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もふもふ召喚士の自由気ままなVRMMO冒険記 ~可愛い魔物を集めていたら、いつの間にか最強の魔物国家ができていました~  作者: 黒海苔
第3章:魔物達の街

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第44話:勇者選定祭!

本日二話目です。

「たぶんじゃなくて、大丈夫って言ってよー!」


 私の声が街の中に響く。


 でも、シフォンちゃんたちは困ったように顔を見合わせるだけだった。


「いや、だってまだ詳細読んでないし……」


「じゃあ読もう!」


「切り替え早いね!?」


「だって大事だよ! 私が討伐されるかもしれないんだよ!」


「たぶんされないと思うけどね……」


「その『たぶん』が怖いの!」


 ということで、来訪者用の区画についての話はいったん置いて、みんなで《勇者選定祭》の詳細を確認することになった。


 私はさっきまで開いていた《ログ》を閉じて、《イベント》の項目を探す。


「あった!」


 そこには、今までなかった新しい項目が追加されていた。



 《大型イベント》


 《勇者選定祭》



「これだね」


「うん!」


 さっそく開いてみる。


 最初に表示されたのは大会の細かなルールではなく、そもそもこのイベントが開催されることになった理由だった。



 《――《勇者選定祭》開催にあたって――》


 《異邦人たちがこの世界へ降り立ってから、間もなく一年が経とうとしています》


 《フィオル王国国王は、この一年の間に異邦人たちがどれほどの力を身につけたのか、その成果を自らの目で確かめたいと考えました》


 《そこで王国は、各地で活躍する異邦人たちを広く招集し、その力を競う大規模な祭典《勇者選定祭》を開催します》


 《数多の異邦人の中から最も優れた者一名を、《勇者》として選出します》



「……一年?」


 私は思わず首を傾げた。


「もうそんなに経つの?」


「ゲームの中では、もうすぐ一年だね」


 シフォンちゃんが答える。


「あー、そっか」


 この世界は現実よりずっと時間が早く進む。


 私はみんなよりかなり遅れて始めたから、あんまり実感はないけど。


「私、まだ一年もいないよ?」


「ユズちゃんは途中参加だからね」


「じゃあ私は一年分強くなってない!」


「その割にレベル百二十一なんだけど」


「それはグラちゃんたちのおかげだよ!」


「それを普通みたいに言うの、ユズちゃんくらいだと思う」


「?」


 何か変だったかな。


 そのまま続きを読んでいくと、次の項目を見たシフォンちゃんが「あ」と声を上げた。


「ユズちゃん」


「なに?」


「やっぱり大丈夫そう」


「ほんと!?」


 私はすぐにシフォンちゃんの方を見る。


「どこ!?」


「ここ」


 指さされた部分を確認する。



 《本イベントは、すべてのサーバーにて開催されます》


 《各サーバーごとに一名の《勇者》を選出します》



「全サーバー?」


「うん」


 シフォンちゃんが頷く。


「日本サーバーだけのイベントじゃないみたい」


「アメリカとかでも?」


「たぶん同じ時期に開催されるんじゃないかな」


「それがどうして私が大丈夫になるの?」


「だって」


 ハルカちゃんが横から入ってくる。


「もし今回の勇者が会いに行く《魔王》がユズちゃんだったら、他のサーバーの勇者はどうするの?」


「……え?」


 少し考える。


 アメリカサーバー。


 そこで選ばれた勇者。


 そして、日本サーバーにいる私。


「会えない!」


「そういうこと」


「ユズちゃんは日本サーバーにしかいないプレイヤーだからね」


 エリスちゃんも続ける。


「全サーバーで同じように勇者を選ぶなら、その先に用意されている攻略対象も、それぞれのサーバー側に存在すると考える方が自然かな」


「じゃあ……」


 私は期待しながら聞く。


「私じゃない?」


「たぶん」


「またたぶん!」


「でも、かなり可能性は低くなったよ」


「それじゃまだ安心できないよー!」


「ユズ」


 ミオちゃんがぽつりと言う。


「魔王城ない」


「ない!」


「なら違う」


「そっか!」


 今度こそ安心した。


 私には魔王城なんてない。


 あるのは、みんなで暮らしている場所だけだ。


「よかったー!」


 私はシロにぎゅっと抱きつく。


「わふっ?」


「シロ! 私、討伐されないみたい!」


「わふぅ」


『そもそも誰もお主を討伐するなどとは言っておらぬじゃろうに』


「でも《魔王》って書いてあるんだもん!」


『称号ではないか』


「コハクもさっき魔王って言ってたじゃん!」


『それとこれとは別じゃ』


「むー!」


 でも、とりあえず命の危機はなさそうだ。


「じゃあ、普通にイベント見よ!」


「さっきまでとの温度差すごいなあ……」


 シフォンちゃんが苦笑していた。



 ◇



「次は予選についてだね」


「予選?」


「いきなり本戦じゃないみたい」


 シフォンちゃんたちと一緒に、さらに下へスクロールしていく。


 そこには、かなり長い説明が書かれていた。



 《第一次予選》


 《参加者を対象とした、期間制のレーティングバトルを実施します》


 《参加者は全員、同一の初期レートから開始します》


 《対戦の勝敗、および対戦相手とのレート差に応じてレートが増減します》


 《開催期間中に行える対戦数には上限があります》


 《第一次予選への参加は、メニュー内《イベント》から行うことができます》


 《参加者は試合開始時、大会専用の戦闘空間へ一時転移します》


 《試合終了後は、参加前にいた場所へ自動的に帰還します》


 《開催期間終了時点におけるレートランキング上位8000名が、第二次予選へ進出します》



「八千人!?」


 思わず大きな声が出た。


「多っ!」


「いや」


 エリスちゃんがすぐに首を振る。


「たぶん、かなり少ないよ」


「八千人なのに!?」


「このゲーム、そもそものプレイヤー人口が桁違いだからね」


「あ」


 そうだった。


 このゲームの機械は神様が世界中のみんなに配ったものだ。


 やるかどうかは自由だけど、それでも遊んでいる人はものすごく多い。


「レートって、いっぱい戦った人が有利なの?」


「それを防ぐために対戦数にも上限があるみたいだね」


 エリスちゃんが説明してくれる。


「単純に何勝したかだけじゃなくて、相手とのレート差でも増え方や減り方が変わるみたい」


「どういうこと?」


「例えば、自分よりレートが高い相手に勝てば大きく上がる。逆に、自分より低い相手に負けたら大きく下がる。そういう形式だと思う」


「おー」


「だから、ただ数をこなせばいいわけじゃない」


 ライラちゃんも頷く。


「限られた試合数の中で、安定して勝つ必要があるね」


「大変そう……」


 私は出ないから、ちょっと他人事だ。


 それよりも気になったのは別のところだった。


「これ、どこにいても参加できるの?」


「みたいだね」


 シフォンちゃんが説明文を指さす。


「イベントメニューから参加すると、その試合の間だけ専用の空間に飛ばされるんだと思う」


「終わったら?」


「元いた場所へ戻ってくる」


「便利!」


 つまり、わざわざどこかの町に集まったりしなくていいらしい。


 森の中にいても、町にいても、自分の番になったらイベント用の場所へ移動して、終われば元の場所へ戻ってこられる。


「本戦会場っぽい場所で戦えるみたい」


 ハルカちゃんが説明を読む。


「王都の闘技場を再現した専用フィールドだって」


「本物じゃないの?」


「一次予選用に作られたイベント空間みたいだね」


「おー!」


 なんだか面白そうだ。


「その次が……」


 ハルカちゃんが続きを読む。


 そして。


「うわ」


「どうしたの?」


「ユズちゃん、こっちはもっとすごいよ」


「?」



 《第二次予選》


 《第一次予選通過者8000名を、1000名ずつ8つのグループへ分けます》


 《各グループは、大会専用異空間に構築された10km×10kmの専用フィールドにてバトルロイヤルを行います》


 《8つの専用フィールドは、それぞれ異なる地形構成を持ちます》


 《森林、平原、山岳、砂地、水辺、遺跡など、複数の地形が各フィールド内に存在します》


 《戦闘可能区域は、時間経過によって段階的に縮小します》


 《戦闘可能区域外に留まり続けた場合、継続ダメージが発生します》


 《各グループの生存者が8名となった時点で、そのグループの第二次予選を終了します》


 《生存者8名に本戦への進出権が与えられます》


 《本戦進出者――計64名》


 《第二次予選終了後、参加者は予選開始前にいた場所へ自動的に帰還します》



「……」


 私は一回読む。


 もう一回読む。


「千人?」


「千人」


「一緒に戦うの?」


「そうみたい」


「しかも十キロ?」


「縦も横も十キロだね」


「広っ!?」


 さっきより大きな声が出た。


 そんなに広いところに千人。


 ちょっと想像できない。


「しかも八つ全部、地形の作りが違うんだ」


 ライラちゃんが興味深そうに画面を見ている。


「完全に一種類の地形ってわけじゃないみたいだけど、森林が多い場所とか、山が多い場所とか、かなり違いはありそう」


「じゃあ森だったら隠れやすそう!」


「そうだね。逆に開けた場所なら遠距離攻撃が強くなるかもしれない」


「水がいっぱいある場所を引いたら?」


「泳ぎや水中移動が得意な人には有利かもね」


「おー!」


 同じ千人で戦うのに、どのフィールドに入るかでも全然違うらしい。


「でも」


 ハルカちゃんが少し楽しそうに笑う。


「これ、隠れてればいいってわけでもないね」


「なんで?」


「ここ」


 指さされたのは、戦闘可能区域についての説明だった。


 時間が経つごとに戦える場所がどんどん狭くなって、外に残っているとダメージを受け続けるらしい。


「じゃあ、隠れてても移動しないとダメなの?」


「そういうこと」


「最後はみんな近くなる?」


「たぶんね」


「怖っ!」


 最初は十キロ四方もあるのに、時間が経つごとに少しずつ戦える場所が狭くなっていく。


 つまり、最初に誰とも会わなくても、最後まで残ろうと思ったら、どこかでは他の人たちと遭遇しやすくなる。


「でも、全員倒す必要はない」


 ミオちゃんが言った。


「八人まで残ればいい」


「あ、そっか」


「撃破数は通過条件には書いてないね」


 エリスちゃんも確認する。


「じゃあ、一人も倒してなくても最後の八人なら本戦に行けるの?」


「ルール上はそうなると思う」


「おー」


 なんだか、ただ目の前の相手を全部倒せばいい大会ではないらしい。


 逃げる人。


 隠れる人。


 積極的に戦う人。


 安全そうな場所を先に取る人。


 地形を利用する人。


 いろんな戦い方がありそうだ。


「クロネとか、こういう形式かなり得意そう」


 シフォンちゃんが言った、その直後だった。


「……あ」


「どうしたの?」


「クロネからクランチャット来た」


「クロネちゃん!?」


 シフォンちゃんがメニューを確認する。


「なんて?」


「『出る』」


「それだけ!?」


「それだけ」


 するとミオちゃんも、当然のように言った。


「私も出る」


「ちょっと待って!」


 シフォンちゃんがすぐ止める。


「クロネに返信する前に、なんでミオまで即決してるの!?」


「面白そうだから」


「やっぱり!」


 少しして、シフォンちゃんの前にまた何か届いたらしい。


「……クロネからもう一回来た」


「今度は?」


「『二次予選楽しそう』」


「クロネちゃんも!?」


「千人バトルロイヤルの説明、絶対ここまで読んだね」


「戦闘狂が二人になった……」


「前から二人だったと思う」


 ハルカちゃんの言葉に、誰も否定しなかった。



 ◇



「じゃあ、この千人の中から八人だけが残って……」


「八グループあるから、全部で六十四人だね」


「その六十四人が?」


「本戦」


 続きを見る。



 《本戦》


 《第二次予選を突破した64名による、1対1のトーナメント戦を実施します》


 《本戦は、フィオル王国王都アステリアに存在する《王立大闘技場》にて開催されます》


 《本戦優勝者一名を、日本サーバーにおける《勇者》として認定します》



「今度は本当に王都でやるんだ」


「そうみたいだね」


「一次予選と二次予選は偽物の場所なのに?」


「偽物っていうか、イベント用の専用空間ね」


 エリスちゃんが苦笑する。


「本戦だけは実際の王都で開催するみたい」


「じゃあ本戦まで残った人、王都まで行かないとダメなの?」


「いや」


 シフォンちゃんが続きを指さした。



 《本戦出場者には、大会当日、メニュー内《イベント》より本戦会場への専用転移が開放されます》


 《専用転移を使用した本戦出場者は、王立大闘技場内の選手専用区域へ直接転移します》


 《この転移は大会参加のための一時転移であり、王都内の一般区域へ移動することはできません》


 《大会参加終了後、対象者は転移前にいた場所へ自動的に帰還します》



「おー」


 私は納得する。


「じゃあ王都まで歩かなくていいんだ」


「そういうことだね」


「便利!」


「ただし、その方法で来たら王都観光はできないみたいだけどね」


「えっ」


 私は思わず反応した。


「観光できないの?」


「大会会場に直接飛んで、終わったら元いた場所に戻されるみたいだから」


「じゃあ王都のお店も見れない?」


「見られない」


「屋台も?」


「会場内にあれば別だけど、王都の街中には出られないね」


「それはもったいない!」


「ユズちゃんは出場者じゃないから関係ないでしょ」


「あ、そっか」


 でも、せっかく王都まで行くなら観光したいのに。


 試合だけして帰るのは、なんだかもったいない気がする。


「一次予選はレート戦。二次予選は大規模バトルロイヤル。本戦は一対一」


 エリスちゃんが改めて整理する。


「かなり違う種類の強さを試される形式だね」


「確かに」


 シフォンちゃんも頷く。


「一次予選では、限られた試合数の中で安定して勝てるか」


「二次予選では?」


「地形や他のプレイヤーの動きを見ながら、千人の中で最後の八人まで生き残れるか」


「本戦は?」


「一対一で勝ち切れるか」


「全部できないと勇者になれないんだ」


「そういうことになるね」


「大変だー」


 私は素直にそう思った。


 そして、ふと気づく。


「でも、なんでそこまでして勇者を決めるの?」


 王様が、私たちがどれくらい強くなったか見たいというのは分かった。


 でも、ただ強い人を決めるだけなら、わざわざ《勇者》なんて名前じゃなくてもよさそうな気がする。


「それは……たぶん、この先」


 シフォンちゃんが画面を下へ送る。


「あった」


 そこには、


 《勇者への褒賞》


 と書かれていた。



 《本戦優勝者には、特別称号《勇者》および王国からの褒賞が授与されます》


 《また、《勇者》には王家が保有する《魔王城》へ至るための地図が与えられます》



「魔王城!」


 思わず反応した。


「また出てきた!」


「落ち着いて、ユズちゃん」


「だって魔王城って!」


「続きを読もう」


「う、うん……」



 《各地に残る伝承によれば、《魔王》は《邪神》について何らかの情報を有している可能性があるとされています》


 《選ばれた《勇者》には《魔王城》へ赴き、《魔王》との接触を果たすことが期待されます》



「……」


 私はじっと読む。


「討伐って書いてない」


「書いてないね」


「接触?」


「会って話を聞けるなら、それでもいいってことじゃない?」


 エリスちゃんが答える。


「もちろん、相手が敵対的なら戦闘になる可能性はあるだろうけど」


「なるほど……」


 魔王を倒すためじゃなくて。


 魔王が邪神について何か知っているかもしれないから、そこへ向かうための地図を勇者に渡す。


 そういうことらしい。


「ほら」


 シフォンちゃんが笑う。


「やっぱりユズちゃんじゃなかったでしょ?」


「ほんとだ!」


 私は大きく頷く。


「私、魔王城に住んでない!」


「そこ?」


「しかも全サーバーで勇者が選ばれるんだよね?」


「うん」


「じゃあ、それぞれのサーバーに魔王城があるんだ!」


「たぶんそうだろうね」


「じゃあ私じゃない!」


「そういうこと」


「よかったー!」


 今度こそ、本当に安心した。


「ユズの場所」


 ミオちゃんがぽつりと言う。


「地図なくても、もう配信でかなり場所知られてる」


「……」


 私は止まる。


「それはそれで嫌かも!」


「でも正確な場所までは簡単に来れないよ」


 ライラちゃんがフォローしてくれる。


「クロネが来た」


「クロネちゃんは普通じゃないから!」


「それはそう」


「本人に聞かせたいなあ」


 ハルカちゃんが笑っている。


 あとでクロネちゃんが来たら言っておこう。


 普通じゃないって。



 ◇



「でも、これ……かなり大きな情報だよね」


 シフォンちゃんが、もう一度イベント詳細を見る。


 さっきまで少し楽しそうだった表情が、今度は真面目になっていた。


「そうなの?」


「うん。今まで《邪神》について、ほとんど何も分かってなかったから」


「あー」


 言われて思い出す。


 少し前にも、みんなグラちゃんに邪神のことを聞いていた。


 でもグラちゃんは、


『知らぬ』


 って言っていた。


 絶対何か知ってそうだったけど。


「これまでは、邪神を倒せって最初に言われただけで、そこまでどう進めばいいのかすら分かってなかった」


 エリスちゃんも続ける。


「でも今回、初めて具体的な道筋らしいものが出てきたね」


「勇者になる」


「うん」


「魔王城に行く」


「うん」


「魔王に会う」


「そこから邪神の情報を得る」


 シフォンちゃんが頷く。


「少なくとも、そういう流れを想定してるようには見えるかな」


「へー」


「反応薄い!」


「だって」


 私は首を傾げる。


「私、邪神倒しに行かないし」


「そうだった……」


 前にも言った。


 邪神を倒すより、可愛い魔物にたくさん会いたい。


 そっちの方が私には大事だ。


「でも」


 ミオちゃんが聞く。


「大会は?」


「見る!」


「出ない?」


「出ない!」


 即答した。


「早いね!?」


 シフォンちゃんが驚く。


「だって私、勇者になりたいわけじゃないもん」


「レベル百二十一なのに?」


「関係ないよ!」


「INT六百三十」


「それも関係ない!」


「魔王」


「もっと関係ないよ!」


 むしろ勇者と反対側じゃないのかな。


「でも、みんなが出るなら応援したい!」


「私は出る」


 ミオちゃんが言う。


「私も興味あるな」


 アカネちゃんも乗り気だ。


「クロネはもう確定みたいなものだし」


 シフォンちゃんがクランチャットを見ながらため息をつく。


「他のみんなは?」


「私はちょっと考えるかなー」


 ハルカちゃんが答える。


「一次予選まで時間あるんでしょ?」


「そうだね。まだ受付も始まってないし」


「じゃあ、それまでに決めればいいよね」


「うん」


 大会かあ。


 千人で戦うところはちょっと見てみたい。


 ミオちゃんやクロネちゃんがどう戦うのかも気になる。


「そういえば」


 私は画面を見ながら首を傾げた。


「予選って、見る方はどうするの?」


「あ、それも書いてある」


 エリスちゃんが少し下を指さす。



 《《勇者選定祭》では、メニュー内《イベント》より観戦機能を利用できます》


 《観戦を選択したプレイヤーは、専用の観戦空間へ一時転移します》


 《観戦空間では大会映像、各試合情報、参加者情報などを閲覧することができます》


 《観戦空間への入場人数に制限はありません》


 《観戦終了後は、入場前にいた場所へ自動的に帰還します》



「おー!」


「これなら王都まで行かなくても試合は見られるね」


「二次予選も?」


「八フィールド分、観戦できるようになるんじゃないかな」


「じゃあここにいながら、みんなの試合見られるんだ!」


「そういうことだね」


「便利!」


 それなら、予選を見るだけなら街から動く必要もないらしい。


 でも。


「本戦もここから見られるの?」


「映像だけなら見られるみたい」


「映像だけ?」


「本戦は実際の王都でやるからね」


 さらに下には、本戦観戦について別の説明があった。



 《本戦の試合映像についても、観戦空間から視聴することができます》


 《ただし、王都アステリア《王立大闘技場》における現地観戦を希望する場合、一般観客は観戦チケットが必要となります》


 《一般観戦チケットは後日、抽選方式にて受付を開始します》


 《抽選に当選しなかった場合でも、観戦空間から本戦を視聴することができます》



「チケット?」


「闘技場の客席には限りがあるからだろうね」


 シフォンちゃんが言う。


「見たい人全員を入れるのは無理だろうし」


「抽選なんだ……」


「でも外れても試合自体は見られるよ?」


「うん」


 それはそうなんだけど。


 せっかくなら。


「できれば本物の会場で見たいなあ」


「じゃあ受付が始まったら申し込めばいいんじゃない?」


「うん! 申し込む!」


 当たるかどうかは分からないけど、とりあえず応募してみよう。


 そんなことを考えながら、さらにイベントページの下を見ていく。


「あ」


「どうしたの?」


「これ」


 私は最後の方に表示されていた文字を指さした。



 《日本サーバー本戦開催地》


 《フィオル王国 王都アステリア》



「王都?」


「うん。本戦はアステリアでやるみたいだね」


「アステリア……」


 名前は聞いたことがある。


 でも、私は行ったことがない。


「王都って大きい?」


「かなり大きいよ」


「人もいっぱい?」


「もちろん」


「お店も?」


「いっぱいあると思う」


「珍しいものも?」


「たぶんね」


「珍しい魔物も?」


「そこは分からないけど……」


「…………」


 試合だけを見るなら、観戦用の空間からでも見ることができる。


 本戦に出る人だって、イベント用の転移を使えば王都まで行く必要はない。


 でも。


 それだと王都の街には出られない。


 せっかく初めて王都を見るなら、私はちゃんと自分で行ってみたい。


 大きなお祭り。


 たくさんの人。


 たくさんのお店。


 美味しいものもいっぱいありそうだし、もしかしたら、まだ見たことのない魔物だっているかもしれない。


 なんだか急に楽しみになってきた。


「……行きたい!」


「やっぱり?」


「うん!」


 私はイベントページに表示された《王都アステリア》の文字を見ながら、大きく頷いた。


「王都、行ってみたい!」

面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

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