第2話 潜入
王国ヒュライズマレード カルデア・ビル前
思い出して、カマルは少し苦笑した。
あれから王国に辿り着くまでに何度も水晶魔法の練習をやってみたが、水属性を扱えるようになるまでで終わってしまっている。
イシュカーの師事のもとだったが、理屈ではこうだと思うのに、緻密な複合魔法の術式と現象の再現がうまく噛み合わない。
イシュカーにため息を吐かれたのは割とショックだった。
だけど、
(基礎中の基礎は大体分かった。あとは少しずつでも練習していけば、水晶魔法もきっとできるはず)
そう思って「よし」と右手を握った。
イシュカーがエントランスに入る前で立ち止まる。続く2人に振り返って言った。
「レイドさん、カマルさんは信者になるわけじゃないとは思うけど、見学者というスタンスで私に連れられてきているというていで、後ろについてきてほしい。いいですか?」
2人が頷くとイシュカーはエントランスに向けて入っていった。
ピンポンという電子音がなり、近代的なドアが両サイドに向けて開いていく。
中は思ったよりも広かった。
受付カウンターに給茶機、昇降機に強化ガラスでできた階段。
受付カウンターの奥の部屋は休憩と事務室を兼ねているようだった。
イシュカーが受付カウンターに立っている2人の女性に話しかける。
「こんにちは、ただいま戻りました」
「イシュカー様、お帰りなさいませ」
柔和な笑顔。何も知らない、ただの信者なのだろう。
彼女たちの首にかけているカードキーをみるに階級は連者。
イシュカーによると1番下の階級だという。
イシュカーはつとめて笑顔で聞いた。
「後ろの2人は連者になる前に少し見学したいことなので少しの間、私の案内のもと見て回りたいと思うのですがいいですか?」
「はい!」手をパンッと合わせて彼女たちは嬉しそうに話す。
「ぜひぜひお通りください」
「ありがとう」
「でも」
振り返る。
「地下研究棟には行かないように。何があってもね」
表情が暗い、気がした。
それでも笑顔だから不気味に感じて背筋が凍る。
貼り付けた笑顔というのが正しい認識だろうとカマルは気味悪く感じた。
「行きませんよ〜。見学者ですもの。私が通させませんし」
イシュカーはそう言っておどけて見せる。
そして
「なーんちゃって。誰が素直に従うかよ」
昇降機に乗り込み、地下研究棟へ至るスイッチを押す。
が、単純に押すのでは階下に行かないようで赤く点滅するだけだった。
イシュカーは羽織っているローブのポケットからカードを取り出すと、ボタン下の読み取り機に通す。
ビビッという音ともに、「地下研究棟へ向かいます」とのアナウンスが流れる。
昇降機がガコンッという音ともに、下へとゆっくりゆっくり降りていった。
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受付カウンター
女性2人のうち1人が魔力をためた水晶をはめ込んだ端末、通称「ルクスアーツ」という代物を手にして耳に当てる。
ルクスアーツは軍用、警察だけでなく広く波及されている携帯端末だ。
機能としては声のリアルタイムでの送受信、文面や写真の送受信程度である。
受付係が頭を下げながら言った。
「申し訳ございません、教主様。研究棟に3人が向かったようです。いかがいたしましょうか?」
『気にするな、あの部屋は私以外には入れんように権限を固定してある』
「イシュカー様の姉様が、地下の牢に入れられていると思われますがそこも大丈夫でしょうか……?」
『姉に会おうが別に構わんよ、どうせその牢も開けることはできない。ただ外から見ることしかできないだろうさ』
教主の低い笑い声が響いた。




