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星織が消えた世界で、俺たちはまだ戦う  作者: 秋乃 よなが
第五章 闇の国の試練

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第十七話 奈落の縁にて

 都を出発したアルタイルたちは、火の国と土の国の境目にあるという大穴を目指す。乾いた大地を進むにつれて、やがて、草木が一つも生えない荒れた大地が見えてきた。


 動物や虫といった生命の気配は感じない。どこか薄ら寒い気配を感じながら、アルタイルたちは進む。すると、まるで地獄から聞こえる低い呻き声のような風の音とともに、その巨大な空間が顔を見せた。


 突如として荒れた大地にぽっかりと空いた大穴。吹き抜ける風は異様に冷たい。光をも通さない暗闇は生き物を丸ごと呑み込み、決して帰さない底なしの奈落のようだった。


「これが……闇の国に続くという大穴なのか……?」


 アルタイルはおそるおそる大穴を覗き込む。しかし当然ながら、底が見えるような深さではなかった。


 そのとき、ピリリと背筋に電気が走るような鋭い視線を感じた。


 アルタイルは反射的にその場から飛び退く。それと同時に彼が立っていた場所に土の槍が刺さっていた。


 槍が飛んできた方角からして、プロキオンの仕業ではない。だとすると――。


「紫ローブ!?」


 アルタイルたちの視線の先には、紫ローブの人物が三人いた。


 再び土の槍がアルタイルに襲い掛かる。それを前に出たプロキオンが土の壁で防いだが、間髪入れず、水魔法が土の壁を崩した。


 どうやら紫ローブは土魔法と水魔法の使い手らしい。アルタイルは光の剣を構え、紫ローブの一人に斬りかかった。


 ベガがアルタイルの攻撃に合わせて自分も火の大剣を振るう。しかし土と水の連携魔法に阻まれた。一方アルタイルの剣はもう一人の紫ローブへと向かう。紫ローブによって展開された土の壁を突き崩すように剣を突き立て、その切っ先から光魔法を放った。


「ぐふっ」


 光魔法が紫ローブの一人を吹き飛ばす。一瞬隙の生まれたアルタイルに紫ローブから土の槍が放たれるが、スピカの水魔法がそれを防いだ。


 互いの交戦に、しばしの間が生まれる。


「……お前たち、何者だ?」


「我らは混沌(ケイオス)を信仰する混沌信者(ケイオティスト)


 アルタイルの問いに、紫ローブの一人が答える。もう一人は、光魔法で吹き飛ばされた紫ローブのフォローに回っていた。


「混沌信者だと?お前たちの目的はなんだ!なぜ水の神殿や火の国を破壊しようとした!?」


「星織は偽物だ! 我らの混沌こそ、真なる守護者!」


 紫ローブの土魔法による地割れが、アルタイルの足元を崩す。体勢を立て直そうとするアルタイルに、容赦なく水の(つぶて)が襲い掛かる。それを防いだのは、ベガの火の一振りだった。


 蒸発で生まれた一瞬の霧を目隠しに、アルタイルは地面を蹴る。そうして土魔法を使う紫ローブを一人、斬り捨てた。


 プロキオンが前に出る。彼の両腕には、土の欠片から生まれたガントレットが煌めいていた。その装備でより強靭な肉体になったプロキオンは、自らの身体を武器として紫ローブへと突進する。


「く……っ」


 紫ローブが水魔法でプロキオンの突進を防ごうとするが、力負けし、そのまま弾き飛ばされた。


「ベガ! 頼む!」


「あいよ!」


 アルタイルの合図でベガが紫ローブへと斬りかかる。大剣の重量を生かした大きな一振りに、紫ローブは成す術もなく倒れた。


 残るはあと一人。土魔法の使い手のみだ。


「うおおおお!」


 状況的に不利だと悟ったのか、紫ローブは捨て身の攻撃で突進してきた。狙いはスピカだった。彼女は突進を防ごうと水の壁を展開しようとする。しかしそれよりも先に、プロキオンが地面から土の柱を突出させ、紫ローブを大穴の上空へと飛ばした。


「はっ、ははは……!混沌とともに…!」


 紫ローブは大穴へと落ちる間際、そう叫んだ。その声は不気味に大穴の中で反響し、ついには聞こえなくなったのだった。


「……一体なんだったんだ、あいつらは……」


 アルタイルは、紫ローブが落ちた大穴を覗き込む。そこは最初と変わらないまま、底の見えない漆黒の奈落が続いているだけだった。


「混沌信者なんて、また随分と物騒な名前だったね」


「その意図が何なのかは分かりませんが、文字通りこの世界に混沌をもたらそうとしているようです」


 ベガとスピカの言葉に、プロキオンも頷いた。


「とにかく今は闇の国に行こう。もしかしたらそこで、何か分かるかもしれない」


 あとは大穴をどう降りるか、それが問題だ。


「視界を明るくするのは、俺の光魔法かベガの火魔法でなんとかするとして…問題は足場だな」


「……土魔法で、階段を作ることはできるが……深さが分からない以上、強度に不安が残る」


「私も水で足場を作れそうですが……長くは持たないと思います」


「ならさ、スピカとプロキオンで交互に道を作るってのはどう?」


 ベガの提案に、スピカとプロキオンは顔を見合わせた。


「交互に作るのであればひとまず短距離の道を作れば良いですし、魔力も温存できますね」


「……やってみよう」


「決まりだな。ベガ、俺たちも交互に明かりを作ろう」


 大穴への進み方が決まり、アルタイルたちは今一度、大穴の中を覗き込んだ。


「万が一、魔物や混沌信者が出てきたらどうするんだい?」


「スピカとプロキオンさんは足場に集中。俺たちで突破しよう」


「分かった」


 漆黒の深淵から吹き上がる風は未だ冷たく、アルタイルたちの肌を突き刺すのだった。


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