意外な組み合わせ
「くぅ〜……かわわ〜!!」
小雨の膝の上には小さい猫がちょこんと鎮座していた。小雨が思う存分撫でまくると猫は気持ちよさそうに喉を鳴らした。
「なんか……元が人間って分かってるとやだな」
「……エースさんの言う通りだ」
小雨の膝の上に乗っている猫の正体はフェリスだった。
カスの方を向いて
「フェリスさんの特異魔法って面白いですね」
「本人は結構気に入ってるんだ。色んな人に媚びを売れるからな……全く、困ったものだ」
カスはため息を吐く。その様子を見ていたエースは思わず苦笑いしてしまう。一方小雨とフェリスはそんな二人を見向きもせずにじゃれ合っていた。
「にゃんにゃんにゃん」
猫を持ち上げて
「何でカメラ無いんだろ持ってこりゃ良かったな〜」
キラキラした目で猫を見つめる。ふわふわな毛並み。まん丸な瞳。この時だけ嫌な時間全て忘れられそうだった。そうしてしばらくみんなでまったりしていると、フェリスの耳がピンッと立った。
「イカ耳じゃん、どうした?」
小雨がフェリスの顔を覗き込む。目が見開かれ、瞳孔は縦に細く、おまけに体の毛がブワッと逆立っていた。
小雨の膝から降りて
「にゃん」
フェリスは小雨の膝から降り、人間の姿に戻り、険しい顔をして三人の方を向く。
「北方向から魔物の声が聞こえたにゃん」
エースが口を開く
「魔物?ちょうどいい。コサメ、俺たちの出番だ」
「待て、俺達も加勢する」
「お、いいじゃんいいじゃん!協力しようぜ協力!」
納得したように頷く
「……あぁ、じゃあ四人で退治しようか」
「賛成にゃん」
小雨とエースは剣を構え、カスとフェリスは特に構えない。四人は魔物が出てくるのを待つ。するとーー
「にゃっ!」
フェリスの横を何かが高速で通って行った。しかし驚きの反射神経でそれすらも避ける。しばらく警戒して北方向を見ていると、魔物の呻き声が聞こえ、カンガルーのような魔物がこっちへ向かって猛ダッシュで走ってきた。しかし四人は逃げること無くその場に立ち止まり、まるで魔物を恐れはいなかった。
魔物が素早い動きで四人の所へ走って行く。あと数歩……あと一歩で四人は魔物に踏まれて全滅する。と思いきやーー
四人の目が光った。
「にゃんっ!」
フェリスが手を鳴らすと背後から水の弾丸が魔物を撃った。そのうちの数発が魔物の目に当たり魔物は動きを止める。
「助かった、フェリス」
水を被せられた魔物に次はカスが天から雷を降らし、魔物に当て、感電させる。しかし感電しても魔物は足を振り上げようとする。しかしーー
「そうはさせない!!」
エースが剣でカンガルーの足を斬る。足を斬られたカンガルー呻き声を上げてその場に倒れ込む。
「行けっコサメ!!」
エースの掛け声と共に後ろから特異魔法を使った小雨が現れ、剣を振りかざす。
魔物の首は斬られ、黒い塵となって消えていく。その様子を見て四人は一斉にハイタッチした。
小雨の指をさして
「コサメ、それ大丈夫にゃん?」
「え?あ、うん。浅いから明日にはカサブタになってる」
「あんまり無理して特異魔法使うなよ?」
隣からエースが小雨に向かって言った。しかし小雨は特に気にした様子もなく、剣をの血を払って鞘に戻した。
「ったく……それくらいの魔法なら基礎魔法で治せよ」
カスは小雨に近づき、傷がある手を握った。そしたらみるみるうちに小雨の手の切り傷は治っていった。しかしケルベロス戦で負った傷は深かったようで基礎魔法では治らなかった。
「……この傷、俺たちのせいだよな?」
カスは小雨に向かって問いかける。
「あ……まぁまぁまぁ」
カスの言っていることは正しいが、はいそうです。と答えるのもちょっと気が引けた小雨は曖昧な返事しかできなかった。
「ま、まさか!!」
「どうしたんだフェリス」
エースが心配する
「ままま……まさか!!」
フェリスが取り乱しているとその時、小雨の鼻に甘い香りが漂ってきた。
辺りを見渡しながら
「ん?何か甘い匂いが……」
「あ、確かに甘い香りが」
エースも匂いに気がついた。フェリスの顔がどんどん青くなる。
「ちょ……ちょっと逃げるにゃん!」
「おいフェリス、あまり遠くへ行くなよ!」
カスが言い終わる前にフェリスが森のどこかへ走り去ってしまった。甘い匂いはどんどん強くなると共に、遠くから下駄が草を踏む音が聞こえてきた。
「ははっ、タイミングがいいな。紹介する、このお姉さんはーー」
「初めまして、うちはギルド所属のオリビア言います〜」
小雨とエースの目の前に着物を着た紫髪のお姉さんがやってきた。オリビアという女性はどこかミステリアスで魅力的な女性だった。特にーー
「「……」」
((胸でっか!!))
二人も男だったため、一番最初に胸に釘付けにされた。それに気がついたオリビアはマニキュアを塗った手で、口元を隠して笑った。
カスに手招きして
「そんなに見んといて、恥ずかしいわ……そういや、私、カスくんに用事あんねん」
「なんでしょう?」
カスは頭を下げて話を聞く姿勢になった。オリビアは手を添えてカスの耳元でごにょごにょと何かを伝えた。
「……は?あいつが?」
「そうやねん、ほんまに困ったわ」
「おいガキ、俺たちはどうしたらいいんだ?」
「知らねぇよ……てかもう夕方だぞ?流石に長く森に居すぎやしないか?」
カスとオリビアの少し離れたところでエースと小雨は屋敷のことを心配していた。森にやって来てかなり時間が経っている。フランソワも小雨がいきなりいなくなって驚いているだろう。
「ちょいと君……その傷どないしたん?」
オリビアが小雨に近づき、血が垂れている腕を取って傷口をまじまじと観察する。小雨の手がオリビアの胸に当たって赤面しながらぷるぷると震えていた。
「めっちゃ痛そうやね……私が治したる」
「オリビアさんすみません、その傷は俺たちが……」
「ん?俺たちって……」
しまったという顔で
「あっ……」
「でもまぁ、今はこの子の手当が先や……何をしたんかは後でじっくり聞かせてもらう」
オリビアの目が光った。その姿にその場にいた三人が思わず息を飲み込んだ。
「ーーレタブリスモン」
オリビアが詠唱し、次に自分の唇に二本、指を当ててから小雨の傷口にそっと触れさせた。そうするとみるみるうちに傷が癒えていき、何も無かったようにサラサラスベスベになった。
ニコッとして
「ほら、綺麗さっぱりや」
「ありがとうございます!」
小雨は自分の腕を眺める。先程までの痛々しいなんて無かったように元通りになっていた。そして突然オリビアが口を開く。
「まぁ……ナクライアにおる回生魔法の小娘にはかなわんけどねぇ。はぁ〜ほんま、羨ましいわ〜」
「ーーそんな事ないですよ……」
遠くから聞き覚えのある声がした。後ろを振り返るとそこにはーー
「……アテナ!」
「アテナさん……どうしてここに」
「早く帰って来なくて心配だったんだよ」
「あら〜、アテナちゃん久しぶりやね〜!」
オリビアは嬉しそうにアテナの方へと走っていき、アテナにギュッと抱きついた。アテナは特に嫌そうな顔もせずオリビアのハグを受け入れる。
目を丸くして
「え、二人って仲良いんだ?!」
「アテナさん……人脈広いですね」
「……誰だ?」
驚く二人と戸惑う一人の男性たちがそこに居た。
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