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もふもふ召喚士の自由気ままなVRMMO冒険記 ~可愛い魔物を集めていたら、いつの間にか最強の魔物国家ができていました~  作者: 黒海苔
第2章:魔物達の居場所

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第25話:大鍋パーティー!

『ユズ』


「ん?」


 ログインして。


 最初に聞こえてきたのは。


 グラちゃんの声だった。


『待ちくたびれたぞ』


「何が?」


『鍋だ』


「…………」


「あ」


『我が蟻どもの居場所を教えた時』


「うん」


『夜に鍋を作ると言っておったではないか』


「…………」


 そういえば。


 言った。


 確かに。


 言った。


『結局、作らなかったであろう』


「いや、それは!」


『忘れておったな?』


「忘れてないよ!」


『では、なぜ作らなかった』


「だって!」


 私は周りを見る。


 蟻さんたち。


 蜘蛛さんたち。


 蜂さんたち。


 小さな魔物たち。


 昨日作り始めた広場では、もうみんなが忙しそうに動いている。


「せっかくするなら、みんな集まった時にした方が楽しいでしょ!」


『…………』


「ね?」


『……むぅ』


「納得した?」


『しておらん』


「してる顔!」


『我の顔を見て分かるものか』


「なんとなく!」


『…………』


 やっぱり。


 ちょっと納得してる。


『よいか』


「?」


 グラちゃんが、ゆっくり頭を持ち上げる。


『我を満足させられる出来でなければ、許さんからな』


「ええー!?」


『待たされたのだ。それくらい当然であろう』


「でもグラちゃん」


「ずっと寝てただけじゃん!」


『…………』


「寝てたよね!?」


『我はこの地を見守っておった』


「寝ながら!?」


『古龍には可能だ』


「絶対今考えたでしょ!」


『考えておらん』


「ほんとかなー?」


『とにかく』


 グラちゃんの尻尾が。


 どん。


 地面を叩く。


『鍋だ』


「はいはい!」


『大量にだ』


「分かった!」


『美味いものを』


「注文多い!」


『待たされたからな』


「根に持ってる!」


「……かなり楽しみにしてたんだね」


 ユキが小さく呟く。


『しておらん』


「絶対してるよ!」


『しておらん!』


 グラちゃん。


 今日。


 いつもより元気かもしれない。



 ◇



「そちらの台は、もう少し右です!」


『はい!』


『こちらですか!』


「あと二歩!」


『承知しました!』


 広場では。


 朝から。


 すごいことになっていた。


「クロエー!」


「ユズ様!」


 私を見つけたクロエが振り返る。


「ちょうどよいところに!」


「何すればいい?」


「まず食材です」


「やっぱり!」


「昨日お伝えしたでしょう」


「覚えてるよ!」


「ならよろしいです」


 クロエの後ろでは。


 蟻さんたちが。


 大きな鍋を置くための台を作っている。


 しかも。


 一個じゃない。


「……いっぱいあるね」


「必要量を計算しました」


「何個?」


「十二です」


「十二!?」


「通常の大鍋が十一」


「そして」


 クロエが。


 少し離れた場所を見る。


「古龍様用が一つ」


「…………」


 大きい。


 他の鍋も十分大きい。


 でも。


 グラちゃん用だけ。


 明らかにおかしい。


「これ鍋?」


「大型の調理釜を改造しました」


「すご!」


「それでも」


「?」


「足りるかは分かりません」


「え」


『足りぬかもしれんな』


「グラちゃん!」


 いつの間にか。


 近くにいた。


「まだ食べてもないのに!?」


『我の食事量くらい、我が一番よく知っておる』


「じゃあどれくらい食べるの?」


『美味ければ入るだけ』


「分かんないじゃん!」


『ゆえに多く作れと言っておる』


「むぅ!」


「まあまあ」


 メリエルが。


 果物の入った籠を抱えてやってくる。


「いっぱい作ればいいじゃん!」


「簡単に言わないでください!」


 クロエが即座に反応する。


「食材にも限りがあります!」


「じゃあ増やせば?」


「今日中には増えません!」


「そっかー」


「そっかー、ではありません!」


「ふふ」


 ネフィエラが。


 少し離れた場所から笑っている。


「クロエ」


「なんです?」


「眉間に皺が寄っていますわよ」


「誰のせいだと思っているのです!」


「メリエルでしょうか」


「あなたもです!」


「まあ」


 その後ろ。


 蜘蛛さんたちが。


 広場のあちこちに布を飾っている。


 白。


 薄紫。


 黄色。


 赤。


 風に揺れて。


 すっごく綺麗。


「ネフィエラ!」


「はい?」


「これ全部作ったの!?」


「わたくしではありませんわ」


「え?」


「皆が作ったものです」


 ネフィエラが。


 近くで作業している蜘蛛さんたちを見る。


「わたくしは、配置を決めただけ」


「……また部下に」


「クロエ」


「まだ何も言っていません!」


「顔に書いてありましてよ」


「むぅ……」


 やっぱり。


 この三人。


 見てるだけで面白い。



 ◇



「ユズ様」


「ん?」


「こちらを」


 ルヴェリアが。


 何かを差し出してきた。


「……エプロン?」


「はい」


「今日はこちらの方がよいかと」


「可愛い!」


 白と薄紫。


 端に小さなリボン。


「これ私の!?」


「ユズ様用です」


「やった!」


 着けてみる。


「どう?」


「よくお似合いです」


「ほんと!?」


「はい」


「シロ!」


「わふ?」


「見て!」


「わふっ!」


「似合ってるって!」


「今の鳴き声だけで分かったのか?」


 コハクが呆れてる。


「分かる!」


「長く一緒におるからのう……」


「……可愛い」


 ユキも。


 小さく頷く。


「ユキにも作る?」


「……私は」


「作れますよ」


 ルヴェリア。


 もう採寸する気だ。


「……じゃあ」


「お願いします」


「承知しました」


「ユキも着るんだ!」


「……少しだけ」


「可愛い!」


「まだできてないぞ、お主」


「絶対可愛い!」


「わふ!」


 シロも。


 尻尾ぶんぶん。


「じゃあ!」


 私は両手を上げる。


「料理する!」


「その前に」


「?」


 コハクが。


 食材を見る。


「何を作るか決めておるのか?」


「お鍋!」


「それ以外じゃ」


「…………」


「鍋!」


「何も考えておらぬな?」


「みんなで入れれば美味しくなる!」


「ならぬ場合もある!」


「えー?」


 メリエルが。


 すっと。


 蜂蜜の壺を持ち上げる。


「これ入れる?」


「入れる!」


「待て!」


 コハクが止めた。


「なぜ!?」


「何にでも蜂蜜を入れればよいわけではない!」


「少しくらいなら美味しいよー?」


「鍋全部で試すでない!」


「じゃあ一個だけ!」


「……一個なら」


「やった!」


「妾まで流されておる……」



 ◇



 結局。


 鍋はいくつか種類を分けることになった。


 お肉いっぱいの鍋。


 お魚中心の鍋。


 野菜いっぱいの鍋。


 小さな魔物たちでも食べやすい、薄味の鍋。


 それから。


「蜂蜜鍋!」


「実験鍋じゃ」


「美味しいって!」


「少量だけじゃぞ!」


「はーい!」


 メリエルと一緒に。


 ちょっとだけ。


 蜂蜜。


「おお」


「いい匂い!」


「まだ分からぬぞ」


「味見!」


「待て!」


「味見は大事!」


「メリエルと同じことを言い始めた……」


「えへへ」


「褒めておらぬ!」


 その横。


 ユキは。


 魚をじっと見てる。


「ユキ?」


「……何?」


「それ何匹目?」


「……分からない」


「食べてない?」


「……まだ」


「ほんと?」


「…………」


「ユキ?」


「……一匹だけ」


「食べたんだ!」


「……味見」


「メリエルが増えた!」


「味見は大事だよー!」


 メリエルが。


 遠くから親指を立てる。


「仲間増やさないでください!」


 クロエの声も飛んできた。


「わふぅ……」


「シロ」


 今度は。


 シロ。


 お肉を見てる。


「まだだよ」


「わふぅ……」


「まだ!」


「わふ……」


「そんな悲しそうな顔してもダメ!」


「わふぅ」


「…………」


「一個だけ?」


「お主!」


「だって!」


「わふっ!」


「喜んでる!」


「甘やかしすぎじゃ!」



 ◇



「できたー!」


 お昼を少し過ぎた頃。


 ようやく。


 全部の鍋が完成した。


 広場。


 たくさんの大鍋。


 長い机。


 敷物。


 果物。


 蜂蜜。


 飲み物。


 いっぱい。


「すごい……」


 昨日。


 広場を作ろうって決めたばっかりなのに。


 もう。


 宴会場みたい。


『いい匂い!』


『食べていい?』


『まだ?』


 小さな魔物たちが。


 周りに集まってる。


「待ってね!」


「もうすぐ!」


『きゅ!』


『ぷる!』


『ぴぃ!』


 そして。


「皆さん!」


 クロエが。


 広場の真ん中に立つ。


「準備が整いました!」


『おお!』


『やった!』


『食事だ!』


「おおー!」


「いっぱい!」


 蟻さん。


 蜘蛛さん。


 蜂さん。


 小さな魔物たち。


 みんな。


 集まってくる。


「なんか」


「すごいね!」


「……うん」


 ユキが。


 私の隣で。


 ちょっとだけ笑う。


「お主がやりたいと言い出したのじゃろう」


「そうだけど!」


「こんなに集まると思ってなかった!」


「妾もじゃ」


「わふ!」


「シロも?」


「わふっ!」


「よし!」


 私は。


 広場の真ん中へ。


「じゃあ!」


 いっぱい。


 こっち見てる。


「…………」


 何言えばいいんだろ。


「ユズ?」


 ユキ。


「お主」


 コハク。


「…………」


「とりあえず!」


 私は。


 両手を上げる。


「みんな食べよー!」


『おおー!』


『いただきます!』


『食べるぞ!』


「簡単!」


 クロエがびっくりしてる。


「いいじゃん!」


 メリエルが笑う。


「ユズ様らしくてよろしいのでは?」


 ネフィエラも。


 笑ってる。


「では」


 クロエが。


 少しだけ息を吐く。


「いただきましょう」


「うん!」



 ◇



「おいしい!」


「……おいしい」


「当然じゃ」


 コハクが。


 ちょっと得意そう。


「妾が見ておったからな」


「コハクいっぱい教えてくれたもんね!」


「そうじゃろう?」


「さすが!」


「もっと褒めてもよいぞ」


「コハクすごい!」


「うむ!」


 分かりやすい。


「わふっ!」


「シロも美味しい?」


「わふ!」


「よかった!」


 シロ。


 お肉。


 いっぱい。


 でも。


 まだ食べそう。


「ユキ?」


「……何?」


「魚ばっかり!」


「……好きだから」


「野菜も食べよう!」


「……後で」


「絶対?」


「……たぶん」


「ユキ!」


「ふふ」


 少し離れたところでは。


 ミレルナが。


 小さいシロ用のクッションを抱えてる。


「ミレルナ!」


「は、はい!」


「こっち来る?」


「いいんですか?」


「もちろん!」


「では……!」


 シロの近く。


 座る。


「わふ?」


「…………」


 ミレルナ。


 すぐシロ見てる。


「触りたい?」


「……はい」


「いいよ!」


「わふっ!」


「ありがとうございます!」


 嬉しそう。


「ほんとシロ好きだね!」


「もふもふなので……」


「分かる!」


「わふ!」


 その隣では。


 セリナージュが。


 小さな魔物たちに食べ物を配っている。


「慌てなくても大丈夫ですよ」


『きゅ!』


『ぷる!』


「まだありますからね」


 ルヴェリアは。


 料理を運びながら。


「ユズ様」


「ん?」


「エプロンに汁が」


「え?」


「もう付いてる!?」


「予想しておりました」


「ええー!?」


「替えもありますので」


「用意よすぎ!」


「必要かと思いまして」


「私そんなにこぼしそう!?」


「…………」


「また間が!」


「否定はいたしません」


「ひどい!」


 フィズリアは。


 蜂蜜鍋をじっと見てる。


「どう?」


「香草との相性は悪くありません」


「ほんと!?」


「ただし」


「?」


「蜂蜜が多いです」


「メリエル!」


「えー?」


「やっぱり入れすぎ!」


「美味しいじゃん!」


「甘い!」


「そこがいいの!」


「これは鍋じゃなくて別の料理じゃ!」


 コハクまで。


 ちょっと怒ってる。


 ゼルフィナは。


 最初。


 広場の端で周りを警戒してたけど。


「ゼルフィナ!」


「何」


「食べてる?」


「食べてる」


「美味しい?」


「……悪くない」


「グラちゃんみたいな言い方!」


「?」


「こっちの話!」


 みんな。


 ちゃんと。


 楽しんでる。



 ◇



「クロエ!」


「はい?」


「座って!」


「ですが」


 クロエ。


 まだ。


 料理を運んでる。


「まだ配膳が」


「もうみんな食べてるよ!」


「片付けもあります」


「後!」


「ですが」


「クロエ」


 メリエルが。


 すっと皿を差し出す。


「はい!」


「……なんです?」


「食べて!」


「私は今」


「今日は食べる日!」


「準備も終わったし!」


「しかし」


「あら」


 ネフィエラも。


 にっこり。


「たまには配下の皆さんへ任せてもよろしいのではなくて?」


「…………」


「クロエ?」


「…………」


「どうしました?」


「あなたに言われると」


 クロエが。


 ものすごく嫌そうな顔をする。


「腹が立ちます」


「まあ」


「ふふ」


「笑わないでください!」


「でも」


 ネフィエラが。


 クロエの隣に座る。


「今日くらいはよろしいでしょう?」


「…………」


「クロエ!」


 私も。


 空いてる場所を叩く。


「ここ!」


「一緒に食べよう!」


「…………」


 クロエが。


 周りを見る。


 蟻さんたち。


 楽しそうに食べてる。


『女王様!』


『こちらは大丈夫です!』


『お休みください!』


「…………」


 しばらく。


 黙って。


「……分かりました」


「やった!」


 座った!


「ただし」


「?」


「片付けは私もします」


「はいはい!」


「絶対です」


「分かった!」


「本当に分かっています?」


「食べよ!」


「聞いてください!」


 でも。


 クロエ。


 なんだか。


 ちょっと嬉しそう。


「美味しい?」


「……はい」


「よかった!」


 メリエルが。


 クロエのお皿に。


 どんどん食べ物を乗せる。


「ちょっと」


「いっぱい食べなよー!」


「自分で取れます!」


「これも美味しいよ!」


「多いです!」


「こっちも!」


「メリエル!」


「クロエはもうちょっと食べた方がいいよー」


「余計なお世話です!」


「ふふ」


 ネフィエラ。


 今日ずっと楽しそう。



 ◇



「…………」


 そして。


 一番大きな鍋。


「グラちゃん?」


『…………』


「どう?」


『…………』


「グラちゃん?」


『……うむ』


「美味しい?」


『悪くない』


「やった!」


『もう一杯』


「早い!」


 巨大な器。


 もう。


 空。


「クロエ!」


「はい!」


「おかわり!」


「もうですか!?」


『遅いぞ』


「今持ってきます!」


「グラちゃん急かさない!」


『待ちくたびれたと言ったであろう』


「それまだ言うの!?」


『当然だ』


「根に持つなあ!」


 次。


『もう一杯』


「え?」


 次。


『次』


「待って!」


 次。


『まだあるな』


「どれだけ食べるの!?」


『まだ腹六分ほどだ』


「嘘!?」


「古龍様は」


 クロエが。


 真剣な顔。


「どれほど召し上がるのですか……」


「分かんない!」


「ユズ様でも!?」


「だって今日初めてこんな量食べてるし!」


『前回は量が少なかったからな』


「ごめんって!」


『ゆえに今日は食う』


「はいはい!」


『あと鍋二つ』


「まだ!?」


 メリエルが。


 楽しそうに笑う。


「作った甲斐あるねー!」


「食材の減り方が想定以上です!」


「クロエ!」


「でも」


 ネフィエラが。


 グラちゃんを見る。


「古龍様がここまで召し上がるということは」


「美味しいということではなくて?」


「…………」


 クロエ。


 少し考える。


「……確かに」


「でしょ?」


「じゃあ成功!」


「まだ食べ終わっていません!」


「ほぼ成功!」


『ユズ』


「なに?」


『次』


「はいはい!」


 グラちゃん。


 すっごく。


 楽しんでる。



 ◇



 夕方。


 空が。


 少しずつ。


 赤くなってきた。


 宴会は。


 まだ続いてる。


 私は。


 少しだけ。


 広場から離れた場所に座った。


「ふう」


「疲れた?」


 ユキが。


 隣に来る。


「ちょっと!」


「……楽しかった?」


「うん!」


 前を見る。


 いっぱい。


 いる。


 シロ。


 ユキ。


 コハク。


 グラちゃん。


 クロエ。


 ネフィエラ。


 メリエル。


 ルヴェリア。


 フィズリア。


 ミレルナ。


 ゼルフィナ。


 セリナージュ。


 蟻さん。


 蜘蛛さん。


 蜂さん。


 小さな魔物たち。


 笑い声。


 鳴き声。


 食器の音。


 大きな鍋から。


 まだ。


 湯気が上がってる。


「なんか」


「……うん?」


「すっごく賑やかになったね」


「……うん」


「最初」


 ここ。


 草。


 川。


 木。


 グラちゃん。


 それだけだった。


「グラちゃん寝てたし」


『聞こえておるぞ』


「聞こえてた!」


『当然だ』


「食べながら聞いてる!」


『問題あるか』


「ない!」


 コハクが。


 こっちへ歩いてくる。


「何を眺めておる?」


「みんな!」


「見れば分かる」


「いっぱい増えたなーって!」


「お主が集めたのじゃろう」


「…………」


「そうだっけ?」


「そうじゃ!」


「最初の子らを連れてきたのも」


「クロエらを招いたのも」


「ネフィエラらに頼んだのも」


「メリエルらを連れてきたのも」


「全部お主じゃ!」


「おお……」


「改めて言われると」


「いっぱい!」


「他人事のように言うでない!」


「でも」


 私は。


 みんなを見る。


「楽しそうだから」


「まあいっか!」


「…………」


「まったく」


 コハクが。


 呆れたように笑う。


「お主らしいのう」


「でしょ!」


「褒めたつもりはない」


「えー?」


「わふっ!」


 シロも。


 いつの間にか。


 こっちに来てた。


「シロ!」


「わふ!」


「楽しかった?」


「わふっ!」


「よかった!」


 その時。


『ユズ』


「なに?」


『鍋』


「…………」


「まだ食べるの!?」


『当然だ』


「グラちゃん今日何杯目!?」


『数えておらん』


「私も!」


『なら問題ない』


「あるよ!」


「ふふ」


 ユキが笑う。


 コハクも。


 少し笑ってる。


 向こうでは。


 クロエとメリエルが。


 まだ何か言い合ってる。


 ネフィエラが。


 それを楽しそうに見てる。


 小さな魔物たちは。


 お腹いっぱいになったのか。


 敷物の上で寝始めてる。


「…………」


 いいな。


 こういうの。


「ねえ」


「……なに?」


「またやろうね!」


「……うん」


「次はもっと美味しいの作る!」


『当然だ』


「グラちゃんに言ってない!」


『我も参加する』


「知ってる!」


「むしろ一番楽しみにしてるじゃん!」


『しておらん』


「まだ言う!」


『しておらんものは、しておらん』


「はいはい!」


『その返事をやめよ』


「えへへ」


 また。


 みんなが笑う。



 ◇



 私はまだ。


 この場所を。


 何と呼べばいいのかなんて。


 考えていなかった。



 町とか。


 村とか。



 ましてや。



 もっと大きな何かだなんて。



 そんなこと。


 考えたこともない。



 ただ。



 シロがいて。


 ユキがいて。


 コハクがいて。


 グラちゃんがいて。



 新しく出会った。


 たくさんの魔物たちがいて。



 みんなが。


 安心して。



 食べて。


 眠って。


 笑って。



 自由に暮らせる。



「…………」


 私は。


 まだ続いている宴会を見ながら。


 笑った。


「なんか」


「いいね、こういうの!」


「……うん」


「わふっ!」


「そうじゃのう」


『ユズ』


「なに?」


『鍋がなくなった』


「ええー!?」


『追加だ』


「もう全部食べたの!?」


『足りぬ』


「クロエー!」


「もう食材がありません!」


「メリエルー!」


「果物ならあるよー!」


『鍋がよい』


「グラちゃんわがまま!」


『待たされたからな』


「まだ言ってるー!」



 賑やかな声が。



 日が沈み始めた森の中へ。



 いつまでも。



 いつまでも。



 響いていた。

これで一旦、主人公視点の話は区切りとなります。

次話からは別視点の話になります。

面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

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