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星織が消えた世界で、俺たちはまだ戦う  作者: 秋乃 よなが
第五章 闇の国の試練

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第十六話 星織への疑念


 アルタイルたちは一度、火の都へと戻る。溶岩の直撃を免れた都の広場で負傷者の手当が行われ、アルタイルたちもそこで戦いの傷や火傷のあとを診てもらった。


 そして今、改めて土の欠片を持っているらしい大男と向かい合う。


「アンタのおかげでアタシらも都も溶岩に呑まれずに済んだ。改めて礼を言うよ、ありがとう」


 ベガの差し出した手を、大男が握る。


「オレは、オレができることをしたまでだ」


「そうかい。じゃあ勝手に感謝しとくよ。――アタシはベガ。こっちはアルタイルとスピカだ」


「――オレは、プロキオン。もう分かっているかと思うが、土の欠片を持っている」


 だからこそ、あの溶岩を堰き止めるほどの土魔法が使えたのだ。このタイミングでプロキオンに出会えたことは奇跡に近かった。


「プロキオンさんはどうして火の国に?」


 スピカが尋ねる。スピカとプロキオンでは、倍ほど身体の大きさが違った。


「欠片を持つ者を探しにきた。土の大陸は隣にある」


「それでまずは火の国に来たんですね」


「そうだ」


 プロキオンはあまり話す方ではないらしい。訥々(とつとつ)とした話し方から、それが伝わった。


「すれ違わずに済んで良かった。俺たちも英雄と欠片を探して火の国まで来たんです」


 アルタイルは、風の英雄があとで合流することも含めて、ここまでの道のりを話した。


「……それは、大変だったな」


 労わるようなプロキオンの声音に、アルタイルは思わず胸が詰まった。れっきとした大人に労わられるということに、かつて彼に良くしてくれていた故郷の大人たちを思わせたからだ。


「さて、これであとは闇の欠片を見つけるだけだが――」


「あるとすればやはり闇の国、ですね」


 ベガの言葉をスピカが引き継ぐ。闇の国は地下国とも呼ばれ、他の国との交流がほとんどない国だった。


「噂じゃあ火と土の国の境目にある大穴から行けるって話だけどな。本当かどうか」


「……たぶん、本当だ。大穴があるのは、確認してきた」


 闇の国への正しい道のりは誰にも分からない。大穴が存在するというのであれば、噂に賭けてみるしかないようだ。


「闇の英雄と欠片を探して、星織の塔へ行く。この旅の終わりが見えてきたな」


 アルタイルが表情を明るくしてそう言う。その言葉に頷くスピカとベガとは裏腹に、プロキオンの表情は落ち着いたままだった。


「……星織を織り直すことが、本当に正解なのだろうか?」


「え?」


 考えもしなかった言葉に、アルタイルは激しく動揺する。


――『神殿は星織に直接関係はありません。あなたの旅は星織を織り直すことのはずです』。


そうして思い出されたのは、人の事情は顧みず、使命だけを頑なに全うしようとする光の欠片の言葉だった。あのとき胸に刺さった違和感が、形を持ち始める。


「……織り直しても、壊れたものは元に戻らない。地上に降りてきた魔物も、そのまま残るかもしれない」


「で、でも! これ以上魔物が降りてくることはなくなります!」


「……そうかも、しれない。だが、また国同士の争いが起きるだけなのでは?」


「っ、」


 プロキオンの言葉に、アルタイルは返す言葉が見つからなかった。


 実際、ほんの数年前までは火の国と風の国は小競り合いを起こしていたのを、アルタイルも噂で耳にしていた。火の国がより豊かな土地を求めて、国境を変えようとしたのだ。


 また歴史上では、闇の民を地下に追いやったのは、はるか昔の天の民だと言われている。星織に護られている中でも、戦いがないわけではなかったのだ。


「……すまない。余計なことを、言った」


「……いえ、プロキオンさんの言いたいことも分かります……。でも俺は……星織を織り直すことが平和に繋がると信じたいです……」


「……そう、だな」


 スピカもまたプロキオンの言葉が衝撃だったのか、その瞳を揺らしていた。ベガは何を思ったのだろうか。その表情はいつもと変わらないように見えたが、その目はどこか遠い記憶を思い出しているように見えた。


「何にせよ、アタシらが闇の国に行くことに変わりないよ。相手が誰であろうと、火の国を滅ぼそうとするやつは許さねぇ。噴火を起こした連中の正体も探らなきゃならないね」


 ベガの言葉に、アルタイルは我に返った。


「そうだ! あの紫ローブのやつら! 水の国でも湖底神殿を破壊したんだ!」


「水の国でも火の国でも、『混沌(ケイオス)とともに』という言葉をはっきり聞きました」


 なぜ彼らは破壊活動を行うのか。彼らが崇めるように言葉にしている『混沌』とは何なのか。今はまだ、謎ばかりである。


「闇の国で何か手がかりでも得られればいいんだけどね。ま、とりあえず今夜はもう休んで、明日の出発に備えようじゃないか」


 ベガの一言に、その場の全員が頷いた。しかしプロキオンが投じた一石は、いつまでもアルタイルの心の中に波紋を広げ続けているのだった。


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