人は見かけによらず
「アテナちゃんほんま可愛ええねぇ〜」
オリビアはアテナを抱きしめて頬擦りした。アテナは嫌がる様子を何一つ見せずにただ口角を上げてオリビアを見ていた。
「アテナさん……わざわざ来なくても良かったんですよ」
「エースの言う通りだ……お迎えありがとうっていう嬉しさ超えて逆に怖い」
首を傾げて
「そう?」
「ええじゃないの〜、アテナちゃんは強いしなぁ〜」
オリビアはやっとアテナから離れて崩れた着物を整える。その時ふと、アテナは疑問に思った。
「カスくん今日はフェリスくんと一緒やないんやね〜?」
「あぁ……」
「まぁあの子の事やし〜、きっと逃げたんやね〜」
オリビアは口元に手を添えて笑った。その笑みは何かを企んでいるような、不気味な笑顔だった。
「良ければお茶しませんか?」
アテナが珍しく提案した。その提案にカスは驚いたような表情を見せ、オリビアは嬉しそうにアテナの両手を取った。
驚いた顔をして
「いいんですか……」
「アテナちゃんのそういうとこ、ほんま好きやわ〜。じゃあ遠慮なくお茶させてもらうで〜」
四人はお茶をしに、アテナを先頭に屋敷へと向かっていく。
「に……にゃん」
上から何かが落ちる音がした後、誰かがカスの肩を後ろから叩く。
後ろを振り向きながら
「誰だ……」
後ろを振り向いた瞬間、フェリスがカスの口を塞ぐ。そしてジェスチャーで何かを伝えた。自分の事を指さしてからカスのパーカーのフードを指さす……フードの中に入れろということだった。
頷いて
「……仕方ないな」
「にゃん!」
フェリスは特異魔法で子猫になり、カスのフードの中で身を丸くした。
「……ん〜、フェリスくんや。近くにいるんとちゃうの?さっき、にゃんって聞こえたで〜」
「フェ……フェリスですか?ここにはいませんよ」
カスに近づきながら
「そんな事ないはずなやけどな〜」
「アテナさん、止めます?」
「いいや、あれは私たちに関係ないから止めないでいい」
オリビアは一歩、また一歩とカスに近づく。フードの中のフェリスは身を震わせていた。
「ほら、み〜つけた」
オリビアはフードの中のフェリスを掴みあげ、胸に抱えた。暴れるフェリスだったが、オリビアは何一つ気にせず再び屋敷に向かって歩き出す。
「私が可愛がってあげるからねぇ〜」
「うわっ!かわわわっ!!」
小雨がフェリスを抱えているオリビアに近づいていく。
「おや?コサメくんも、猫好きなん?」
「大っ好きです!!」
「いいやんいいやん〜、コサメくんとは気が合いそうやわ〜」
絶望するフェリスを無視してオリビアと小雨は最後尾で猫の話題で盛り上がる。アテナは先頭を歩き、残りのエースとカスはその後ろを屋敷に向かってただひたすら歩き続けていた。
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「コサメ〜!!おかえりなの〜!!」
玄関をくぐった瞬間、フランソワが小雨に飛びついてきた。その勢いで小雨は床に頭をぶつける。
「あいたっ!」
「あれ、もしかしてフェリスなの?」
「……にゃあ」
オリビアに抱えられているフェリスをまじまじと見るフランソワ。フェリスはもう諦めたようにただじっとして鳴くことしか出来なかった。
「なんで猫なの?」
力が抜けた隙にオリビアの手から抜け出し人間の姿に戻る
「まぁいろいろあったにゃん」
「二人は友達なのか?」
「俺が元フランソワの召使いにゃん」
「そうなの」
驚いた顔をして
「えっ……なんか意外だな」
「フェリスは優秀だったんだけどね」
三人の間にアテナが入ってきた。
「でも疲れて辞めちゃったにゃん……」
「ボーナスも近かったのに……残念だね」
「にゃん?!それもっと早く言えにゃん!!!」
「ふふっ……元気で何よりやわ〜」
口元に手を添えて笑うオリビア。話も一区切り着いたところでアテナはその場にいる人を広い客間へ連れて行き、ギルドの人たちをテーブルの椅子に座らせた。
「飲み物は紅茶、コーヒー、牛乳、オレンジジュースを用意してます。今からお菓子を準備するので少しお待ちくださいませ」
「私も座るの」
「俺も疲れたから座ろ」
「俺も疲れた」
フランソワと小雨、エースは椅子にしれっと座った。アテナはその様子を見て小雨とエースに向かって言った。
「君たちはお客さんじゃないんだから、手伝って」
「え、でも俺たち頑張ったんだから」
「……」
「年上の言うことはちゃんと聞かないとダメだよ」
「でもアテナって俺より絶対年下だろ?」
小雨はアテナに言い返した。しかしその言い返しにギルド一行は面白いものを見るように頬を綻ばせた。
「小雨くん、何を言ってるん?君よりアテナちゃんの方が、も〜っとも〜っと年上やで?」
頷きながら
「こればっかはオリビアの言う通りにゃん」
驚いた顔でアテナを見ながら
「え?だってめっちゃ幼くないですか?!」
「も〜、君も何となく気づいてるんやないの?」
「……何を?」
ギルド一行は信じられない様子で小雨のことを見た。
驚きが隠せない様子で
「えっ?アテナさんって十六とかじゃないんですか?」
隣から割って入ってきたエースも瞳を丸くしてアテナを再び見た。どこからどう見ても十六歳か十七歳辺りにしか見えなかった。
「フランソワちゃんは知ってたやんな?」
首を横に振って
「知らないの」
「ええ〜?知らない人しかいないやんか〜……なぁ、アテナちゃん、教えてもええか〜?」
頷いて
「うん、別に隠してないから」
「りょ〜かい〜、ほな言わせて貰うで〜」
エースと小雨は固唾を飲んでオリビアの次の言葉を待った。
そしてオリビアが口を開く。
「アテナちゃんは神様なんよ〜」
「「……え?」」
エースと小雨は一緒にアテナの方を向いた。あまりにもシンクロしすぎてギルド一行は笑いを隠せなかった。
牛乳を飲んでから
「俺も最初はそんな反応したにゃん……」
「私はもうこの世界で長く生きてるから」
「長くって……どのくらい?」
小雨が恐る恐る聞いた。
「五千年くらいかな」
その場でエースと小雨は信じられないように頭を抱えた。それぞれ嘘だろ嘘だろとボソボソ呟いているのが聞こえる。
エースを見て
「だから……悪いことしたらお見通したがら気をつけてね」
「……」
目を逸らした
そんな二人に違和感を持った小雨。何があったかその場で聞きそうになったが、その言葉を発する前にアテナが次の言葉を発した。
「じゃあ、お菓子取って来るから……さっき私が言ったのは冗談でエースと小雨は今日はもう疲れたでしょ。だからあとの仕事は私がやるから好きに過ごしてていいよ」
ぱあっと顔が明るくなって
「うわっ!ありがとう!」
「ありがとうございます!」
小雨とエースもアテナの次に扉をくぐると後ろから声が聞こえた。
「え〜?もう行っちゃうの〜?」
「どうせ今日はここに泊まるにゃん……また会えるにゃん」
「それもそうやなぁ……じゃあまた会おね〜」
グッドサインを向けて
「は〜い!」
小雨はオリビアに向かってグッドサインを出してから扉を閉めた。中からはギルド一行の会話とフランソワの楽しそうな会話が漏れてきている。二人は剣の手入れをしに、雑談しながら召使いの共有部屋へ、アテナは真逆のキッチンへと足を進めた。
「……お菓子、何にしよう」
アテナがふと呟く声が廊下に響いた。
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