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クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第二章 【オルド国の神隠し】
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因果応報

「ちょ……アテナさ〜ん?買う量めっちゃ多くないですか〜?」


大量の荷物を持った小雨がアテナの後ろを何とかついて行く。フランソワも小雨の手伝いをすべく、量の少ない紙袋を持った。


「屋敷全員分となるとそのくらい普通だよ。あと君は男の子何だから頑張ってよ」


アテナは振り返ることなく次のお店に向かって歩いていくと、とあるお店の前でいきなり止まった。荷物を持った小雨は立ち止まったアテナに気付かずにギリギリになって気づくわ


「うわっ!!いきなり止まるなよ!」


「いきなり止まると危ないの!」


アテナの後ろで二人はアテナに向かって怒りの言葉をぶつける。アテナの視線の先にあったのはーー


「……髪留め?」


雑貨屋に並べられていた可愛らしい白色のシュシュだった。アテナは髪の毛が長いため、括らなければそれはとても不便だろう。


「あ!私シュシュ欲しいの!」


「フランソワ様、いきなり走ったら危ないですよ」


フランソワは雑貨屋に向かって走っていく。それに気がついたアテナはフランソワを追った。


「……シュシュかぁ」


そう呟いた小雨はその場でしばらく立ち止まり、何か考え事をしていた。そして二人の姿が見えなくなった頃、小雨は焦って雑貨屋に向かって走った。


「アテナ、これ似合うと思う?」


「……はい、とてもお似合いかと」


雑貨屋に入ると左右上下雑貨、雑貨、雑貨だった。フランソワは子供用の髪留めコーナーに立っており、アテナはフランソワの髪留め選びに付き合ってあげていた。


「う〜ん、これも可愛いし……あ、これも可愛い」


「好きなだけ見てください。いくらでも付き合いますから」


フランソワの前にいきなり現れて

「フランちゃん〜、俺の髪留め選んでー」


いきなり現れたかと思えば髪留めを選ぶようにフランソワにお願いする。フランソワは現れた際、少し驚いたが嫌がる顔を何一つせず小雨の髪留めを真剣に選ぶ。


首を傾げて

「コサメの?ん〜……水色も似合うし、ピンクも似合うの」


フランソワは一つずつ小雨の髪を結んでいるところにリボンを当てていく。最終的に選んだのはーー


「じゃあこれなの!」


フランソワが持っているリボンは白くて真ん中にはキラキラの宝石のようなものが付いているリボンだった。角度を変えるとそのキラキラは光に反射して色んな色が見える。


「白……ですか。シンプルてとてもいいと思います」


ドヤ顔をしながら

「でしょ〜?私のセンスに間違いはないの」


フランソワの頭をパフパフしながら

「さっすがフランちゃん〜!見る目ある〜!」


キャッキャと騒ぐ二人を置いてアテナは先にお会計に行く。その後店を出ようとしたアテナのことに気づいたフランソワは急いで追いかけてアテナの隣に並んで手を繋ぐ。

二人が店を出るその瞬間ーー


慌てた声で

「誰かっ!そこの盗人を捕まえて!」


ものすごいスピードで扉の所へ走ってくる黒ずくめの人がいた。しかし出口の扉にはちょうどアテナとフランソワが立っている。


「どけ!邪魔だ小娘!」


「きやっ!」


黒ずくめの男はフランソワを乱暴に押し、出口のルートを作る。運良くフランソワはアテナと手を繋いでいたため転ぶことはなかった。


「……」


外から入ってくる風でアテナの白髪は揺れる。出ていこうとする黒ずくめの男をアテナは一切迷うことなくスカートの裾を上げてから左足を伸ばして男の足に引っ掛けて転ばせた。


「バチが当たりましたね」


盛大に転んだ男は顔を打ってしまったのか、鼻血が出ておりアテナの事を鬼のような形相をして睨んだ。


「くっ……このクソアマがっ!!」


「……」


表情を何一つ変えないアテナに男は怒鳴りながら殴りにかかった。しかしその拳をアテナは綺麗に避けていったため、当たることはなかった。


堪忍袋の緒が切れた男は属性魔法を使う。水魔法だった。


「これでもくらええっ!!!」


男は水で出来た刃をアテナに向かって一心不乱に飛ばしていく。周りの人から注目を集めている中、アテナは魔法さえ避けて無傷でその場に立っている。


「君みたいな人は何人も見てきたから、これくらいすぐに避けられるよ」


「ああ?舐めてんのかこのっ!」


男は特異魔法を使用する。小さな水玉に魔力をこれでもかと込める。それがもし当たればとんでもない魔力が解き放たれこの場にいる全員が吹き飛ぶだろう。そんな小さな水玉がアテナに一直線に向かっていく。ちょうどその時ーー


「アテナっ!」


お店から出てきた小雨がアテナを押してギリギリで水玉を避けた。水玉は遠くの城壁に当たり、轟音と共に大きな穴が空いてしまった。


「コサメっ!」


店内からこっそり見ていたフランソワが小雨の元へ走って行く。男はそれを見逃さなかった。再び魔力を込めてフランソワに向けて魔法を放つ。


「クリムカルマ」


小雨の下にいたアテナが詠唱したその瞬間ーー


「ははっら一体何を言ってーー」


爆発音と共に男が数m先まで飛ばされた。自分がフランソワに向けて撃ったはずの魔法が自分に帰ってきた。男は状況に理解できないままボロボロの姿でその場に倒れた。


「今のって特異魔法か?」


頷いて

「そうだよ」


男の特異魔法を庇って小雨はアテナに覆い被さる形になっていた。身長は同じくらいだったため、盾になるのにはちょうど良い。男が動かなくなったのを確認したあと、小雨はその場を退いた。


小雨に顔を向けて

「ありがとう、助かった」


「二人とも大丈夫なの?」


「全然へーきへーき!」


アテナは立ち上がり、倒れた男の方へと向かった。


「アテナ!だ、大丈夫なの?」


後ろからフランソワがアテナに向かって叫ぶが聞こえていないのかアテナは足を止めることなく歩き続け、男の前で止まる。


「君、これが初めてじゃないよね?」


「な……なぜそんなことを……!!!」


アテナは男を見下ろす。逆光と髪の毛のせいで周りからは表情が見えなかった。時間が過ぎていくと共に野次馬が続々と増えてきた。その事に気がついたアテナはフランソワと小雨に向かって言った。


「二人共、もうそろそろ帰ろう!」


「わかったの!」


フランソワはアテナに向かって走っていき、再び手を繋いだ。小雨の方は置いていた紙袋を再び持ち上げる。時々バランスを崩しそうになったが何とかアテナとフランソワの元へ向かった。


三人は現場を離れて帰路に着く。フランソワは疲れたのか、買ってもらった髪留めを抱きしめてアテナの背中でぐっすり眠っていた。


誰も口を開かない、ただひたすら無言がしばらく続いた。先に口を開いたのはアテナだった。


「君が働くって聞いた時、正直不安だった」


「えっ?」


いきなり喋りだしたかと思えば小雨の事で驚く。二人は足を止めず、人気の少ない所に出た。


「小雨くんはこの世界の人じゃないってセリシアから聞いた」


頷いて

「うん、間違ってはないな」


「異世界から来た人がこの国に来てまで何をしだすか分からなかったから、今日は監視兼親睦を深めるために君を誘ったんだ」


「……そ、そうか」


どう返事をしたらいいか分からず、戸惑う小雨。そんな小雨を見てアテナは少し微笑む。


「まぁ、今日のでわかったよ……元から知ってたけど、君はいい人だってこと。私を守ってくれたしね」


強盗の件を思い出す。確かに小雨は男が特異魔法を撃った瞬間、アテナを庇いに行った。


フランソワを背負い直して

「最近は誘拐やらなんやら忙しいから、どうにも屋敷の人はみんな知らない人に敏感になってしまってね」


アテナに向かって首を傾げて

「でもセリシアは俺を歓迎してくれたぞ?」


「あぁ……あの子はただ特殊なだけだよ。怖いもの知らずって言うのが正解かな」


「ふーん」


小雨はアテナの言葉を聞いて頷くが納得した様子ではなかった。何か裏がある、そう疑うような顔だった。


「もしかしてセリシアは何か隠し事をしているって思ってる?」


「えっ……えっ?!」


心を見透かされているのか、思っている事をピンポイントで当ててくるアテナに驚いて動揺を隠せなかった。


「でも安心して、この世には因果応報っていう言葉がある。あの子が何をしても必ず帰ってくるんだから、そこまで心配しなくてもいい」


「そりゃまた急だな……でもそれって本当なのか?俺今まで因果応報とか、実感した事が無いんだけど」


その場で立ち止まって

「因果応報は必ずある、私は断言出来る」


そう言ってアテナは再び歩き出す。歩く振動でたまにフランソワが声を出した。


アテナにグイッと近づいて

「あっ、そういえば!」


「……何?」


「アテナの特異魔法教えて欲しい!俺間近で見てたけどすごかったなあの魔法!」


アテナは少し目を逸らしてほんの一瞬黙った。しかしすぐに口を開く。


「教えてあげてもいいけど、他の人には言わないで」


「あったりまえよ!」


フランソワを背負い直して

「私の特異魔法……カルマは二種類あって、さっき使ったクリムカルマとユスティアカルマ。さっき話した因果応報と同じ感じで自分がした事が帰ってくる魔法」


目を輝かせて

「特異魔法にも二種類あるんだな!そりゃすごいもんだ」


アテナの特異魔法を知れた小雨は満足気な顔をして歩く。その姿を見たアテナは小雨から視線を外し、前を向いた。


「小雨くんの特異魔法は?まぁ異世界から来たんだし使える訳ないと思うけど」


「あ〜……それはちょっと」


「え?もしかして使えるの? 」


「一度だけ……たった一度だけ使えたんだ。あの日、あの日、世界を捨てて自分は強くなるって願ってから」


「……なるほど、たった一度だけだと確かに自分の能力は分からないね」


二人の会話はそこで終わった。しばらく歩くと屋敷が見えた。二人は門を潜り、玄関の扉の前まで行く。子供というものは不思議なもので自分の家に近づいたらフランソワは自然に起きて自分から歩いて屋敷の中に入って行った。


アテナが中に入ろうとした時、小雨がアテナを呼び止めた。


「ちょっとまってくれ!」


「手短にお願い」


小雨がポケットをガサゴソしてから少しシワの入った小さな紙袋を申し訳無さそうな顔と共に差し出した。


「お前を庇った時ちょっと崩れちゃったんだけど、まぁ中身は大丈夫だと思うからさ!」


アテナは小雨から小さな紙袋を受け取り、中身を確認すると目を見開いて小雨を見た。


「これって……」


中に入っていたのはアテナが見ていたシュシュだった。


「さすがにその長い髪じゃ仕事が大変だろ?」


「でもこのシュシュ、高かったはずだしそれに小雨くんはセリシアからほんの少しのお小遣いしか貰ってない……そこまでしてこれを買いたかったの?」


「そんなのいーのいーの、本人が喜んでくれれば十分何だ」


小雨はそう言って微笑みながら首を傾げてアテナを見た。そんな小雨にアテナは今日一番嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとう、大事にするよ」


アテナがそう言った後、二人は屋敷の中に入る。二人はそれぞれの仕事場につく。小雨はフランソワの見守り、アテナは他の召使いの監視、指摘など、それぞれの時間を過ごした。


その日の深夜。小雨は一人、とある部屋の一室のソファーに寝転びながらアイスを食べている。何とも行儀が悪かった。


「寝転びながらアイスなんて……召使いのやっていいことじゃないよ」


アテナがノックも無しに部屋へと入ってきた。そのことに小雨は驚き、ソファーからずり落ちる。しかし右手を挙げてアイスを死守する。


そしてしばらくして床から起き上がり、再びソファーに座った後、小雨は扉の前に立っているアテナの姿を見て目を見開いた。


「そのシュシュ早速使ってくれたんだな!」


「うん、凄く便利だよ」


そう言ってくれたアテナに小雨は安堵した。いくら相手が欲しがっていたとはいえ、実際に渡した時に喜んでくれるかどうかは別だったからだ。


「隣、失礼するよ」


アテナは小雨の隣に座り、ソファーが少し窮屈になった。しかし小雨はアテナというメイド長が隣にいるというのにアイスを食べる手は止めない。


小雨の方を向いて

「そういえば君の能力のことなんだけどーー」


「あーっ!!!」


アイスを食べ終わった小雨が棒を見ると、そこにはあたりという文字が書かれていた。


「おっ、ラッキー!明日交換しに行こーっと」


喜ぶ小雨を横目にアテナはただ小さな声で呟いた。


「君はいい子だから……きっと神様からのプレゼントだよ」

最後までお読み頂きありがとうございました!


最近は寒すぎて毛布にくるまって書いています!

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