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星の瞬き〜光の三極星を極めし者たちが紡ぐ物語〜  作者: 木賀 拓人
第二部 討伐隊編 カルデア
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第3話 蠢く①

『地下研究棟1階、到着致しました』

 アナウンスが聞こえる。

 ピンポンという電子音とともにドアが開く。

 3人は外に出た。

 暗い通路。

 明かりと呼べる照明は、僅かに足元を照らすランプーーー誘導灯しかなかった。

 それが葬列をなすように通路を照らしている。

 青く揺らめく。

 それが死をもたらす物に思えて寒気がした。

 歩くと硬い音が響く。

 カツン、カツンと……何度も。

 壁に反響して聞こえてきた。


「こんな暗いものなんですか? 地下研究棟って。大事な研究とかするならもっと明るい方がいいんじゃ……」

 カマルは首を振って寒気を振り切りながら、なんとか声を絞り出した。

「実際の大研究室と呼ばれるものはしっかり明るいらしいですよ。ガラス製のものを運ぶのには適してないかもだけど、ほとんどは私の姉に作らせてる銀鉱石で賄えるもので作ってるだろうから。ここの暗さはさほど関係ないと思います」

「イシュカーさんのお姉さんってどこにいるんですか? 助けなきゃですよね?」

 カマルの問いにイシュカーは首を横に振った。

「助けることは……たぶん、まだできないと思います」

「なぜだ? 大切な家族だろ」

 レイドが訝しむように聞く。

 それに、イシュカーはこう答えた。


「大研究室があるのは地下5階。地面を大きくくり抜いてできてると言われてます。その近くにあるから、4階か5階のどちらかだと思う」


「思うってお前……いったことあんだろ?」


「牢の場所が変わってる可能性もじゅうぶんにあるんです」

 手振りを交えて、掠れた声を振り切るようにゆっくりとイシュカーは言った。

「動くんですよ、虫のように。地下研究棟の部屋全てが」


「そんなバカな……どんな未来的な技術ですか」

 カマルは少しでも笑って見せた。

 けれど、イシュカーの表情は真剣そのもの。

 カマルは辿々しくもイシュカーに聞く。


「本当の……ことなんですか?」


「ええ」イシュカーは首を縦に振る。

「地下1階が大研究室の時もあったくらいですから」


「そんなに大きく変わるものが……どうして今まで見つかってないんですか?

 轟音とか出そうですけど……」


「実際は莫大な音がするでしょうね。けれど、精神操作魔法が視界や聴力、記憶にも作用するなら話は別ですよ」


「全員の脳をシャッフルなり作り替えればいいと?」


「その通りです」


 おぞましい。精神操作魔法で統治し守るべき、国民の思考を脳を作り変える?

 暴君にも程がある愚行だ。


 カマルは拳を握りしめる。


「早く行きましょう。お姉さんを助けてあげなきゃ」


 歩く。

 階段を降りる。

 歩く。

 階段を降りる。

 歩く。


 辿り着かない。遠い気がする。

 キリがない。


 見知った死へと誘うような誘導灯が揺らめく通路が忌々しい。


 カマルたちは息が上がっていた。


「イシュカーさん、少し止まりましょう。今のままじゃジリ貧です」


「じゃあ、どうするんですか?! 私の姉が、捕まって……」


「一旦立ち止まって作戦を練ろうってカマルは言ってんだよ。少しは黙って従え、アホが」


「なーーーじゃあ、どうすると言うのですか?」


「カマル、やってみろよ。多分、ケルト越えの地形把握ができるはずだぜ」


 そこまでじゃないよ〜と苦笑するが、カマルは言った。


「水魔法って通路の把握に役立ったりしませんか?」


 カマルは水魔法を発動させる。

 カマルの人差し指から水滴が流れ出る。

 それが少しずつ流れを強めて行く。

 すると、最後には水道水のような流れ具合になった。

 それが通路のわずかな隙間に入り込む。染み込んでいく。


「水漏れの原理を使った地形把握魔法って感じですね。water drop とでも言いましょうか」


 カマルが目を閉じると、視界に投影された。

 緑がかった建物の図面。

 細部までは分からないが、大まかにこういう形というものが目に見えて分かる。


 その視界を風魔法と水魔法で、再現する。


 しばらくして、透明な建物の図面が空中に出来上がった。

 青く揺らめく通路の誘導灯が最初は怖かったのに、この図面を照らして幻想的にも思える。


 カマルが右拳を握る。


「とらえた」


 不敵に笑いかけた。


「2階みたいですよ、イシュカーさんのお姉さんがいるところ。階段は30メートル先を右折して、そこから20メートルいったところの奥まった場所にあるようです。

 ちなみに、大研究室はこれは……6階ですね。少しずつ動いてるようです。これは飛ばしますか? まずはお姉さんの安否の確認がメインでしょ?」


「飛ばしましょう……今まさに動いているなら大研究室に行っても無駄足です。姉さんのところに、まずは向かいたいです」


「決まりだな!」


 レイドが自分の左拳を右の手のひらでパンと受ける。

 カマルは頷いた。


「そう来なくっちゃね」


 方針が決まった。無理はしない。

 けれど、救出ができそうなら迷わずする。


 カマルたちは歩を進めた。


 しばらくしてーーー2階にたどり着く。


 そして見たのは、痩せこけたイシュカーの姉の姿だった。

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