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コロシアム編 25話 叫び ①

 4日目 レイドVSルーク


 ボウっと淡く紫色に光るゲートから現れたのは黒いフードを被った小柄な少女だった。

 彼女は売店からソーセージを買うと観客席に座る。睨み合う2人を見下ろして笑った。


「光の三極星。それは爆発的な光を内包しーーー世界そのものを形作るほどの強大な魔力。

 摩訶不思議な力。今は制御しているようでコロシアムは吹き飛ぶってことはないにしても、その真価を知ることはできる」


 楽しみだよ、光の三極星をもつ者達よ。

 そういう少女の口がさらにニタリと笑った。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


「なあ、レイド」

 ルークが呼びかける。

「あ?」

 睨むレイドにルークは苦笑しつつも聞いた。

「ダメ元だけどもさ、降参してくれないか?」

「なぜ?」

「僕は君の師匠的立場だ。君のことは分かってる。諦めないだろうし、僕がこう言ったら断るだろうということもね」

「当たり前だボケ」

「まあまあ……実践経験が圧倒的に足りてないんだよ、レイドは」

「なんだと」

「君は警察だけど、ならずもの、ましてや魔物との戦闘はあまりしたことないだろ?

 戦闘経験豊富な人物なんてもってのほかだ」

「何が言いたいのかぜんっぜん分からねえな」

「僕が、強いってことさ」


 ユーリが試合開始を告げる。

 結局、レイドは首を縦に振らなかった。

 ルークはため息を吐いて目の前のレイドを見据えた。

 柔和な顔つきから想像つかない恐怖

 それをレイドは感じた。


 ルークがりょうの拳に魔力を込める。

 洗練された動き。

 対してレイドは光の三極星の使い方を少し知った程度であり、ルークにコロシアムに向けての戦闘の基礎を習った程度でしかない。

 警察での経験もまだ十分でないからやはりぎこちないとレイド自身感じた。

 それでも。

 それでもだ。

 レイドには負けられない理由がある。

 ルークにもあるのだろう。

 ならばこれは理由同士のぶつかり合いだ。

 覚悟を決めろ。

 レイドは右手にある警棒を強く握りしめた。


 両者は同時に動いた。


 レイドの警棒が、ルークの拳が振り下ろされる。

 ガンッという衝撃音とともにぶつかった。

 反動で弾かれる。

 それを慣性の法則のように利用して今度はレイドはルークの腹を、ルークはレイドの頭を狙って蹴ろうとする。

 観客の誰もが入った、と思ったその時。


 ルークが瞬間的に消えた。


「消え……」


 レイドの動きが鈍る。

 そこに後頭部に凄まじい衝撃を感じた。

 体がふらつく。

 なんとか耐えて振り返ると、地面に降り立ったルークがいた。


「なんで……てめえ、そこにいんだよ」


 苦し紛れの言い方。

 ルークは涼しい顔で答えた。


「僕は全身に魔力を流せる。とはいえ部分的の方が爆発力が生まれるから、跳躍にかかる身体的コストが少なく済むうえに、その跳躍力も常人のそれをはるかに上回るわけだよ」


「つまり……」


「そう」ルークは上げていた足をさげて続ける。


「君が肉薄してきた時に瞬間移動したように見えたのはその爆発力でうえに跳躍したんだよ。魔力操作ってのはこういうこともできるわけ」


 ーーー戦闘センスは圧倒的だな


 レイドはルークを認めた。

 いや軽くは認めていた。指導をお願いした時にすでに。

 それでも実際に戦ってみたらどうだ。

 はるかに相手の方が上手だ。


 だが、それがなんだ。


 それが、2人を守ることを諦める理由にはならないし、優勝を目指すことを諦める理由にはならない。


 レイドは警棒に魔力を込める。


「本気で行くぜ、死ぬなよ」


「君こそ」


 太陽の光。それが額にある痣から右手にある警棒に伝播する。


「ーーーSolaris framma (紅炎よ、来れ)」


「光の三極星ーーーここでくるか」


 紅蓮の炎を警棒に宿し、それが大剣へと変わる。

 燃え盛る大剣にして炎の竜巻を生み出す神器のような力。


「俺は! てめえに勝つ!」


 レイドが叫ぶ。叫ぶと同時に駆け出した。

 炎を纏った剣が揺らぐ。

 その大剣を炎の竜巻として放つのかとルークは思った。

 だが、違う。

 レイドはそれを持ったまま走ってくるではないか。


 ーーーそのまま斬りつける気か


 炎の大剣だ。斬られればやけどだけでは済まない。

 断面から広がるように焼かれて死ぬだろう。

 だとしてもルークは笑う。

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