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帝都混乱編 35話 勇者レイド tragedy

 カマル、観てごらん


 彼はまるで勇者のようだ


 火炎をまとう剣を持ち、1人果敢に強大なる悪竜と戦う


 凄まじい気迫、凄まじい戦闘


 それでもなおなくさない、勇気


 あれを勇者と言わずしてどうするね


 ーーーしばしの静寂ーーー


 けれど、彼は今日で気持ちが折れることになる

 自分が招いた悲劇に心を殺されてね

 彼を悲劇の勇者、と呼称することにするよ


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 空中でカマルとロストが激闘を繰り広げるなか、コロシアムの場内でも死闘があった。


 レイドと元邪神龍……屍龍ガウス=クロウだ。


 屍となった龍に魂が入ったと言っても、かなりの力を持っていた。


 憎しみを糧に、光の三極星を殺そうとする。


 ロストも光の三極星の使い手のはずなのに、殺そうとしないのは甚だ疑問だが、


(殺戮生物兵器にする時に何らかの術を行使したんだろうな。

 そうでなきゃ、憎しみだけあって知識皆無の人形みたいになるわきゃねえ。

 しかし、ロストの言葉を聞いて攻撃のような感じかと思ったら、なんだ。普通に攻撃してくんじゃねえか。かすったら死ぬなこりゃ)


 首に剣が這うように屍龍のかぎ爪がぬるりと迫る。

 それを何とか右に5メートル跳ぶことで回避する。

 体液が横一文字についた。

 けれどまだ、掠ってはない。


 死ぬつもりはねえよ。

 てめえの力に屈する俺じゃねえさ。


「Solaris framma (火炎よ、来たれ)」


 唱えると同時、距離をとりながら火炎の渦を発生させる。


 喰らえよ、化け物


「おらあ……!」


 気合い一閃。放たれる火炎の渦は周囲の空気を風を巻き込みながら竜巻となって、徐々に回転率を上げながらガウス=クロウへと吸い寄せられる。


 ガウス=クロウが大きな口を開ける。

(むくろ)の独特な死臭が鼻を突く。


 火炎が迫り上がる。


 刹那、放たれた。高密度かつ絶対的の熱を誇る熱線が凝縮された力の奔流。

 それがレイドの竜巻とぶつかりーーー爆発した。


 膨大な土煙をあげ、周囲を穴だらけにする。


 レイドも吹き飛ばされ、コロシアムの壁にもろにぶつかった。


 肺にたまった空気が漏れる。


 視界がぼやけるなか必死に立ち上がって、火炎剣を手に駆ける。


 肉薄する。ガウス=クロウの首を刎ねる。


 体液を頭からかぶった。


 はあ、はあ、と何度も荒い呼吸を繰り返す。

 しんどい。


 けれど、首を刎ねた。


 勝ったーーーカマル、俺はこいつに一矢報いたぜ。


 そう言おうとした刹那、龍の首がぼここと音を立てて泡だった。


「は……?」


 呆然と見るも、その泡が急速にそれでも確実に龍の首を形作っていく。


「おいおい……待てよ」


 二つの首を持つ怪物。


 邪神龍ガウス=クロウの第二形態。


 王から授けられし、で邪神を冠しただけはあるとレイドは思った。


 今は屍になったのに、魂をすげ替えられたはずなのになんという気迫。

 なんという圧。


 暴力的な殺気を、レイドは全身で感じていた。


 だから、なんだよ。俺は勝たなきゃならねえんだ。

 カマルとケルトのために。あいつらを守るだけじゃねえ。2人の隣に並び立つために。


 ガウス=クロウの移動速度が異常に早くなった。


 残像を残して高速で回避しながらそれでも的確な次の攻撃に転じる。

 素早くかぎ爪が閃く。

 なんとか避けるも腕が、全身が、傷ついていく。

 風を起こされ、巻き上がれないように必死に踏ん張りながらそれでもなお攻撃の手を緩めないようにレイドは気張る。


 なんだよ、知性がねえって思ったのは第一形態だったからなのか

 舐めやがって!


 必死に喰らい付き、傷つきながら一瞬の隙をついてガウス=クロウの胸に火炎のヤイバを突き立てる。


 燃える音


 体液が滴り落ちて、レイドにかかる。


 気持ち悪いが、ようやく勝った。


 そう思ったときだった。


「そりゃねえぜ……」


 破滅の始まりを告げる音がした。


 カチッという音が聞こえて、西の方で爆発的な光の柱が突き立った。


 膝が折れる。地に両膝をつく。


 俺は、トラップに気づかなかった。

 愚かで人殺しだ。


 視界が黒に染まった気がした。

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