10 深夜の出発
深夜になって、わたしたちは、ハドソン夫人におやつと夕食のお礼をいうと、ホームズさんとワトソンさんに続いて、ベーカー街221Bを後にした。
わたしたちを乗せた荷馬車は、リージェントパークへ向かう。春といっても、真夜中のロンドンは肌寒かった。
深夜のリージェントパークは不気味な感じがする。月の光がほのかに照っていて、何とか周囲を見渡せる。注意して見たが、人は誰もいないようだ。
「さあ、始めよう」
ホームズさんとワトソンさんは、荷馬車に積んでいたタイム自転車を降ろした。
わたしたちは、ホームズさんの指示どうりにロープで荷馬車とタイム自転車をつないだ。
「いいかね、ちょうどいいスピードが出たところで、私がこのロープを切るからね」
と、ホームズさんは荷馬車に乗り込んだ。御者はワトソンさんがつとめる。わたしと真司は、タイム自転車に乗った。
ワトソンさんが馬に鞭を当てる。荷馬車が動き出す。二頭立てなので、すぐに加速する。マシンの赤い数字が点滅し始めた。
「切るぞ!」
ホームズさんが叫んだ。
切れたロープは、自転車のタイヤに絡まないように、真司が素早く回収した。
荷馬車は横にそれる。
わたしたちを乗せたタイム自転車は、しばらく真っ直ぐに走ると、やがて、時空の裂け目が現れ、たちまち、中に吸い込まれて行った。
ー☆ー
「消えた!」
荷馬車から、その様子を見ていたホームズとワトソンは、呆然としていた。
この時、木立の闇に紛れて、その様子を凝視している1つの不吉な黒い影があった。
それは、ホームズの宿敵、モリアーティ教授だった。




