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星織が消えた世界で、俺たちはまだ戦う  作者: 秋乃 よなが
第六章 星織の塔の試練

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第二十二話 滅びを望む欠片


 長い旅路の果てに、アルタイルたちはようやくその姿を目にした。


 雲を突き抜け、天空へと伸びる白銀の塔――星織の塔。世界の中心にそびえ立つその存在は、古より天と地を結ぶ柱と呼ばれてきた。


 アルタイルは仲間とともに、塔へ向かう険しい道を進む。途中、空の裂け目から現れた魔物たちが襲い掛かるが、既に幾多の戦場を超えた彼らの前には通じない。息を合わせて撃退しながら、アルタイルの胸には少しずつ希望が芽生えていた。


 ――星織を再び織り直すことができれば、この壊れゆく世界も救えるのだ、と。


 だが、塔の周辺に近づくにつれ、その希望は不気味な光景に脅かされる。


 大地は大きく裂け、黒い深淵が口を開けている。空の裂け目は随分と広がっており、魔物の一群がまた、どこかへと降りていくのが見えた。


 塔を囲む空気は張りつめ、まるで世界そのものが悲鳴を上げているかのようだった。


 そのとき、光の欠片が強く脈打った。


『――星織を織り直し、世界を救うのです』


 欠片の声は、他の仲間たちの耳にも同じように届いているようだった。


「もうすぐ、旅が終わるんですね……」


 スピカが瞳を輝かせ、呟く。


「これが終わったら、都を立て直さないとな」


 ベガは塔を睨みつけるように見上げ、口元に不敵な笑みを浮かべる。


「………」


 プロキオンはただじっと、黙って塔を見つめていた。その横顔には、希望とも諦めともつかない影が差していて、アルタイルは胸の奥がざわつくのを覚えた。


 期待と不安を抱えながら、一行は星織の塔の巨大な扉を押し開ける。螺旋を描く階段を、ひたすらに上へ。


 彼らの目的地、最上階の祭壇がついに近づいていた。


 果てしなく続くかと思われた階段を登りきったとき、視界が一気に開けた。そこは塔の最上階――天と地を繋ぐ祭壇の間だった。


 荘厳な天蓋が高く広がり、壁一面には星織を模した文様が輝いていた。しかしその輝きは揺らぎ、ひび割れた大地や空の裂け目と同じく、世界の崩壊を映すかのように脆く不安定だった。


 祭壇の中央部には、床に六つの魔法陣が描かれている。どうやらそこに英雄が立ち、欠片に祈れば、星織の織り直しが始めるようだ。


 アルタイルは手首の光の欠片を見つめる。淡い光が鼓動のように脈打ち、早く星織を修復するよう急かしているようにも思えた。


「ここまで来たんだな……」


 アルタイルが静かに息をつき、仲間たちを見回す。


「ええ。でも……」


 スピカの声は震えていた。見上げる天井の向こうには、どんどん広がっていく空の亀裂が見える。星織の崩壊まで、もうそう長くないことを告げていた。


「さっさとやろう」


 ベガが鋭く言い放ち、魔法陣へと歩み出る。


 誰かに言われたわけでもないのに、自分の立つべき魔法陣が分かる。それぞれが儀式の位置に立とうとしたときだった。


「……誰も動くな」


 振り返れば、プロキオンがスピカを背後から拘束していた。土の魔力が床を隆起させ、彼女の足を絡め取る。身動きの取れなくなったスピカの喉元には、硬化した石の刃が突き付けられていた。


 スピカの顔からは血の気が引いていた。


「プロキオンさん! どういうつもりだ!?」


 アルタイルが声を荒げる。その隣でベガは、素早く火の大剣を構えていた。


「……星織を織り直したところで、この世界は何も変わらない。……腐ったものは、腐ったままだ」


 その瞬間、プロキオンの背後から紫ローブが二人、姿を現した。混沌信者(ケイオティスト)だ。


「欠片様。最後の準備が整いました。闇の同胞が果たせなかった役目――どうか、土の御身に成し遂げさせてください」


「欠片、様……?」


 混沌信者の言葉に、アルタイルは愕然とする。次の瞬間、プロキオンの声が低く歪んだ。


「……世界は一度、滅ぶべきだ。全てを壊し、純粋無垢な秩序を築く。そのためにオレは、この手で世界を砕く!!」


 プロキオンの瞳に宿るのは、もはや彼自身の意思ではなかった。土の欠片が持つ強大な自我が宿主の迷いを突き、完全に彼を支配していたのだった。


 ――仲間の裏切り。


 それはアルタイルたちをひどく動揺させたのだった。


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