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帝都混乱編 41話 少年魔王

 ーーー魔界 魔王城 ある一室にて


 ロストは生きていた。


 帝都で消滅したのは自分のコピー体だった。

 あらかじめ用意しておいたのは正解だったなとロストは思い、嫌気がさす。

 自分で自分を殴った。

 血が飛ぶ。


 少し目が冴えた。


 そばで倒れているのは、亜人テイル……だったもの。

 さんざん痛めつけ、カエルのような魔物と融合させていた。

 時折、発生する魔力光によって人間のような姿になるのがまだ救いだった。


 堕天使の右翼は斬られて、なくなっていた。けれど、ロストに散々痛めつけられたあとに、もとに戻される。

 治癒、強引な回復


 歪な翼


 けれど、邪神龍の肉体がそれを形作ったのもあった。


 ロストは黒騎士をも殺すつもりで痛めつけようとした時ーーー


『もう、やめたらどうだ? 第17代魔王候補、ロストエクラットくん』


 声が聞こえた。


「魔王様ですか?」


 ため息を吐きながら、後ろを振り返る。


 幼い姿の霊体が浮かんでいた。

 人間の少年のような姿。


 憎き亜人。自分に流れる亜人の血で、弱いくせに知略謀略で魔王に上り詰めた、幼き姿の魔王。


 ーーー舐めやがって。魔王候補だと? 貴様など魔力がほとんどなく、ほぼ人間的なことで成り上がっただけのクズのくせに


「魔王様、私はあなたを認めていません。勇者に自らを殺させ、あまつさえ、魔術師を逃した。いっときは魔界が滅びかけたのですよ?

 どう責任をとるかと思えば、幽体になってもなお何もせずに、私の行為に口を挟むばかり。

 舐め腐るのも大概にしろよ、16代目魔王のくせに」


『お前が崇拝してるのは15代魔王だものな』


「そうだ、お前などたかが人間のように頭を使うだけの凡夫にすぎない。世襲制の上で成り立った魔王如きが」


『貴様こそ、舐めるなよ』


「ああ?」


『魔王にのみ継承される魔法ーーーそれをお前は、僕を喰らうことで手に入れようとしたけれど、どうにも手に入らなかったろう? 

 僕はそれを使えるんだよ』


「は、幽体である貴様が? やってみろよ、幽体なんて所詮は魔力体に魂が宿っただけだ。それに貴様は亜人だろ? 人間的な力しか持ち合わせない、魔物として最下層だ。この世から消し去ってやるよ」


 はあ……とため息をつくと、

『君だって亜人だろ?』

「なんだときさま……俺は!亜人よりも上だ、魔力もずっと高い……貴様よりも上に!」

 軽く少年魔王は手を振った。

 瞬間


「……げ……あ……」


 内部から全身をひしゃげるような痛みがロストを襲った。


『pain over 精神操作魔法『精神から肉体へと伝播する痛み』……だよ。最大出力で君を殺し切ってもいいけど、君にはカマルをここ……魔王城に連れてきて欲しい。だから、必要最低限ですませてあげる』


「舐めるな、クソ魔王が……俺は、まだ」


『このpain overは精神操作魔法の一種……であり、「従者の咎」を痛みで深く認識させるものだ。

 それに、魔王に与えられる魔法は、まだ後二つあるんだ。意地を張るな。

 それに、君の魔力がどれだけ高かろうと魔王の空席がまだ埋まってない以上、16代魔王としての能力で潰してしまえる。意味ないよ、こんな闘争』


「従者の……咎だと……俺は、貴様の従者じゃない! 」

 ロストがふらふらになりながら立ち上がる。


『君……昔の一人称に戻ってるよ、ダサいね』


「黙れ……お前の、両目を抉り取ってやるよ。昔の俺と今の俺を見間違えるくらいだからな」


『僕は霊体だよ』


「うるっせえんだよ!」


 ロストが動く。死の風を両手に纏い、殴りかかった。


『この魔法はあんまり使いたくなかったけど……

『ーーーーー』』


「それは……闇と光の融合魔法!? 初代魔王の魔法をなぜ貴様が……! ふざけ……」


 禍々しい闇と神々しい光が混ざり合う。

 ロストの言葉は続かず、魔法の衝撃の前に吹き飛ばされ、全身を炙られる。

 世界が破滅するかの如く雷鳴のような音が何度も何度も何度も聞こえた。聞こえた気がした。


 目が覚める。ロストは起き上がって自分の体を確認する。

 火傷はあるがどうにか生存したらしい。


 出力を抑えていたのか


 忌々しい。そう思った時だった。


『やあ、ロストくん』


「貴様どの面下げて……」


 鋭い魔力を帯びた眼光が刺さる。

 ロストは膝を折った。


『16代魔王テオドラ・ガネーザ・ロザリウスが、17代魔王候補ロストエクラットに命じる。カマルを生かして、この魔王城に連れて来い』


「御意に」


 ロストは憎々しげに、少年魔王を睨んだ。


「だが俺は、お前をいつか必ずこの世から消し去ってやる」


『楽しみにしているよ』


 そう言って少年魔王は消えていった。


 ロストはガンッと壁を殴る。


 血が滲んだ。


 ーーーーーーーーしばらくして。


 起き上がったテイルに言う。


「闘王リアに、極星ギア自体の刻印があるのだろう?

 有効活用させてあげようじゃないか。

 忘れているようだから思い出させてやれーーーそして、殺せ。リアの妹の魂を持つお前がな」


 テイルは怯えながら頷き、ゲートの渦に消えていった。


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