4 小学5年生の麻子 3
麻子の転校初日は好奇の目もあって、男子も女子もクラスの大半の児童が彼女を取り囲んだが、彼女への興味がなくなると、ほとんどの女子は、また元どおり、自分たちの友だちと一緒にいるようになった。
しかし、男子は麻子をかわいいといって、いつまでもチヤホヤした。麻子は来る者は拒まずといった具合に、自分なりに自然に接していた。
どうやら、ほとんどの女子は、それがだんだん気に入らなくなったようだ。クラスの女子は、麻子の悪口を陰でこそこそいうことで、一致団結していった。
それでも、麻子には、おとなしいが、みどりやさつきという2人の友だちがいたので、クラスの女子たちが、陰で自分の悪口をいっているなんて、全く気づくことなく元気に過ごしていた。
クラスの女子たちの麻子への怒りが頂点に達したのは、彼女が転校してきて、1週間が過ぎた日のことだった。
その日の国語の時間は、作文を発表することだった。ほとんどの児童は、作文が苦手だった。でも、麻子のは、上手に書かれていたので、先生にすごくほめられて、男子からも歓声が上がった。
それが、女子たちの怒りに火をつけた。真司は女子たちの不穏な空気を感じ取ったので、女子たちを見張ることにした。
案の定、放課後、麻子とみどりとさつきを除くクラスの女子全員が集まった。リーダー的存在の黒崎ゆり香が口火を切った。
「わたし、思うんだけど、作文の上手な人って信じられない。文章が上手だっていうことは、口だってうまいっていえるんじゃない。心は見えないから、何とでもうまくいいつくろいことができるわ。これって、詐欺と一緒じゃない」
「そうだわ」
「そうね、そうよ。ゆり香ってすごい」
女子たちは、黒崎ゆり香のこの言葉に感心した。
「二宮さんは、どうせ、男子たちにだって、心でそう思わなくっても、うまいこといっているんだわ」
「そうね、絶対にそうよ。それに二宮さんってかわいいから、男子たちはみんなだまされているんだわ」
話は妙な方向に向かった。真司には、麻子のことをどうしてもそんなふうに見えなかった。
女子って、どうして、こんなにゆがんだ見方をするのだろう?
やきもち!
真司はピンときた。
これは、女子たちの麻子に対するやきもちなんだ。
「ねえ、二宮さんをこのままにしておいていいのかしら?」
黒崎ゆり香が意地悪そうな顔つきでいった。
「よくな~い!」
女子たちは全員声をそろえて叫んだ。
それから女子たちがヒソヒソ声になったので、黒崎たちが何を企んでいるのか、真司には聞こえなかった。
だから、あきらめて、翌日の4月XX日にタイムトリップすることにした。




