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クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第一章 【予言】
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アランVSユーリ

「やはり…シャトンを行かせたのは間違いだったか」


男が小雨とアランをじっと見ていた。声は低く、四十歳くらいの渋い声だった。身長はアランより高く、黒髪で帽子を被っているせいで顔はよく見えず、真っ黒なコートを羽織っていた。胸にはやはり、ファミリーのバッジがあった。


「……あ…いつ…が…」


口から血を吐いているシャトンがアランを指さした。シャトンの胸からは血が止まることなく出続けていた。


「ほう、あの小僧が…。それはそうと…自己紹介をしようか。俺はファミリー所属、ファミリー番号No.八、ユーリ・ウィンターズ」


そう言ってからユーリはシャトンを一瞥してからアランに向き直り、近づいた。


「ファミリーがやってしまったことは申し訳ない、これも我々の目的でやった事…ただし、シャトンに手を出したのはこちらとして許せませんねぇ…」


「しかし、先に手を出したのはそっちだ。ここは穏便にいかないーー」


次の瞬間、ユーリがアランを上空に蹴り上げていた。蹴ったあと、すぐにユーリはアランの元へ行くために跳んだ。


「穏便に……ねぇ、だけどこっちは大事なファミリーに手を出されてるんですよ…ねっ!」


「あがっ……!!」


ユーリはそのままアランを昨日出会った草原の方向へ蹴飛ばした。蹴飛ばされたアランは衝撃でしばらく動けなかったが、一分も経たないうちに立ち上がった。


「アラン!!」


「……は…ははっ!ざまーみろ!」


「お前は黙ってろ!」


「うわっ!」


下にいた小雨は余計なことを言ったシャトンの頭をベジッとたたいた。昨日はあんなに強かったアランがNo.八に苦戦している。そう考えるとNo.一には勝てるのだろうか…考えただけで寒気がした。


「ほぉ、お前の名前はアランと言うのか。ではアラン、私と一度手合わせ願おうか?」


「……ははっ」


「なんだ?断るのか?」


「いいや……」


アランは立ち上がり、服に付着した砂埃を払い、剣の位置を確認した。そして一度深呼吸を置いてからユーリの方を向いた。さっきまでとはオーラが違う。それにユーリは気づき、少し身構えた。


「お前との手合わせ、受けて立とう」


「ククッ……その意義だ」


二人は一定の間隔をあけて立つ。アランは剣を右手で鞘から抜いた。ユーリの方はと言うと、どこからか大剣を出してきた。さて、どちらが先に動くのかーー


「じゃあ……私から行かせてもらおうか」


ユーリが地面を蹴ったその瞬間、ユーリの姿は消えた。

しかし次の瞬間ーー


「私は後ろですよ、ローレンス」


「…っそこか!」


アランはユーリが振りかざす大剣を避け、地面を蹴って距離を置く。アランの頬に赤い線が入った。


「おや、なかなかやりますねぇ」


「じゃあ次は俺が」


アランが地面を蹴って一気に距離を詰める。しかし目の前に行っても剣は振らず、一度地面に両足をついてそのまま再び姿を消す。


消えたアランを探すようにユーリは辺りを見回すがアランはいない。だがアランは既にユーリの後ろ…上から剣をふり下ろしていた。


「なっ…!」


ユーリは反射的に大剣を使ってアランの攻撃を耐えた。大剣でなければそのまま切られていただろう。


「……チッ」


アランが舌打ちを打つ。


「さすがローレンス、今のは驚きましたよ……でも、私もそろそろ本気を出しましょうか」


ユーリがそう言ったあと、ユーリの体に薄い緑色のオーラがまとわりつく。アランはその光景を見て再び構えたその瞬間ーー


「決着をつけようじゃないか、ローレンスよ!」


ユーリが凄まじいスピードでアランに向かい、大剣を振り下ろす。振り下ろされた大剣をアランは慣れたように避ける。


「…はぁ、なんともそう簡単に躱されると、流石にメンタルにきますよ」


アランが避けたのを見て呆れたユーリは再び大剣を持ち上げる。その地面はパックリと切れていて、とても普通の人ではできないような技だった。


「…なるほど、風属性に特異魔法持ちか」


「ははっ、ご名答!」


アランはユーリの属性が判明したと同時に余裕そうに笑った。ユーリにはバレない程度に顔を隠して。


「さぁ、続きをしようじゃないかローレンス!」


ユーリが再び風魔法を使って凄まじいスピードでアランの方へ向かうが、アランは何もせずそこに立ったままだった。アランは余裕そうな顔でユーリを見る。


「……なんだ?どうしてそんな顔をする!」


「なんでって……」


アランが指を鳴らした瞬間、アランの炎属性の魔法の火の粉がユーリの風魔法と合わさり、ユーリの身体が燃える。


「なっ……!!」


ユーリが油断した隙にアランはユーリの懐に入り、急所をわざと外すように剣を根元まで突き刺した。アランが刺したユーリの腹部からから血が吹き出てアランの顔にピュッっとかかる。


アランはそんなことも気にせずにユーリの腹部から剣を抜いて血をはらい、鞘に剣を戻した。


「ユーリ、お前ファミリー番号八番なんて言ってたけど…」


「な、何を……ぐっ!!」


アランがユーリに近づいて手を出されないようにまずユーリの左手首を左足で踏んで固定した。

それからファミリーのバッジをじっと見た。案の定、バッジにはシールが貼られており、そのシールを剥がすとファミリーのマークの下にNo.十四と彫られていた。


「ほーら、お前弱すぎるんだよ。何がNo.八だよ」


「ふざ…けるな!俺は…まだ……戦え…」


ユーリは失血で気絶していた。これからどうしようかとアランが考えているところに小雨がやってきた。


「おーい!アラン!」


「相棒…!」


「ファミリーは?どうなったんだ!?」


「ファミリーは倒した、これから警備隊に預ける。心配すんな、急所は避けている。」


シャトンのあの傷でも一応急所は避けていた。そうして二人はシャトンとユーリを警備隊に引き渡した。その後彼らはどうなるのかは分からない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

小雨とアランは殺された一家の事、ファミリーの事を上層部に報告した後宿に向かった。


「ありがとう相棒、お前のおかげであの二人を捕まえることができた。」


「いやいやいや!俺別に何もしてないし!勝手にどっか行っちゃったし……」


「いいや、それに関しては罪悪感を抱く必要はない。」


「…え?」


「あの時俺はわざとお前と離れたんだ。元々ファミリーの誰かが忍び込んでいるのはわかってた事だ……たが、もう死人が出ていたとは知らなかった…」


「……」


「次からは死人が出ないように今以上に警備を強化しないとな……いくら回生の特異魔法を持った人がいたとしても罪のない人を痛めつけるやつは俺は許せない」


「回生の特異魔法?」


「あぁ、怪我を負うか死んでからか、四時間以内に回生魔法を受けると生き返ったり傷が完璧に癒えるんだ。だから多分、あの一家も回生魔法で生き返るはずだ」


「へぇ〜そんな魔法もあるんだな…」


「お前にはこの後宿で詳しく話すよ。この国のこと、魔法の事、全部」


「うん……てかアランが俺とシャトンのことを監視してたならなんで俺シャトンに襲われてた時すぐに助けてくれなかったんだ?」


「……えぇ?」


「いやだから!俺あの時死にかけたんですけど?!」


「…っはは、ごめーんトイレ行ってた☆」


てへぺろと言わんばかりに拳を頭にコツンと当てたポーズをした。


「いやトイレかよ!!人の命よりトイレかよ!!」


「仕方ないだろ?尿意には勝てない」


「まぁそうですけど」


たわいもない話をしていると宿が見えてきた。そして宿の扉を開けて宿に入ると、受付のカウンターにいたクレアは怒った様子で小雨達を見た。


「おーそーい!!十二時までには宿に戻るよう言ったよね?!」


「あっはは、ごめんごめん、ファミリーの相手しててさ」


「ごめんクレア、今日だけ許してくれ!」


カウンターに両拳をぶつけてから申し訳なさそうな顔をする2人を見て、クレアはフンッと鼻を鳴らしてから再び口を開いた。


「せっかく作ったご飯が冷めちゃったじゃない!温め直すからちょっとまってて。アランはとりあえずお風呂でも入ってきなさい!そのばっちい体で宿をうろちょろされたら困るんだから」


「はーい、お風呂入ってきまーす」


「わかった、俺は部屋で待ってる」


アランはお風呂へ、小雨は自室へ行った。クレアはその間に作っておいたお昼ご飯を温め直した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「入るわよ〜」


アランはとっくにお風呂から出てクレアが洗濯してくれた服が乾くまで小雨の部屋にお邪魔していた。クレアの方はわざわざご飯を温め直して小雨の部屋まで持ってきてくれた。


「今日のお昼ご飯はカレーよ。お昼ご飯って言ってももう三時だけど」


「うわぁっ!美味しそ〜!」


「いいな〜俺にも何か作ってよ〜」


クレアが持ってきてくれたカレーからはカレー特有の色んなスパイスの匂いがした。そんな小雨をアランは羨ましそうに見ていた。


「残念ね、用意したのはコサメの分だけよ。事前に言ってくれれば作ってたのに」


「はは、それもそうだな」


自嘲気味にアランは笑った。クレアも二人が無事に帰ってきてくれてどこか嬉しそうだった。そして三人はローテーブルを囲むように座った。


「うーん!しっかし疲れたな〜!」


「ファミリーの件は警備兵に任せたら良いのに、どうしてわざわざアランが行くわけ?」


「暇だからに決まってるだろ!」


・ ・ ・


「え…えぇ?」


「……はぁ、呆れる」


「じゃあ食べながらでいいから聞いてくれ」


「あら、やっと説明するのね」


「今までタイミングがなかっただけだ」


どうやら先程言った魔法やら国の話をするらしい。これで今までの疑問が解けるだろう。


「この俺たちの住んでる国の名前はナクライア王国、世界のちょうどど真ん中に作られたどデカい国だ。周りには草原や森やら川やらあるがそれはいずれ教える」


「全て教えるんじゃなかったの」


「全部教えるのには時間がかかるんですー」


「ちなみに俺はこの国の四大貴族のうちの一家の次男なんだぞ!」


「えぇ?!そうなのか?」


「そんなに驚くことかしら」


「じゃあこの世界の魔法について教えよう」


魔法ーー。

先天性のものが多く、生まれた瞬間に属性が決まる。

この世界の魔法の属性は主に火属性、水属性、土属性、風属性、雷属性、光属性、闇属性の七種類。

もちろん相性の悪い属性もある。例えば水は炎に弱かったり、雷は水に強かったり。

しかし物を動かすとか、小さい傷を直したりする基礎的な魔法は皆扱えるんだ。


そして、そんな中でも例外なのが特異魔法という属性を持たない魔法だ。

これは先天性でも後天性でも発現する人はいつでも発現する、まさしく運。

この世界では現在四割の人間が特異魔法を取得している。


ファミリーのシャトンも変装っていう特異魔法を持ってたし、ユーリはあらゆるもの一振で断ち切るっていう特異魔法を持ってたな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「長くなったけど、これで魔法のことはわかった?」


「ま、まぁ何とか」


「絶対わかってないわよね」


「ちなみに言っとくが、魔法にも上限ってもんがあるから使いすぎには注意だぞ!」


情報の量の多さで頭がパンクしそうだった。しかし異世界なだけあって魔法が使えるなんてちょっぴり羨ましかった。


「アランとクレアの属性はなんなの?」


「俺は炎!特異魔法も持ってるぞ!」


「私は水よ特異魔法は一応あるけれど…戦闘向きじゃない」


アランは自信ありげに、クレアは自信なさそげに言った。

クレアは自分の能力がそこまで気に入っていないのだろう。


「魔法だなんてすごいな〜、俺も使えるようになったりするのか?」


「いや、どうだろう?今まで異世界からやってきたなんて聞いたことがなかったしな〜」


「実例がないだけで、可能性はゼロではないわ」


「俺も魔法欲しいなぁ〜」


「もし魔法が使えるならどんな魔法を使いたいんだ?」


「光とかかっこいいと思うけど〜…魔法が使えたらなんでもいいかな」


「なるほど…ま、いつか手に入れられるように願っときな」


「そうね、願ってなさい」


「はぁ〜、おなかいっぱい。今日もご飯作ってくれてありがとうクレア」


「宿の店主だから当たり前よ」


そう言うと小雨が食べたカレーのお皿をお盆に乗せて部屋を出て行った。部屋を出ていくときに見えたクレアの顔は少し嬉しそうにも見えた。


そうして時間が過ぎ、小雨はユーリと別れた後、昨日みたいにお風呂に入り、ご飯を食べてふかふかのベッドで眠った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次の日、小雨が起きて顔を洗いに行こうと一階に降りた時、そこにはクレアと喋るシャトンの姿があった。


「え?……えぇ?!?!」

最後までお読み頂きありがとうございます。

下に小雨、アラン、クレアの年齢/性別/身長を書いておきます。


小雨

年齢/18歳 性別/男 身長/169cm


アラン・ローレンス

年齢/21歳 性別/男 身長/178cm


クレア・ルイアス

年齢/28歳 性別/女 身長/115cm



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