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クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第二章 【オルド国の神隠し】
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副作用

「ってことで!俺の特異魔法も判明したことですし〜?」


「……またやってるの。最近構ってくれなくて寂しいの」


エースと小雨が再び中庭の中央で木剣を持ち、向かい合って立っている。小雨は自信満々な顔をしており、一方エースは少し戸惑っている様子だ。


顔を少ししかめながら

「今回は特異魔法のみ使用ありか……お前のことなら調子乗って使いすぎるんじゃねぇの」


余裕そうな顔で

「俺だって限度ってもんがわかってるさ」


次の瞬間、先に動き出したのはエース。お得意の身体能力で小雨の懐に一気に間合いを詰める。いつもの小雨ならここでエースに一本取られる。しかし今日はーー


「ーーサクリフィシオ」


そう唱えて小雨は木剣の刃の部分で指を少し切った。その瞬間、小雨はエースの攻撃をかわし、反撃に出る。


「はぁっ?!?! 」


その姿に思わずエースも驚きを隠せずにいた。遠くから見ていたフランソワもーー


「こ、コサメすごいの!」


思わず中庭に出る扉を開いて中庭に入ろうとするがたまたま通り過ぎたアテナに首根っこを捕まれ、屋敷の中に連れ戻されてしまう。


ジタバタしながら

「はーなーせー!」


さらに力を入れながら

「ダメですよ、危ないですから私と見てましょう」


「うっしカウンター!!」


小雨がエースへ反撃に出てついに攻撃を入れられると思ったが現実はそう甘くなかった。


「ーーメンティオル」


その言葉は目の前にいるエースからではなくーー


「後ろっ!!」


小雨は声が聞こえたその瞬間油断して隙を見せてしまい、木剣で斬られる。しかしただの木剣のため、斬れることは無く、ただ向こうに吹き飛ばされただけだった。


「はぁああああ……死ぬ」


小雨は疲労で仰向けに寝転がった。しかし休憩をとると共に小雨はむせて起き上がった。


「げほっ……ぐっ」


木剣を拭きながら

「大丈夫かー?」


遠くからエースの伸びのある声が聞こえてくる。木剣を拭くエースは特に小雨の事を気にしてはいなかったが、チラッと小雨の方を向いた時に赤いのが見えた。


「あんまり無理すんな……っては?」


小雨は鼻と口元を必死に抑えている。その指の隙間からは血が出ており恐らくーー


小雨をビシビシと指でさしながら

「特異魔法の使いすぎだ」


エースは小雨に駆け寄ってポケットからハンカチを出して抑える。特異魔法の副作用は聞いたことがある程度で見たことはなかったため、この時の対処法を知らなかった。


「コサメっ!大丈夫なの!」


フランソワが扉を思い切り開けて小雨の方へ駆け寄る。そしてすぐに簡単な治癒魔法を使ったため、出血量は多少減った。


後ろから

「小雨さん、魔法の使いすぎには注意です……特に君はまだ体身体が魔法に慣れていない」


首を掻きながら

「あー……アテナさん、俺連れて行きます」


「私も行くの」


頷いて

「分かった、この程度だったら寝かせるくらいで十分。だけど血が喉に詰まらないようにだけ気をつけて」


二人を見たアテナは頷いて了承した。そして了承を得た二人は二人がかりで小雨を担ぎ、屋敷の中へ入る。


キョロキョロしながら

「フランソワ様……コサメの部屋ってどこか知ってますか」


「し、知らないの!」


なんと二人は小雨の部屋の場所を知らなかった。もちろんその場て二人は大焦りする。屋敷は恐ろしい程に広い、小雨の部屋を探すために小雨を担ぎながら一部屋ずつ確認するのは普通に考えて無理だった。


「……ああぁもう!こうなったらどこの部屋でもいい!」


「うわっ!」


いきなり歩き出したエースにフランソワはびっくりしつつついて行く。そしてエースはとある部屋の扉の扉を開ける。その部屋に入ったフランソワは目を見開いた。


周りを見回しながら

「す、すごい部屋……!」


エースは小雨を自分の部屋へ運ぶ事にした。誰でも自分の部屋に入れるわけではない。今回だって他の部屋を勝手に使えば給料を引かれる可能性もある。


小雨をソファーに投げ飛ばしながら

「あまり見ないでくださいよ、フランソワ様」


「あぁー!小雨を乱暴にしちゃダメなの!」


フランソワは急いで小雨の元へ駆け寄る。血自体はもう既に止まっていた。服の襟には血がカピカピだった。貧血になったのか、すやすや眠っている。なかなか目覚めない小雨をフランソワは心配そうに眺めていた。


フランソワに近づきながら

「そこまで心配しなくても大丈夫ですよ」


「でも心配なの」


フランソワの小さい口はへの字に曲がり、眉毛も下がっている。その様子に耐えられたなかったエースは頭をガシガシと掻いた。


「フランソワ様、少々お時間下さい!」


「……」


エースの言葉にフランソワはコクっと頷く。そして一分もしないうちにエースはアテナを連れて部屋に戻ってきた。


「フランソワ様、お待たせしました!」


「……アテナ!コサメ死んじゃったらどうしよう!」


アテナの登場にフランソワの限界が突破してフランソワは泣きながらアテナの腰に抱きつき、頭をグリグリした。


フランソワの頭をパフパフしながら

「そこまで心配しなくても大丈夫ですよ」


アテナはエースの部屋に入る際、お邪魔しますと一言言ってから小雨の元へ向かった。アテナが見るからには特に問題は無いがフランソワは小雨が目覚めないことに極度の不安を抱いている。


「……」


アテナは少し悩んだ末小雨に向かって声をかけた。フランソワとエースの二人は後ろからアテナの事を大人しく見ている。


「小雨さん、起きてください」


アテナがとった行動は揺さぶるでも強引に起こす事でもなくただ声をかけただけだった。


「そんなことで起きるのか?」


「コサメ……」


二人はアテナの行動の効果に半信半疑だったが次の瞬間ーー


眉をひそめて

「……ん……んん」


すぐさま駆け寄って

「あっ!起きたの!」


「ええっ、マジで起きるのかよ」


アテナは二人の後ろに下がり、小雨が目覚めるのを待っていた。最初は呻き声だった小雨も、次第に身動ぎを初め最終的には起き上がった。


「おはようなの!」


「……ん、おはよ」


小雨は目を擦って起き上がった。さっきまで貧血で気を失っていたとは思えないほど元気だった。小雨が平気なのを確認してフランソワはアテナの方を向く。


「ありがとうアテナ!あなたは神様なの!」


「すっげぇなアテナは……で、見返りとか求められたり……?」


アテナはフランソワに微笑んでからエースの方を見た。


「見返りは大丈夫です……しかしありがとうございます。本当は小雨くんを自分の部屋に入れるの、相当嫌でしたよね」


両手をブンブン振りながら

「いやいや!別にそこまでですよ!」


「わかりました」


アテナはそう言って部屋を後にした。フランソワはいくら小雨が起き上がっても不安はゼロにはならず、まだ寝ぼけている小雨の隣にしばらく居た。


「おいコサメ、夜になったら俺の部屋来い」


驚きでエースを見る

「えっ……それって……」


二人の間に無言が走る。


「いやそういうんじゃねぇよ、話したいことがあるだけ」


どこか安堵した様子を見せながら

「……あぁ、なるほど」


「何の話なの?」


「フランソワ様にはかんけいないです」


まだ昼前の話だった。完全に目覚めた小雨はソファーから立ち上がり、顔を洗いに行こうとする。部屋を出る際、思い出したようにエースの方へと振り返った。


微笑んで

「運んでくれてありがとうなー」


「わ、私もコサメを助けてくれてありがとうなの!」


二人からのお礼にエースの顔がぶわっと赤くなった。褒められ慣れていないのか、目を合わせないようにそっぽを向く。


「うっせばーか」


そしてその日の深夜ーー


ノックをして

「小雨でーす」


「……入れ」


小雨がドアを開けて入った瞬間、いきなり胸ぐらを掴まれて椅子に座らせられる。そしてその後、椅子にロープでぐるぐる巻きにされ向かいにあるもうひとつの椅子にエースが座った。


あたふたしながら

「こ……これってどういう」


本物の剣を小雨の首に突きつけて目を合わせながら

「お前には今から質問に答えてもらう」


ガタガタと震え、エースを見上げながら

「え……えぇ?」

最後までお読みいただきありがとうございました!

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