帝都混乱編 38話 逆転
北、南、西、東
帝国四方向の座標から光の柱が突き立った。
それらが帝国の空に収束し、巨大な六芒星の魔法陣を描き出す。
「時は来た!!」
ロストは舞台に上がる演者のように両腕を広げる。
「四つの柱が立ちのぼり、魔法陣が完成した。
この時をどんなに待ち侘びたことか。ここから、ここからだ。帝国が破滅したら、次は王国ヒュライズマレードに攻め入り、同じ手段で血の大海を形成ーーーそして!フェイル海王国も潰して、機械王国すらも潰していけば主要国が全て消える」
パン!と中の空気を潰すように両手を合わせて、ロストは恍惚とした顔を浮かべて言った。
「人類の負けだ。我ら魔界の民が、貴様らを捻り殺し、残党も死の星の発動に合わせて塵となって消えるだろう。魔王様の無念は!私が今、払いましたーーーはははっ!!」
カマルが唇を噛む。
血が一筋流れるのもいとわずに。
それを見た所長がカマルの肩をポンと軽く叩くとはっきりとした声で言った。
「1人盛り上がってるところ悪いが、帝国は終わらないよ。君の魔法陣を潰す装置を開発してあって、今から起動させるからね」
「…………あぁ?」
ギロリとロストが睨む。
それに物怖じせずに、所長はなおも続ける。
「研究に必要なのは試行回数と結果だ。どれだけの努力を経て、どれだけの試行錯誤を重ねた結果、この装置ができたか知らんだろう。君は、人類の知識……その叡智に負けるわけだ」
「ぬかせ、君らなど取るに足らないから死ぬわけだ」
「けれど、帝国軍の持つ試作兵器をどう使うのかは知らんがほしいのだろう? だから帝国軍にはかからないような特殊なバリアが貼ってあるのを、運転中に見たよ」
「黙れ」闇の底のような黒い魔力が、ロストの全身を覆う。
それが迸るオーラになって地面にひびを入れた。
怒りが伝わる。
「これで終わりだな」
それでも所長はバカにしたようにそう言って、手にもつ端末をオンにしようとする。
「その装置をよこせ、人間」
ロストが手を伸ばす。
「おっと」と言いながら所長はわずかに後退し、
「ああーーーすまん、もう押してしまった」
バカにしたように含み笑いを浮かべながらそう言った。
数秒後、ゴウンっという音がした。
帝国闘技場から少し右のあたりの地面から黒い筒状の装置が現れる。
瞬間、青いボール状の光が大砲からはなたれたかのように高速で飛んでいく。
そして空中に描かれた魔法陣に直撃した。
魔法陣がガラスが割れるように壊れて行く。
雲すらも割れて青空が覗いた。
太陽から漏れる光芒が帝国を優しく照らす。
ロストは黙った。
しばらくの無音の後。ロストが憎々しげに言う。
「き……さま、私をどこまでコケにすれば……」
ロストのその怒りを意に介さず、カマルに向かって所長は言った。
「さあ、お膳立ては済んだ。カマル、あとは君が決めろ。君の両肩に全ての想いがのっている。重いだろうが、ここで決めなきゃどこで決める? 勝て。ロストを倒せ!」
全ての想い
重い言葉だ。けれど不思議と力が湧いてくる。
カマルは少しだけ微笑むと、
「分かりました。みんなのために、絶望を希望に変えるために私は、戦う!」
流星の光を右腕に宿し、ロストに「再び」対峙する。
帝国の破滅か存続かーーーどちらかを賭けた戦いが始まろうとしていた。




