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星織が消えた世界で、俺たちはまだ戦う  作者: 秋乃 よなが
第五章 闇の国の試練

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第十九話 四属性の戦い

 四人の紫ローブが、黒い結晶に照らされて浮かび上がる。その手元には、既に魔力が集まり始めていた。火、風、土、闇、それぞれ異なる属性の輝きが敵の周囲に滲む。


「敵も多属性か」


 アルタイルは光の剣を握り直し、短く息を吐く。


 次の瞬間、炎の柱が襲い掛かり、同時に土の槍が地面を突き上げた。アルタイルたちは散開し、互いに敵を選び取るように動いた。


「火の相手は私が!」


 スピカが声を上げ、火の魔法を操る紫ローブの前に躍り出る。


「土は任せな」


 ベガは地面を蹴り、土槍を放った紫ローブへと突撃した。


 残るは二人。風の魔法使いにはプロキオンが、闇の魔法使いにはアルタイルが向き合う。それぞれの間に一瞬の沈黙が落ちた。


「四対四だ。逃げ場はないな」


 アルタイルが低く呟くと、闇の魔法使いは嘲笑した。


「逃げるつもりなどない。お前たちの血を、混沌(ケイオス)への供物とするだけだ」


 言葉が終わると同時に、四つの戦場が同時に開かれた。水と火が衝突し、火と土がぶつかり、土壁が風の刃を砕き、光と闇が交差する。


 奈落の底に、轟音と閃光が交差する戦いが始まった。


 炎が迸る。闇の底を照らし出すほどの火柱が、スピカへと真っ直ぐに襲い掛かった。


「――っ!」


 咄嗟に水の槍をかざし、水の壁を生み出す。だが、灼熱の火炎が触れた瞬間、蒸気が爆ぜて視界を遮った。


 熱気と水気がぶつかり合い、白い霧が立ち込める。その中で、火の魔法使いの笑い声が響いた。


「水で火を防ぐだと? だが水は蒸発する。いずれ尽きるぞ!」


 その言葉通り、スピカの腕は震えていた。火の勢いが苛烈で、魔力の消耗も激しい。だが彼女は歯を食いしばり、冷静に状況を見極める。


「……正面から受けては消耗するだけ」


 湖底神殿での戦いが脳裏をよぎる。あのときの自分とは違う、とスピカは息を整えた。


 水の壁を一旦解き、足元に水の流れを作った。水は彼女の足を滑るように運び、霧の中を素早く移動させる。


「なに!?」


 不意を突かれた火の魔法使いが声を上げる。その横合いから、スピカが渦巻く水の槍を突き出した。火と水が衝突し、蒸気がさらに弾ける。


 熱と水気に挟まれながらも、スピカの瞳は強く輝いていた。


「私は負けない……!」


 火と水がせめぎ合い、戦場は白い霧に包まれていった。


 その傍を、轟音とともに大地がうねった。土の魔法使いが両腕を広げると、黒の結晶混じりの土壁が隆起し、ベガの前に立ちふさがった。


「土は大地そのもの! 我の防御は貴様の炎など通さぬ!」


 挑発の声に、ベガは薄く笑った。


「なら試してみなよ、アタシの火をな!」


 ベガの双眸――金の蛇のような瞳孔が爛々と輝く。次の瞬間、火の大剣を振り下ろした。ゴウッと火炎が迸り、土壁を飲み込む。しかし壁は崩れず、火の尾を受け止めた。


 土の魔法使いは勝ち誇ったように叫ぶ。


「無駄だ! いくら火を浴びせても、この大地は砕けん!」


「――なら、内側から焼き尽くしてやる」


 低い声とともに、ベガの大剣が赤熱を超えて白光を帯びた。


 刃が土壁に突き立つ。その瞬間、炎が溶岩のように染み込み、内部から爆ぜるように広がった。


 土壁全体が赤く染まり、ひび割れを起こす。


「なっ……ぐあああっ!」


 操っていた土が爆散し、土の魔法使いは悲鳴を上げた。


 吹き飛ぶ破片の中、ベガは悠然と歩み出る。


「防御がどうした?」


 火の大剣を肩に担ぎ上げ、ベガは笑った。


「燃え尽きれば同じことだろ?」


 その圧倒的な火力に、土の魔法使いの顔からは余裕が消えていた。


 同刻、プロキオンの傍を風が唸った。見えない刃が走り、その頬を掠める。浅い切り傷から血が一筋流れた。


鈍重(どんじゅう)な土魔法が、この風に追いつけるものか!」


 風の魔法使いが高らかに叫ぶ。彼の周囲には旋風が渦を巻き、足音すら掻き消していた。


 プロキオンは一歩も退かず、地面に手のひらを叩きつける。大地が隆起し、分厚い土の盾が目の前に立ち上がった。だが次の瞬間、風の刃がそれを紙のように切り裂く。


「……なるほど」


 プロキオンが呟くと同時に、両腕に纏わせた土のガントレットが淡く輝く。


「……速さはたしかに脅威。だが、大地は風を受け止め、形を変える」


 風の魔法使いが疾駆する。風の刃が次々と放たれ、プロキオンの身体を切り裂かんと迫る。しかしプロキオンは一歩も動かない。その代わり、足元の大地が反応していた。


 ザシュッ。風の刃が飛ぶ瞬間に、地面から土の柱が突き出し、刃を逸らす。


「な……!?」


「……速いだけでは不足。大地は常に、風を読んでいる」


 プロキオンの目が鋭く光る。そして次の瞬間、彼は動いた。


 大地を蹴り、全身を武器とするように突進。風の魔法使いが刃を放つが、すでに間に合わない。


 土のガントレットに覆われた拳が、渦巻く風を裂き、風の魔法使いの胸を捉えた。


「ぐ……っ!」


 轟音とともに風の魔法使いは吹き飛び、地面に叩きつけられる。プロキオンはゆっくりと拳を下ろした。


「……風はたしかに速い。だが、大地に根を張った者には、届かない」


 プロキオンが纏う圧倒的強者の気配に、風の魔法使いの身体は自然と震えていた。


 土と風、火と水がぶつかり合い、奈落の底そのものが震える。そしてアルタイルと闇魔法使いもまた、光と闇をぶつけ合いながら激しく火花を散らしていた。


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