表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/76

帝都混乱編 29話『災禍の四つ風』降臨せし者達

帝都のところとごろで炎があがった。

人々が混乱に怯えて逃げ惑う。

血が、肉が、目が、臓腑が転がる。道端に、まるでゴミのように。


それをさも当然であるかのように目の前の魔物4体は薄ら笑いさえ浮かべてコロシアムの真ん中に立っていた。


闘王リアとレイドは素早く視線を走らせる。

コロシアム内部のその出口は人でごった返しており、詰めかけた人々が逃げようとして混乱状態に陥っていた。

座席は崩落したコロシアムの天蓋に潰され……粉々に打ち砕かれている。

観客の何人かがそれに下敷きになり亡くなっていた。

最悪の事態だ。


元凶の4体のうち、1体が前に出る。

「ロストだ。改めて自己紹介させてもらうよ」と最初に断って言った。


「我ら魔王直属部隊『災禍の四つ風』ーーーこの帝国に血の大海を形成するため、参った次第だ。

我が名はロスト・エクラット。光の三極星の痣、その四つ目を持つものであり……」


闘王リアとレイドに視線を合わせて柔和にそれでも絶対の殺意を秘めたその眼はそのままに、笑った。


「災禍の四つ風を統括するリーダーだ。どうぞお見知りおきを」


「はっ」闘王リアが笑う。

「何を言ってんだ、お前は。お見知りおきもなにもここで討伐されてしまいだよ。帝国のど真ん中に現れたのは失策だったな、ここで死ねよ」


「随分と辛辣だな、闘王よ。私にもがれた腕は……そのままか」


「ぬかせ、お前は潰された目があるじゃねえか。誰かにいい子いい子されて治癒されたのかい?」


「言わせておけば……この腐れ人間め」

黒衣を全身纏った巨体が前に出る。

わずかに蹄の音がした。

レイドが反応する。

「あ? 誰だ太ったみたいな巨体なやつはよ」

「黙れ、いくら人間どもより少し強いからと言って我がリーダーを侮辱するとは貴様ら、殺すぞ」

紅く瞬く殺意の眼光が飛ぶ。

それに物怖じせずレイドは言い放った。

「やってみろよ」

「待て」ロストが短く、それでも確かな声で言った。

「紹介させてくれ」

「あ?」

「貴様らはここで殺す……だがこちらだけ一方的に名前を知っているのはフェアじゃない、そうだろう? 」


舌打ちをして剣の柄に触れる闘王リアに「ありがとう」と言い、ロストは紹介を始めた。


「右から堕天使ミカエル、彼は両翼からの放たれる土と闇の合わせ魔法『闇の礫』が得意だ。彼の魔力が続く限り、人間が死ぬまで掃射が続くぞ。ああ、それと気をつけろよ。彼は自分の容姿を否定されるのを嫌う。もし一言でも彼を下げた言い方をしたら死ぬと思ってくれ」


「いいのか? 攻撃手段まで話して」


「ああ、構わない どうせ惨たらしくのたうちまわりながら死ぬからね、君たちは」


なんだと? カマルやケルトが生きてるか気が気でないこんな状況でどうせ死ぬからだと……。舐め腐った言い方をしやがる

レイドが警棒を掴む。怒りで手が震えるのがわかる。

闘王リアが慮るような声をかけた。

「...まずは話を聞こう、レイド。話をさせる中で何かしらの弱点を知れれば数は多くても討伐できるかもしれない」

レイドは渋々頷く。

ロストは一人一人、手で指し示した。

「亜人テイル、彼女は剣を異次元ゲートから無制限に呼び出せるだけでなく……都合のいいようにそのゲートを人や魔物を通過できるようにして出せる。私も出せるが彼女ほどの精度、短時間ではできないよ」

次に、と言い黒い巨体を指す。

すると黒衣を脱ぎ捨てた。

現れたのは人馬。

背に大剣を背負い、下肢や胴体は馬。

不完全でそれでいてどこか美しい。

「黒騎士ゲイラー、彼は大剣を背負うケンタウロスだ。人馬とも言うかな。大剣に魔力を込めて放つ強力な一撃は大地を割る。人間なら一瞬でお陀仏だね。彼は……私を信奉していてね、困るくらいだが私を愚弄する発言をしたらさっきみたいに突っかかるだろう。だから、あまり刺激しないであげてくれ」

ロストは一息吐くと髪をかきあげーーー。


「さてと……こんなところかな

テイル、出せ」


短い、言葉だった。


「させねえよ!」レイドが駆け出そうとするが、

「レイド、待て!」リアが止める。

レイドが睨む。

「放せ!やつが何か仕掛ける前に仕留めれば」

「もう、遅い」

だが、闘王リアが首を横に振る。

怒鳴りかけるが気づく。

言葉通りだった。テイル、という少女が人差し指を軽くあげただけでゲートが現れた。

紫色に発光する渦状の門……そこから一頭の龍が現れる。


「あいつは……邪神龍」


レイドが絞り出すように言った。

姿形は少し変わっているようだが威圧感、人を殺すことになんの厭わないそのコケにしくさった顔つき。忘れもしない。


「今や、屍龍だよ」

嘲笑するような言い方でロストが言う。

屍龍、言い得て妙だった。

よくよく見れば腐ったような痕がその巨体のところどころにある。

蛆がわき、緑色の体液を出しているのもわかる。

これで生きているのが不思議で仕方なかった。

ロストが右手を上げる。

そして告げた。

「ガウス=クロウ、奴らをーーー殺せ」


屍龍の口が大きく開かれる。


『殺す、光の三極星。全て!引き裂き、捻り潰す!』


こぼれた言葉は怨みを纏い、放たれる熱気は全てを焼き尽くす業火のように熱い。


屍龍は放つ。極限までに絞られた殺意の熱線を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ