第31話:街を案内しよう!
なんかいつの間にかランキングに乗ってました。これは夢ですか?つまり明日学校があるのも夢?
夢記念に、今日は書き溜めていたものを区切りのいい所まで16時から22時まで1時間ごとに7本投稿します。
その代わり明日の投稿はないかもしれないです。
まずは一本目です。主人公視点に戻ります。
クロエたちが仲間になってから、私たちの居場所は一気に変わった。
最初は、私がみんなと一緒に住めたらいいなと思って見つけた場所。
そこに小さな魔物たちが増えて、クロエたち蟻族が来て、ネフィエラたち蜘蛛族が来て、メリエルたち蜂族も来た。
気づけば家が建って、道ができて、水路までできている。
服も作ってもらえるようになったし、果物や蜂蜜もたくさんある。
この前はみんなで大鍋パーティーもした。
最初に来た時は、グラちゃんが寝ているだけの広い場所だったのに、今ではどこを見ても誰かが何かをしている。
クロエは朝から働いてるし、ネフィエラは工房の様子を見に行ったり、みんなに仕事を任せたりしている。
メリエルは花畑でのんびりしているように見えて、気づいたら果物とか蜂蜜とかが増えている。
三人とも全然違うけど、なんだかんだうまくやっている。
そして昨日。
そんな私たちのところに、初めてプレイヤーのお客さんが来た。
《暁ノ華嵐》。
日本サーバーではかなり有名な人たちらしい。
私は知らなかったけど。
しかも、その人たちはこの森を攻略する様子をずっと配信していたらしく、私たちのところに来てからも、許可を取った上で配信を続けている。
今もシフォンちゃんの横には半透明の配信画面が浮かんでいて、そこにはものすごい勢いでコメントが流れていた。
《ユズ様だ》
《今日もユズ様》
《街案内始まる?》
《シロ映して》
《もふもふをよこせ》
……なんで?
昨日からずっと思ってるんだけど。
なんで私、知らない人たちからまで《ユズ様》って呼ばれてるんだろう。
「ユズちゃん?」
「ん?」
呼ばれて振り向く。
そこにいたのは、《暁ノ華嵐》の八人。
シフォンちゃん。
ミオちゃん。
ハルカちゃん。
アカネちゃん。
セレナちゃん。
ライラちゃん。
エリスちゃん。
モモカちゃん。
……昨日名前を教えてもらったばかりなのに、ちゃんと覚えられた。
えらい。
「どうしたの?」
「いや、さっきからすごい見られてる気がしたから」
「あ」
ばれた。
「ごめん」
「別にいいけど……何見てたの?」
「耳」
「耳?」
シフォンちゃんが、自分の大きな兎耳に触れる。
その横で、ハルカちゃんも兎耳をぴくっと動かした。
ライラちゃんには狼耳。
ミオちゃんは猫耳っぽいフード。
モモカちゃんも兎耳。
昨日からずっと気になっていた。
すごく。
気になっていた。
「……触ってみたいなって」
《知ってた》
《ユズ様ぶれない》
《やっぱり耳見てたのか》
《シフォン逃げて》
「やっぱりそれか」
アカネちゃんが笑った。
「ユズちゃん、もふもふ好きなんだっけ?」
「好き!」
即答。
『お主』
私の足元にいたコハクが、呆れたようにこっちを見る。
『初対面に近い相手へ、いきなり耳を触らせろと言うでない』
「まだ言ってないよ!」
『顔に出ておった』
「そんなに?」
『かなりのう』
「むぅ……」
《狐に止められてるw》
《この狐喋るの!?》
《昨日映ってた狐だ》
《ユズ様より常識ありそう》
「コハク、コメントで常識人って言われてるよ」
『当然じゃ』
「私より?」
『当然じゃ』
「即答!?」
隣ではユキも少しだけ笑っている。
人の姿だから、ちゃんと笑っているのが分かる。
シロはというと、私の横で尻尾をぱたぱた振っていた。
「まあ、私は別にいいよ?」
シフォンちゃんが言う。
「えっ」
「そんな顔されると断りにくいし」
「ほんと!?」
「あとでね」
「やった!」
《シフォン許可出したw》
《ユズ様大勝利》
《耳触る配信まだ?》
『……よかったのう』
コハク。
なんでそんなに呆れてるの。
◇
「それでさ」
シフォンちゃんが周囲を見回した。
「せっかく中まで入れてもらったし、もしよかったら、もう少しここを案内してもらってもいい?」
「案内?」
「うん。この場所、まだちゃんと見られてないから」
シフォンちゃんがそう言うと、配信のコメントも一気に流れ始めた。
《きた》
《街案内!》
《待ってた》
《蜘蛛工房見たい》
《蜂蜜》
《住民見せて》
《ユズ様の召喚獣も》
……みんな、そんなに見たいんだ。
「あー」
そういえば昨日は、ほとんど自己紹介とか話して終わった気がする。
「いいよ!」
《即答》
《やったぜ》
《ユズ様ありがとう》
「ほんと?」
「うん!」
……とは言ったけど。
「どこから見たい?」
「え?」
「家とか?」
私は周りを見る。
「畑とか?」
「うん」
「あと、お鍋した広場もあるよ!」
「鍋?」
シフォンちゃんが少し首を傾げる。
「この前みんなで大鍋パーティーしたの!」
《鍋?》
《魔物の町で鍋パ》
《平和すぎる》
「それはちょっと気になる」
モモカちゃんがすぐ反応した。
「鍋、何入れたの?」
「お肉とか、お魚とか、野菜とか、蜂蜜とか!」
「蜂蜜?」
「うん!」
「鍋に?」
「うん!」
《蜂蜜鍋!?》
《モモカの顔w》
《料理人が反応した》
モモカちゃんが少し考える。
「あとで詳しく聞いていい?」
「いいよ!」
なんでそんなに真剣なんだろう。
「じゃあ」
シフォンちゃんが笑った。
「まずはユズちゃんのおすすめからで」
「おすすめ……」
私は少し考える。
おすすめ。
おすすめか。
どこだろう。
「クロエのところ!」
「クロエ?」
「うん!」
ちょうどいい。
だって、今のここを一番変えたのは、多分クロエたちだから。
「クロエたち、すごいんだよ!」
私はそう言って、みんなを連れて歩き始めた。
シフォンちゃんも配信画面をこちらへ向けたまま、一緒についてくる。
◇
「ユズ様?」
少し歩くと、すぐにクロエを見つけた。
相変わらず働いている。
今日は何人かの蟻たちと一緒に、新しい建物の土台を確認していた。
「クロエー!」
「どうされました?」
「街を案内してるの!」
「街……」
「あ」
まただ。
《本人が街って言った》
《言ったぞ》
《証拠取れた》
「みんなで住んでる場所を案内してるの!」
《訂正早いw》
「……承知しました」
クロエが一瞬だけ何か言いたそうな顔をしたけど、気にしない。
「でしたら、現在の建築状況からご説明しましょう」
「お願い!」
クロエは仕事の手を止めると、《暁ノ華嵐》のみんなへ向き直った。
「現在、この周辺では住居の増築と、倉庫の拡張、それから水路の整備を進めています」
「まだ増やすんだ」
ハルカちゃんが驚いたように周囲を見る。
「住民が増えていますので」
「そんなに?」
「少しずつですが」
そう。
最近、知らない魔物が増えている。
最初は十匹くらいだったのに、今ではもっとたくさんいる。
朝起きたら増えてる時もある。
《勝手に住民増えるのすごい》
《移住先として認知され始めてる?》
《やっぱ国では?》
国じゃないよ?
「こっちが新しい家?」
ライラちゃんが建築中の建物を見る。
「はい」
クロエが答える。
「小型種が共同で使えるよう、少し広めにしています」
「へえ……」
シフォンちゃんたちが、また感心したように見ている。
「クロエたち、本当にすごいよ!」
「ユズ様」
「私が家作った時なんて、すぐ崩れたのに!」
「……」
クロエ。
無言。
《は?》
《ユズ様も建築したの?》
「え?」
ハルカちゃんがこっちを見る。
「ユズちゃんも家作ったの?」
「うん!」
「どうだった?」
「崩れた!」
《草》
《即答w》
「屋根も落ちた!」
「何作ったの!?」
「家!」
「家じゃない何かになってるじゃん!」
「でも、頑張ったんだよ?」
『頑張ればよいというものでもなかろう』
コハクが横から言う。
《正論》
《狐が強い》
「コハクまで!」
「……その結果」
クロエが静かに続けた。
「私たちが建築を担当することになりました」
「なるほど」
エリスちゃんが納得したように頷く。
「すごく納得した」
《適材適所》
《クロエ有能》
《ユズ様は建築から離れてください》
「なんで!?」
みんな笑ってる。
コメントまで笑ってる。
失礼な。
◇
そこからクロエが、いろいろ見せてくれた。
新しく広げている道。
雨が降っても水が溜まりにくいように作っている排水路。
生活用の水を引くための水路。
食料や素材を保管する倉庫。
住民が増えた時のための新しい区画。
シフォンちゃんは時々足を止めながら、その様子を配信に映している。
《道路ちゃんとしてる》
《排水まで考えてるのか》
《これもう村の造成じゃん》
《蟻族土木強すぎ》
「……かなり本格的だね」
シフォンちゃんが感心したように言う。
「これ、全部最近作ったんだよね?」
「はい」
クロエが頷く。
「まだ不十分な点も多いですが」
「これで?」
ハルカちゃんが驚いている。
「十分じゃない?」
「今後さらに住民が増える可能性がありますので」
「増える前提なんだ」
「ユズ様のもとには、今後も集まってくるでしょう」
「え?」
私を見る。
「なんで?」
「……」
クロエが黙る。
「クロエ?」
「そのうち分かります」
「またそれ!」
《クロエ絶対何か知ってる》
《本人だけ知らないやつ》
《ユズ様、外堀埋まってます》
ネフィエラもそう言ってた。
最近みんな、私に何か隠してる気がする。
「でも本当に」
セレナちゃんが周囲を見ながら言った。
「ユズちゃんがログアウトしている間も、これだけ作業が進むんですね」
「うん!」
私は頷く。
「次の日来たら、知らない建物できてる時あるよ!」
「それ、ちょっと楽しそう」
「楽しいよ!」
昨日まで何もなかったところに家ができていたり、花が増えていたり、小さな魔物が住み着いていたり。
ログインするたびに何か変わっている。
それを見るのは、結構好き。
「このゲーム、ログアウトしててもみんな普通に生活してるからね」
「そうなんだけど」
シフォンちゃんが苦笑する。
「ここまで目に見えて変わる場所も珍しいと思う」
「そうなの?」
「多分ね」
「へえー」
《反応軽い》
《ユズ様基準》
「やっぱり反応軽い」
アカネちゃんがコメントとほぼ同じことを言って笑った。
◇
「それでは」
いつの間にか来ていたネフィエラが、にこやかに口を挟んだ。
「次は、わたくしたちの工房をご覧になります?」
「工房!」
シフォンちゃんが配信画面へ視線を向ける。
《蜘蛛工房きた》
《見たい》
《糸》
《エリスのターン》
「ちょうどいいね」
シフォンちゃんが頷く。
「さっきからエリスが気にしてるし」
「……」
エリスちゃんが一瞬黙った。
「気にしてる?」
「ずっと蜘蛛糸見てる」
「見てない」
「見てるよ」
「見てる」
ミオちゃんまで。
《全員にバレてるw》
「……見てる」
エリスちゃんが認めた。
「だって、あの糸……かなり変だから」
「変?」
私は首を傾げる。
「普通の糸じゃないの?」
《普通ではない予感》
「その確認をしたい」
「じゃあ行こ!」
「軽いなあ」
ネフィエラに案内されて、私たちは蜘蛛族の工房へ向かった。
◇
工房では、今日もたくさんの蜘蛛たちが働いていた。
糸を紡ぐ子。
布を織る子。
染める子。
服を縫う子。
小物を作る子。
初めて見るらしい配信の人たちも、興味津々で工房を眺めている。
《すげえ》
《普通に工房》
《蜘蛛が職人してる》
《布めっちゃ綺麗》
「あ、ユズ様!」
最初に気づいたのはミレルナだった。
その視線が私からシロへ移る。
ぴたっ。
「……シロ様」
「わふ?」
ミレルナの目が輝く。
「今日も、すごく……もふもふです」
「分かる!」
「ですよね!」
思わず手を取り合う。
《同類いたw》
《ユズ様陣営にももふもふ勢》
『何を意気投合しておる』
コハクが呆れてる。
「だってシロだよ?」
『意味が分からぬ』
「シロは可愛い!」
「わふ!」
シロも嬉しそう。
《かわいい》
《シロもっと映して》
《もふもふ》
「……触ってもいいですか?」
ミレルナがそっと聞く。
「シロがいいなら!」
「わふ!」
「やった……!」
ミレルナが嬉しそうにシロを撫で始める。
「……仲間いた」
私が呟くと、シフォンちゃんが笑っていた。
「ユズちゃん、完全に同類だね」
「うん!」
《本人も認めた》
いいことだ。
◇
「ユズ様」
今度はルヴェリアがやってきた。
「先日のお召し物ですが、袖口の調整は問題ありませんでしたか?」
「うん! すごく着やすいよ!」
「それは何よりです」
「服もここで作ってるの?」
モモカちゃんが聞く。
「はい」
ルヴェリアは頷く。
「衣類だけでなく、寝具や生活用の布類もこちらで」
《生活用品まで自給してるのか》
《衣担当ガチ》
「へえ……」
その横で。
「……ちょっと待って」
エリスちゃんの声がした。
《来た》
《エリスが何か見つけた》
「どうしたの?」
見ると、エリスちゃんが作業台に置かれていた糸束をじっと見ている。
白銀色で、少し光沢がある。
私には、いつもの糸。
「これ」
エリスちゃんが指差す。
「さっき外で見たのと同じ?」
「そうですわ」
ネフィエラが答える。
「普段使っている糸ですもの」
「普段……」
エリスちゃんが糸に触れる。
「……やっぱり」
《研究者の顔になった》
《何が違うんだ》
「何か変なの?」
私も近づく。
「ユズちゃん」
「うん?」
「これ、本当に普通に使ってるの?」
「普通に?」
「例えば」
「服とか?」
「うん」
「布団とか?」
「うん」
「カーテンとか?」
「うん」
「荷物縛ったり?」
「うん」
《荷物w》
《高級素材っぽいのにw》
「……」
「?」
エリスちゃんが黙った。
「どうしたの?」
「いや……」
まだ糸を見ている。
「これ、私が知ってる魔蜘蛛糸とかなり違う」
「そうなの?」
「少なくとも、浅瀬で採れるものとは全然違う」
《やっぱり》
《浅瀬産でも高いだろ》
《それを荷物縛るのに使ってるの?》
「へえー」
「……ユズちゃん」
「なに?」
「その反応でいいの?」
「だって糸でしょ?」
「糸だけど」
「服作れるよ?」
「そうだけど」
《温度差すごい》
《ユズ様に素材相場を教えてやれ》
なんだろう。
さっきからエリスちゃんがすごく難しい顔をしている。
「ちなみに」
ルヴェリアが何気なく言った。
「ユズ様がお召しになっている服も、こちらで仕立てたものです」
「……」
エリスちゃんの視線が、すっと私へ向いた。
同時に、配信コメントの流れも一気に速くなる。
《待て》
《その服も?》
《鑑定して》
《エリス頼む》
「え?」
「……ユズちゃん」
「なに?」
「その服も?」
「うん!」
私は自分の袖を持ち上げる。
「可愛いでしょ!」
《可愛い》
《そこじゃない》
《可愛いけど違うw》
「いや、可愛いけど」
エリスちゃんが少し近づいてくる。
「ちょっと見せてもらっていい?」
「いいよ?」
「鑑定しても?」
「うん!」
《きた》
《鑑定》
《結果はよ》
何をそんなに気にしてるんだろう。
エリスちゃんが私の服へ手をかざす。
そして。
「…………」
止まった。
《止まった》
《エリス?》
《また何かヤバいやつ?》
「エリスちゃん?」
「…………え?」
「どうしたの?」
返事がない。
代わりに、エリスちゃんはもう一度表示された情報を確認してから、私の服を見た。
私を見る。
また服を見る。
《二度見してる》
《三度見した》
《怖い》
「……これ」
ようやく口を開く。
「普段着、だよね?」
「そうだよ?」
《その質問何》
《嫌な予感》
「…………」
また止まった。
「エリスちゃん?」
「……ちょっと待って」
なんだろう。
服って、そんなにじっくり見るものだったっけ?
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