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もふもふ召喚士の自由気ままなVRMMO冒険記 ~可愛い魔物を集めていたら、いつの間にか最強の魔物国家ができていました~  作者: 黒海苔
第3章:魔物達の街

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第45話:次は王都へ!

本日三話目

「王都、行ってみたい!」


 イベントページに表示された《王都アステリア》の文字を見ながらそう言うと、シフォンちゃんが少しだけ笑った。


「うん。行くのはいいと思うよ」


「じゃあ行こう!」


「早い早い」


 すぐに立ち上がろうとした私を、エリスちゃんが止める。


「ユズちゃん。別に今すぐ本戦が始まるわけじゃないからね?」


「え?」


「まだ参加受付も始まってないし、その後に第一次予選と第二次予選があるんだよ」


「あ」


 そうだった。


 本戦の前に、まず期間制のレート戦で八千人まで絞って、それから千人ずつのバトルロイヤルがある。


「じゃあ、王都に行くのはまだ先?」


「本戦を現地で見るのが目的なら、少し先になるね」


 シフォンちゃんがイベントページを確認する。


「予選はイベントの観戦空間から見られるし、本戦も映像だけならどこからでも見られるからね。王都まで行くなら、本戦に合わせるのが一番よさそう」


「そっかー」


 ちょっと残念。


 もう王都へ行く気になっていたのに。


「でも」


「うん?」


「それまでに準備できるよ」


「準備!」


 それなら楽しそうだ。


「王都って何持っていけばいい?」


「旅行みたいになってる」


 ハルカちゃんが笑う。


「だって行ったことないもん!」


「まあ、ユズちゃんの場合は本当に観光になりそうだけどね」


「観光する!」


「大会は?」


「見る!」


「勇者は?」


「ならない!」


「即答だねえ」


 何回聞かれても、そこは変わらない。


 私は勇者になりたいわけじゃないし、邪神を倒しに行くつもりもない。でも、王都には行ってみたい。


 大きなお祭りも見てみたいし、みんなが大会に出るなら応援もしたい。


 それに、まだ見たことのない魔物がいるかもしれない。


 それが一番楽しみだった。



 ◇



「そういえば」


 私は《暁ノ華嵐》のみんなを見回した。


「みんなは大会に出るの?」


「私は出る」


 最初に答えたのはミオちゃんだった。迷いがない。


「やっぱり!」


「面白そうだから」


「千人で戦うところ?」


「そこも」


「クロネちゃんも出るって言ってたよね」


「うん」


 シフォンちゃんがクランチャットを確認する。


「ずっと『出る』って言ってる」


「クロネちゃんらしい!」


「私は出るつもりだ」


 アカネちゃんもそう言って、腰の刀に軽く手を添えた。


「一対一まで行けるなら面白そうだからな」


「アカネちゃんも!」


「ただ、まずはレート戦を抜けないとな」


「アカネなら普通に行きそう」


 ミオちゃんが言う。


「お前に言われると変な感じだな」


「そう?」


「そうだ」


 二人とも、もう戦う気満々みたいだ。


「シフォンちゃんは?」


「私は……まだ迷ってるかな」


「出ないの?」


「出ないとは決めてないよ。でも、今回は個人戦だからね」


 シフォンちゃんは少し考える。


「私の戦い方って、周りの状況とか精霊との相性にも左右されるし、第二次予選のフィールドをどう使うかでもかなり変わりそうだから」


「そっか」


「まあ、一次予選まで時間はあるし、もう少し考える」


「ハルカちゃんは?」


「私は観戦寄りかなー」


 ハルカちゃんが両手を頭の後ろで組む。


「千人バトロワは見てる方が絶対面白いでしょ」


「出るより?」


「私はね。隠れながら生き残るのもできそうだけど、それより面白い人探して見てたい」


「ハルカちゃんっぽい!」


「褒められた?」


「たぶん!」


「たぶんかー」


 次はセレナちゃんを見る。


「私は今回は観戦かな」


「出ない?」


「うん。回復とか結界は得意だけど、一人で最後まで勝ち抜く大会だと少し相性が悪そうだし」


「なるほどー」


「でも応援は全力でするよ」


「一緒に応援しよう!」


「うん」


 セレナちゃんと握手する。


「ライラちゃんは?」


「私は迷ってる」


「シフォンちゃんと同じ?」


「ちょっと違うかな」


 ライラちゃんが少し考えてから答える。


「バトルロイヤルだけなら、私の索敵と隠密はかなり使えると思う。でも本戦まで行ったら一対一だから」


「あー」


「自分がどこまで行けるか試してみたい気持ちはあるけど、出るかはまだ決めてない」


「じゃあ考え中!」


「そういうこと」


「エリスちゃんは?」


「私はたぶん出ないかな」


 エリスちゃんはすぐに首を振った。


「戦闘そのものが専門じゃないし、今回は観戦と情報整理に回った方が楽しめそう」


「大会のこといっぱい調べる?」


「たぶんね。ルールとか参加者とか、かなり情報が出ると思うから」


「エリスちゃん得意そう!」


「そういうことなら任せて」


「モモカちゃんは?」


「私は観戦です!」


 モモカちゃんは元気よく答えた。


「本戦に合わせて王都へ行くなら、食べ物のお店も絶対増えると思うんですよ!」


「それ!」


「ユズちゃん!」


「モモカちゃん!」


 思わず二人で手を取り合う。


「お祭り料理!」


「限定料理!」


「屋台!」


「食べ歩き!」


「楽しそう!」


「ですよね!」


「……同じ方向の人がいた」


 ハルカちゃんが呟く。


「モモカまで完全に観光側じゃない」


 シフォンちゃんも苦笑している。


「でも大事だよ!」


「そうです!」


「はいはい」


 そんな感じで、今のところ確実に参加するのは、ミオちゃん、アカネちゃん、それからクロネちゃん。


 シフォンちゃんとライラちゃんはまだ考え中。


 ハルカちゃん、セレナちゃん、エリスちゃん、モモカちゃんは観戦寄り。


 全員が大会に出るわけではないみたいだ。


「なんか安心した」


「何が?」


「みんな出るなら、応援するの大変そうだったから!」


「そこ?」


「だっていっぱい試合あるでしょ?」


「確かに、本戦まで全員残ったら見る側も忙しいだろうけど」


「じゃあ三人くらいなら大丈夫!」


「いや、まだ三人とも本戦に行けるって決まったわけじゃないからね?」


「行けるよ!」


「信頼が重いなあ……」


 シフォンちゃんが笑った。


「そういえばユズちゃん」


「なに?」


「本戦の観戦チケット、抽選が始まったら申し込むんだよね?」


「もちろん!」


 私は大きく頷く。


「せっかく王都まで行くなら、本物の闘技場で見たい!」


「受付はまだ先みたいだから、忘れないようにね」


「大丈夫!」


「ユズちゃんの『大丈夫』、ちょっと不安なんだよなあ」


「忘れないよ!」


 ……たぶん。


 いや、今回はちゃんと覚えておこう。



 ◇



「ユズは本当に出ない?」


 ミオちゃんが改めて聞いてきた。


「出ないよ!」


「レベル百二十一」


「関係ない!」


「INT六百三十」


「それも関係ない!」


「《魔王》」


「もっと関係ない!」


「強いのに」


「強いかどうかと出たいかどうかは別だよ!」


「そう?」


「そう!」


 私は別に一番強くなりたいわけじゃない。


 勇者にもなりたくない。


 そもそも。


「私、戦うためにこのゲーム始めたわけじゃないもん」


「じゃあ何のため?」


 ハルカちゃんが聞く。


「可愛い魔物に会うため!」


「知ってた」


「即答」


「ブレないねえ」


「だって大事だよ?」


 私がこのゲームを始めた理由は、最初からそれだ。


 シロに会って、ユキに会って、コハクに会って、グラちゃんにも会った。それから、もっともっとたくさんの魔物たちに会った。


 だから、これからもそれでいいと思う。


「王都にも可愛い魔物いるかな?」


「結局そこに戻るんだ」


「いるかもしれないよ!」


「まあ、王都ならいろんな場所から人が集まるだろうし」


 ライラちゃんが言う。


「珍しい従魔とか連れてるプレイヤーはいるかもね」


「ほんと!?」


「可能性はあると思う」


「絶対行く!」


「さっきから行くこと自体は決まってるでしょ」


「あ、そっか」


 楽しみなことが増えた。



 ◇



「じゃあ、ユズちゃんは誰と王都行くの?」


「誰と?」


「シロたち全員連れて行く?」


「もちろん!」


 私はすぐそばにいたシロを抱きしめる。


「シロと、ユキと、コハク!」


「わふっ!」


「にゃあ」


『妾も当然のように数えられておるのう』


「行かないの?」


『別に行かぬとは言っておらぬ』


「じゃあ行こう!」


『……まあ、王都とやらには少し興味もあるからの』


「やった!」


 これで三人は決まり。


「グラちゃんも連れてく?」


「それは無理じゃない?」


 シフォンちゃんが即座に言う。


「聞いてみないと分からないよ!」


「たぶん分かると思うけど……」


「グラちゃーん!」


 少し離れたところで寝そべっていた大きな黒銀の竜へ向かって声をかける。


 金色の目がゆっくり開いた。


『何だ』


「今度、王都行くんだけど一緒に行く?」


『行かぬ』


「早い!」


『人の都になど興味はない』


「まだお祭りあるって説明してないよ?」


『なおさら興味はない』


「美味しいものあるかも!」


『いらぬ』


「強い人いっぱい来るかも!」


『だから何だ』


「むー」


 全然乗ってこない。


「グラちゃんもたまには外出ればいいのに」


『我はここにいる』


「じゃあお留守番?」


『好きに呼べ』


「分かった!」


 グラちゃんは街に残ることになった。


「じゃあクロエたちは?」


 近くにいたクロエたちの方を見る。


「王都まで行く?」


「申し訳ありませんが、私はここに残らせていただければと」


 クロエが頭を下げる。


「街のこともありますので」


「そっか」


「わたくしも残りますわ」


 ネフィエラも続く。


「来訪者用の区画について、進めたいこともございますから」


「私も!」


 メリエルが手を上げる。


「みんなの食べ物もあるしね」


「そっかー」


 ちょっと残念。


 でも、今の街にはたくさんの魔物たちが暮らしている。


 誰かが残っていた方が安心なのも分かる。


「私がいなくても大丈夫?」


「もちろんです」


 クロエは迷わず答えた。


「ユズ様が王都へ向かわれている間も、ここは私たちがお守りします」


「ほんと?」


「はい」


「建築も進めておきますわ」


 ネフィエラが微笑む。


「お戻りになる頃には、来訪者を迎える場所も少し形になっているかもしれません」


「おー!」


「新しいご飯も考えておくね!」


 メリエルも楽しそうに言う。


「ほんと!?」


「うん!」


「じゃあ楽しみにしてる!」


 なんだか、私が王都へ行っている間にも街はどんどん変わっていきそうだ。


 最初は私が何かしなきゃ、と思うことも多かった。でも今は、クロエたちがいて、ネフィエラたちがいて、メリエルたちもいる。


 みんながそれぞれ、自分たちで考えて動いてくれている。


 私が少しくらい離れても、この場所はちゃんと続いていく。


「じゃあ安心して王都行けるね!」


「はい」


「いっぱい楽しんできてくださいませ」


「うん!」



 ◇



 その後、私たちは王都へ行くまでにやっておくことを少しだけ話した。


 来訪者用の区画。宿泊できる場所。食事を出せる場所。それから、住民たちの生活区域には外から来た人が勝手に入れないようにすること。工房や倉庫も同じだ。


 まだすぐに大勢のプレイヤーが来るわけじゃないけど、準備しておいて困ることはないらしい。


「なんか本当に街づくりしてる感じするね!」


「今更?」


 ハルカちゃんが笑う。


「前からしてたよ」


「そうかな?」


「してた」


「しかもかなり大規模に」


 エリスちゃんまで頷く。


「最初はそんなつもりなかったんだけどなあ」


 私が欲しかったのは、シロたちと安心して暮らせる場所。


 それだけだった。


 なのに気づけば、アントさんたちがいて、アラクネさんたちがいて、ビーさんたちもいて、小さな魔物たちまでいっぱい暮らすようになった。


 グラちゃんもいる。


 《暁ノ華嵐》のみんなも頻繁に遊びに来るようになったし、クロネちゃんまで来た。


 そして今度は、知らない人たちを迎えるための場所まで作ろうとしている。


「……ほんとに大きくなったね」


 街の景色を眺めながら、なんとなく呟く。


「ユズちゃんが始めた場所だからね」


 シフォンちゃんが言う。


「私が?」


「そう」


「でも、私そんなに何もしてないよ?」


「それが一番怖い」


「えっ!?」


「冗談」


「びっくりした!」


「半分くらい」


「また半分!?」


 最近これ多くない?


「でも」


 シフォンちゃんが街を見る。


「最初にみんなをここへ連れてきたのはユズちゃんでしょ?」


「まあ……そうだけど」


「なら十分だよ」


「そうかな?」


「そうだと思う」


 よく分からない。


 でも、みんなが楽しそうならそれでいいかな。



 ◇



 それから少しして、《暁ノ華嵐》のみんなもそれぞれ戻る時間になった。


「じゃあ私たちは一回帰るね」


「うん!」


「大会の参加については、各自もう少し考えてみる」


 シフォンちゃんが言う。


「ミオとアカネとクロネはもう出る気みたいだけど」


「出る」


「出るぞ」


 二人は即答。


「クロネもさっき『絶対出る』って送ってきた」


「絶対まで増えてる!」


「二次予選見て完全にやる気出たっぽいね……」


「クロネちゃん頑張って!」


「今送っとく?」


「送って!」


 少しして、シフォンちゃんが笑う。


「返事来た」


「なんて?」


「『本戦まで残る』だって」


「おー!」


「自信満々だね……」


「クロネちゃんなら行けるよ!」


「ユズちゃん、すごい信頼してるね」


「うん! そしたら私も応援する!」


「観戦チケット、当たるといいね」


「あ」


 そうだった。


「……当たらなくても観戦空間から見られるもん!」


「さっきまで『本物の会場で見たい』って言ってなかった?」


「当てる!」


「気合いでどうにかなる抽選じゃないよ?」


「でも当てたい!」


 せっかくなら、本物の闘技場でみんなを応援したい。


「みんなも頑張ってね!」


「まだ出るか決めてない人もいるけどね」


「出る人は頑張って!」


「うん」


 そんな感じで、みんなが一人ずつ帰っていく。


 静かになった街に、私とシロたちが残った。


「……王都かあ」


 改めて口にすると、ちょっとだけ実感が湧いてくる。


 今まで私は、この森の中ばっかりだった。


 ミルフィアには行ったけど、王都なんて本当に遠い場所の話みたいだった。


「楽しみだね!」


「わふっ!」


「にゃあ!」


『お主はもう完全に遊びに行く気分じゃな』


「だってお祭りだよ?」


『勇者を選ぶ大会じゃろう』


「見る!」


『邪神へ繋がる重要な催しなのじゃろう?』


「私は出ない!」


『……本当に興味がないのじゃな』


「うん!」


 邪神を倒すつもりはない。


 勇者になるつもりもない。


 世界で一番強くなりたいわけでもない。


 でも、初めての王都には行ってみたい。


 大きなお祭りも見てみたいし、みんなの応援もしたい。


 美味しいものもいっぱい食べたい。


 それから。


「王都にも、可愛い魔物いるかな?」


「わふっ!」


「にゃあ」


『結局それなのじゃな』


「だって一番大事だもん!」


 私は笑いながらシロの頭を撫でる。


 シロが嬉しそうに尻尾を振り、ユキも私の足元へ寄ってくる。コハクは呆れたようにため息をついていたけど、その尻尾は少しだけ揺れていた。


 この街を作ろうと思った時には、こんなことになるなんて考えてもいなかった。


 ただ、みんなと一緒に暮らせる場所が欲しかっただけ。


 それがいつの間にかこんなに大きくなって、外の人たちとも繋がり始めて。


 そして今度は、私たちの方から外の大きな街へ行こうとしている。


「よーし!」


 私は勢いよく立ち上がった。


「次は王都だー!」


「わふっ!」


 シロが元気よく鳴く。


 私たちの次の目的地。


 フィオル王国、王都アステリア。


 そこで何が待っているのかはまだ分からない。


 でもきっと、また新しい出会いがある。


 そんな気がした。

面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

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