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もふもふ召喚士の自由気ままなVRMMO冒険記 ~可愛い魔物を集めていたら、いつの間にか最強の魔物国家ができていました~  作者: 黒海苔
第1章:神が作ったゲーム

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第12話:ノアちゃん、再び

 次の日。


 学校から帰って。


 私はいつものように《エルディア》へログインした。


 視界が切り替わる。


 見慣れた宿の部屋。


「ただいまー!」


「わふっ!」


「わっ!」


 真っ先に飛びついてきたシロを。


 慌てて抱き止める。


「シロ、ただいま!」


「わふー!」


 そのまま。


 もふもふ。


 ふわふわ。


 うん。


 今日も最高。


「……おかえり、ユズ」


「ユキ!」


 ベッドの近くには。


 人の姿になったユキ。


 銀灰色の髪。


 ピンク色の瞳。


 猫耳と。


 ふわふわの尻尾。


「ただいま!」


「……うん」


「ようやく戻ってきたか、お主」


「コハク!」


 窓際には。


 人の姿になったコハク。


 白銀色から淡い桜色へ変わる長い髪。


 大きな狐耳。


 赤橙色の瞳。


 赤、白、金を基調にした華やかな和装。


「待ってた?」


「待っておったわ!」


「えっ」


 思っていたより。


 素直だった。


「二日も帰ってこなければ、待ちもする!」


「…………」


「二日?」


「なんじゃ、その顔は」


「だって」


 私は首を傾げる。


「昨日ログアウトしたばっかりだよ?」


「昨日?」


 今度は。


 コハクが首を傾げた。


「お主がどこぞへ消えてから、もう二日は経っておるぞ?」


「…………」


「…………」


「あ」


 そうだった。


 《エルディア》の時間は。


 現実世界の三倍の速さで進んでいる。


 現実では一日でも。


 こっちでは。


 もう二日以上経っている。


「そういえばそうだった!」


「忘れておったのか!?」


「だって私の感覚だと昨日なんだもん!」


「何を言っておる?」


「あ」


 そういえば。


 コハクは。


 プレイヤーとか。


 現実世界とか。


 そういうことを知らない。


「えっと……」


「なんじゃ?」


「なんでもない!」


「どう考えても何かあるじゃろう!」


「気にしない気にしない!」


「お主は気にしなさすぎじゃ!」


「……ふふ」


 ユキが小さく笑った。


「ユキ!?」


「……ユズらしい」


「わふ!」


「シロまで!?」


 なんか。


 みんなに呆れられてる気がする。


「まあいいや!」


「よくないわ!」


 私はシロを床へ下ろして。


 ぐっと拳を握る。


「今日は場所探ししよう!」


「わふっ!」


「……うん」


「ようやくじゃな」


「ようやくって!」


 私は頬を膨らませる。


「私の感覚だと昨日決めたばっかりなんだけど!」


「妾たちからすれば二日以上経っておるわ!」


「うっ」


「まさかその間、何も考えておらんかったのか?」


「…………」


「お主?」


「これから考える!」


「やはり何も考えておらんかったのではないか!」


 ◇


「じゃあ!」


 宿を出る前に。


 私はベッドへ座って。


 指を一本立てる。


「まずは条件を整理しよう!」


「うむ」


「……うん」


「わふ!」


「一つ目!」


「広い場所!」


「うむ」


「二つ目!」


「人があんまり来ない!」


「……静かなところ」


「そうそう!」


 三本目。


「水がある!」


 四本目。


「食べ物もいっぱい!」


「わふ!」


「五つ目!」


「いろんな魔物が暮らせる!」


「うむ」


 そして。


 最後。


「誰にも勝手に追い出されない場所!」


「…………」


 コハクが。


 少しだけ考える。


「それが一番難しそうじゃのう」


「そう?」


「広い場所があったとしても、誰かの土地かもしれぬ」


「あ」


「人がおらぬからといって、安全とも限らぬ」


「そっか」


「強い魔物の縄張りということもあるからの」


「なるほど……」


 ただ。


 誰もいないところを探せばいいわけじゃないんだ。


「じゃあ!」


 私は立ち上がる。


「ちゃんと探そう!」


「最初からそう言っておる」


「よーし!」


 町へ出るから。


 ユキは。


 ぽふんっ。


「にゃ」


 銀灰色の猫へ戻る。


 コハクも。


「妾も戻るかの」


 ぽふんっ。


 小さな白狐へ。


「かわいい」


「毎回言うでない!」


「だって可愛いし」


「もうよい!」


「わふ!」


「あ、シロも可愛いよ!」


「わふー!」


「……始まったか」


 コハクが呆れたように呟いた。


 ◇


 ミルフィアを出て。


 まず向かったのは。


 町から少し離れた草原。


「おおー!」


 広い。


 かなり広い。


 草もいっぱい。


「ここいいんじゃない?」


「…………」


 コハクが周囲を見る。


「駄目じゃな」


「え?」


「ほれ」


「?」


 示された方向を見る。


 そこには。


 街道。


 人。


 馬車。


「…………」


「あ」


「人が来ぬ場所という条件から、すでに外れておる」


「だめかぁ」


 ◇


 次。


「ここは!?」


 川。


 綺麗な水。


 草地。


「水もあるよ!」


「……でも」


 ユキが。


 少し先を見る。


「にゃ」


「ん?」


 視線の先には。


 小さな畑。


 その向こうには。


 家が何軒か。


「あ」


「誰かが使ってる場所なんだね」


「そういうことじゃ」


「むむむ……」


 ◇


 次。


 少し奥の森。


「ここなら!」


「…………」


 ユキの耳が動く。


「にゃ」


「人?」


「にゃ」


 少し待っていると。


 木々の向こうから。


 籠を持った人たちが歩いてきた。


 たぶん。


 採取に来た人たち。


「普通に人が来るんだ……」


「町の近くなら当然じゃろうな」


「うーん……」


 ◇


 それからも。


 いくつか場所を見てみた。


 でも。


 どこも。


 人がいたり。


 街道が近かったり。


 誰かが使っていたり。


 思っていたより。


 難しい。


「はぁー……」


 私は木陰へ座り込んだ。


「全然見つからない……」


「わふ……」


 シロも横へ座る。


「にゃ」


 ユキも。


 私の膝へ前足を乗せた。


「慰めてくれるの?」


「にゃ」


「ユキ優しい!」


 頭を撫でる。


「まあ、まだ探し始めたばかりじゃろう」


「そうだけど……」


「そもそもお主」


「ん?」


「そんな場所が簡単に見つかると思っておったのか?」


「…………」


「思っておったのじゃな?」


「だって《エルディア》ってすっごく広いんでしょ?」


「そうじゃな」


「だったら、どこかにあるかなって」


「まあ」


 コハクが。


 小さな白い尻尾を揺らす。


「なくはないじゃろうが」


「ほんと!?」


「妾に聞くでない。外へ出たのはつい先日のことじゃぞ」


「あ」


 そうだった。


「じゃあ」


 私は空を見る。


「気長に探すしかないかぁ」


「……にゃ」


「うん!」


 ユキを見る。


「まだ一日目だもんね!」


「昨日まで何も考えておらんかったくせに、切り替えだけは早いのう」


「前向きって言って!」


「物は言いようじゃな」


 その時。


「やあ」


「え?」


 聞き覚えのある声。


 振り返る。


「…………」


 淡いピンク色の長い髪。


 ピンク色の瞳。


 白。


 淡いピンク。


 黒。


 それを基調にした。


 どこか不思議な服。


「あ!」


 私はすぐに立ち上がった。


「ノアちゃん!」


「また会ったね、ユズ」


「久しぶり!」


「うん。久しぶり」


 ノアちゃん。


 《白狐の迷い館》を教えてくれた子。


「ノアちゃんのおかげで、すっごくいいもの手に入ったよ!」


「そうなんだ?」


「うん!」


 私はシロを見る。


「シロに似合う首輪!」


「わふ!」


「へえ」


 ノアちゃんが。


 楽しそうにシロを見る。


「よかったね」


「わふっ!」


「それに!」


「?」


「新しい仲間も増えたの!」


「新しい仲間?」


「うん!」


 私は。


 足元を見る。


「コハク!」


「なんじゃ」


 小さな白狐姿のコハクが。


 前へ出る。


「あれ」


 ノアちゃんが目を細めた。


「前はいなかった子だね」


「うん!」


「コハクっていうの!」


「妾はコハクじゃ」


「へえ」


 ノアちゃんがしゃがみ込む。


「よろしく、コハク」


「…………」


「?」


 コハクが。


 ノアちゃんをじっと見ている。


「どうしたの?」


「……いや」


 しばらくして。


「なんでもない」


 コハクがそう答えた。


「?」


 なんだろう。


「にゃ……」


 今度は。


 ユキが私の足へぴったりくっついた。


「ユキ?」


「にゃ」


 ノアちゃんから少し隠れる。


「あ」


 前もこんな感じだった。


「大丈夫だよ、ユキ」


「にゃ……」


 撫でる。


 ノアちゃんは。


 それを見て小さく笑った。


「まだ警戒されてるみたいだね」


「ユキ、人見知りだから」


「そっか」


「にゃ……」


「ふふ。可愛い」


 ユキが。


 さらに私の後ろへ隠れた。


「それで」


 ノアちゃんが周囲を見る。


「こんなところで何してたの?」


「あ!」


 そうだった。


「場所探し!」


「場所?」


「うん!」


「どんな場所?」


「魔物のみんなが安心して暮らせる場所!」


「…………」


 ノアちゃんが。


 少しだけ目を丸くした。


「魔物が?」


「うん!」


 私は。


 昨日――。


 こっちでは二日以上前だけど。


 決めたことを説明する。


「人に追いかけられたり」


「討伐されたり」


「住む場所を追われたり」


「怖いってだけで嫌われたりする魔物が」


「安心して暮らせる場所を作りたいんだ」


「…………」


 ノアちゃんは。


 何も言わずに聞いている。


「美味しいもの食べて」


「好きなことして」


「みんなで楽しく暮らせるような場所!」


「なるほど」


 ノアちゃんが。


 少しだけ笑った。


「面白いこと考えるね、ユズ」


「そう?」


「うん」


「でも」


 私は肩を落とす。


「場所が全然見つからなくて……」


「どんなところがいいの?」


「えっとね!」


 指を折りながら。


「すっごく広くて!」


「うん」


「人がほとんど来なくて!」


「うん」


「水と食べ物がいっぱいあって!」


「うん」


「いろんな魔物が暮らせて!」


「なるほど」


「それで!」


 最後に。


「誰にも勝手に追い出されない場所!」


「…………」


 ノアちゃんが。


 少しだけ考える。


「それなら」


「?」


「いい場所を知ってるよ」


「ほんと!?」


 思わず。


 ノアちゃんへ近づく。


「どこ!?」


「落ち着いて」


「だって!」


「ふふ」


 ノアちゃんが笑う。


「ものすごく広い森があるんだ」


「森!」


「うん」


「どれくらい広いの?」


「とっても」


「人は?」


「ほとんど来ない」


「おお!」


「川も湖もあるし」


「おおお!」


「食べられる植物とか、木の実もたくさんある」


「おおおお!」


「魔物もたくさん暮らしてるよ」


「そこだ!!」


「待て待て待て!」


「え?」


 コハクが割って入る。


「条件が良すぎるじゃろう!」


「でも、全部ぴったりだよ?」


「だからこそ怪しいのじゃ!」


「そう?」


「そうじゃ!」


 ノアちゃんが。


 そんな私たちを見ながら。


「まあ」


 少しだけ付け足す。


「森そのものは、かなり危ないところだけどね」


「危ないの!?」


「ほれ見ろ!」


 コハクが言う。


「やっぱり何かあるではないか!」


「でも」


「?」


 ノアちゃんが続ける。


「ボクが知ってる場所は、その森のかなり中心にあって」


「中心?」


「うん」


「そこだけは、周りの魔物がほとんど入ってこないんだ」


「え?」


「かなり広く開けた場所になってるし」


「うん」


「近くに水もある」


「うんうん!」


「食べ物も周りで集められる」


「うんうんうん!」


「周囲には魔物もたくさん暮らしてる」


「…………」


 私は。


 ノアちゃんを見る。


「完璧じゃん!!」


「お主は話を最後まで聞け!」


「でも完璧だよ!?」


「周囲の魔物が入ってこぬというのが一番怪しいのじゃ!」


「そうかな?」


 ノアちゃんが首を傾げる。


「そうじゃ!」


 コハクが即答。


「まあ」


 ノアちゃんは気にした様子もなく。


「いわゆるセーフエリアみたいなところだね」


「セーフエリア?」


「うん」


「そこにいる間は安全ってこと?」


「そんな感じ」


「じゃあいいじゃん!」


「なぜすぐ信じる!」


「だってノアちゃんが言ってるし」


「お主はこの娘を信頼しすぎではないか!?」


「ノアちゃん、いい子だよ?」


「そういう話ではない!」


「ふふ」


 ノアちゃんが楽しそうに笑う。


「それで?」


「うん?」


「行ってみる?」


「行く!」


「早い!」


「だって、探してた条件にぴったりだよ!」


「それはそうじゃが……」


 コハクが。


 少し考える。


「まあ、見るだけなら……」


「やった!」


「ただし怪しかったらすぐ帰るぞ!」


「はーい!」


「返事だけはよいのう……」


「じゃあ!」


 私はノアちゃんを見る。


「案内お願い!」


「いいよ」


「どれくらい歩く?」


「歩く?」


「うん」


 ノアちゃんが。


 少し考える。


「歩いて行くなら」


「うん」


「かなり遠いよ」


「どれくらい?」


「何日とかで済む距離じゃないかな」


「…………」


「…………」


「遠すぎない!?」


「かなり離れてるからね」


「そんな遠い場所だったの!?」


「うん」


「じゃあどうやって行くの?」


「大丈夫」


 ノアちゃんが。


 当たり前みたいに言った。


「ボクが連れていってあげるよ」


「ほんと!?」


「うん」


「どうやって?」


「転移」


「…………」


「転移!?」


「うん」


 すごい!


「ノアちゃん、転移できるの!?」


「まあね」


「かっこいい!」


「ありがとう」


「待て」


「ん?」


 コハク。


 さっきまでより。


 少し真剣な声。


「どうしたの?」


「長距離転移など、そう簡単に使える術ではないぞ」


「そうなの?」


「そうじゃ!」


 コハクが。


 ノアちゃんをじっと見る。


「妾ですら使えぬのじゃぞ?」


「えっ」


 私は。


 コハクを見る。


「コハクでも?」


「うむ」


「少なくとも妾は、好きな場所へ自由に飛ぶような真似はできぬ」


「へえ……」


 私は。


 改めてノアちゃんを見る。


「じゃあノアちゃん、すっごく強いんだ!」


「…………」


 コハクが固まる。


「どうしたの?」


「なぜそうなる!?」


「だってコハクにもできないことができるんでしょ?」


「それが怪しいと言っておるのじゃ!」


「でもできるんだよね?」


 ノアちゃんを見る。


「うん」


「ほら!」


「ほら、ではない!」


 コハクが頭を抱える。


「普通なら『なぜそんな術を使えるのか』と疑問を持つところじゃろう!」


「うーん」


 考える。


「ノアちゃんだから?」


「答えになっておらぬ!」


 ノアちゃんが。


 横で笑っている。


「細かいことは気にしない」


「そうだね!」


「お主までそちら側へ行くでない!」


「にゃ」


「わふ!」


「ほれ! お主らも何とか言え!」


「にゃ?」


「わふ?」


「……駄目じゃ。妾しかまともな者がおらぬ」


「失礼だなぁ」


「どの口が言う!」


 でも。


 転移できるなら。


 遠くても問題ない。


「よし!」


 私は拳を握る。


「行こう!」


「決断が早いのう……」


「魔物のみんなが暮らせる場所かもしれないんだよ?」


「…………」


 コハクが黙る。


 そして。


 小さくため息。


「……まあよい」


「ほんと!?」


「見に行くだけじゃぞ」


「うん!」


「変な場所ならすぐ戻るからの!」


「分かった!」


「本当に分かっておるのか……?」


 ノアちゃんが。


「じゃあ」


 私たちへ手招きする。


「みんな、近くに来て」


「はーい!」


「わふ!」


「にゃ」


「……仕方ないのう」


 ノアちゃんの近くへ集まる。


 私。


 シロ。


 ユキ。


 コハク。


「これでいい?」


「うん」


 ノアちゃんが。


 片手を軽く上げた。


 すると。


「わっ」


 私たちの足元に。


 淡い光が広がっていく。


「すごい……」


「…………」


 コハクは。


 その光を見て。


 さっきまでとは違う。


 少し警戒した顔。


「では」


 ノアちゃんが笑う。


「行こうか」


 次の瞬間。


 ぱあっ。


 視界が真っ白になった。


「わっ!?」


 身体が。


 一瞬だけ。


 ふわっと浮くような感覚。


 そして。


 ◇


「…………」


 風。


 葉が揺れる音。


 水の流れる音。


 森の匂い。


「…………」


 でも。


 さっきまでいた場所とは。


 全然違う。


「着いたよ」


 ノアちゃんの声。


 私は。


 ゆっくりと目を開けた。


「…………」


「わぁ……」


 最初に見えたのは。


 巨大な木。


 何人で囲んでも。


 全部は囲めなさそうな。


 とんでもなく太い幹。


 その向こうにも。


 そのまた向こうにも。


 巨大な木々が。


 どこまでも続いている。


「すごい……」


 森。


 でも。


 今まで見てきた森とは。


 全然違う。


 空気が。


 なんというか。


 濃い。


「……魔力」


「え?」


 ユキが。


 いつの間にか人の姿になっていた。


 周りに誰もいないからかな。


「……すごく濃い」


「そうなの?」


「……うん」


 ユキの耳が。


 ぴくぴく動いている。


「確かに」


 コハクも。


 辺りを見回す。


「尋常ではないのう……」


「そんなに?」


「お主には分からぬのか?」


「全然!」


「胸を張るな!」


 でも。


 本当にすごい。


 木。


 草。


 花。


 どれも。


 今まで見たものより。


 なんだか元気に見える。


 そして。


 私たちがいる場所。


「広い……」


 森の中なのに。


 ここだけ。


 ぽっかりと。


 巨大な空間が開けている。


 柔らかい草。


 少し離れたところには。


 綺麗な水が流れる小さな川。


 その向こうには。


 果実みたいなものが実っている木も見える。


「ここが?」


「うん」


 ノアちゃんが頷く。


「さっき言ってた場所」


「…………」


 私は。


 ぐるっと周囲を見る。


「本当に広い!」


「でしょ?」


「水もある!」


「うん」


「食べ物もありそう!」


「たくさんあるよ」


「それに」


 ユキが。


 周囲を見る。


「……誰も、いない」


「ほんとだ」


 森の奥から。


 何かの鳴き声は聞こえる。


 でも。


 この広い場所には。


 一匹も。


 魔物が入ってこない。


「不思議……」


「じゃろうな」


 コハクが。


 森の奥を見る。


「これほど魔力の濃い森じゃ」


「うん」


「周囲には相当な数の魔物がおるはず」


「そうなの?」


「うむ」


「じゃが」


 コハクが。


 少し低い声で言う。


「この場所だけは、妙に静かじゃ」


「セーフエリアだからじゃない?」


「その理由が分からぬと言っておるのじゃ!」


「あ」


「まったく……」


 ノアちゃんは。


 そんな私たちを見て。


 楽しそうに笑っている。


「でも」


 私は。


 もう一度。


 目の前の景色を見る。


 広い。


 静か。


 水もある。


 食べ物もありそう。


 人もいない。


 周囲には。


 たくさんの魔物が暮らしている。


「…………」


 ここなら。


 もしかしたら。


「すごい……」


「ん?」


 私は。


 思わず笑った。


「ここなら!」


 シロ。


 ユキ。


 コハク。


 そしてノアちゃんを見る。


「本当に、みんなの居場所を作れるかも!」


「わふっ!」


「……うん」


「まだ決めるには早いぞ、お主」


「えへへ」


「笑って誤魔化すでない!」


 でも。


 私は。


 なんだか。


 すごくわくわくしていた。


 まだ。


 この場所のことを。


 何も知らない。


 どうして。


 この森の中心だけ。


 魔物が近づかないのかも。


 もちろん。


 知らなかった。

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