった。


 カマルの視界いっぱいに広がるのは、世界の終わりかと思うほどの脅威だった。

 紛い物の空が、赤く赤くーーー全てが赤に染まっていて、魔術師の前には黒く美しい球体が浮かんでいた。

 赤い空に浮かぶのは、その全てが隕石だ。

 球体はブラックホールにもにた凄まじい吸引力を誇っている。

 クレイドル姉妹から受け継いだ銀霊晶魔法で防御壁を張っても張った先から破られ、吸い寄せられる。

 そこに絨毯爆撃のような、凄まじい怒涛の隕石群が迫った。


 カマルは銀霊晶魔法を用いて、もう一度防御壁を張ろうとしたがーーー手を下ろした。


「なぜ、手を下ろす? 私を倒すんじゃないのか?」


「まあ、待っていてくださいよ」


 カマルは不敵に笑う。


「ーーーあなたが見たがっていた、無の魔法でこの脅威を突破してみせますから見ててくださいよ」


 フォンリードも笑った。


「やってみせるがいい。この危機的状況をどう打破するか見せてもらおう」


 カマルの右腕に刻まれた刻印が光る。

 そしてーーー。


「カマル・エクラットが我が血、我が名を捧げて極星ギアの導きのままに命じるーーー現れいでよ

 無の魔法!エクラットバーンズ・ロストスクエア!」


 無の魔法によって黒い光がどこからともなく発現し、テオドラから受け継いだ剣ーーーその鞘に宿る。


 カマルはそれを掴んで叫んだ。


「私は、あなたに勝つ!ーーー勝って、ちゃんと話し合いたいんだ!」


 黒い光を宿した剣は激しく鳴動する。

 力を抜けばたちまちすっぽ抜けてしまうだろう。

 けれどカマルはそんなことはどうでも良かった。


 魔術師の顔を引っ叩いて、対話に持っていく。

 和平を約束させる。

 このことだけ考えていた。


 足が軽い。


 足が自然と前に出る。


 降り注ぐ地獄を、黒い光を宿した剣で切り開いていく。


 けれど、あと数メートルそれが長く感じる。


 だからなんだ!!


 色んな地獄を見てきた。

 色んな悲劇を見てきた。


 こんなーーー天から降り注ぐ地獄くらい、乗り越えて見せろ!!


 その内なる叫びと共に、風魔法を足に纏う


 その時だった


「終わりにしようーーー精神操作魔法pain over」


 カマルの内から圧迫するような激痛が走った。

 ひしゃげるような、全身が粉々に砕けるような痛み。

 立ってられない。

 視界が揺れる。

 涙が溢れて止まらない。

 カマルは地面に倒れた。吐血を繰り返す。


 なんでーーー。


「なんで? 知ってるだろうに。私は、半分魔物だよ。魔王の魔法を解読し、利用するまでに至るのは、私が魔術師だからお手のものさ。知恵が足りないね、カマル」


 まあ、代償に片目を失ったけども。

 と当然のように笑った。


 激痛のなかでカマルは思った。

 なんで、あなたは自分の心を、身体をそんなさも当然に傷つけ続けるんだ。

 そんなの


「そんなのーーー悲しいよ」


「なんだと?」


「そんなの……悲しいよ、フォンリード!」


 痛みの中で、カマルは叫んだ。


 あの自分を犠牲にしてでも、死の星に殉じようとするバカの目を醒させなければ。


 カマルは立ち上がる。


「満ちろ、極光ーーー」


 魔王テオドラの剣が黒い光を跳ね飛ばして青く純真な光を宿して輝き出した。


 まだ四季がまともだった時、夜にあった北の海にオーロラ。七色の光を宿して。

 魔術師の、故郷だった北の王国にあったはずのオーロラの光を。


「全ては星の瞬きに回帰する」

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