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もふもふ召喚士の自由気ままなVRMMO冒険記 ~可愛い魔物を集めていたら、いつの間にか最強の魔物国家ができていました~  作者: 黒海苔
第3章:魔物達の街

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第39話:クロネちゃん、意外と普通?

本日二本目です。

「じゃあ、クロネちゃんも一緒に行こ!」


「うん」


 グラちゃんとの戦いをあっさり断られたクロネちゃんも加わって、私たちは改めて街の案内を再開することになった。


 予定ではもっと普通に始まるはずだった今日の配信。


 なのに始まってすぐ、クロネちゃんが魔の森を一人で走り抜けてやってきたせいで、コメント欄はまだ全然落ち着いていない。


 《来襲者が普通に観光客になってて草》


 《古龍に戦闘拒否されて街案内参加》


 《何だったんださっきの緊張感》


 《クロネが普通に歩いてるだけで面白い》


 《いやこの人さっき魔の森RTAしてきたんだぞ》


「来襲者?」


 コメントを見て首を傾げる。


「クロネちゃん、お客さんだよ?」


 《ユズ様基準ではそうなるのか》


 《高速で外周突破してきた客》


 《新しい観光スタイル》


「別に突破してない」


 クロネちゃんがコメントを見ながら言った。


「止められる前に着いただけ」


「それを突破って言うんじゃない?」


 シフォンちゃんが苦笑する。


「そう?」


「そうだよ」


 クロネちゃんは少し考えたあと、興味を失ったように前を向いた。


 なんというか。


 さっきからずっとこんな感じだ。


 すごい速さでここまで来たし、グラちゃんを見た瞬間に戦いたいって言ったし、シフォンちゃんたちの話を聞く限り、ものすごく強いプレイヤーらしい。


 だから、もっと怖い人なのかなと思っていたんだけど。


「クロネちゃん、こっち!」


「ん」


 呼べば普通についてくる。


「ここは新しく家を建ててるところ!」


「結構増えてる」


「でしょ!」


「昨日の配信より進んでる?」


「うん! みんなが作ってるから、ログアウトしてる間にも増えるんだよ!」


「へえ」


 普通に街を見ている。


「……クロネって、こんな感じだったっけ」


 ハルカちゃんが小声で言った。


「もっと興味ないと思ってた」


「興味ないものは興味ない」


「これは?」


「ちょっと面白い」


「おお!」


 私は嬉しくなる。


「じゃあいっぱい案内するね!」


「うん」


 《クロネが素直》


 《珍しいもの見た》


 《戦闘以外にも興味あったんだ》


 《魔物の街だから普通に珍しいだろ》


 《ユズ様案内係めっちゃ嬉しそう》


「次はこっち!」


 私はクロネちゃんも連れて、昨日まだ見せていなかった場所へ向かった。



 ◇



「ここは畑!」


「畑?」


「うん!」


 少し歩いた先には、開拓された土地が広がっている。


 まだ全部が完成しているわけじゃないけど、いろんな野菜や果物を育てるために、少しずつ畑が増えているところだ。


「メリエルたちが食べ物を探してくれるだけでも結構足りてるんだけどね」


「じゃあ何で作ってるの?」


「もっといろんなもの食べたいから!」


「なるほど」


「あと、いつでも採れる方が便利でしょ?」


「それはそう」


 クロネちゃんはしゃがみ込み、育ち始めた野菜を少し眺める。


 ちゃんと話を聞いてくれている。


「クロネちゃん、意外と普通だね」


「何が?」


「もっとずっと戦いたいって言ってる人かと思ってた!」


「ずっと戦ってたら疲れる」


「そりゃそうだよね!」


「強い相手がいたら戦いたいだけ」


「それは普通じゃないと思う」


 シフォンちゃんがすぐに突っ込んだ。


「そう?」


「そう」


「ミオは分かってくれた」


 クロネちゃんがミオちゃんを見る。


「分かる」


「ミオちゃん基準にしちゃダメだよ!」


「なんで?」


「なんでって……」


 シフォンちゃんが言葉に詰まる。


 《戦闘狂同士で基準作るなw》


 《ミオを一般人代表にするな》


 《クロネ「普通」》


 《普通とは》


 でも。


 クロネちゃんは本当に思っていたより話しやすい。


「じゃあ次!」


「まだあるの?」


「いっぱいあるよ!」


「元気だね」


「うん!」


 昨日も言われた気がする。



 ◇



 それからも街の中を回った。


 途中で蜘蛛のみんなが作業しているところを見たり、新しくできた倉庫を見たり、住民たちと話したり。


 クロネちゃんは特別騒いだりするわけでもなく、気になったものがあれば少し見て、時々質問する。


 ただ。


「…………」


「?」


 さっきから。


 何度か。


 クロネちゃんの視線が、私の足元に向いている。


「クロネちゃん?」


「何?」


「さっきからシロ見てない?」


「見てない」


「見てたよ?」


「気のせい」


「ほんと?」


「うん」


 クロネちゃんは前を向く。


 その横をシロが歩いていく。


「わふ」


「…………」


 クロネちゃんの目が動く。


「やっぱり見てる!」


「見てない」


「今見たよ!」


「たまたま」


「シロ可愛いよ?」


「知ってる」


「知ってるんだ!」


「昨日から配信で見てたから」


「じゃあ触る?」


「別にいい」


「遠慮しなくてもいいよ?」


「してない」


「ほんと?」


「ほんと」


「そっかー」


 触りたくないなら仕方ない。


 私はシロを撫でる。


「わふー」


「今日もふわふわだねー!」


「わふ!」


 シロが嬉しそうに尻尾を振る。


 そのまましばらく歩いて。


 別の場所を説明して。


 少ししてから振り返る。


「…………」


 クロネちゃんが。


 シロを撫でていた。


「クロネちゃん!」


「何?」


「触ってる!」


「うん」


「触らないって言ってたのに!」


「触らないとは言ってない」


「『別にいい』って言ってた!」


「気が変わった」


「好きなんじゃん!」


「……」


 クロネちゃんの手が止まる。


 シロが見上げる。


「わふ?」


 するとクロネちゃんは、もう一度ゆっくりシロの頭を撫でた。


「……ちょっとだけ」


「やっぱり!」


 《wwwwww》


 《クロネ陥落》


 《もふもふには勝てなかった》


 《戦闘狂にも弱点があった》


 《かわいい》


 《シロ強すぎる》


「シロ、クロネちゃんにもふってもらえてよかったね!」


「わふ!」


「……毛、すごい」


「でしょ!」


「柔らかい」


「でしょ!」


「ずっと触れる」


「分かる!」


 なんだ。


 クロネちゃん。


 すごく分かってる。


「クロネちゃん、いい人だね!」


「判断基準そこなの?」


 エリスちゃんに言われた。


「大事だよ?」


「ユズちゃんにとってはね」


 その横では、クロネちゃんがまだシロを撫でている。


 さっきまで古龍と戦おうとしていた人と同じとは思えない。


 《ギャップすごい》


 《魔の森単独突破した人が白いわんちゃん撫でてる》


 《平和》


 《来襲とは》


「クロネ」


 ミオちゃんが近づく。


「何?」


「代わって」


「もう少し」


「私も触りたい」


「後で」


「……」


「……」


「喧嘩しないでね!?」


 二人が同時に私を見る。


「してない」


「してない」


「ならいいけど!」


 シロだけが困ったように、


「わふ……」


 と鳴いていた。



 ◇



 そんな感じで。


 クロネちゃんも意外とすぐ街に馴染んだ。


 最初は護衛のみんなも少し警戒していたけど、私たちと一緒に歩いているうちに、だんだん気にしなくなっていった。


 でも。


 一つだけ。


 ずっと気になることがあるみたいだった。


「…………」


『…………』


 クロネちゃんとコハク。


 さっきから何度か目が合っている。


 今も。


 私の少し前を歩いていたクロネちゃんが急に止まり、白い狐姿のコハクを見る。


「ねえ」


『何じゃ』


「やっぱり強いでしょ」


『何の話じゃ?』


「あなた」


『妾が?』


「うん」


 コハクの尻尾がゆっくり揺れる。


『どうしてそう思う』


「なんとなく」


『随分と曖昧じゃのう』


「でも当たってる気がする」


『さて、どうじゃろうな』


「隠してる?」


『別に何も隠しておらぬぞ』


「その言い方する人、だいたい強い」


『ほう?』


 コハクが少しだけ楽しそうに目を細めた。


 クロネちゃんも笑う。


「…………」


「…………」


「何?」


 二人ともこっちを見る。


「なんで見つめ合ってるの?」


『別に何でもないぞ、お主』


「そう?」


「うん」


「クロネちゃん、コハクと戦いたいの?」


「ちょっと」


「ダメだよ?」


「なんで?」


「喧嘩したら危ないから!」


『くくっ』


「コハク?」


『いや、何でもない』


 なんで笑ってるんだろう。


 《ん?》


 《またクロネ反応してる》


 《あの喋る狐やっぱ気になる》


 《種族分からないんだよな》


 《昨日から怪しい》


 《クロネが強そうって言うなら何かあるのか?》


 《決めつけは禁止》


 《でも気になるのは分かる》


 コメントまで気にし始めている。


「コハクって強いの?」


『さてのう』


「私、コハクが本気で戦ってるところ見たことないよね?」


『そうじゃったか?』


「ないよ!」


 ダンジョンで最初に会った時も、私はコハクと戦っていない。


 一緒に行動するようになってからも、シロたちが戦うところは何度も見ているけど、コハクが本気で戦っているところはほとんど見た覚えがない。


「じゃあ強いか分からないね!」


『そういうことにしておけばよかろう』


「うん!」


「……」


 クロネちゃんが。


 またコハクを見る。


「何?」


「別に」


「?」


 何だろう。


 この二人。


 ◇



 しばらくして。


 今日の配信も、そろそろ終わりの時間になった。


「じゃあ、今日はこの辺で終わろっか」


 シフォンちゃんが配信に向かって言う。


 《おつ!》


 《今日は昨日より平和だった》


 《開幕クロネ来襲したけどな》


 《平和とは》


 《クロネのもふもふ好きが判明した》


「好きとは言ってない」


 《まだ言うw》


 《ずっとシロ撫でてたぞ》


 《証拠映像残ってます》


「……」


 クロネちゃんが黙った。


「クロネちゃん、またシロ触りたくなったら来ていいよ!」


「来る」


「即答!」


 シフォンちゃんが驚く。


「戦闘より反応早くなかった?」


「そんなことない」


「いや早かったよ?」


「気のせい」


 《気のせいじゃない》


 《再訪理由:もふもふ》


 《古龍じゃなくなってて草》


「グラちゃんとも戦いたい」


「そっちも残ってた!」


『断る』


「まだ頼んでない」


『今後も断る』


「いつか気が変わるかも」


『変わらぬ』


「じゃあ待つ」


『待つな』


 また始まった。


「クロネちゃん、グラちゃん困らせちゃダメだよ?」


「分かった」


『本当であろうな』


「たぶん」


『信用ならぬ!』


 みんなが笑う。


「じゃあ今日はここまで!」


 シフォンちゃんが手を振る。


「見てくれてありがとー!」


「ばいばーい!」


 《おつー》


 《また明日》


 《街案内まだ続く?》


 《クロネまた来そう》


 《というか帰れるのか?》


 《来た道戻るんだろ》


 《魔の森RTA往復編》


「帰れるよ」


 クロネちゃんが普通に答える。


「走れば」


 《やめろw》


 《その一言が普通じゃない》


 最後までそんなコメントが流れながら。


 今日の配信も終了した。


 目の前からコメントが消える。


「ふぅ」


 シフォンちゃんが息を吐いた。


「今日は昨日ほどじゃなかったね」


「そう?」


「開幕でクロネが飛び込んできた時点で十分なんだけど」


「でもその後は普通だったよ!」


「ユズちゃんの普通、本当に当てにならなくなってきたなあ」


「なんで!?」


 私は不満だったけど。


 今日はクロネちゃんとも仲良くなれた。


「クロネちゃん、今日は泊まっていく?」


「どうしよう」


「部屋ならあるよ!」


「……じゃあ泊まる」


「やった!」


 せっかくここまで来たのに、すぐ魔の森を走って帰るのも大変だと思う。


 それなら泊まっていけばいい。


「じゃああとで部屋案内するね!」


「うん」


「私はそろそろログアウトするけど」


「分かった」


 シロたちにも挨拶する。


「シロ、またね!」


「わふ!」


「ユキも!」


「……またね」


「コハクも!」


『うむ』


「グラちゃんもおやすみ!」


『ああ』


 最後にクロネちゃんにも手を振る。


「クロネちゃんもまた明日!」


「また明日」


「おやすみー!」


 私はログアウトした。



 ◇



 それから、少しして。


 ユズの姿が消えたあと。


 街はゆっくりと夜へ変わっていった。


 昼間ほど人通りのなくなった道を、一人の少女が歩いている。


 クロネだった。


「…………」


 向かっている先には。


 一匹の白い狐。


『やはり来たか』


 コハクが振り返る。


「分かってた?」


『あれだけ昼間から視線を向けられればのう』


「じゃあ話早い」


『何の話じゃ?』


「戦って」


 クロネは迷いなく言った。


『グランヴェルに断られたから、次は妾というわけか?』


「違う」


『ほう?』


「最初から気になってた」


 コハクの瞳が僅かに細くなる。


「古龍ほどじゃないかもしれないけど」


 一歩。


 クロネが近づく。


「あなたも、かなり強いでしょ」


『…………』


「一回だけ」


『妾に何の得がある』


「楽しい」


『それはお主の得じゃろう』


「そう?」


『そうじゃ』


「じゃあ」


 クロネは少し考える。


「何か欲しいものある?」


『別にないのう』


「困った」


『諦めればよい』


「それは嫌」


『面倒な奴じゃな』


「よく言われる」


 しばらく。


 二人は黙って向かい合う。


 やがて。


 コハクの今は一つに見えている白い尾が、ゆっくりと揺れた。


『……まあ』


 ほんの少し。


 口元が上がる。


『お主がどれほどのものか、興味がないわけではない』


「じゃあ」


『少しだけじゃ』


 クロネの目が輝く。


「いいの?」


『ただし』


「何?」


『ユズには内緒じゃ』


「なんで?」


『あやつは、こういうことを心配するからのう』


「分かった」


『それから』


 コハクの声が、ほんの少しだけ低くなる。


『手加減してもらえるとは思わぬことじゃ』


「……」


 クロネが笑った。


「それ」


 紫色の瞳が楽しそうに細くなる。


「こっちの台詞」


『くくっ』


 二人の間を。


 夜の風が吹き抜けた。

面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

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