コロシアム編 27話 旅立ちの2人
ユーリが拡声器を持って話す。
「先日はリゲイルさんの朗読劇公演お楽しみいただけましたかね? 私はみてて感動しっぱなしでした。いや〜あれはすごい! 人を惹きつける才能というのはああいうのをいうんですね」
「うるさいぞー」という野次が飛ぶ。
笑い声もあった。ただそれは不快に思うようなものではなくツッコミと同じようだった。
ユーリは本題に入る。
「さて、今回のカードはレイドVSカマル!
2人ともなんとなんとあの!光の三極星の使い手だ! どんな戦いぶりになるのか今からワクワクしております。そして〜勝った方が闘王リアとの戦いの切符を獲得できるぞ!
また、闘王リアに勝てば!
帝国歴初頭より作られしトロフィーに魔法武器を獲得することができます。
さあ、誰が闘王リアに挑むことができるのか!
ーーーでは始めましょう!」
紹介と同時に東からレイド、西からカマルが入場する。
2人は睨み合いーーー、カマルが先に口を開いた。
「私は降参する気ないよ、試合見てたでしょ?」
「だよな」レイドが困ったように笑う。
だが明らかにカマルはおかしい。
憧れのリゲイルと会えたというのに、無理して気丈に振る舞っているように見える。
ーーーまあ戦えば分かるか
「来い」
「レイドこそ構えて、ボロボロになっても知らないよ」
カマルが詠唱なしで放つ光弾を3発連続で放つ。
弾幕からの殴りつけか。
それとも、その後に詠唱ありでくる最高出力か。
レイドが魔力を警棒に流し込む。
魔力剣の生成ーーー、そして踏み込んだ。
どうせ、切っちまえば同じことだ!
弾幕を全てきりにかかる。
カマルはまた同じように弾幕を張ろうと光弾を放った。
同じような攻撃。一向に殴り掛かろうとしない。
決め手に欠ける。
ーーーやっぱりそうだ。戦いにキレがない
迫力もなければ覇気もねえ
「やめだやめだ」
魔力剣を解く。
警棒をぶん、と一回振って肩に乗せるとレイドは気だるそうに言った。
「意味ねえよ、こんな試合」
「何を言ってるの、私の攻撃はまだ続いて」
そこまでいってカマルの言葉が止まる。
レイドが心底つまらなそうな顔で言った。
「カマル、辞退しろ」
「なーーー」カマルが絶句した顔をする
「試合は見てたよ。鬼気迫る迫力のある、そして応用も効いた最高の試合だった。けど、今はなんだ? まるで覇気がねえ。舐めてんのかよ、俺をよ」
「そんな、私は舐めてなんか」
「あと? 魔術師を超えるって言ってたっけ? 今のお前じゃ到底無理な話だよ、諦めて俺たちに任せてな」
「うるさい……」
「あ?」
「うるさい!」
カマルがレイドの頬を殴りつける。
「……てえ……」
カマルが拳を振るわせる。
「あーーごめ……」
と謝りかけ、ブンブンと被りを振る。
ここでいうのは謝罪じゃない。
ーーー顔を上げる。
殴ってしまった後悔、それ以上にやはり自分の夢を否定されたことへの怒りが強く表情にあった。
「光の三極星に最近なれて、もともと戦闘経験があるからってうるさいよ、レイド!
邪神龍に手も足も出なかったくせに!」
「終わりか? それだけじゃねえだろ?
言いたいこと、自分がどうしてもしたいことを分かってもらいたいなら、腹から声出せ!」
「私は……魔術師を超えてみせる!」
ーーーそうだ、それでいい
やっといい顔になったな、遅えんだよ
レイドが笑う。
最高のバトルを仕掛けてこい、お前に暗い顔は似合わねえよ
カマルがメターオブライトと発声する。
同時、青い光が右の拳に収束した。
放つーーー。
巨大な爆発音と共に青い光が流星の如くかけた。
ーーーまだ終わらないよ、レイド
光弾の連射から考えた新魔法、味わってみて
カマルはさらに唱えた。
「風魔法 分解ーーー炸裂しろ」
風魔法で発生した渦により、光弾が宙で軋むように鳴動して震え、最後には四つに分かたれる流星へと変化した。
そしてレイドに怒涛の如く殺到する。
詠唱ありの純正の光弾を風魔法でそのまま四つに分けたのだ。
一つ一つが強大な魔力を秘めている。
直撃すれば骨折で済まされない。
「すげえな、カマル。こんなのいつ覚えたよ!」
レイドが楽しそうな顔をする。
ソラリスフラマと唱え、火炎剣を生成する。
「俺もこれだけじゃねえ、その身で喰らいな」
レイドは形を保ったまま水平に薙いだ。
熱波が発生する。
空気が焼けて地面の砂が浮き上がる。
それが飛ぶ斬撃となってカマルの光弾を切り裂きながら迫った。見た目は鳥のよう。
「鳥のような斬撃だろ? 形を保ったままお前めがけて飛んでくぜ、これはーーー『ファイアバードストライク』とでも名付けようかな!」
「ださ」
カマルが、は〜とため息を吐く。
「うっせえよ!」レイドは拳をあげて抗議した。
続けて言う。
「まだ終わりじゃねえだろ。打開してみせろカマル!」
「風魔法」
渦が足に発生する。それを踏み台にし、レイドの斬撃を避けた。
だが、追尾するようで避けた先から這うように襲いかかってくる。
ーーーこのままじゃジリ貧か、それなら!
カマルが足に纏った渦そのままに蹴り上げる。
砂埃が舞い、レイドからは視線を遮られた。
「ーーー甘いな、カマル」
レイドが笑う。
眼前に、炎を纏った鳥型の斬撃が迫っていた。
カマルは思わず舌打ちする。
視線を遮っただけでは無駄か。
「その通り。この斬撃は俺の視線や思考を介さない。いわば自動追尾型の飛ぶ斬撃だ。直撃するまでお前を逃さねえ」
「警察ーーーみたいだね!」
当たる直前に身を翻し、回避する。
「職業差別だぞ〜! オラ!
お前の全てを俺にぶつけてこいよ、避けてばっかじゃつまんねえぞ!」
「じゃあ、この鳥を潰したら見せてあげるよ!」
「ああ、やってみろよ! その追尾型魔法はお前を追い込むぜ」
レイドの言う通りだった。
避けて避けて最後には壁際に追いやられていた。
だが、それがなんだ。
たかが光弾を切り裂くだけだ。
カマルは「エクラット」と唱える。
痣が煌めきを放ち、それが蒼い光を放つ防壁を作り出す。
硬い金属質な音が響く。
「おいおい!防戦一方だな! そんなんで俺をどおーーー」
次の瞬間ーーー防壁自体が風の渦を纏っていた。
斬撃がそれに巻き込まれて上空へと舞い上がり、そして消えた。
「な……に……」驚くレイド。
カマルは不敵に笑う。
「光弾に風魔法が使えるなら、防壁にだってつかえるんじゃないかって思ったのーーーそれだけじゃないよ」
風の渦がレイドへと向く。
「メターオブライトーーー!駆けろ、流星!」
掛け声とともに放たれた光弾は、風の渦に巻き込まれてさらに速度を上げる。
熱を帯びたように真っ赤に輝きを放ち、最高速度なった光弾がレイドへと一瞬のうちに迫った。
「やるなーーーだが、俺も負けてねえよ!」
ソラリスフラマと再度唱える。
レイドを中心に炎の渦が発生した。
それがあたり一面を燃やし尽くしーーー、それはカマルの光弾も例外ではない。
光弾も軋みをあげて燃えていく。
そして消えた。
「さてーーー仕切り直しだ。お互い、実力は拮抗してるようだな。埒があかねえ。だからよ」
レイドの持つ火炎剣が周囲の空気を焦がし、
「なに?」カマルが防壁を解く。
「次で決めようぜ。互いの一撃必殺の魔法や技を放つんだ。ここまで実力が拮抗してんだよ、最高出力なら差が出るかもだよな!」
「そうだねーーー次で決めよう。どっちか負けても勝っても恨みっこなし! 全力でぶつかってきてよ、レイド!」
「metor of light (メターオブライト)! 駆けろ流星、風を纏いて疾風の如き力となりて!
VADE! 行け……!」
カマルの右手から青い光……そして、風の渦が発生する。
そして、光がその渦に吸い込まれて廻り、循環すると同時に赤き光へと変化する。
最大出力かつ最高速度の光弾ーーー、それを放った。
レイドは笑う。
ーーーいいぜ、来いよ!
「Solaris frmmaーーー紅炎よ、竜巻となりて敵を葬れ!」
業火が火炎剣となった警棒から発生する。
大気を燃やし、周囲の酸素を奪わんと燃え盛る豪炎。
それが渦を巻く。
ぐるぐると超回転し、火花を散らすだけじゃなく雷のようなものも覗かせる竜巻になった。
レイドが袈裟斬りする要領で振り上げると、轟音をあげながら竜巻が動いた。
ーーー両者の光の三極星の御技がぶつかる。
衝突ーーー激しい光を放ち、次の瞬間にはドーム状の衝撃波がうまれた。
それは突風となりコロシアム全体を激しく揺らす。
砂埃が舞う。両者の姿が見えなくなる。
しばらくの静寂ーーー。そして砂煙が晴れる。勝敗がついた。
立っていたのはレイドだった。
カマルは片膝をつき、レイドはカマルの首に警棒を突きつけていた。
2人息づかいだけが静寂に包まれたコロシアムに響く。
やがて、カマルは少し唇を噛みーーー、それでも笑顔で言った。
「私の負けだね」
ーーーーーレイド、闘王リアとの戦いに歩を進める。
ケルトはそれを見て置いてかれたと思っていた。歯噛みし、手が震える。
それでも、2人の健闘を誰よりも喜び、そして悔しさと寂しさを感じていた。
闘王リアVS新生・光の三極星『太陽』の使い手レイド
それは大きなニュースとなり、帝国中を包み込む。
そして、運命の時が迫る。
闘技場の観客席にて笑う少女。
彼女を起点に破滅が迫ろうとしていた。




