↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第一章 【予言】
4/31

罪人の末路

午前七時、眠い目をこすりながら1階に降りるとそこにはクレアと喋るシャトンの姿があった。


「あら、おはようコサメ。今日は自分で起きれたのね」


「いや、うん。そうだけれども」


「えぇ〜?あたしがいるからびっくりした?」


「なんでお前がいるんだよ」


「シャトンは三人の命を奪って、たとえ生き返ったとしても罪を犯した事実は変わらない。だけどあの家族は優しいのね、シャトンたちの罪を許してくれたのよ。それで宛先もないシャトンを住み込みで雇ってあげたわけ」


「可愛いシャトンちゃんが一生懸命働くとこ、ちゃんと見ててよね〜」


「お前絶対反省してないだろ」


急な登場のシャトンにびっくりした小雨はしばらく状況が掴めずにいた。シャトンは相変わらず怠けた声を発していた。


「ユーリはどうなったんだ?」


「ユーリ〜?あの人は知らないよ〜。昨日散々草原荒らしてたみたいだから頑張って直してるんじゃな〜い?」


「シャトン、これから仕事内容を説明するから着いてきなさい」


「は〜い」


クレアはシャトンを連れて風呂場へ向かった。

置いていかれた小雨仕事内容が気になって二人について行くことにした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「まずはお風呂場の掃除よ。カビなんて絶対生えさせちゃダメよ。」


クレアはシャトンにバケツに入ったお風呂掃除セットを渡した。中にはゴム手袋、スポンジ、洗剤が入っていた。


「じゃあ十分後に様子見に来るから、それまで頑張ってちょうだい」


「まっかせてよ〜」


そう言ってクレアは受付に戻り、洗剤の臭いがツンとするお風呂場はゴム手袋をはめてスポンジで床を必死に掃除するシャトンと小雨だけが残された。


「ねぇ君の名前ってコサメ…だっけ〜?」


「あぁ、そうだ」


「ファミリーのこと……知りたい?」


「……あぁ」


向こうから話題を出してくるとは思いもしなかった。シャトンを見る限り、今は大人しく左手には洗剤、右手にスポンジを持って床掃除をしており、攻撃もしてこなさそうだったため、小雨は少し思い切った話題を出した。


「ファミリーの目的って一体何なんだ?」


「ファミリーの目的は〜……」


シャトンはしばらく黙りこんだ。悩むのは当然だった。

目的を打ち明けたらファミリーを裏切ったのと同じだったから…しかしシャトンは決心したのか、すぐに次の言葉を出した。


「…予言」


「予言?」


「そうそう、ここ最近ファミリーの中でとある予言についての噂が流行っててね〜、誰が言い始めたのかは分からないけど〜」


「…なるほど」


昨日までベラベラ喋る馬鹿な組織じゃない的な事を言ってたのは所誰だと思い、口角が少し緩んだ。


「何笑ってるの〜?気味悪いよ〜?それでその予言って言うのは〜」


「様子見に来たわよ…って!ここ!まだ汚れてるし壁も掃除しなさい!」


「えぇ〜?湯船と床だけじゃダメなの〜?てかまだ十分絶対経ってないし!」


「ダメよ!ほらシャワーヘッドもちゃんと洗う!排水溝の周りと床の端が一番汚れが溜まり安いんだから!」


「わかった!わかったからガミガミうるさい〜!」


シャトンと二人でファミリーについて話していると、突然現れたクレアによって会話は途切れてしまった。

小雨は驚いて瞬時にクレアを見た。一瞬見えたのは怒りではなく焦りのような表情だった。

クレアに叱られたシャトンはグチグチ言いながらクレアに言われた所を掃除した。


「クレアはいつもこれやってるのか?」


「当たり前よ、お客様がこの宿を信頼してお金を払って泊まってくれてるのに期待を裏切るようなことはできないわ」


「クレアは意外としっかりしてるんだなー」


「ふんっ、当たり前よ!」


その後もシャトンはクレア監督を前に必死にお風呂掃除をした。ミスるとクレアに怒られるが、シャトンは適当に返事をして掃除を続けた。

小雨はシャトンとクレアの会話を聞いて楽しみつつ、頭の端で先程シャトンから教えられた予言という言葉が頭から離れなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「よ〜し完璧〜!」


「お疲れ様、これで終わりじゃないわ。まだこれからご飯を作ってお客様に提供するの」


「えぇ〜?まだあるの〜?!」


「グチグチ言わない!」


クレアはシャトンの腕を引っ張ってキッチンまで連れて行った。そして小雨もそんな二人について行った。


「今日の朝ごはんはフレンチトーストよ。卵にパンを漬けて焼くだけだからあなたでもできるはず。ここにレシピがあるわ、やってみなさい。あと、料理をする前には手洗い消毒、しっかりとね」


「は〜い!」


シャトンはクレアの直筆レシピを見ながらまずはフレンチトーストの液を作る。ボウルに卵、牛乳、砂糖を適量入れて混ぜた後、食パンを2枚浸した。


「なかなかやるじゃない、これが焼けたらあなたも食べていいわよ」


「はぁぁ〜、やっとつっらい仕事が終わる〜」


「仕事はこれだけじゃないわよ、まだ宿全体の掃除、ベッドメイキングの仕方とかあるんだから」


シャトンが盛大に肩を落とした。宿の仕事は思っていた以上に辛いものだったのだろう。彼女の顔がだんだん死んでいったように見えた。


「うう〜…これって給料出るよね?」


「殺人っていう罪を犯してなお牢屋に入れられるのを見逃して貰ったくせに甘ったるいこと言ってるんじゃないわよ!」


「うわーん!クレアの鬼〜!悪魔〜!しくしく、しくしく〜」


シャトンはクレアに叱られ、わざと傷ついたような態度を取った。そんなクレアを可哀想だと思ったのか、小雨はクレアに言った。


「なぁクレア、シャトンに厳しくないか?」


「罪を犯した人に優しくしろと?」


「……おっしゃる通りです」


「ふんっ…シャトン、今からベッドメイキングのやり方教えるわよ」


「えぇ〜?」


「つべこべ言わない!」


「も〜〜!」


クレアはシャトンを半ば引きずりながら2階まで上がってベッドメイキングの仕方を教えに行った。小雨はロビーの椅子に座って予言について考えていた。


「予言…か」


小雨の頭の中で予言が頭の中でぐるぐる回っていた。一体その予言はなんなのか、世界に関わることなのか…

必死に思考を巡らせているとベッドメイキングを終えたシャトンとクレアが2階から降りてきた。


「今からシャトンにはフレンチトーストを焼いてもらうわ」


「焼くのは簡単だから任せてよ〜」


「コサメはそこで座って待ってなさい、後で出来たてのフレンチトースト持ってくるから」


「わかった、ありがとう」



小雨はフレンチトーストができるまで大人しく椅子に座って宿を見回した。すると1つの疑問が浮かび上がる。宿泊客は自分以外いないことだ。ここの宿はあまり人気がないのか、それとも外観が単にボロいから誰も来ないのか…

一人で推測しているとフレンチトーストを持ったシャトンとクレアが小雨の所へやってきてフレンチトーストをテーブルの上に置いた。


「さぁ、二人とも温かいうちにたべなさい。今日の朝ごはんは少し遅れてしまったわ、ごめんなさいね」


「もうお腹ペコペコだよ〜」


「全然問題ないぞ」


シャトンと小雨はフレンチトーストを頬張った。液がしっかり浸透しおり、外は少しカリッと中はしっとりとしていて、今まで食べてきたフレンチトーストの中で一番美味しかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方その頃、ユーリの方は…


「おいおいもっと丁寧にやれよ〜」


「うるさいなぁ私だってやりたくてやったわけではないんですよ」


ユーリはアランの監視の元必死に昨日の戦いで出来た草原の切れ目にスコップで土を埋めていた。


「うっさい黙って罰を受けてろ、あと二度と俺たちに手なんて出すなよ…あそうだ、逃げ出そうだなんて絶対考えるなよ、足首見たらわかるけど制御の特異魔法が仕込まれたバンドが巻かれてるからお前はもう逃げられないぞ」


「はいはい言うだけ言っててください…しかし、なぜローレンスの次男がわざわざ監視を?」


「バ・イ・ト」


「バイトですか…はっ、面白い。お金にでも困っているのか?」


「お金は山ほどあるし、暇だからやってるだけ」


「暇でこんな事やるなんてそうそう無いですよ」


「いいだろ別に俺が何したって」


そうしてしばらく草原に二人の会話が広がった。

時には喧嘩に発展しそうだったが、お互いやっていい事と悪いことの区別はつくのだろう。喧嘩になることはなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ごちそうさまでした〜」


「ありがとうシャトン、フレンチトーストめっちゃ美味しかったぞ!」


「当たり前だよ〜!シャトンが作る料理は世界一〜!」


「あら、随分と自信があるみたいね、今日のお昼ご飯と晩ご飯も任せようかしら」


クレアが腕を組んでシャトンを見た。

口の右端をニッと上げたクレア、その目はイタズラを仕掛ける子供のようだった。


「やだやだやだ!あたし今日は疲れたからもう何もしたくない〜!」


「まだ午前って言うのにもう疲れの?」


「当たり前だよ〜!今日はもう何もしない!」


「シャトン頑張ってたからな、クレア、今日は大目に見てあげたらどうだ?」


「…そうね、今日は教えるのはこれくらいにするわ…じゃあ私はこれからやることがあるから、また昼に…今日はお昼ご飯遅れちゃダメよ」


そう言い残してクレアは二人分のお皿を持ってキッチンに姿を消した。残されたのはシャトンと小雨…一瞬気まずい空気が流れたがシャトンがすぐに何かを喋りだした。


「さっきの話の続きなんだけど〜」


「予言か?」


「うんうん〜、その予言っていうのは」


「あら、何の話かしら」


声の主の方を見るとクレアが受付の椅子に座って右手で頬ずえをつきながら小雨たちを見ていた。その目はただ呆れたような目だった。


「言ってあげてもいいけど〜、この話はあたしとコサメの中の話だし〜?」


「なるほど、ただ作業してたら怪しい話が聞こえてきたからちょっと気になっただけよ」


「クレアって耳がいいんだな?」


「私の特異魔法は半径百m以内にいる人全員の会話を盗聴できるのよ」


「…だからあの時も」


小雨はクレアの特異魔法の詳細を知り、ふと昨日のアランとユーリとの戦いの後のアランとクレアの会話を思い出した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お前にはこの後宿で詳しく話すよ。この国のこと、魔法の事、全部」


________________________________________________


「全て教えるんじゃなかったの」


「全部教えるのには時間がかかるんですー」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……クレアの特異魔法って便利なんだな」


「そうかしら?私からしたらシャトンの方が便利な特異魔法を持っていると思うわ」


「そうそう〜、シャトン様の特異魔法は世界一〜!なんて」


大事な話をする時に限ってクレアが現れることに小雨は疑問を抱いた。ファミリーの目的を知りたくないのかそれとも他に理由があるのか、今の時点では何も分からなかった。


「あら、もうそろそろお昼ね、ご飯の準備をしないと」


「ねぇねぇねぇ〜、コサメくんは特異魔法持ってる〜?あ、まずは魔法属性気になるな〜」


小雨は自分が異世界から来たことを明かしていいのか考えた。むやみに教えたら何かトラブルに繋がりかねない。

そんな不安を抱いたが、お風呂掃除の時にシャトンがファミリーについて教えてくれたのを思い出し、今回はシャトンを信じて正直に話した。


「俺か?俺実はここの世界の人じゃないんだ」


「……え?ここの世界の人じゃないの〜?」


「そう、彼は異人よ」


「い…いじ……!」


「おいシャトン、どうしたんだ?」


「どうしたのかしら?」


シャトンは異人と言う言葉を聞いて口を抑え目を見開いた…その中で揺れる瞳が綺麗だった。

小雨とクレアは心配するが、次の瞬間何事も無かったように小雨に問いかけた。


「異人ってあたし会ったことないんだよね〜!ねぇねぇ!魔法以外の能力使えたりする〜?」


「俺は能力も魔法も何も持たないおもんない人だぞ?」


「え〜、つまんな〜」


「シャトンも言うようになったじゃない、初めて会った時とはまるで正反対ね」


「俺はそんな事ないと思うけどな?」


期待を上げてから下げてしまった事に少し罪悪感を抱いた。

クレアはつまんなそうに口を尖らせていると、ちょうどその時アランとユーリが宿にやってきた。


「おっじゃましまーす…よっ!相棒!」


「アラン!…なんでユーリもいるんだ?」


「あ〜!ユーリ生きてたんだ〜!死んだかと思ってた」


「なんで勝手に私を殺すんだ」


「っはは、ファミリーは意外沢山いるんだな」


笑った小雨を隣にら急な来訪者にクレアは面倒くさそうにため息を吐いた。

宿を経営する店主たるものお客様が来たらもてなさないといけない…律儀なクレアはとりあえず要件を聞くことにした。


「二人ともなんの用かしら?」


「お腹すいたからご飯作ってくれないか?」


アランは膝をついて両手を合わせ、目をキラキラさせながらクレアにお願いした。

その姿は本当に国の四大貴族のうちの一家の次男なのか疑い深がった。


「…あのねぇここは宿であってご飯屋さんじゃないんだけど?……はぁ、しょうがないわね」


料理は嫌いではない。むしろ好きだったクレアは今から何を作ろうかと考えながらキッチンへ向かう。

ロビーに置いているテーブルを囲むように四人が椅子に座ってご飯が出来上がるまで雑談を交わした。

内容は上司や同僚の愚痴や美味しいご飯屋さんの話など、平和な雑談だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ご飯できたわよ〜」


クレアがキッチンからご飯を次々と運んでいった。

一人一人のお皿に白ご飯が盛られ、その上に牛肉と野菜を炒めたものを被せていた。醤油とソースのいい香りがその場全員の鼻をくすぐった。


「わぁ〜!美味しそ〜!」


「こりゃおったまげた、身長が低いのに料理できるんだな」


「最後の言葉は余計だわ」


クレアが作る料理を見たファミリーの二人は目を輝かせながら席についた。そして小雨、アラン、クレアも次々と席に着く。


「いっただっきま〜す……んんっ〜美味しい」


「こんなに美味い料理を食べたのは久しぶりだな」


「ふんっ、当たり前よ」


クレアはファミリーに料理を褒められて嬉しかった。クレアは機嫌が良くなったのか、スプーンを口に運ぶ速度が早かった。


「そうだユーリ」


「なんだ?」


「お前もここで住み込みで働いたらどうだ?どうせ行く場所ないだろ?」


「っはぁ?あんたそれはシャトンだけであってねぇ!」


急な小雨の提案にクレアは驚いた。敵対していた組織の人がこの宿で働くなど、今後どうなるのか予想もつかなかった。


「…ま、いいわ。人手が足りなかったのも事実だし、罪人は明日から上の手続きが終わり次第、働いて貰うわ」


「クレアちゃんやっさしーー」


「あんたは黙ってなさい」


クレアはアランの頭をバシッと叩いた。

貴族にこんなに行動をとれるのはこの国の中ではクレアぐらいだろう。

それから時間は過ぎ、夕方まで五人は雑談をしていた。

途中でアランは帰宅し、残された四人は晩ご飯を食べ、

それぞれの夜を過ごした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして次の日の昼。

朝から居なくなったシャトンとユーリを小雨とクレアが探した末、宿の裏で二人の死体が見つかった。

二人が死んでからかなり時間が経っていたのか、ハエがたかっており、腐敗臭もした。

二人の胴体は太い何かで貫かれたような跡があり、ぽっかりと穴が空いて向こうが見え、口からは血が垂れてなんともむごい姿だった。


「い…一体誰がこんな事…!」


死体を前にした小雨は思わず口を抑えた。そんな小雨を横にクレアは一言呟いた。


「最後まで使ってあげようと思ってたのに…残念ね」

最後までお読み頂きありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。