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クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第二章 【オルド国の神隠し】
39/49

目的

ノアは小雨に向かってナイフを振り下ろした。


「うわぁっ!!」


小雨が間一髪で避けた。ノアが振り下ろしたナイフが小雨の髪の毛をかすり、何本か切れる。


「おいおい避けるなって〜」


「避けない人なんていなくないか?!」


小雨がノアに向かって叫ぶ。しかしノアは怯むこともなく小雨に向かってゆっくり足を進めた。しかしノアが近づく度に小雨は後ずさる。


「もし仮に避けられても、どうせお前は死ぬ運命なんだからと大人しく降参したらどうだ〜?」


目を見開いて

「えっ……俺が?」


動揺する小雨を見てスピカが口を挟む。


「ノアの言い方が悪いね、どうせ回生魔法で生き返るし、記憶もなくなるから安心して!」


「全然フォローになってないって!」


ついスピカの言葉にツッコミを入れてしまった。小雨の顔色はますます悪くなる。


(あれ?生き返って記憶が無くなる……まさか!!)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あれ、俺って……」


「玄関の前で倒れてたの」


ソファーの背もたれから小雨をじっと見つめる水色の瞳の少女が小雨のことをじっと見ていた。


「っ……フランちゃん!」


小雨は嬉しさのあまり大きい声で叫んでしまった。目を見開いて驚いている小雨を見たフランソワは首を傾げる。相変わらず眠そうな目をしている事に気づき、小雨は思わずクスッと笑った。


フランソワを見ながら

「コサメが帰ってこないからって出ていこうとしたらコサメくんが玄関前で倒れているのを見つけてくれたのよ」


驚いた顔をして

「え?俺が?」


背もたれに座り小雨を見下ろしながら

「何にも覚えてないの?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あの時……まさか!!」


「ん?もしかして気づいた?」


スピカがニヤッと笑った。そして右手の人差し指を立てて小雨の目の前まで行く。


「君がどこに行ってたのかは知らないけど、私たちの話を盗み聞きしてたからそりゃもう面倒くさい事になってね〜」


「この前私はベテラン魔法使い〜。なんて言ってませんでしたっけ〜」


ノアは腕を組み、ニヤッとしながらスピカを見る。


「あれは仕方が無いでしょ!事故よ、じーこ!」


二人の視線が小雨から離れる。二人の会話を聞いていると、どうやら二人は先輩後輩の関係のようだ。


「……」


小雨は一歩、後退る。幸い二人は小雨の事に気が付いていない。


(今なら屋敷まで走って助けを呼べるかもしれない……)


小雨は慎重に一歩ずつ屋敷に向かって下がっていく。スピカとノアはちょっとした喧嘩にまで発展している。


小声で

「……よしっ、今だっ」


小雨は二人にバレないように屋敷に向かって走った。再び窓から入ろうとすれば高さがあら、ハシゴが必須になってくるため玄関に向かって走った。


深夜の庭は真っ暗でほとんど見えない。おまけについ最近この屋敷にやってきた小雨はこの広すぎる屋敷の右も左も分からない。そのためほとんど勘で走っている。


(俺の考えが合ってたらいつかは玄関に辿り着く!)


小雨の考えはこう。広すぎる屋敷でも壁に伝って走っていればいつか必ず正面玄関まで辿りつけることができるというシンプルな考え。


「……あれっ?」


喧嘩していた二人は小雨がいなくなっていることに気がつく。


「あ〜あ、先輩やっちゃいましたね」


「もうっ!ノアのせいだよ!早く探そ!」


二人は小雨を探す。何とかバレずに正面玄関から屋敷に入ってセリシアかエース、またはアテナのところに辿り着けば小雨の勝ち。


走りながら

(なんだ、簡単じゃんっ!)


余裕をかましていた小雨。まだ体力はあり、このまま走り続ければ二人に見つかることなく正面玄関に辿り着けるだろう。しかし現実はそう甘くは無い。


「ばぁ〜♡」


「っ?!?!」


いきなり横から現れたノアに小雨は驚きのあまり躓いて転けてしまう。手をついた所が悪く、手のひらの皮がめくれ、血が滲む。


「楽しい鬼ごっこはもうおしまいか〜?」


「小雨くん酷いじゃん!いきなりいなくなるなんて」


あっさりと見つかってしまったことに驚きが隠せないまま、小雨は二人に向かって口を開いた。


「そ、そもそも!お前達はどうしてここにいるんだ?!」


二人は顔を見合せてからスピカが口を開いた。


「小雨くんはしらないかもね、今こっちの界隈でと〜っても面白いことになってるの。だから私たちは君を守りたい!」


「……は?守る?……え?」


スピカが再び小雨に向かって右手の人差し指を立て、一歩前に出た。


「小雨くんは今、懸賞金がかけられてるの」


「け、懸賞金?……ははっ、そんな馬鹿な」


「嘘じゃない」


スピカがもう一歩、前に出た瞬間さっきまでの軽い空気はどこかに消えた。


「元はどこかは分からない……でも現状他の組織は血眼になって君の事を探しているんだ。そして君の賞金額は……」


「……」


小雨は固唾を飲む。ノアもスピカの隣からさっきまでの恍惚とした表情は消え、真剣な表情になっている。


「……200億1130万」


「……え?」


今まで聞いた事もない金額に小雨は驚きを通り越して間抜けな顔になった。スピカの隣に立っていたノアも驚きを隠せていない。


「ふざけてるのか?」


「こんな時にふざけるわけないじゃない!」


小雨が顔を背けて

(疑いたくもなるって……!)


小雨はまだその現実を受け止めきれていないまま、立ち上がって服に着いた砂埃などを払いながら二人の方を見た。


「じゃあお前らの目的は俺の誘拐なのか?」


「それは違うよ!」


「もうわけわかんねぇよ!!」


大量の情報を受け止めきることができなかった小雨はその場で泡を吐く。それを見たスピカが指を鳴らすと大量の情報が支配していた頭がスッキリした。


スピカを見ながら

(……魔法か?)


「そん顔しないでよ!今のは簡単な治癒魔法……的な?」


「せんぱ〜い、こいつ早く殺してもいいですか?」


ノアが耐えきれなさそうにナイフを片手でクルクルと回していた。


ノアの方を向いて

「ちょっと待って!まだ説明が終わってないから!」


「早くしてくださいよ〜」


そう言ってノアはその場でしゃがみ、地面を歩く蟻を刃の先で一匹ずつ潰していった。


「……じゃあ魔女遊戯会は何をしようと?」


腰に手を当てて小雨を見下ろしながら

「私たち は君の人生を最高のものにしたい!明るい人生にするためのお手伝いをしてるんだ!今ここにいるのは他の組織がこの屋敷に近づかないか、見張ってあげてるんだよ!」


首を傾げてスピカをじっと見ながら

「明るい人生にしたい……それって人を犠牲にしてまでする事か?」


「……」


スピカは小雨の言葉に黙った。次の瞬間ーー


「ノア、殺って」


「……えぇ?!」


「はいよ〜♡」


ノアはナイフをクルクルと片手で回し、小雨にジリジリと近づく。小雨はノアに怯えつつ、スピカの方を見た。


小雨を睨む

「やって貰ってる癖に何を偉そうに…」


「もしかして俺やばいこと言ったか……?」


肩をすくめて

「さぁ?」


小雨は今の状況が理解できずにその場で固まってしまう。しかしこのままだとノアに殺されてしまう。また繰り返してしまう。小雨は考え込んだ。


「なんだ?早く殺して欲しいのかっ?」


油断していた小雨にノアは地面を蹴って近づく。小雨はギリギリになって気づいたが避け切れることなくナイフの刃が小雨の方をぱっくりと切った。


頬を抑えて

「……いってぇ」


痛みが後からやってくる。この状況をどうしようか、必死に考えていたとき、足元に何か感覚があった。


「……木剣?」


なぜここに木剣があるのか分からなかった。しかしーー


(あ、これこの前エースに投げ飛ばされたやつだ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お前戦うの好きだな?」


エースに木剣を向けながら

「お前に勝たないと気が済まないんだ」


「……あっそう」


エースが勢いよく地面を蹴り、小雨に近づいて小雨の木剣に攻撃を入れる。その力に耐えられなかった小雨は木剣が手のひらから抜けてどこかに飛んでいった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


木剣を拾いながら

(あの時の……)


「お?武器発見か〜?」


ノアはニヤニヤしながら小雨に近づく。そして小雨が武器を拾った瞬間、目を見開いた。


「もしかして……♡」


木剣をノアに向かって構えながら

「……正々堂々勝敗を決めよう」

最後までお読みいただきありがとうございました!

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