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クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第一章 【予言】
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クレア・ルイアス

小雨の中でクレアのその姿が先日の深夜の姿と重なった。


「く…クレア!俺が何かしたなら謝るから…!」


「…ほんと、何も出来ないくせに口だけは達者ね」


ハンマーが振り下ろされる瞬間、何者かがクレアのハンマーを持つ右手を左手で掴んだ。

掴んだのはアランだった。もう既にハンマーで殴られたのか、額からは血が出ており、血がアランの前髪を伝って落ちた。


「あら、まだ生きてたのね」


「はぁ?そんなハンマーで数回殴られただけじゃ死なねぇっつうの……」


「そんなことならナイフで刺しておけばよかった」


「く…クレア。なんでこんなこと」


アランの手を振りほどこうとしてもビクともしない。

ついにクレアは固まった。小雨とアランの視線がクレアに集中する。アランはいつでも剣が抜けるように右手を剣の持ち手に添えたそのときーー


クレアが魔法を使った。水の塊を生成し、力を溜めた後に一気に爆発させる広範囲攻撃をしかける。魔法の爆風で宿は半壊し、アランと小雨は吹き飛ばされた。


幸い宿の周りには誰もおらず、他の家に被害は出なかった。

しかしロープでぐるぐる巻きの小雨は受け身が取れず思わず叫んだ。


「し、死ぬうううう!」


吹き飛ばされ、地面に叩きつけられそうになった小雨をギリギリでアランがキャッチした。


「相棒!大丈夫か?」


「大丈夫、ありがとう!」


「ははっ、よかったよかった」


アランは小雨に微笑んだ後、周囲に舞ってる砂埃に咳き込みながら何とか小雨に巻かれたロープを剣で切った。

拘束から解放された小雨はその場で固まった身体を解すようにストレッチした。

治癒魔法で自分の額を治したアランが険しい顔で言う。


「しかし…厄介な事になったな」


「クレア急にどうしたんだろ?」


宿の中からクレアの姿が見える。しかし砂埃のせいではっきりは見えず、見えるのはシルエットだけ。クレアらしきシルエットが近づいてくると、二人は体を構えた。


「……来る日。異人が決断を下した時。世の常識が覆される。異人は世界に厄災をもたらす存在になるだろう」


クレアは例の予言を復唱した。その予言を聞いた瞬間小雨とアランは固まった。何故この予言を知っているのか…理由は一つしかないーー

小雨は思わず口に出てしまった。


「クレア…お前、ファミリーの人間なのか?」


「おいおい、嘘だろ」


「勘がいいのね、見直したわ」


砂埃が晴れ、クレアの姿がはっきりと見えた。

クレアが指をパチンッと鳴らした時、半径約50mの小さめの結界が貼られた。


結界が貼られたことにより、ここに出入りできるのはクレア、アラン、小雨の三人だけ。

結界が破れない限り外部に影響はない。結界内のものが壊れたとしてもそれは結界内の話で実際に影響はない。


クレアは自分の髪留めを外すと本来の姿が現れた。

白いワンピースが形を変え、灰色のワンピースに黒いケープをしていた。胸元にはやはりーー

ファミリーのバッジがあった。


「改めて、私はファミリー所属、ファミリー番号二番……ユイン・エルミエ」


「二…二番?!」


「二番のやつがどうして名前を変えてこの国に何年も居座っていたんだ?」


アランの質問にクレアは黙った。それからクレアから魔力のオーラが溢れ出る。怒っているのか、クレアは般若のような顔を上げてアランを睨んだ。


「………ため」


「もうちょっとデカイ声で言ってくーー」


「本当は予言なんてどうでもいいの…どうせあんなの遊戯会の嘘!」


クレアはアランの言葉をかき消した。そんな二人を前に小雨は言葉が出ず、ただそこで立ち尽くしているだけだった。


「その遊戯会ってなんなんだ?お前の目的、ちゃんと答えてくれよクレア!」


「あんたを殺すためにここに来たんだよ!!」


クレアはアランに襲いかかった。クレアは地面を蹴ってから一気にアランに詰め寄り、ナイフを振り上げた。

周りは家ばかりで大きな動きができないのがとても痛い。


「っ…!一体過去に俺が何したかは心当たりが無いが、クレアは俺を殺したくて堪らないのはわかった」


アランは一瞬で剣を抜き、クレアのナイフを弾き返す。

夕方の日がアランの剣を光が反射した。


弾き返されたクレアは素早く姿勢を取り戻し、アランに向かって手を伸ばすーー

その瞬間アランは水の箱に閉じ込められた。


「うっ……あ」


「ふふっ、その姿、実に滑稽ね……命が尽きるまでそこにいるといいわ」


クレアはそういうと背を向けて去って行く。


「……アラン!」


小雨がアランに向かって叫んだ。息ができないアランは小雨の叫び声に気づき、小雨の方を向くと小雨とアランは目が合ったとき、小雨に向かってニヤッと笑い、剣を構えた。


「……やっと…やっとよ。彼のーー」


凄まじい爆発音が聞こえたあと、クレアの背後にはアランが剣を振り上げていた。


「服ビシャビシャなんだけど!クレアこの後洗濯してくれるよな?!」


「あ、あんた何で!!」


クレアは予想外の攻撃に驚き、咄嗟にしゃがんだ。その後、地面を蹴り、アランと距離を取る。


長い髪の毛がアランの剣により切り落とされ、クレアの髪型はロングヘアからショートカットになる。切られた髪の毛が夕日に反射してキラキラと光りながら落ちた。


「俺の属性魔法、クレアは知っているだろ?水魔法と炎魔法は絶望的に相性が悪いってな!」


「なっ…!」


アランは地面を蹴り、クレアと一気に距離を詰める。それと同時にクレアはアランと距離を取りながら魔法を連発する。魔法陣を作り水攻撃を試みるがアランは片手で持った剣で全て弾き返してしまう。


「いつまでも逃げてちゃ勝てないぞ?」


「ローレンス家のせいで私の彼氏は死んだって言うのに!!」


「……は?一体何を言ってーー」


油断したアランにクレアはカウンターを取ろうと思い切って接近するも、アランは一瞬で避けてしまうどころか、反撃されてケープを切られてしまう。


「っ…!いい加減にしなさいよ!あんたなんか…あんたなんか!!」


「だから事情を話せって!!」


「話しても彼は戻ってこない!!」


クレアは叫ぶと共に上空に飛んだ。背後に巨大な魔法陣が現れ、魔力が溜まっていく。

魔力を使いすぎたのか、クレアの鼻からは鼻血が出ていた。それを見たアランは思わず叫ぶ。


「クレア!これ以上魔法を使うな!」


「うるさいうるさいうるさい!あんたに指図なんかされたくない!」


その言葉と同時に魔力は最大まで蓄積され、放出された。

クレアは涙でぐしゃぐしゃの顔から鼻からも耳からも目からも血がでており、時々血が器官に入りむせる。

そんな状況で更に魔法を使えばーー


魔法陣からは大量の水の塊がアランに向かって振り注がれそうになる。この塊に当たったらひとたまりもないだろう。


「っ!!」


見ていた小雨は思わず目を閉じた…凄まじい轟音と共に小雨を含む周りの物は全て吹き飛ばされた。


「ぐえっ!……げほっ…げほっ」


吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた小雨は何度が転がり、咳き込んでから起き上がる。その小雨の顔にはいくつかの赤い線が走っていた。


「アラン、大丈夫か!」


小雨は立ち上がり、アランたちがいた方を見る。先程アラン

が立っていたところを見るーー

が、誰もいない。ならば上空だ。見上げるとそこにはーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


少女は明るい光を見た。

小さい体に白いワンピースを着せられ、椅子の上にちょこんと乗せられている。


最初に目に映ったのは髪の毛が淡いピンクで長くて柔らかい黄色い瞳が光に反射してとても綺麗に光る綺麗な女性だった。


その女性は少女の事をクレア・ルイアスと名付けた。


クレアは人間では無い…元は水の精霊である。

水の球体に水の小さい翼が生えた妖精。本来はミリアス湖にいるはずの水の精霊だったが、クレアは好奇心旺盛な性格で気がついたらナクライア王国まで来てしまっていた。


彼女は夢を見た、五体満足の人間は様々な魔法を使い、料理をする。

クレアはそんな人間が羨ましかった。羨ましくて羨ましくて仕方がなかったクレアに、一人の学者が声をかけた。


「どうして私の願いがわかったの?」


「ふふっ、ちょっとした魔法よ」


彼女はクレアに笑いかけ、一つの提案をした。人間の身体を与える代わりに、手伝いをして欲しいと。

クレアは迷うことなく提案に乗り、二人はナクライア王国の少し離れた森にある学者の家へ向かった。


それからと言うとクレアはすくすくと大きく育っていった。

しかし、そんな幸せもすぐに崩れてしまった。


「く…レア…ごめんね…最後まで一緒にいられなくて」


「謝らなくていいの!」


クレアを育ててくれた学者は病で亡くなった。

その当時、クレアは人間で言う二十歳。住人が居なくなった事で家は取り壊されという知らせを聞き、クレアは学者がお気に入りにしていた髪留めを持って今まで住んでいた家から出て行った。


しかしナクライア王国に着いたクレアはこれからどうしたらいいのか分からず、ひたすら放浪していた。

今までは彼女に何でもやって貰っていたため、お金の稼ぎ方、人との付き合い方が何も分からなかった。


ただ、運命というのは本当に存在するようでーー


「お嬢さん、落としましたよ」


「…私?」


「可愛らしいハンカチですね」


噴水の前を歩いている時、後ろから彼はクレアが学者から誕生日の時に貰った白色にピンクのワンポイントが施されたハンカチを拾ってクレアに渡してくれた。


「僕の名前サク。君の名前は…?」


「私の名前は…クレア」


「これ、落としましたよ。気をつけてくださいね」


そう言ってサクと名乗る男の人はその場から去っていってしまった。


「……かっこいい人」


一目惚れだった。クレアはその日から彼に会えないかと毎日噴水の近くのベンチに座る。しかし彼は来ない。

一週間が経ち、もう諦めようとした時ーー


「また会いましたね」


「あっ……サクさん」


「良ければ雑談しませんか?」


「…もちろん」


二年後、二人はなんだかんだ気が合い、付き合ってからすぐに同棲を始めた。

クレアは得意な料理を作り、それを美味しいと言って食べてくれる彼が大好きだった。

彼もまた、ご飯の度にニコニコしながらこっちを見てくるクレアが大好きだった。


そして、事件は起きるーー

最後までお読み頂きありがとうございます!

第一章はまだまだ続きます!(`ェ´)ピャー

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