↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第二章 【オルド国の神隠し】
41/49

覚悟

朝の日差しが窓から差し込み小雨の顔に降りかかる。その眩しさに瞼が動き、目を覚ます。最初に視界に映ったのは見覚えがある天井、質素な部屋。小雨は重い体を何とか起こした。


「……あれっ、俺……」


昨夜の出来事を思い出せなかった。記憶を一から辿るとまず深夜にエースの部屋に呼ばれしばらく話した後、キッチンから大きな音がしたからエースと一緒にキッチンに向かって、そこで血痕を見た。エースが急いでアテナを呼んでアテナがキッチンに来たあと部屋に戻るように言った。


「あぁ〜、俺そのまま寝たのか!そっかそっか!」


小雨は殺された事も覚えていなかった。そのまま一人で納得して満足そうに二度寝をかます。


次に目が覚めたのは部屋に響き渡る音だった。金属の高い音、非常に耳障りだった。


「おーきーてー!」


「……あとちょっと」


「むむむ……」


フランソワはフライパンとおたまを持って小雨の耳元で鳴らす。再び部屋に金属音が鳴り響いた。その音を聞いた小雨は飛び起きて耳を塞ぐ。


「わかった、わかったからそれやめろ!!」


「早く起きてなの」


フランソワは小雨の服を掴み、ベッドから引きずり下ろそうとする。小雨はフランソワの行動に大人しく付き合ってあげた。


小雨の袖を引っ張りながら

「今日は特別な朝食なの」


目を擦りながら

「特別……?」


リビングからほのかに香ってくる甘い匂い。フランソワは小雨の袖を引っ張り自分の部屋まで連れていき、ドアを開ける。


目を見開いて

「……わあっ、これタルト?」


眠気が一気に覚めた。そこには色とりどりの小さいタルトが沢山並べられていた。いちごタルトやチョコタルト、どれもクオリティが高い。


ドヤっとして

「コサメのために早起きしてアテナと作ったの」


目を輝かせながら

「ほんとにいいの?」


小雨の目が輝く。フランソワが小雨のために作ってくれたと考えるだけで嬉しくなる。


「ほら座って座って」


「うん」


フランソワは小雨を椅子へ連れていくために背中を押した。小雨はされるがままに椅子に座る。目の前にはお皿とフォークが置かれていた。


「私が取ってあげるの、何がいい?」


「じゃ〜、チョコもらおうかな」


「わかったの!」


フランソワは今日にタルトにナイフを入れる。手がまだ幼いため、傍から見ているととてもヒヤヒヤする光景だったが何とか小雨の分のタルトを切り分け、その後自分のタルトも切り分ける。


「いっただっきま〜す!」


「いただきます」


小雨は手を合わせてからタルトをフォークで切って口に運んだ。その瞬間その場で溶けた。


「う……うまぁ……」


ニコニコしながら

「それは良かったの」


チョコタルトの中身は生チョコで上はココアパウダーがふりかけられている。一方、フルーツタルトの方は上にゼラチンがかけられているのか、電気の光に反射してキラキラと光っていた。


フランソワの方を向いて

「これお店出せるよ!」


「そうなの?」


頷いて

「今まで食べたタルトの中で一番美味しい!」


頬を赤らめて

「そ、それは……ありがとうなの」


しばらく二人はタルトを食べ続けていた。数分に一回小雨のうまぁが聞こえる。二人が食べてしばらく経った後、部屋の外からノックが聞こえた。


「……?」


「誰なの?」


二人はドアの方をじっと見た。タルトを食べていた手が止まる。


部屋の外から

「……アテナ。小雨に話があるからちょっといい?」


「俺?……ごめんフランちゃん、行ってくるわ」


「……行ってらっしゃいなの」


小雨はフランソワの頭を一撫でしてからドアの方へと向かう。小雨の背中を見ているフランソワはどこか寂しそうな表情をして再びタルトを口に運び始めた。


小雨が部屋から出た時、ドアの前にはアテナが立っていた。


「ちょっと話がある」


「話……?」


そう言ってアテナは小雨を連れてどこかへ向かう。アテナの歩幅がいつもにまして大きい気がした。


アテナが連れてきたのは普段は誰も来ない屋敷の物置部屋。足場の踏み場が無いほど物が散乱しており、とても埃っぽかった。


「……げほっ、げほっ」


袖で鼻を抑えて

「汚いところだけど、ちょっと我慢して」


アテナはドアに鍵を閉めて咳をする小雨の方へ向く。その瞳は真剣な目をしていた。これには小雨もただ事じゃないと察した。


「今日、セリシアに会った??」


首を傾げて

「……セリシア?」


最近の記憶を辿っていく。確かにセリシアは見ていない。今朝だけではなく昨夜も、セリシアを見た記憶はない。そのことに小雨はハッとした。


「見てない……ていうか、昨日の血痕って誰のだ?」


「少なくとも、昨日の夕方までセリシアは居た……これはあくまで憶測だけれど」


「……」


アテナは言葉を止めた。小雨は固唾を飲んで次の言葉を待つ。


「あの血痕は……セリシアだと思ってる」


「……え、でも何で?」


小雨は動揺を隠しきれなかった。予想はしていたとはいえ、いくら何でも疑問点が多すぎた。


「何でセリシア?……犯人は屋敷にまで入ってきてセリシアを傷つけたかったのか?」


下を向いて

「私もまだ詳しい事は分からない。どうしてこうなったのか、それ以前に前から問題になっている誘拐の犯人すらまだ分かっていない」


「同一人物っていう可能性は……?」


頷いて

「もちろん、その可能性も十分にある……はぁ……」


珍しくアテナがため息を吐いた。その後、二人の間に沈黙が生まれてしまう。それぞれ俯き、険しい顔をしている。しかし沈黙を破るようにアテナが口を開いた。


「もうそろそろ本気で向き合わないと、本当に取り返しがつかなくなる」

最後までお読みいただきありがとうございました!

今年はとても秋を感じられてめっちゃハッピーです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。