↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もふもふ召喚士の自由気ままなVRMMO冒険記 ~可愛い魔物を集めていたら、いつの間にか最強の魔物国家ができていました~  作者: 黒海苔
第3章:魔物達の街

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/57

第43話:私、討伐されるの?

今日は、昨日に引き続き第三章の終わりまでと、第四章の一話だけの合計六話分を16時から21時まで一時間ごとに投稿します。

まずは一本目です。

 次の日。


「おはよー!」


 いつものようにログインすると、目の前にはすっかり見慣れた街の景色が広がっていた。


 道の端では小さな魔物たちが元気に走り回り、少し離れたところではアラクネさんたちが何枚もの布を運んでいる。その向こうでは、アントさんたちが大きな木材を何人かで持ち上げていた。


 今日もみんな忙しそうだ。


「わふっ!」


「あ、シロ!」


 真っ先に駆け寄ってきたシロを受け止め、そのまま頭から背中まで思いっきりもふもふする。


「今日もふわふわだねー!」


「わふぅ」


 嬉しそうにシロの尻尾がぶんぶんと揺れた。


 少し遅れてやってきたユキも、私の足元に身体を擦りつけてくる。


「ユキもおはよー!」


「にゃあ」


 二匹を撫でるためにしゃがみ込んでいると、すぐ近くから呆れたような声が聞こえてきた。


『お主は相変わらずじゃのう』


「あ、コハクもおはよう!」


『うむ』


 今日のコハクは、小さな白狐の姿だった。


 せっかくなので、そのままコハクにも手を伸ばす。


『待て。なぜ妾まで同じように撫でようとするのじゃ』


「えー、いいじゃん」


『よくないわ』


「昨日はクロネちゃんと仲良く遊んでたのに」


『あれとこれとは別じゃ』


「むー」


 昨日、私がログインした時には、いつの間にかクロネちゃんとコハクが仲良くなっていた。


 二人に何をしていたのか聞いても、「遊んでた」としか教えてくれない。


 しかも詳しいことは秘密らしい。


 ちょっと気になるけど、仲良くなったならまあいいかな。


「あれ?」


 立ち上がって周囲を見回してみる。


 でも、昨日まで一緒にいた姿が見当たらない。


「クロネちゃんは?」


『昨日帰ったではないか』


「そうだけど、もう来てるかなって思って」


『いくらクランの移動が使えるようになったとはいえ、毎日朝から来るとは限らぬじゃろ』


「そっかー」


 昨日は「また来る」って言っていたから、今日もすぐ来るのかと思っていた。


 ちょっとだけ残念。


「でも、そのうち来るよね!」


『じゃろうな』


「今度来たら、シロいっぱい撫でさせてあげよう!」


「わふ?」


『……頼まれてもおらぬのに勝手に決めるでない』


「シロも嫌じゃないよね?」


「わふっ!」


「ほら!」


『本当に分かっておるのか……?』


 分かってる。


 たぶん。



 ◇



「あ、ユズちゃん!」


「おはよー!」


 しばらくして街の中央へ向かうと、シフォンちゃんたちも集まっていた。


 シフォンちゃん、ミオちゃん、ハルカちゃん、アカネちゃん、セレナちゃん、ライラちゃん、エリスちゃん、モモカちゃん。


 いつもの八人だ。


 私は一通り顔を見てから、やっぱり首を傾げる。


「クロネちゃん、まだ来てないんだね」


「うん。今日はまだ来てないよ」


 シフォンちゃんが笑う。


「やっぱり!」


「やっぱり?」


「さっきコハクにも聞いたの」


『妾は朝から来るとは限らぬと言っただけじゃ』


「一回向こうに戻るって言ってたからね」


 エリスちゃんも会話に加わる。


「装備の確認とか、消耗品の補充とか、いろいろあるんじゃない?」


「そっかー」


「でも」


 ミオちゃんがぽつりと言う。


「また来る」


「うん!」


 昨日、クロネちゃん本人もそう言っていた。


「じゃあ次に来たら、もっとシロもふってもらおう!」


「……」


 なぜか、ミオちゃんが一瞬だけ黙った。


「ミオちゃん?」


「何でもない」


「?」


「クロネ、シロ以外も――」


「シロ以外も?」


「……何でもない」


「えー! 気になる!」


「秘密」


「また秘密!?」


 最近、秘密が多すぎる気がする。


 コハクとクロネちゃんの秘密。


 今度はミオちゃんまで何か隠してる。


「私だけ知らないこと増えてない?」


「気のせい」


『くくっ』


「コハク笑ってる!」


『気のせいじゃ』


「絶対違う!」


 周りを見ると、みんなもなんだか楽しそうに笑っている。


 むー。


 絶対何かある。



 ◇



「そういえば」


 しばらくみんなで話しているうちに、昨日から気になっていたことを思い出した。


「クランって、移動以外には何ができるの?」


「そこからなんだ」


 シフォンちゃんが苦笑する。


「だって、クロネちゃんが入った理由で一番目立ってたの、移動だったから」


「まあ……あれはかなり印象に残るよね」


「クランはいろいろ便利だよ」


 エリスちゃんが説明してくれる。


「クラン専用のチャットが使えたり、共有倉庫を利用できたり」


「共有倉庫?」


「クランのみんなで使えるアイテム置き場みたいなものかな」


「おー!」


「他にもクランハウスがあったり、登録されているクラン拠点へ移動できたりするね」


「昨日クロネちゃんが確認してたやつ!」


「そうそう」


「じゃあ、これからクロネちゃんは森を走らなくてもここに来れるんだよね?」


「そのために入ったようなものだからね」


 ハルカちゃんが笑う。


「便利だね!」


「便利ではあるんだけど……」


 シフォンちゃんは少し遠い目をした。


「まさか加入理由の一番上が『移動手段が欲しいから』になるとは思わなかったよ」


「クロネらしい」


 ミオちゃんは特に気にしていないみたいだ。


 そんな会話をしていると、ライラちゃんがふと街の外へ視線を向けた。


「でも、クロネが実際にここまで来たってことは、これから他のプレイヤーが来る可能性もあるよね」


「え?」


 私は顔を上げる。


「お客さん増えるの?」


「ユズちゃんはまずそこなんだね」


「だって、人がいっぱい来たら賑やかになるよ!」


「まあ、それ自体は悪いことじゃないけどね」


 エリスちゃんは少し考えてから続けた。


「全員がクロネみたいな人とは限らないから」


「クロネちゃんみたい?」


「少なくとも、街に来ていきなり住民を攻撃したりはしないでしょ?」


「うん!」


 クロネちゃんは強い相手を見ると戦いたがるけど、街のみんなに何かしようとはしていなかった。


 シロを撫でたり、コハクと仲良くなったり、普通にみんなと話していた。


「でも、配信を見てここを知った人の中には、素材目当てで来る人もいるかもしれない」


「素材?」


「蜘蛛糸とか蜂蜜とか」


「あー!」


 それなら分かる。


 ネフィエラたちが作ってくれる服も、メリエルたちの蜂蜜も、シフォンちゃんたちはかなり驚いていた。


「でも、勝手に取ったらダメだよ?」


「もちろん」


 シフォンちゃんが頷く。


「だから、そういうことが起きないように、そろそろ外から来る人をどう受け入れるか考えた方がいいかもって話」


「なるほどー」


 今までは、この街まで来る人なんてほとんどいなかった。


 でも、配信を通して存在を知られて、実際にクロネちゃんはここまでやってきた。


 だったら、この先は他の人が訪ねてくることもあるかもしれない。


「じゃあ、クロエたちにも聞いてみよう!」


「うん。その方がいいね」


 私たちは、ちょうど近くにいたクロエたちにも相談してみることにした。



 ◇



「外から来る人間、ですか」


「うん!」


 私たちの話を聞いたクロエが、少し考えるように目を伏せる。


 その隣では、ネフィエラとメリエルも話を聞いていた。


「ユズ様のお知り合いでしたら、もちろん歓迎いたしますが」


「これからは、知らない人も来るかもしれないんだって」


「なるほど」


 クロエの表情が少しだけ真面目になる。


「でしたら、街のすべてを自由に出入りさせるのは避けた方がよいでしょう」


「やっぱり?」


「はい。幼い者も多くおりますので」


「あー……」


 周囲を見れば、今日も小さな魔物たちが楽しそうに道を走り回っている。


 まだ幼い子もいるし、人間に慣れていない子だっている。


 知らない人が突然たくさん入ってくるようになったら、怖がってしまう子もいるかもしれない。


「じゃあ、誰でもどこでも自由に入れるようにするのは、よくないかも」


「そうだね」


 シフォンちゃんも頷いた。


「街に来てもらうこと自体は歓迎しても、まずはここで暮らしている住民が安心できることの方が大事だからね」


「うん!」


「でしたら」


 今度はネフィエラが口を開く。


「街の外側に、来訪者を迎えるための区画を設けるのはいかがでしょう?」


「来訪者?」


「お客様を最初にお迎えする場所ですわ。宿泊する場所なども、そちらにまとめてしまえばよろしいかと」


「宿屋!」


 なんだか一気に街っぽくなってきた。


「食事を出す場所も作る?」


 メリエルが楽しそうに言う。


「作りたい!」


「なら、余った蜂蜜も出せるね」


「いいね!」


「ユズちゃん」


 エリスちゃんが苦笑する。


「完全に観光地を作ろうとしてない?」


「ダメ?」


「ダメではないけど」


 シフォンちゃんも笑う。


「むしろ、人が来るようになるなら、そういう場所はあった方が便利かもね」


「じゃあ作ろう!」


「決めるの早い!」


「だって楽しそう!」


 外から来た人が泊まれる場所。


 ご飯を食べられる場所。


 それから、お土産なんかも置けたらもっと楽しそうだ。


「ネフィエラたちの服とか売れるかな?」


「ものによりますわね。皆が使う分を確保した上で、余裕があるものでしたら」


「メリエルの蜂蜜は?」


「余った分ならいいよ!」


「おー!」


 考えているだけで、なんだか楽しくなってきた。


 また街が少し大きくなりそうだ。


「ただし」


 そんな私に、クロエが念を押すように言う。


「住民たちの生活区域については、これまで通り守るべきかと」


「うん!」


「工房や食料庫なども、部外者が自由に立ち入れぬようにした方がよろしいでしょう」


「それも必要だね」


 エリスちゃんが頷く。


「案内役もいた方がいいかも」


「案内?」


「初めて来た人が、知らずに立ち入り禁止の場所へ入ったりしないようにね」


「なるほど!」


 思っていたより、考えることはたくさんありそうだ。


 でも、不思議と嫌ではなかった。


 最初は、私とシロとユキとコハクが安心して暮らせる場所があれば、それだけでいいと思っていた。


 そこにクロエたちが加わって、ネフィエラたちが加わって、メリエルたちも加わった。


 そうして少しずつ大きくなってきた場所が、今度は外から来る人を迎えることまで考え始めている。


「なんか、またちょっと街っぽくなったね!」


 私がそう言うと、ハルカちゃんが笑った。


「もう十分前から街だと思うけどね」


「え?」


「ユズちゃんだけ認識が遅いんだよ」


「そうなの!?」


「かなり前から街」


 ミオちゃんまで頷く。


「国って言われてもおかしくない」


「国!?」


『今更何を驚いておる』


「だって、ここは街だよ!?」


『魔王がおって、多くの魔物がその者を慕い、一つの地に集まって暮らしておるのじゃ。今更じゃろう』


「魔王は称号だけだから!」


『そうかのう』


「そうだよ!」


 もう。


 コハクまで変なことを言い始めた。


 私はただ、可愛い魔物たちと楽しく暮らせる場所を作りたかっただけなのに。



 ◇



「じゃあ、とりあえず来訪者用の場所については――」


 シフォンちゃんが今までの話をまとめようとした、その時だった。


「……え?」


 突然、シフォンちゃんの言葉が止まった。


「ん?」


 ハルカちゃんも何かに気づいたように視線を動かす。


「来た」


 ミオちゃんが短く呟く。


「ほんとに?」


 アカネちゃんも少し驚いた顔をしていた。


「このタイミングなんだ」


「思ったより早かったね」


 エリスちゃんも、目の前に表示された何かを読んでいるようだった。


 セレナちゃんも、ライラちゃんも、モモカちゃんも。


 みんなが急に何かを見始めた。


「……?」


 私はシロの頭を撫でながら、そんなみんなを不思議そうに見回す。


「どうしたの?」


「え?」


 シフォンちゃんがこちらを向いた。


「ユズちゃん、今の見てない?」


「今の?」


「うん」


「何が?」


「……ワールドアナウンス」


「ワールドアナウンス?」


「やっぱり見てないんだ」


「来てたの?」


「今来たよ」


「えー?」


 慌てて周りを見回してみる。


 でも、私の前には何も表示されていない。


「どこ?」


「もう表示は消えたけど……」


「あ」


 ハルカちゃんが何か思い出したように声を上げる。


「そういえばユズちゃん、通知切ってなかった?」


「通知?」


「前に、いっぱい出てきて邪魔だからって」


「……」


 少し考える。


 そういえば。


「あ!」


 切った。


 かなり前に。


 シロと契約した頃だった気がする。


「そういえば切ったままだ!」


「やっぱり!」


「でも、ワールドアナウンスまで見えなくなるの?」


「ユズちゃんの場合、普通の通知ほとんど全部切ってるんじゃない?」


「うん!」


「元気に言うところじゃないよ!」


「えへへ」


 シフォンちゃんに怒られた。


「でも、ログには残ってるはずだよ」


 エリスちゃんが教えてくれる。


「ログ?」


「メニューの」


「あ、そっか!」


 私はすぐにメニューを開いた。


「えーっと……」


 ステータス。


 スキル。


 アイテム。


 マップ。


「……あった!」


 《ログ》。


 そこを開いて、最新の記録を確認する。


「あ」


 すぐに見つかった。


 私は、そこに表示されていた文章を読む。



 《――ワールドアナウンス――》


 《大型イベント《勇者選定祭》の開催が決定しました》


 《各サーバーにて《勇者》の選定を行います》


 《イベント開始日時、参加方法、予選形式、本戦ルールなどの詳細は、メニュー内《イベント》または《ログ》よりご確認ください》



「……勇者選定祭?」


 聞いたことのない名前だ。


「大型イベントだね」


 シフォンちゃんが少し真面目な顔で言う。


「勇者を決めるんだ」


 ミオちゃんは、どことなく楽しそうだ。


「大会かな?」


「たぶんね」


「勇者……」


 私は、もう一度ログに表示された文字を見る。


 勇者。


 勇者って。


「……あれ?」


「どうしたの?」


「勇者って」


「うん?」


「魔王を倒す人じゃない?」


「……」


 一瞬。


 みんなが黙った。


「いや……」


 ハルカちゃんが少し困ったように笑う。


「まあ、物語だとそういうこと多いけど」


「だよね?」


「うん」


「…………」


 私は、少し前に初めて確認した自分の称号を思い出す。


 《魔王》。


「……私」


「うん?」


「魔王なんだけど」


「称号だけどね」


 エリスちゃんがすぐに言う。


「でも、魔王だよ?」


「まあ……表示は《魔王》だね」


「…………」


 なんだろう。


 急にものすごく嫌な予感がしてきた。


 改めて周囲を見回してみる。


 たくさんの魔物が暮らしている街。


 私のことを《ユズ様》と呼ぶ住民たち。


 そして、私が持っている称号は《魔王》。


 ……あれ?


「……もしかして」


「ユズちゃん?」


「私」


 もう一度、《勇者選定祭》という文字を見る。


「勇者に討伐されるの!?」


「えっ」


「だって、勇者って魔王を倒すんでしょ!?」


「いやいや!」


 シフォンちゃんが慌てて手を振る。


「たぶん違うから!」


「たぶん!?」


「普通、勇者が倒しに行く魔王って」


 ハルカちゃんが少し考えてから言う。


「魔王城とかにいる、攻略対象の魔王じゃない?」


「魔王城……」


 私は、ゆっくりと自分たちの街を見る。


「ここ、魔王城?」


「違う」


「違うね」


「城ない」


 最後はミオちゃんにまで即答された。


「じゃあ大丈夫?」


「たぶん」


「またたぶん!」


「だって」


 シフォンちゃんが困ったように笑う。


「まだイベントの詳細を誰もちゃんと読んでないから」


「…………」


 私は、もう一度ログへ目を戻す。


 《勇者選定祭》。


 そして、自分のステータスに表示されている称号。


 《魔王》。


「……ほんとに私、討伐されないよね?」


「たぶん大丈夫」


「たぶんじゃなくて、大丈夫って言ってよー!」


 私の声が。


 今日も街の中に響いた。

面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。