15 盗まれたタイム自転車を追って 3
わたしたち4人は辻馬車に乗り、トリニティ大学へ急いだ。学内に入ると、おとぎ話に出てくるようなお城のような校舎が並んでいる。学生の姿は見当たらない。
芝の生えた広場の方へ行くと、遠目でも、非常に背が高いと分かる男が、1頭の馬に自転車をロープでつないでいた。よく見ると、わたしたちのタイム自転車だった。
「モリアーティだ!」
ホームズさんが、小声でいった。わたしは、こんなに早く見つかるなんて、運がいいと思った。
「君たちは、そこで、待っていなさい」
ホームズさんは、そっと、モリアーティに近づいた。モリアーティは、ホームズさんに背を向け、タイム自転車に念入りにロープをくくりつけていた。
「そこまでだな、モリアーティ!」
ホームズさんが声をかけると、モリアーティは、すぐさま、タイム自転車に飛び乗り、馬におもいっきり鞭を当てた。
「しまった! ワトソン、馬を止めてくれ!」
ホームズさんが叫んだ。馬は、タイム自転車に乗ったモリアーティをおもいっきり引っ張り、わたしたちめがけて走ってきた。ワトソンさんは、ピストルで、馬を脅して止めさせようとしたが、駄目だった。
「シンジ、写真を撮るんだ! モリアーティの!」
ホームズさんの叫び声が聞こえたので、わたしがすぐさま通訳すると、真司は慌てて、モリアーティの写真を撮った。
次の瞬間、ロープは切られ、馬だけが残り、モリアーティの姿は、タイム自転車もろとも、どこにもいなくなってしまった。
モリアーティは、タイムトリップした。怖れていたことが本当に起こってしまった。わたしと真司は、呆然としてその場に立ちすくんだが、真司が気を取り直していった。
「モリアーティは必ず帰ってくる」
「そうだとも、シンジ、奴は、必ず帰ってくるよ」
ホームズさんがいった。
「どうして? どうして、そんなことが分かるのよ?」
わたしの不安は募るばかりで、涙声でいった。
「アサコ、泣くことはないんだよ。私がそういったのは、決して、気休めではない。私は奴に関してある情報をつかんでいる。奴は、近々、ある組織的な犯罪をたくらんでいる」
「それって、キョウフノ……」
と真司がいいかけると、
「シンジ、ストップ!」
と、ホームズさんは真司が話すのをやめさせた。
「いっただろう、私は、事件に関しては、何も聞かないって」
「でも……」
真司はいいかけた言葉を飲み込んだ。
「大丈夫、対策は考えてある。そのために、シンジにポラロイドカメラを持参させたんだ」
「どういうことですか?」
「あのタイム自転車は、ある一定の場所に戻ってくるのだったね。ロンドンなら、ビッグベンの下だ」
「はい」
「だから、奴の写真を撮らせたのだ。これから毎日、奴がいつ戻ってくるのか見張らせる。私の頼もしい友人たち、ベーカー街イレギュラーズにね」
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