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もふもふ召喚士の自由気ままなVRMMO冒険記 ~可愛い魔物を集めていたら、いつの間にか最強の魔物国家ができていました~  作者: 黒海苔
第2章:魔物達の居場所

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第19話:蟻たちのお引っ越し

「お願いします!」


 クロエが強く頭を下げた。


「うん!」


 私は崩れた通路を見る。


 向こうには、まだ蟻さんたちと卵、幼体が取り残されている。


「ユキ!」


「……うん」


 ユキが目を閉じる。


 猫耳がぴく、ぴくと動く。


「……ここ」


 ユキが崩れた壁の少し右側を指差した。


「……近い」


「この向こう?」


「……うん」


 クロエがすぐに振り返る。


「第四掘削班!」


『はい!』


「ここを掘ります!」


『ですが女王様!』


『水が――』


「分かっています!」


 クロエが地面を見る。


「直接向こうへ抜くのは危険です」


「少し上から、斜めに通路を作ってください!」


『承知しました!』


 蟻さんたちが一斉に動き出す。


「すごい……」


 速い。


 爪や顎、道具を使って、どんどん土を掘っていく。


「ユズ」


「ん?」


 コハクが崩れた壁をじっと見る。


「妾たちも、ぼーっとしておる場合ではないぞ」


「うん!」


「何すればいい?」


「まずは」


 コハクが流れてくる水を見る。


「これ以上、水が増えぬようにせねばならぬ」


「できるの?」


「書物で読んだだけじゃが、水は低い方へ流れる」


「うん」


「ならば、別の逃げ道を作ればよい」


「おお!」


「ただし」


「?」


「下手に掘れば、もっと水が流れ込む」


「…………」


「じゃあコハクお願い!」


「妾に丸投げするでない!」


「でも分かるんでしょ?」


「多少はな!」


「頼りにしてる!」


「……本当にお主は」


 コハクがため息をつく。


 でも、ちょっと嬉しそう。


「クロエ!」


「はい!」


「水! こっちに逃がせない?」


 コハクが地面を指差す。


「この壁の向こう、少し低くなっておるじゃろう」


「……確かに」


「排水路を作れば、流れを多少は逸らせるはずじゃ」


「すぐに確認します!」


 クロエはすぐに蟻さんたちへ指示を飛ばす。


「シロ!」


「わふ!」


「大きい石! どかせる?」


「わふっ!」


 シロが前へ出る。


「待て」


 コハクが止める。


「その姿では狭い」


「あ」


 そうだった。


 シロ、今は小さい。


「じゃあ、ここなら大きくなれる?」


「この広さなら」


 クロエが周りを見る。


「ぎりぎり可能でしょう」


「よし!」


 首輪をシロにつける。


 光が広がり、シロの身体がぐんぐん大きくなる。


「わふぅっ!」


「お願い!」


「わふ!」


 シロが崩れた大きな岩に身体を押しつける。


「…………!」


 ず。


 ずず。


「動いた!」


「そのまま!」


 蟻さんたちも横から一緒に押す。


「せーの!」


「わふっ!」


 ずずずずずっ!


 大きな岩が少しずつ横へ動いていく。


「すごい!」


「まだです!」


 クロエが叫ぶ。


「通路が開くまで!」


『はい!』


 私も何かしたい。


 でも、私には力がない。

 掘るのもできない。


「…………」


 何か、ないかな。


「……ユズ」


「ん?」


 ユキが私を見る。


「……転移」


「え?」


「……使えない?」


「…………」


「あ!」


 そうだ!


「転移!」


 それなら!


「でも」


 私は崩れた通路を見る。


「向こうに行ったことない」


「……うん」


 私が一回行った場所じゃないと飛べない。


「じゃあ」


「まず向こうに行けばいいんだ!」


「そうじゃな」


 コハクが頷く。


「通れるだけの穴ができれば、お主が一度向こうへ行き、そこから取り残された者たちを連れて戻れる」


「それだ!」


「クロエ!」


「はい!」


「通路! 私一人通れるくらいでいい!」


「何を?」


「向こうに行けたら、転移でみんな運べる!」


「…………転移?」


「うん!」


「一度行った場所なら、一緒にいる子たち連れて戻れるから!」


「…………」


 クロエが固まる。


「それは、長距離転移ですか?」


「そうだよ!」


「…………」


「どうしたの?」


「いえ」


 クロエが私を見る。


「後で、詳しく聞かせてください」


「うん?」


 なんだろ。


 そんなに珍しいのかな。


「今は救助が先です!」


「うん!」



 ◇



『開きます!』


 一匹の蟻さんが叫ぶ。


 小さな穴。


 でも、人一人なら通れそう。


「ユズ!」


「行く!」


「待て!」


 コハクが私の服を掴む。


「なに?」


「一人で行くな」


「でも」


「ユキも行け」


「……うん」


「妾も行く」


「コハクも?」


「当たり前じゃ」


「わふ!」


「シロは」


 クロエが大きなシロを見る。


「ここで待っていてください」


「わふぅ……」


「すぐ戻るよ!」


「わふ」


 私は穴へ入る。


「狭い!」


「文句を言うでない!」


「だって!」


「早く進め!」


「はーい!」


 土。


 泥。


 暗い。


 でも、ユキが前。

 コハクが後ろ。


「……もう少し」


 ユキが進む。


「……近い」


「ほんと?」


「……うん」


 そして、穴を抜けた。


「わっ」


 広い。


 でも、水がいっぱい。


 足元がびちゃびちゃだ。


「……ユズ」


「うん」


 ユキが奥を見る。


「……あっち」


 暗い通路の奥。


『きぃ……』


「!」


 声。


「いる!」


 走る。


「待て!」


 コハクもついてくる。


 曲がった先。


「…………」


 いた。


 蟻さんが三匹。


 その後ろに卵がいっぱい。


 小さな幼体も、ぎゅっと固まっている。


「大丈夫!?」


『……人間?』


「助けに来たよ!」


『女王様は……?』


「クロエもいる!」


「みんな待ってる!」


「…………」


 蟻さんたちが少し安心した顔をする。


「よし!」


「転移するよ!」


「待て」


「?」


 コハクが私を見る。


「卵は、誰が運ぶ?」


「あ」


 確かに。


「じゃあ、蟻さんたち!」


「卵持てる?」


『もちろんだ』


「幼体も?」


『運べる』


「じゃあ!」


「みんな私の近くに!」


 蟻さんたちが卵を大事そうに抱え、幼体も背中に乗せる。


「よし!」


 私はメニューを開く。


 《転移》


「戻るよ!」


 行き先。


 巣の入口。


 ……じゃなくて。


 クロエたちがいる、崩れた通路前。


「ここ!」


 《周囲の同行者を対象に含めますか?》


「はい!」


 光が広がる。


「わっ!」


『きぃ!?』


「大丈夫!」


 一瞬、視界が白くなって。


 そして。


「――着いた!」


『女王様!』


「!」


 クロエがこちらを見る。


「無事でしたか!」


『はい!』


『卵も!』


『幼体も!』


「よかった……」


 クロエが、すっごくほっとした顔をする。


「でも!」


「まだいる!」


「……ユキ」


「うん」


 ユキが耳を澄ませる。


「……もっと奥」


「何匹?」


「……多い」


「じゃあ」


「もう一回!」


「行くのですか!?」


「もちろん!」


「危険です!」


「でも」


「今なら助けられるよ!」


「…………」


「行こう!」


 また穴へ戻る。



 ◇



 二回。


 三回。


 四回。


「次!」


「ユズ!」


「まだいる!」


「分かっています!」


 何度も転移する。


 卵。


 幼体。


 怪我した蟻さん。


 動けない蟻さん。


 いっぱい。


 いっぱい運ぶ。


「……あと」


 ユキが目を閉じる。


「……四」


「四匹?」


「……うん」


「行こう!」


「お主」


「なに?」


「少し休め」


「大丈夫!」


「顔色が悪いぞ」


「でも!」


「ユズ」


「……ユキ」


「……無理したら、助けられなくなる」


「…………」


「分かった」


 ちょっとだけ休む。


「水」


 クロエが差し出してくれる。


「ありがとう!」


「こちらこそ」


「……本当に、ありがとうございます」


「まだ終わってないよ!」


「…………」


 クロエが少し笑った。


「そうですね」


「あと四匹」


「助けましょう」


「うん!」



 ◇



「いた!」


 最後の四匹。


 崩れた壁のすぐ近く。


「大丈夫!?」


『……女王様は?』


「待ってる!」


「行こう!」


 その時。


 ミシ。


「…………」


「ユズ」


「聞こえた」


 ミシミシ。


 上。


「崩れる!」


「急ぐぞ!」


「みんな近くに!」


 四匹が集まる。


「転移!」


 光。


 その瞬間。


 ゴオオオオオオオッ!


「っ!」


 視界が白くなる。


 そして。


「――!」


 戻った。


「全員!」


『います!』


「よかった!」


 直後。


 ドドドドドドドドッ!


「…………」


 通路が完全に崩れた。


「…………」


「あと少し」


 クロエが呟く。


「遅ければ……」


「…………」


「間に合ったよ!」


「はい」


 クロエが私を見る。


 そして、深く頭を下げた。


「……本当に、ありがとうございました」


「え」


「我らの同胞を救っていただきました」


「そんな!」


「みんなで助けたんだよ!」


「ユキも!」


「……うん」


「コハクも!」


「妾は少し知恵を貸しただけじゃ」


「シロも!」


「わふっ!」


「蟻さんたちも!」


「…………」


「だから、私だけじゃないよ!」


「…………」


 クロエはしばらく何も言わなかった。


「……そうですか」


「うん!」


「では」


 少し笑う。


「皆様に、感謝いたします」


「うん!」



 ◇



 救助は終わった。


 でも。


「…………」


 巣の中は、さっきよりずっと慌ただしい。


 蟻さんたちが、あちこちを補修している。


「……クロエ」


「はい」


「ここ、大丈夫?」


「…………」


 クロエが崩れた通路を見る。


「正直に申し上げれば、もう長くはありません」


「…………」


「今回の場所だけではないのです」


「別の区画でも、少しずつ崩落が起きています」


「じゃあ」


「やっぱり引っ越した方がいいんじゃない?」


「…………」


「ですが」


「クロエ」


「?」


「私のところ来なよ!」


「…………」


 もう一回、言う。


「土地、いっぱいあるよ!」


「川もある!」


「森もある!」


「グラちゃんもいる!」


「それに、家は……」


「…………」


「まだないけど!」


「そこは威張るところではないぞ」


「えへへ」


「…………」


 クロエが私を見る。


「本当に、我ら全てを受け入れるつもりなのですか?」


「うん!」


「数百の同胞がいます」


「うん!」


「卵も」


「うん!」


「幼体も」


「うん!」


「食料も、資材も、それら全てを持ち込むことになります」


「いいよ!」


「即答……」


「だって、広いし!」


「…………」


 コハクが少し笑う。


「お主らしいのう」


「でしょ?」


「褒めてはおらぬ」


「えー?」


 クロエはまだ迷っている。


「でも」


 私は続ける。


「今のまま、ここにいる方が危ないんでしょ?」


「…………」


「それなら、安全なところに行こうよ」


「…………」


「グラちゃんのところなら、この森の魔物もそんなに近づかないし」


「みんな、安心して暮らせると思う」


「古龍様の領域……」


「うん!」


「本人も、好きにしていいって言ってるよ!」


「…………」


「本当に、古龍様が?」


「うん!」


「グラちゃん、結構優しいよ!」


「……その認識は」


 クロエがすごく複雑そうな顔をする。


「我らとは、かなり違うようですね」


「?」


「まあよいではないか」


 コハクが肩をすくめる。


「少なくとも、住む許可を得ておるのは事実じゃ」


「…………」


 クロエが目を閉じる。


 長い沈黙。


「…………」


 そして、ゆっくり目を開けた。


「分かりました」


「!」


「我ら蟻族、あなたの申し出を受けさせていただきます」


「ほんと!?」


「はい」


「やったー!」


「ただし」


「?」


「これは、我ら一族全体の移住です」


「途中で、やはり駄目だと言われても、簡単に戻ることはできません」


「言わないよ!」


「…………」


「絶対!」


「…………」


 クロエが少しだけ笑った。


「では、お言葉に甘えます」


「うん!」



 ◇



「じゃあ!」


「引っ越し!」


「……すぐやるのか?」


「だって危ないし!」


「それはそうじゃが」


「ユズ」


 クロエが少し困った顔をする。


「全員を一度に移動させるのは、さすがに難しいのでは?」


「うーん」


 私の転移。


 何人までいけるんだろ。


「分かんない!」


「分からないのですか!?」


「でも、何回かに分ければいいよ!」


「…………」


「試そう!」


「お主は本当に、やりながら考えるのう」


「だって早いじゃん!」


「早ければよいというものではない!」



 ◇



 一回目。


 卵。


 幼体。


 それを運ぶ蟻さんたち。


「行くよ!」


 《転移》


 光が広がる。


「わっ!」


 そして。


「到着!」


 草原。


 川。


 森。


 いつもの場所。


「…………」


「…………」


 蟻さんたちが固まっている。


「どうしたの?」


「ユズ」


「ん?」


「……後ろ」


「?」


 振り向く。


「…………」


 グラちゃん。


 寝てる。


「グラちゃーん!」


『…………』


「グラちゃん!」


『…………』


「住民増えたよー!」


『……騒ぐな』


「あ、起きた!」


 グラちゃんが目を開ける。


 そして、蟻さんたちを見る。


『…………』


「この子たち!」


「今日からここに住むの!」


『……増えたな』


「まだ一部だよ!」


『…………』


「あといっぱい来る!」


『…………』


「グラちゃん?」


『好きにせよ』


「やった!」


 蟻さんたちは。


「…………」


 動かない。


「どうしたの?」


『……古龍様』


 一匹が震えている。


『本当に、ここに……』


「うん!」


「大丈夫だよ!」


「グラちゃん優しいから!」


『余計なことを言うな』


「ほら!」


「怒ってない!」


『…………』


「たぶん!」


『余計なことを言うなと言った』


「えへへ」



 ◇



 そこから何回も、何回も転移する。


 蟻さん。


 卵。


 幼体。


 食料。


 資材。


 道具。


 いっぱい。


「これで最後!」


 光。


 そして。


「到着!」


 最後に、クロエ。


「…………」


 クロエが辺りを見る。


 川。


 草原。


 森。


 グラちゃん。


 小さな魔物たち。


 そして、先に来た蟻さんたち。


「ここが……」


「うん!」


「今日から、みんなの家!」


「…………」


 クロエがグラちゃんを見る。


 そして、深く頭を下げた。


「古龍グランヴェル様」


「我ら一族の滞在をお許しいただき、感謝いたします」


『……我は何もしておらん』


「ですが」


『ユズに任せた』


「…………」


 クロエが私を見る。


「本当に、任されているのですね」


「うん!」


「たぶん!」


「そこは断言してよいところじゃろう!」


「えへへ」



 ◇



「それで」


 クロエが周りを見る。


「我らが住む場所は、どちらでしょうか?」


「え?」


「住居です」


「あ!」


「あるよ!」


「こちら!」


「ユズ」


「……見せるの?」


「もちろん!」


「……そう」


 ユキが、なんか微妙な顔をする。


「こっち!」


 歩く。


 そして。


「じゃーん!」


「…………」


 私たちが頑張って作った寝床。


「…………」


 クロエが固まる。


「どう?」


「…………」


「みんなで作ったんだよ!」


「…………」


「……これは」


「うん!」


「住居……ですか?」


「一応!」


「一応と言ったぞ、お主」


「でも」


「雨はしのげるよ!」


「たぶん!」


「…………」


 クロエが目を閉じる。


「…………」


「クロエ?」


「……分かりました」


「?」


 ゆっくり目を開ける。


「ユズ様」


「え?」


「我ら一族を救っていただいた恩があります」


「そんな!」


「いいよ!」


「いいえ」


 クロエが首を振る。


「それでは、我らの気が済みません」


「…………」


「我ら蟻族は」


 クロエが周りの蟻さんたちを見る。


「掘ること」


「運ぶこと」


「築くこと」


「そして、住処を整えることを得意としています」


「…………」


「ですから」


 クロエが私を見る。


「この場所の住居は、我らにお任せください」


「…………」


「ほんと!?」


「はい」


「やったー!」


 思わずクロエの手をぎゅっと握る。


「わっ」


「ありがとう!」


「これで、みんなちゃんとした家に住める!」


「…………」


 クロエがちょっと驚いている。


 でも。


「……はい」


 少し笑った。


「必ず、皆が安心して暮らせる場所を作ってみせます」


「うん!」


 これで。


 家、解決!


 ……たぶん!



 こうして、最初の住民たちに続いて、たくさんの蟻さんたちが新しく仲間になった。


 そして。


 何もなかったこの場所に。


 少しずつ。


 みんなが暮らすための形が、でき始めようとしていた。

面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

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