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星の瞬き〜光の三極星を極めし者たちが紡ぐ物語〜  作者: 木賀 拓人
第二部 魔界編そして戦争へ至る足音
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第15話 銀色の旅路 魔界編 破①ー1 城内へ

 魔王の城は、「闇の業火」と呼ばれる火の結界により、守られていると聞く。

 そのために、結界を通り抜けようとする者は「闇の業火」に焼き殺されるそうだ。だが、魔王の城から半径20km四方に灯籠が1台ずつあるので、それを破壊することで、消せるはず。

 彼女らは、三手に分かれてまず、3台破壊することに成功する。

 そして今、最後の1台の前にいる。

 戦士ユークハルトが言った。


「これで最後だ。壊せ、ルクス殿」

 ルクスが頷く。剣を振りかざし、


「道が、開く!」


 兜割りするかのごとく斬り払った。

 灯籠が破砕され、石つぶてと火の粉を飛ばしながら倒壊する。

 少しして、魔王の城を囲っていた火の結界が、酸で物が溶けるように解けていった。

 完全に結界が消え失せた時ーーー

「これでもう、私たちを遮るものはありません。魔王を打ち倒しに行きましょう」

 彼女は魔王の城に向かって歩を進めた。

 

 長い長い黒い大理石の階段を登り、魔王の城の扉の前に出る。

 両扉の構造になっており、その面には二対の龍が彫られていた。

 見たところ、取手らしきものはない。

 だが、二対の龍の眼に何かしらの窪みがあった。

(うーん、こんな仕掛けがあったなんてな

 遮るものはありませんと言った手前、少し恥ずかしい)

 勇者が目で、そんな魔術師に合図する。

 

 ーーー君なら開けられるはずだ

 

 フォンリードは頷き、

 

「silvers flame (銀の炎、出でよ)」

 

 と唱える。

 瞬時に、杖の先端に銀色に輝く炎が燃えた。

 それを横薙ぎに振るい、各々の龍の目にあやまたず飛ばし、当てる。

 すると、龍の目が銀色から緋色に変色して輝きーーー扉が内側に開いていく。

 戦士が先に中に入って行った。

 勇者は彼女に「ありがとう」と礼を言い、入っていく。

 魔術師も息を深く吐いたのち、覚悟を決め、中に入った。

 

 ーーーこれからが本番だ

 

 暗いトンネルのような通路を抜けると、開けたところに出た。


「魔術師殿、ここはぞくに言う大広間であろう?」


「ええ」


「ではなぜ、階段がない」


 言われてみればそうだ。

 大広間なるところを見回してみても、別段、階段らしきものがない。それでも見上げれば上階が何階かあるのが分かった。

 ーーー隠し通路がある?

 思い、大広間の四隅にある銀の甲冑を着込んだ騎士像に触れる。

 頭から腹あたりまで、触診してみるが特に出っ張ったモノはなかった。

 スイッチらしきものがあれば、それで現れるのではとふんだのだが、裏切られた気分。


 ーーーでは、魔法で飛ぶのか


 一瞬考えたが、流石に危険だと首を振る。

 魔王の城には、魔王直属部隊と特級、上級、低級の魔物のそれぞれの群れで構成された魔王軍が控えていると考えられる。

 そうであれば、魔法を探知できる魔物もいるはずなので、これ以上刺激を与えると上級以上の魔物の群れが来てしまうだろう。そうなっては魔力はおろか体力がもたない。

 そこで、

「ユークハルト、四隅の騎士像を破壊してみてください」


 戦士にそう指示した。


「了解」

 頷くと、戦士が騎士像に近づいて斧を振り下ろし、破壊し始める。

 それを見た勇者が、彼女に尋ねた。

「俺も手伝っていいかな?」

「勇者は緊急時に備え、体力の温存を兼ねて休んでてください」

「ーーーなんか納得いかないけど分かった」

 すっぱりと否定してしまい、勇者が肩を竦めるものの、魔術師は悪びれることもなく、戦士を見守る。

 そして、最後の一体を破壊し終えた時、微かな地響きとともに遥か天井から天界から天使が祝福するかのような光のヴェールが降りてきた。

 魔術師たちは3人でかたまり、敵がどこから来ようと対応できるように構える。

 だが、それは杞憂だった。

 

 光のヴェールは、瞬時にクリスタルの螺旋階段を創り上げる。

 その様相はなんとも美しく、魔界の、それも魔王の城でなければ絶好の観光スポットになっていただろう。

 しかし魔王の城である以上、その美しさが不可解で、不気味であることを強調していた。

 勇者一行は1人ずつ螺旋階段に足をかけ、のぼって行く。

 

 一階に差し掛かったとき

「伏せろっ」

 戦士が鋭く指示を飛ばした。

 魔術師たちは、上体を低くする。

 すると、頭上わずか2センチ辺りを白光りする刃が、通過した。

 ーーー危なかった

 戦士が注意を促さなければ、彼女ら勇者一行のうち、最低でも1人は命を落としていたかもしれない。

 1度目で死ななかったことに安堵するが、魔術師の銀の耳飾りにキラリと後ろから光るものがあった。

 ヒュンと風切り音をあげ、刃が飛来する。

 ーーー今度は当てる気だな、煩わしい

 魔術師は杖を振りかざす。

 だが勇者が前に出て、背にかけた剣を瞬時に抜き放ち、そのままかち当てた。

 火花を散らし、鈍い金属音が響く。

 刃は軌道を変えられ、一階下の黒い足場に突き刺さった。

「勇者ーーー休んでてくださいと私、言いましたよね?」

 呆れ、ため息を吐く魔術師に年相応の少年のように勇者は笑い返した。

「大丈夫。まあーーー体力を温存しながらあいつをぶっ飛ばせばいいんだからさ」

 勇者は剣に魔力を込める。

 可視化された銀色の魔力が、剣身を覆うようにまとわりつきーーー

「ーーー飛べ」

 掛け声とともに左斜めに振り下ろされた剣から、魔力の刃が放たれる。

 それは、先程刃が飛んできた方に真っ直ぐ飛んで行った。

 超速で迫る魔力の刃に、対抗するように見えない敵も、刃を飛ばす。だが、それは、変な方向に向かって飛んでいき、

 ーーー少しして、血の匂いがした。

 絶命したのだろう。

 一息ついて螺旋階段をのぼり、視線を向けると胴体を真っ二つに切り裂かれた魔物が、血の海のなかで死んでいた。

 剣をまるで槍のように投擲するだけじゃなく、それを用いて断頭するために鍛え上げられた隆々とした筋肉。それが上半身と下半身、両方に均等についていた。

 肌が血に濡れ、赤くなっているが、茶褐色の豚のような顔からオークと呼ばれる魔物だろう。

 だが、彼のような種族には魔力だけの攻撃を防ぐ防御機構は備えておらず、勇者一行以外の人間も、魔力の扱いに長けていれば絶命させることが可能だ。

 そのため、低級に位置する。しかし、先の魔物の群勢と人間界の戦争のさい、多くの兵士が彼らに破れた。

 それはーーー息絶えた時、爆発する種類としない種類の混同によるもの。

 

 オークの上半身、腸が覗いている。それが、導火線に火がつくように燃えていく。

 

 最終的にーーー半径100kmに及ぶ、激しい爆発が待っている。

 

 魔術師は舌打ちし、杖をかかげた。

「だから休んでてくださいって言ったんですよ!」

 悪態をつきながら、膨張し始めるオークを囲うように障壁を張る。

 それだけでは内面からの圧力を抑える強度が足りない。

 加えて3つ、障壁を重ねて張った。

 

 瞬間、オークの身体が急速にしぼむように収縮し、激しく爆発した。

 ドン、と障壁内部に圧力がかかる。

 激しい光と炎が障壁の中で荒れ狂う。

 

 杖が揺れる。

 

 魔力体でできた障壁や攻撃手段になる物体の制御が、難しい場合に起きる一種の反応だ。

 この場合、その場を離れることがベストだが、魔王の城内部であること、魔術師たちがその場から瞬時に移動することが叶わないことの2点からできないでいる。

 めんどうくささと勇者の人の話の聞かなさに辟易するが、気力を損なわずに少しずつ障壁をすぼめていく。

 そして、手に乗るほどのボールだいにした時、転移魔法を展開ーーー別空間に放り投げた。

 のちに、別空間の入り口を閉じる。

 

 肩で息をする魔術師に、戦士が声をかけた。

「おつかれ、魔術師殿」

「ええーーー寿命が30年ほど縮んだかと思いましたよ…」

 ため息を吐く彼女に、ユークハルトは続けて言う。

「先は長い、あまりこんを詰めすぎるな」

 

「はい……」

 

 頷くフォンリードが前を見る。

 

 と、ため息をつきたくなるほど元気いっぱいなルクスがいた。

 

 それも、勇者が、心労と疲労で息も絶え絶えと言った魔術師と苦笑いを浮かべる戦士を後目に、二階に向かう螺旋階段に足をかけていたのだ。

 

「さ、次いこー!」

 

 

 ーーー勇者、最初魔界に来たときはあんなに怖がってたのに今じゃ…

 

 魔術師は、ため息を吐いた。

 

 ーーーあれでは危険だ。魔物の狡猾さはさっきので身をもって知れたはずなのに……。

 自由奔放で、旅するのが好きな少年ーーールクス。

 剣の腕は先の選抜試験で勝ち上がっただけあり、熟練されているが、やはり少年であるがゆえに恐怖に敏感だったり、時に鈍感であったりする。守ってやらねば。

 それが親心のようなものだということに、フォンリード自身気づいていなかった。

 勇者一行として旅をし始めた時の初心を思い出し、覚悟を決めなおす。

 

 

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