帝都混乱編 40話 無の魔法その暴威
白の世界でフォンリードは言う。
「カマル。君が私に届くかいなか、見届けさせてもらうよ」
その言葉の裏に、歪んだ愛情が含まれていることに、魔術師自身は気づいていなかった。
親しさ、友情とはまた違う
恋心や親心にも似た熱い感情
それでも、やはり殺してほしい。
自分を殺せるまでに力をつけてほしい。
逆にカマルの力が及ばなければ殺すことも厭わない、そんな歪んだ気持ちだった。
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帝国、その空中で
闇の力を纏う少女がいた。
涙が頬を伝う。
それでも、力は残酷に周囲を抉り、物質ごと殺して、この世から抹消させる。
所長は巻き込まれる寸前に車に乗り込み、アクセル全開で避けた。
道路に落下し、大破するコンマ一秒差で車から降りる。
ひしゃげて爆破する。
炎にまかれ、所長は右腕を負傷した。
けれど、なんとか命は取り留めた。
しかし、それも数時間のうちに終わりが来るだろう。
帝国軍だけでなく魔導警察、探偵、その全てが協力して災害となったカマルを殺害及び処分しようとするかもしれない。
そうなれば帝国の武力が大幅に削がれ、魔界勢力や他国との牽制は意味をなさなくなるかもしれない。
所長は走り出した。
一方ーーー。
ロストの死体がブラックホールに飲み込まれるようにして圧縮され、捻り潰され、この世から消え失せる。
カマルの言葉「あなたをこの世から抹消させる」が、奇しくも実現に至った瞬間であった。
けれどそれにカマルの意識はない。
意思なき、災害のような力の暴威。
それが帝国を余すことなく消し去らんばかりに撒き散らし、殺し尽くそうとしていた。
レイドは暗い絶望の中、カマルの絶叫を聞いた気がした。
悲痛、嘆き、苦しみ
ありとあらゆるものを自分のせいにしてしまおうとするかのような。
ーーーばかが
レイドは真っ暗な視界の中で必死に、もがく。
あいつを、助けなきゃ。
あいつを、カマルを、助けるのは俺だ。
あいつを、ひとりぼっちに誰がさせるかよ。
強い思い。カマルを守りたいという強い想い。
それが、人の死を嘆くことから一旦立ち上がらせる。
実際はまだ立ち直っていない。
自分がガウス=クロウを刺したことで生じた悲劇、数多の人の死。
自分が自分を許せるわけがなかった。
警察は人を助ける職業だからこそ、余計に。
けれど、今はーーー今だけは、カマルを助けることが優先だ。
絶望の暗闇からのいっぺんの光に手を伸ばし、それをつかみ取る。
レイドは走り出した。
ーーーカマル、待ってろ。
絶対助けてやる。
その時だった。額の刻印が燃える。
熱さにたまらず呻く。
触れるとその熱が、紅く燃える太陽のようなオーラを迸らせながら、右手、右脚、左脚に伝播する。
瞬間
レイドの周囲に熱い風が吹いた。
それが空気を押し固め、透明な階段へと変貌させていく。
「すげえ……こんな使い方もできんのかよ、三極星ってやつは」
レイドは笑み……その階段を駆け上がって行った。
しばらくしてカマルの姿が見えた。
闇を纏い、帝国を飲み込まんと力を放出し続けている。
涙を流しながら。
レイドは舌打ちした。
それがてめえのしたかったことか?
レイドは歩み寄る。
それがてめえの魔術師になるってことの証明か?
カマルの無の魔法の暴威がレイドの作り出した階段を壊さんと迫る。
だが、どうでもいい。
あいつを殴って目を覚まさせる。
刻印を解く。
階段を駆け上がる。
そして、自身が無の魔法に晒されるかもなんて心配をかなぐり捨ててカマルに近寄ると
「いい加減に……戻ってこい!」
カマルの頬を殴る。
一瞬、カマルの目に光が戻った気がした。
それに希望を感じて、両腕をカマルの体に回して抱いた。
冷たい
けれど、徐々に熱が戻ってくる感じがする。
「そうだ、カマルーーー戻ってこい!」
刻印が共鳴する。
熱を帯びて、2人の刻印が輝きーーーそして2人の全身を光芒が覆った。
世界が光で塗りつぶされる。




