たまには休憩も必要……これって本当に休憩?
小雨の叫びが廊下に鳴り響いた、他の召使い達が様子を伺いに来て、二人を見ると心配することなくそれぞれ持ち場に戻っていく。
「二人とも」
静かで落ち着いた声……この声には聞き覚えがある。
「アテナ!」
「おぉ、アテナさん。何の用ですか?」
アテナは黙って割れた複数の皿を見ながら眺めながら口を開いた。その声はいつもよりどこか低かった。
「これ、誰が割ったの」
「「こいつです」」
「何で俺なんだよ」
「ガキが悪いに決まってるだろ」
お互いを指さした二人。指を指されたとき、お互い睨み合ってその後すぐに喧嘩に発展した。お互い本気では無いが引っ張り合い、自分の持ちうる語彙を使って罵倒した。
「……」
アテナはじっと二人を見ていた。怒りを通り越して、呆れたようなそんな目をしていた。
手を向けて静止させて
「おい、ちょっと待て」
「なんだよガキ」
先にアテナの様子に気がついたら小雨がエースに向かって顎でアテナの方をしゃくった。アテナの様子に気がついたエースは小雨との喧嘩を中断する。
低い声で
「……罪の擦り付け合いをしなくても犯人は分かるからいいよ。本当は犯人だけにしてもらおうと思ってたけど、君たちがギャーギャー騒ぐから罰として二人で片付けてもらおうかな……文句はある?」
「「ないです!!」」
二人が同時に答えた。アテナは小さく頷いてその場を離れる。アテナの姿が見えなくなった瞬間、二人は再び睨み合って喧嘩に戻りそうだった。しかしいつの間にかアテナは数歩下がって二人を見ているのが分かり、そのため大人しく片付けをする事にした。
「はぁ……」
「……」
エースはため息を吐きながら皿の拾える破片を拾っていき、手のひらに乗せていく。一方小雨らため息を吐くこともなく、黙って黙々と破片を拾っていた。
「……なぁ」
「……ん?」
「お前の特異魔法まだ知らねぇんだけど教えてくれないか?」
「……いいけど、条件がある」
「は?条件?」
「お前の秘密一つ俺に教えることだ!」
小雨はニヤッとしてエースを見た。条件を提示されたエースは動きが破片を回収する動きが一瞬止まって悩む様子を見せた。
「あぁ、飲むよ」
承諾したエースはよしっと小声で言った。早速エースは破片を拾いながら小雨の方を向いた。
「じゃあ早速だけど、お前の能力の詳細教えろ」
「俺の特異魔法は自分の不幸を対価にして能力を得るってやつだ」
「あぁ、だから自分の指切ったりしてたのか……あの時はつくづく馬鹿だなって思ったけど能力使うためだったんだな」
割った皿の枚数が多く、大破片をいくら拾っても無くなる気配はなかった。二人は黙々と地面に散らばった破片を拾っていく。小雨が破片を拾い上げる時、手を滑らせて手を切ってしまう。
「あ……やっちった」
「あ〜あ〜」
エースがふと見上げた時、小雨の瞳に白い光が見えて思わず目を見開いた。
「お前……」
「ん?なんだ?」
驚くエースに首を傾げる小雨。この時エースはーー
(……無意識なのか?)
「絆創膏無いか?」
「ねぇよ」
「マジかよ」
エースの中にまた一つ、疑問が生まれた。小雨は今、無意識で特異魔法を発動している。しかし考えられる理由は簡単だった。
「お前、まだ魔法使い慣れてないだろ」
「……当たり前だろ」
小雨の眉間を押しながら
「お前今、自分で特異魔法発動してることわかってないだろ」
「……本当か?」
小雨は本当にわかっていない様子で再び首を傾げた。その様子から小雨は本当にわかっていないようだった。その様子を見たエースはため息を吐いた。
「あのなぁ、特異魔法ぐらいさっさとものにしないと手に入れた意味ないじゃん」
「それはそうだけどさ〜」
小雨は不貞腐れる。どうやらこのことに関しては自分でも自覚しているようだった。
指を立てて
「この後、俺暇だから一緒に魔物討伐……どう?」
「討伐〜?」
小雨はその提案に心底嫌そうな顔をした。エースはしゃがんだ姿勢のまま膝に肘を置いて頬杖をつき、小雨を見ていた。
「まぁまぁお前の今後の為にも?」
小雨を見るエースの瞳は好奇心でいっぱいだった。小雨はしばらく悩んだ後、渋々頷く。
「……しゃーなしな」
小雨自身も自分の特異魔法を安定させたい思いは元々あったため、これはいい機会だと思った。
大きい破片を拾い終え、小雨がちまちまと小さい破片を拾っている時、エースがほうきとちりとりを持って小雨の元へ戻ってきた。
「おいガキどけ」
「あいてててて!」
エースがほうきの穂先で小雨の手の甲を刺した。危険なことをしているというのに非常識なことをするエースに対し、小雨はイラつきを隠せなかった。
「そんなことするならもう行かないぞ」
「ガキがちまちまやってるから俺が一気にやってやろうとしてるんだぞ?感謝しろガキ」
「はぁ?マジで行かないからな俺」
怒った小雨は絆創膏を取りにロビーへ向かう。後ろから皿の破片が入った袋を持ったエースがついてきていた。
「逃げんなよガキ〜!根性ねぇな!」
「うるっせぇジジイ!」
「あ?誰がジジーー」
「二人とも」
二人が言い合いをしながら廊下を歩いている時、前から二人を呼ぶ声が聞こえた。
「あ、アテナじゃん」
「おいバカ、さっきも思ったけどメイド長にタメ語使うなよ」
「別にいいよ」
アテナは快くタメ呼びに了承した。召使いの中で小雨だけ若干甘いアテナに対しエースは顔を歪めた。
小雨の方を向いて
「ところで二人は破片の回収終わらせた?」
エースの持つ袋を指さして
「あぁ、終わったぞ」
エースが無言でアテナの視界に入るように袋を掲げる。
思い出したように
「そういえばアテナさん、こいつ俺にめちゃくちゃ文句言ってくるんですよ」
「……そうなの?」
「仕方ないじゃん、俺は俺の意見を言ってるだけだ」
「年上の言うことはちゃんと聞いてね」
その言葉に小雨は石のように固まった。隣にいるエースは小雨の方を向いてニヤッとする。時々ツンツンしたり、ざまぁと言わんばかりにちょっかいを出した。
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「よしっ、じゃあ行きますか!」
剣を持った二人は魔物がよく現れるというコロップ地方の森へ行った。小雨はここまでの道のり一言も喋らずただエースを恨むような顔でじっと見ていた。
「じゃあ今から俺たちは協力して魔物の討伐に出る!目標は10匹だ」
軽く準備運動をするエースの隣で小雨は黙って立っていた。
(あぁ……最悪だ)
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