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もふもふ召喚士の自由気ままなVRMMO冒険記 ~可愛い魔物を集めていたら、いつの間にか最強の魔物国家ができていました~  作者: 黒海苔
第1章:神が作ったゲーム

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第13話:大きなトカゲさん

「ここなら、本当にみんなの居場所を作れるかも!」


「わふっ!」


「……うん」


「まだ決めるには早いぞ、お主」


「えへへ」


「笑って誤魔化すでない!」


 でも。


 私は。


 目の前に広がる景色を見て。


 どうしても。


 わくわくしてしまう。


 森の中心。


 なのに。


 ここだけは広く開けていて。


 近くには水もある。


 食べ物もありそう。


 人の気配もない。


 そして。


 周りには。


 たくさんの魔物がいるみたいなのに。


 この場所だけ。


 不思議なくらい静か。


「よし!」


 私は立ち上がる。


「もっとこの辺、見てみよう!」


「わふ!」


「……うん」


「まあ、それくらいは必要じゃろうな」


「ノアちゃんも一緒に行こう!」


「いいよ」


 そうして。


 私たちは。


 周りを見て回ることにした。


    ◇


「わぁ!」


 少し歩いただけで。


 いろんなものが見つかった。


「木の実いっぱい!」


「わふ!」


 シロが。


 木の根元をくんくんして。


「ん?」


 前足で地面を掘る。


「あ!」


 出てきたのは。


 大きなキノコ。


「シロすごい!」


「わふー!」


「待て待て」


 コハクが近寄ってくる。


「なんでも口に入れるでないぞ」


「これ食べられない?」


「…………」


 コハクが匂いを嗅いで。


 じっと見る。


「これは食える」


「やった!」


「じゃが、似たような見た目でも毒を持つものはあるからの」


「怖っ」


「だから言っておる」


「じゃあコハクに聞けば安心だね!」


「妾を毒見役のように扱うでない!」


「そんなつもりないよ!?」


 少し先では。


「……ユズ」


「ん?」


 ユキが。


 川辺でしゃがんでいる。


 今日は。


 周りに人がいないから。


 人の姿。


「どうしたの?」


「……魚」


「え?」


 川を見る。


「おお!」


 澄んだ水の中。


 銀色の魚が。


 何匹も泳いでいる。


「魚もいる!」


「……いっぱい」


「すごい!」


「わふ!」


 シロも。


 川へ顔を近づける。


「落ちないでね?」


「わふ!」


「ほんとに住めそう……」


 水。


 食べ物。


 広い土地。


 それに。


「お?」


 少し離れたところ。


 赤い実をつけた木。


「ノアちゃん、あれ食べられる?」


「食べられるよ」


「ほんと?」


「うん。甘いよ」


「やった!」


 私は。


 実を一つ取る。


「いただきます!」


 ぱくっ。


「…………」


「どう?」


「甘い!」


「でしょ?」


「おいしい!」


「わふ!」


「シロも食べる?」


「わふ!」


「待て」


「ん?」


 また。


 コハク。


「今度はなに?」


「なぜノアは、そんなに迷いなく食えるものを判別できるのじゃ?」


「え?」


「この森へ来たことがあるからじゃない?」


 私は普通に答える。


「それはそうじゃが……」


 コハクが。


 ノアちゃんを見る。


「それにしても詳しすぎる気がするのう」


「そう?」


 ノアちゃんは。


 いつも通り。


 にこっと笑う。


「なんとなく分かるんだよ」


「なんとなくで食えるものと毒物を判断するでない!」


「大丈夫だよ」


「何がじゃ!」


「コハク、心配性だね」


「お主らが心配しなさすぎるのじゃ!」


 私は。


 ノアちゃんと顔を見合わせる。


「ね?」


「ね」


「勝手に通じ合うでない!」


 なんだか。


 楽しい。


 気づけば。


 場所探しをしていたはずなのに。


 すっかり。


 遠足みたいになっていた。


「…………」


 そして。


 周りを見る。


 キノコ。


 木の実。


 魚。


 野草。


「…………」


 これ。


「ねえ!」


「なんじゃ?」


「……?」


「わふ?」


「なに?」


 みんなが。


 私を見る。


「せっかくだし!」


 私は笑う。


「ここにあるもので、ご飯作らない?」


「ご飯?」


「うん!」


 そして。


「鍋とか!」


「鍋?」


 ノアちゃんが首を傾げる。


「鍋パーティー!」


「いいね」


「でしょ!?」


 ちょうど。


 ミルフィアにいた時に買っておいた野外調理セットが、アイテムの中に入っている。


 鍋。


 小さな包丁。


 食器。


 それから、簡単な調味料。


 いつか外でご飯を作れたら楽しそうだなーと思って買っておいたものだ。


 まさか、こんなに早く使うことになるとは思わなかったけど。


「道具もちゃんとあるよ!」


「いつの間にそんなものを買っておったのじゃ」


「ミルフィアにいた時!」


「……お主、冒険の準備より食事の準備の方が充実しておらぬか?」


「ご飯は大事だよ?」


「それは否定せぬが……」


「待て」


 コハクが。


 すごく嫌な予感がするみたいな顔をする。


「お主」


「なに?」


「場所を探しに来たのではなかったか?」


「うん!」


「ではなぜ鍋になる!?」


「食べ物がちゃんとあるか確認するのも大事でしょ?」


「…………」


「ね?」


「…………」


「コハク?」


「もっともらしいことを言っておるが」


「うん」


「絶対に遊びたいだけじゃろう」


「…………」


「図星じゃな?」


「でも楽しい方がいいじゃん!」


「開き直るでない!」


    ◇


 ということで。


 鍋パーティーをすることになった。


「よーし!」


 食材集め開始!


「シロは、食べられそうなものの匂い探せる?」


「わふ!」


「ユキは魚お願いできる?」


「……うん」


「コハクは食べられるものかどうか教えて!」


「妾の扱いが便利係になっておらぬか?」


「頼りにしてる!」


「……まあよい」


「ノアちゃんは?」


「ボク?」


「一緒に探そう!」


「うん」


 それぞれ。


 森の周りへ散らばる。


    ◇


「シロ!」


「わふ!」


「これ?」


 シロが見つけた。


 細長い草。


「コハクー!」


「なんじゃ!」


「これ食べられる?」


「…………」


 コハクが確認する。


「食える」


「やった!」


「じゃが、生では苦いぞ」


「鍋なら大丈夫?」


「煮ればいけるじゃろう」


「よし!」


    ◇


「ユズ」


「ん?」


 ユキ。


 手には。


 魚。


「すごい!」


「……捕まえた」


「どうやって!?」


「……こう」


 ユキが。


 川へ手を入れて。


 ぱっ。


「…………」


 また一匹。


「速っ!?」


「……得意」


「すごいよユキ!」


「……ん」


 ちょっと嬉しそう。


    ◇


「ユズ」


「なに?」


 今度はノアちゃん。


「これも使えるよ」


「なにこれ?」


 丸い。


 白っぽい。


 根っこ?


「煮ると甘くなる」


「へえ!」


「あとこれ」


「おお!」


「それと」


「まだあるの!?」


「いっぱいあるよ」


 ノアちゃん。


 詳しい。


「やっぱりノアちゃんすごいね!」


「そう?」


「うん!」


 遠くで。


 コハクが。


「怪しい……」


 と呟いていた。


    ◇


 しばらくして。


 材料は。


 たくさん集まった。


 魚。


 キノコ。


 野草。


 根菜みたいなもの。


 木の実。


「これだけあれば十分だね!」


 私はアイテムから、ミルフィアで買っておいた野外調理セットを取り出す。


 大きめの鍋。


 小さな包丁。


 食器。


 塩や香草なんかの簡単な調味料。


「よし!」


 近くの石を集めて。


 簡単なかまどを作る。


 そこへ鍋を置く。


 火を起こして。


 川から汲んだ水を入れて。


 具材を。


 どんどん入れていく。


「シロ、それはまだ!」


「わふ?」


「生だから!」


「わふ……」


「待ってて!」


「わふ」


「ユキ、その魚こっち!」


「……うん」


「コハク、それ入れていい?」


「それは最後じゃ」


「はーい!」


「ノアちゃん味見お願い!」


「いいよ」


 ぐつぐつ。


 ぐつぐつ。


 いい匂い。


「…………」


 みんなの視線が。


 鍋へ集まる。


「まだ?」


「もう少し!」


「わふ……」


「……おなかすいた」


「妾もじゃ」


「ボクも」


「もうちょっとだから!」


 そして。


「…………」


 味を見る。


「うん!」


 完成!


「できたー!」


「わふー!」


「……おいしそう」


「よい匂いじゃ!」


「いただきまーす」


「待ってノアちゃん早い!」


「ふふ」


「よーし!」


 私は。


 両手を上げる。


「鍋パーティーだー!」


「わふー!」


「……おー」


「うむ!」


「おー」


    ◇


「シロ、それ私の!」


「わふ!」


「取った!?」


「わふわふ!」


「返してー!」


「わふ!」


「……ユズ」


「ん?」


「これ、おいしい」


 ユキが。


 魚を食べながら。


 少し嬉しそうにしている。


「ほんと?」


「……うん」


「よかった!」


「ユズ!」


「今度はなに!?」


「妾の分が少ないぞ!」


「ええ!?」


「もっと魚を寄越せ!」


「さっき食べてたじゃん!」


「足りぬ!」


「食いしん坊!」


「誰がじゃ!」


「コハク!」


「名前を答えるでない!」


「ノアちゃん、これ食べる?」


「うん」


「はい!」


「ありがとう」


 わいわい。


 がやがや。


 楽しい。


「…………」


 ふと。


 少し離れたところを見る。


 大きな岩。


 いや。


 岩山?


「…………」


 こんなの。


 さっきあったっけ?


「まあいっか」


「何がじゃ?」


「なんでもない!」


 そのまま。


 鍋を食べる。


「シロ! それ入れすぎ!」


「わふ!」


「コハク、それ私の!」


「早い者勝ちじゃ!」


「ずるい!」


「……ユズ、こっち」


「なに?」


「……あーん」


「え!?」


「……食べる?」


「食べる!」


「ノアちゃんも!」


「ボクも?」


「うん!」


「じゃあ」


「はい!」


 がやがや。


 わいわい。


 その時。


 ズズズズズ……。


「…………」


「ん?」


 地面が。


 揺れた。


「地震?」


「……違う」


 ユキが。


 立ち上がる。


 耳が。


 ぴんっと立つ。


「わふ……!」


 シロも。


 低く唸る。


「これは……」


 コハクの表情が変わる。


「何?」


 ズズズズズ……。


 また。


 地面が揺れる。


 そして。


 さっきの。


 岩山。


 それが。


「…………」


 動いた。


「え?」


 黒銀色の。


 巨大な鱗。


 ゆっくりと。


 広がる翼。


 太い。


 角。


 そして。


 黄金色の瞳。


「…………」


「…………」


「…………」


 大きい。


 とにかく。


 大きい。


 大きくなった時のシロでさえ。


 小さく見えてしまいそうなくらい。


「…………」


 巨大な頭が。


 こちらを向く。


『……騒がしい』


「ひっ!?」


 低い声。


 空気が震える。


『我が眠りを妨げるとは』


 黄金色の瞳が。


 私たちを見る。


『何者だ』


「…………」


 怖い。


 めちゃくちゃ怖い。


 さっきまで。


 岩だと思ってたのに。


『しかも』


 巨大な顔が。


 少し近づく。


『我が領域へ勝手に入り込み』


 鍋を見る。


『宴まで始めるとは』


「…………」


『何事だ』


「ひえぇぇぇぇっ!?」


 私は。


 思わず。


 ユキとシロを抱き寄せる。


「わふ!?」


「……ユズ」


「やばいやばいやばい!」


 これ。


 絶対。


 怒ってる!


「ノ、ノアちゃん!」


「なに?」


「なんでそんな普通なの!?」


 ノアちゃんは。


 鍋の前。


 普通に座っていた。


「大丈夫だよ、ユズ」


「どこが!?」


 ノアちゃんが。


 巨大な何かを見る。


「ただの大きいトカゲさんだから」


「…………」


「…………」


『…………』


 巨大な何かが。


 止まった。


『誰がトカゲだ』


「しゃ、喋った!?」


「さっきから喋ってるよ」


「そういう意味じゃなくて!」


『我は古龍グランヴェル』


 巨大な翼が。


 ゆっくり動く。


『この森の中心を守護する者』


『我をトカゲなどと呼ぶな』


「こ、古龍……?」


 私は。


 ノアちゃんを見る。


「ノアちゃん」


「ん?」


「古龍って言ってるよ?」


「ああ、それ?」


「うん!」


「大丈夫」


「何が!?」


 ノアちゃんが。


 にっこり笑う。


「“こりゅう”っていうのはね」


「うん」


「小さい竜って書いて《小竜》って意味なんだよ」


「小さい竜?」


『…………』


「うん」


 ノアちゃんが。


 巨大なグランヴェルを見る。


「このトカゲさん」


『おい』


「本当は大きなトカゲなのに」


『おい』


「ちょっと見栄っ張りだから」


『聞いているのか』


「大きなトカゲじゃなくて」


 ノアちゃんが。


 人差し指を立てる。


「小さな竜を名乗ってるんだよ」


「へえ……」


『違う!』


 ものすごい声。


「ひっ!」


「ほら」


 ノアちゃんが笑う。


「そう考えると可愛いでしょ?」


「…………」


 私は。


 グランヴェルを見る。


 大きい。


 すっごく大きい。


 怖い。


 でも。


 自分で。


 小さい竜って名乗ってる。


「…………」


「……ちょっと可愛いかも」


『なぜそうなる!?』


「お主!」


 コハクが。


 私の前へ出る。


「騙されるでない!」


「え?」


「どう見ても古龍じゃ!」


「でもノアちゃんが」


「ノアを信じすぎじゃ!」


「だって」


 ノアちゃん。


 いい子だし。


「大丈夫って言ってるし」


「だからそれが怪しいのじゃ!」


『…………』


 グランヴェルが。


 ノアちゃんを見る。


『…………』


「?」


 なんだろう。


 さっきまで。


 すっごく怒ってたのに。


「どうしたの?」


 ノアちゃんが。


 首を傾げる。


『…………いや』


「?」


 グランヴェル。


 急に。


 静かになった。


「やっぱり大丈夫なんじゃない?」


「何を根拠に言っておる!」


「だって怒らなくなったし」


『我は怒っている!』


「怒ってた!」


「見れば分かるわ!」


「でも」


 ノアちゃんが。


 鍋を食べながら言う。


「寝起きだから機嫌悪いだけだよ」


『貴様……!』


 グランヴェルが。


 ノアちゃんを見る。


「…………」


『…………』


 また。


 止まった。


「?」


「ほら」


 ノアちゃんが言う。


「大丈夫」


「そっか!」


「納得するな、お主!」


    ◇


『とにかく』


 グランヴェルが。


 低い声を響かせる。


『今すぐ我が領域から立ち去れ』


「えー」


『えー、ではない』


『我は眠い』


「…………」


 眠いんだ。


「じゃあ」


『なんだ』


 私は。


 鍋を見る。


 グランヴェルを見る。


 また。


 鍋を見る。


「トカゲさんも鍋食べる?」


『…………』


「…………」


『何?』


「いっぱい作ったし!」


「お主は何を言っておる!?」


 コハクが叫ぶ。


「だって!」


「だってではない!」


「一人で寝てたんでしょ?」


『一人で寝ていたのではない。我は一人で眠るのを好む』


「同じじゃない?」


『違う』


「でも!」


 私は。


 鍋を指差す。


「みんなで食べた方が楽しいよ!」


『…………』


「ね?」


『…………』


「食べない?」


「いいんじゃない?」


 ノアちゃんが。


 さらっと言った。


『…………』


 グランヴェルが。


 また。


 ノアちゃんを見る。


    ◇


 ――グランヴェル視点。


 何故。


 何故。


 あの御方が。


 ここにいる。


 目覚めた直後。


 我が領域へ勝手に入り込み。


 騒がしく宴を開いていた者たち。


 最初は。


 ただの侵入者だと思った。


 人の娘。


 神狼。


 月影猫。


 九尾の妖狐。


 それだけでも。


 十分に妙ではある。


 だが。


 それ以上に。


 あり得ぬ存在がいた。


 桃色の髪。


 人の娘の姿。


 気配も。


 力も。


 ほとんど感じない。


 だが。


 分からぬはずがない。


 姿を変えようと。


 気配を隠そうと。


 我が。


 見紛うはずがない。


 あの存在を。


 我ら古龍ですら。


 本能で理解する。


 決して。


 逆らってはならぬ存在。


 何故。


 その御方が。


 この人の娘と。


 鍋を囲んでいる?


 しかも。


「大きなトカゲさん」


 などと。


 我を呼んでいる。


 理解できぬ。


 理解したくもない。


 そして。


 その御方は。


 言った。


「いいんじゃない?」


 と。


『…………』


 断れるはずがない。


 命令ではない。


 ただ。


 食べればいい。


 そう言っただけ。


 だが。


 我には。


 それで十分だった。


 それに。


 気になる。


 目の前の。


 この娘。


 神狼。


 月影猫。


 九尾。


 それらが。


 当たり前のように。


 その傍にいる。


 そして。


 何より。


 あの御方まで。


 一緒にいる。


 何者だ。


 この娘は。


    ◇


『……一口だけだ』


「ほんと!?」


 ユズが。


 ぱあっと笑った。


「やった!」


「何を喜んでおるのじゃ、お主……」


「だって一緒に食べてくれるって!」


『一口だけだと言った』


「はいはい!」


 ユズが。


 鍋から。


 具材を取り分ける。


「これで足りる?」


『…………』


「少ない?」


『我の身体を見て分からぬのか』


「あ」


「じゃあもっと!」


「お主、全部なくなるぞ!」


「また作ればいいよ!」


「そういう問題では――」


「はい!」


 ユズが。


 大きめに取り分ける。


『…………』


 我は。


 それを口へ運ぶ。


「どう?」


『…………』


 魚。


 キノコ。


 野草。


 決して。


 希少な食材ではない。


 むしろ。


 我が領域に。


 いくらでもあるもの。


 なのに。


「どう?」


『…………』


 もう一口。


「お?」


 さらに。


 一口。


「おお?」


 気づけば。


 器は。


 空になっていた。


「…………」


『…………』


「おいしかった?」


『……悪くない』


「ほんと!?」


「気に入ったみたいだね」


 ノアが言う。


『黙れ』


「ふふ」


「じゃあ!」


 ユズが。


 鍋を見る。


「もう一杯!」


『うむ』


「お主!?」


 コハクが叫ぶ。


「普通におかわりしておるぞ!」


『……何か問題があるか』


「さっきまで出ていけと言っておったじゃろう!」


『それとこれは別だ』


「別なの!?」


 ユズが驚く。


『別だ』


「そっか!」


「納得するでない!」


    ◇


 でも。


 鍋には。


 限りがある。


「…………」


 私は。


 鍋の底を見る。


「なくなっちゃった」


『…………』


「…………」


『……そうか』


「残念そう!」


『残念ではない』


「ほんと?」


『うむ』


「また食べたい?」


『…………』


「食べたい?」


『…………』


「食べたいんだ?」


『…………』


「黙ってるってことは」


『やかましい』


「ふふ」


 なんだ。


 ちょっと。


 可愛いかも。


「じゃあ!」


 私は。


 笑う。


「また作ってあげる!」


『…………何?』


「今度はもっといっぱい!」


『…………』


「だから」


 思いつく。


「トカゲさんも一緒に来る?」


『我は古龍だ!』


「うんうん」


『うんうん、ではない!』


「小さい竜なんだよね!」


『違う!!』


「わっ!」


「だから言ったじゃろう!」


 コハクが。


 頭を抱える。


「ノアちゃん」


「なに?」


「一緒に来たら、また鍋食べられるよね?」


「うん」


『…………』


 グランヴェルが。


 黙る。


「どうする?」


『…………』


 しばらく。


 本当に。


 しばらく。


 考えて。


『……よかろう』


「ほんと!?」


『しばらく貴様らに付き合ってやる』


「やったー!」


『ただし』


「なに?」


『先ほどの鍋は』


「うん」


『また作れ』


「もちろん!」


 その瞬間。


 目の前に。


 文字が浮かんだ。


《古龍グランヴェルから契約を申し込まれました》


「おお!」


「お主、驚くところが違うじゃろう!」


「だって契約だよ!」


 どうする?


 そんなの。


 決まってる。


「もちろん!」


《古龍グランヴェルとの契約が成立しました》


「やった!」


 また。


 仲間が増えた!


「これからよろしくね!」


『うむ』


「グランヴェル!」


『ああ』


「…………」


『どうした』


「名前、ちょっと長いね」


『……何?』


「呼ぶたびにグランヴェルって言うの大変そう」


『我が名に文句をつけるな』


「じゃあ……」


 私は。


 少し考える。


「グラちゃん!」


『…………』


「どう?」


『断る』


「えー!」


『なぜ我がそのような呼ばれ方をせねばならぬ!』


「可愛いのに」


『可愛さなど求めておらぬ!』


「いい名前だと思うよ」


 ノアちゃんが。


 にこにこしながら言う。


『貴様まで言うな!』


「じゃあ決まり!」


『勝手に決めるな!』


「よろしくね、グラちゃん!」


『…………』


「わふ!」


「……よろしく」


「うむ。まあ、よろしくしてやろう」


『…………』


「グラちゃん?」


『……好きに呼べ』


「やった!」


『なぜ喜ぶ……』


 なんだか。


 急に。


 怖くなくなった。


 大きくて。


 ちょっと偉そうで。


 でも。


 鍋が好きな。


 大きなトカゲさん。


「…………」


 あ。


 そうだ。


「ねえ、グラちゃん」


『なんだ』


「ここって」


 私は。


 周りを見る。


「グラちゃんの場所なんだよね?」


『そうだ』


「じゃあ」


 シロ。


 ユキ。


 コハク。


 そして。


 グランヴェルを見る。


「ここに」


 私は。


 笑った。


「魔物のみんなが安心して暮らせる場所を作ってもいい?」


『…………』

挿絵(By みてみん)

↑大きなトカゲさんの立ち絵


追記 10/12

鍋がどこから出てきたのかについて説明が抜けていたため、ミルフィアで購入した野外調理セットを持っていたという描写を追加しました。

物語の流れや設定に大きな変更はありません。


面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
ユズ、精神病院行ったほうがいいよ。言動も行動も一般的な17才と比べても幼稚すぎるよ。ノアのこと信用する理由が意味不明。コイツ、契約した自分の仲間の警告より会うのが2度目の自称プレイヤーの言う事を愚直に…
鍋はどこから出てきたんだろう。
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