第7話 闇の計画
ガラスの破片が散らばる。
だが、カマルはエントランスに辿り着いた。
エントランスは暗い。
電源をつけていないようだ。
体から蒸気が上がるように魔力がオーラ状になって立ち上っていた。
汗がひどい。
けれど、やっと辿り着いた。
レイド、イシュカーが気になる。二人は命懸けで先に進ませてくれた。
後ろは振り返るわけにはいかない。
カマルは一度深呼吸すると、歩き出した。
向かうはエレベーター。
イシュカーからもらったカードキー。
それがあれば、地下へと行けるはずだ。
エレベーターに乗り込むべくボタンを押す。反応がない。
ランプが付かない。
「あれ……」
もう一度押してみてもダメだ。
電力が死んでいるのかもしれない。
それか、人を操って殺そうとするくらいだ。教主が罠を張ったのかもしれない。
とりあえず、主電源を探すべきだ。
カマルはエレベーター横の階段と受付カウンター奥の事務室を見比べた。
近いのは事務室。
けれどそこになかった場合、上階30F以上ものフロアを確認せざるを得なくなる。
とはいえ、全体のフロアマップがどこかにあればそれを確認すればいいかもしれない。
電源などのシステムを管理する部屋くらいはどこかの階にあるはず。
カマルは周囲を見回してから受付カウンターを超えて、事務室の中へと入った。
暗い。
その部屋の真ん中に、人影が見えた。
2つだ。目を凝らしてみて少し安堵する。
2人の女性がベッドやソファで別々に横になっていた。
操られてはいなさそうだ。
カマルは起こさないように慎重に足音を殺しながら事務室の中を調べた。
デスクの上にルクスアーツがあった。
2人分だ。
充電コードに繋がれている。
先にあるのは魔水晶。電気を吸収してそれを魔力に変換、それをまたルクスアーツ用に変換して端末についた魔水晶に送るという仕様なのだとレイドは語っていた。
仕組みがやや分かりづらい。
カマルはぶんぶんと頭を振って切り替えると、そのルクスアーツを2台取った。
一つは自分用、もう一つはイシュカーだ。
レイドは自分が警察だから持ってるだろうと思い、思考から一旦外す。
ルクスアーツを操作してみるも文面の送受信欄にあるのは地図などではなく、ただのやり取りだけ。
取り立てて必要だと思われるものはなかった。
けれど、これでレイドと連絡が取れる。
それに、ライトがわりになるのもいいと思った。
カマルは引き出しを開けてみる。
中にあるのは別にこれといったものはなく、筆記具だけーーーと思ったが、二重構造のようだった。
(少し厚底? 隙間もあるし、下がある?)
カマルは引き出しを限界まで開けてその下を指でするするとなぞった。
すると、丸い窪みを見つけた。
押してみる。カコッという音とともに1段目の仕切りが外れた。軽く持ち上げる。
あったのはカルデア・ビルのフロアマップと何かしらの計画書。
(フロアマップがあったのはいいけど、何この計画書ーーー『精神操作魔法の増強および広範囲化に向けた装置の開発』)
開くと、あったのは
「なに、これ……」
人を人と思わない極悪非道の計画が当然であるかのように書き記された、恐るべき内容だった。
忌怪蟲の中にある寄生虫、それが魔力回路になると言うこと。魔力が増強されるも、肉体の損傷、痩せ具合がひどいことが事細かに記載されている。
けれど、魔力を通す金属や水晶できた装置の部品でできていなければ伝導率が低いらしい。
そのために、クレイドル姉妹に目をつけたのだと記載されていた。
そして装置自体は、完成率が90%であることも。
「酷すぎるーーーなに、この内容。ほぼ完成しているのに、さらに働かせると言うの?」
吐き気がする。怖気が全身を走り、鳥肌がたつのが分かる。おぞましい。
その内容をよく読み込もうとした刹那、首に腕が伸びるがみて取れた。
カマルは咄嗟に蹴り付けて後方を確認する。
2人の女たちだ。
見知った顔。受付カウンターの2人だ。
けれど、目が赤い。ガラスを割った音かデスクを探った時にでた音か、それとも事務室に足を踏み入れたことのどれかの条件で、操られたのかもしれない。
それか、もっと前にかかっていたか。
(どっちにしてもこの人たちも操られてる。魔力に乏しい信者全てはとりあえず操れると見ていいみたいだね)
思って、舌打ちする。
それならこのカルデア本部上階全ても敵だらけなわけだ。安息はない。
カマルは刺激しないようにゆっくりと右へ動いた。




