デジャブ
「お前から聞きたいことが山ほどある、正直に答えろ」
そう言ってエースは小雨の首に剣を突きつけた。ヒヤッとした感覚がダイレクトに伝わってくる……先月も同じような体験をしたような、どこか何か近親感を感じた。
焦った様子で
「い、言います言います!!だから命だけは!!!」
(なんかすっげーデジャブ)
小雨を睨む
「……」
小雨の焦る様子を見てエースは剣を下ろした。降ろされた剣を見て小雨は安堵のため息を吐く。その後、小雨は顔をエースの方に向けた。
「で、話って何なんだ?」
「お前のことだ、どうやってこの世界に来た?前の国で何をしていた?全部聞き出すからな」
小雨は縛られたまま面倒くさそうに頷いた。これから出会って来る人達ともこんな事をしていかないといけないのだろうか、そう考えるとどうしても気が気じゃなかった。
特に動揺もせず
「いーよ教えてやる」
驚いたように目を見開きながら
「ええっ……」
エースをじっと見てニヤッとしながら
「こういうのは以前にもあったんだ」
思っていた反応をしなかった小雨にエースは驚く。こう早くも情報が得られるとは思いもしなかった。でもこれはエースにとって好都合、早速向かいの椅子に座って小雨の目を見た。
「じゃあ一つ目、お前はどこから来た?」
「異世界」
「……ここに来る前はどこに住んでいた?」
「ナクライア」
「年齢は?」
「十八」
「はっ、俺の方が一つ年上だな。これからは態度を改めろよガキ」
「うるせぇクソジジイ!」
「……はぁ」
淡々とエースの質問に小雨は流れ作業の様に答えていく。次の質問に入る前、エースは少し間を開けてから口を開いた。
「ナクライアではどう過ごしていた?」
「……お前ナクライアで何かあったのか?」
動揺を隠せずに
「いや、別にそういうんじゃない……あと質問を質問で返すな!!」
「絶対何かあるだろ!」
小雨がいくら叫んでもエースは頑なに何があったか喋ろうとしない。それに見かねた小雨はため息を吐き、口を開く。
「安心しろ、ナクライアじゃ色んな事件があった」
目を見開いて
「……えっ?それは安心出来ることじゃないだろ!舐めるんじゃねぇガキ!」
その時、屋敷のどこからか爆発音が聞こえた。
「そうそうおれが住んでた宿があんな風にでかい音立てて爆は……ん?」
二人は一斉に扉の方を見た。しかしこういったことはリリー家ではよくある。
「エース……行くか?」
小雨を見下ろしながら
「うーん、どうせ誰かがやらかしただけだろ?」
帰ってきたエースの言葉に小雨はしばらく悩んだ。その顔は先程までのふざけたような顔ではなく、真剣な顔だった。
「俺は行きたい、何がどうであれ、俺は見て見ぬふりなんてできない」
「……っ!!」
そのセリフにエースはつい頬を綻ばせる。その表情はどこか懐かしむような表情だった。
頷いて
「あぁ、俺は優しいから仕方なーくガキにお供してやるよ!」
二人は顔を見合せて頷く。小雨は色々突っ込みたい所があったが、今はそんなことをしている場合ではなかったため、二人は様子を見に行くことにした。
深夜の屋敷は恐ろしい程に真っ暗で幽霊屋敷同然だった。しかし二人は恐れることなく廊下をズカズカと歩いていく。
「おいガキ、どこから聞こえた?」
「知らん、キッチンら辺じゃね」
小雨の言葉を元に二人とりあえずキッチンへ向かうことにした。エースの部屋からキッチンまで地味に距離がある、歩きながら二人は会話を続ける。
小雨の方を向くことなく
「お前俺より遅いな?さては怖いとか?」
「怖くねーし、ゾンビゲームどれだけやってるか知らないくせに何言ってんだよジジイ」
「あぁ?誰がジジイだ」
「俺がガキならお前はジジイだ」
「一歳くらい誤差だろ」
「その言葉をそのままそっくりお返しするわ」
何度か角を曲がり、階段を降りる。時々二人の会話が喧嘩に発展しそうになるが、お互いそんなことをしている場合では無いとわかっていたため、喧嘩まで発展することはなかった。
向こうの扉を指をさしながら
「あそこがキッチンだ」
「はぁ……地味に遠いなー」
小雨はヘトヘトになりながらエースについて行く。エースが先に扉を開けて小雨もキッチンに入ろうとした時、エースの背中にぶつかる。
「んぎゃっ!いきなり止まるなよ!」
冷や汗をかきながら
「お前ゾンビゲームでグロいの死ぬほど見てきたよな……?」
ぶつけた鼻を抑えながら
「あったりまえじゃん」
「……が」
「は?」
エースは後退る。それと同時に小雨もエースに押されて後退る形となった。痛みが引き、鼻を離した時、微かに臭いがした。
「……血?」
取り乱して
「だからっ!血飛沫とか色々!ヤバいんだよ!」」
(……まさか)
まさかと思った小雨がエースを押してキッチンの中を見る。そこにはーー
「……っ!!!」
壁、天井、床、キッチン全体が血塗れになっていた。小雨は鼻をつまんでキッチンに入る。周りを見渡すと包丁や食器が散乱しており、とても悲惨だった。
小雨の方を向いて
「とりあえず、アテナに報告だ!」
エースは背を向けてアテナの部屋へと走って行った。残された小雨は血飛沫をよく見る。
「綺麗な赤だな……てことはさっき本当に何かがあったんだな」
後ろから二人分の足音が聞こえる。一つは重く、もう一つは軽い音。
「小雨くん」
後ろからアテナの声が聞こえた。振り返るとアテナの後ろに顔を歪ませたエースが立っている。
「後のことは任せて、今日はもう寝て」
渋々
「……分かった」
自分よりアテナの方が優れているのはリリー家で仕事をしていてよくわかる。ここはもう自分が出る幕ではないと判断した小雨は自分の部屋に戻り、布団を被る。
(いや眠れねぇ……)
あの血飛沫を見て眠れるわけがなかった。
「……で」
「……だ……」
「ん?」
外から人の声が聞こえた気がした。小雨は窓を開けて下を見るが、そこには誰も居ない。
肩を落として
「……行くかぁ」
小雨は一人、リリー家を出て声の主を探ることにした。
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