配達
小雨はオルド国の最高権力者であろうミッシェルの所へ向かうべくリリー家の屋敷から抜け出しミッシェルがいる建物へと向かう。
回りをキョロキョロしながら
「ナクライアとは少し違った感じ」
綺麗でインフラも整えられており、ダメな点は一切ない街の所々には警備兵が立っており、異世界から来た小雨はと言うと何もしていないのに謎に身構えながら歩く。
ミッシェルがいるだろう建物の前に立つと警備兵に声をかけられる。
小雨の目の前に立つ
「要件を」
ポケットから手紙を出しヒラヒラさせながら
「ミッシェルって言う人にこれを渡しにきた」
小雨の言葉に警備兵は怪しむ。警備兵は少し悩んだ後、小雨に手を出した。
「拝見させて頂こう」
手紙を突き出しながら
「どーぞ、ちなみに送り主はナクライアの最高権力者のレオ」
警備兵は小雨の言葉を聞いて驚いた。封筒を裏返して送り主を確認すると確かにレオ・ローレンスという名が書かれていた。
手紙を返さない
「ではこれはこちらから渡しておきますので」
「ちょっと」
警備兵の後ろから声が聞こえた。どこか圧のある声で女性らしき声だった。体を横にずらし、声の正体を確認する。
顔の両サイドの三つ編みが風に揺られながらそこには怖そうな女性が立っていた。
警備兵が女性の姿を見てすぐに敬礼をしながら
「お疲れ様です!ミッシェル様!」
ミッシェルと言う女は警備兵が差し出した白い封筒を受け取る。それをまじまじ眺め、裏返した時に送り主の名前を見て表情が少し変化する。
鋭い目つきで睨みながら
「おい少年、これはなんだ?」
ポカンとした様子で
「レオからの預かり物だ!」
「ほぉ?」
ミッシェルはその場で封筒の封を切り、中身をざっと読む。読み終わったあとは封筒に戻さずまとめてポケットに突っ込んだ。
さらに小雨に近づく
「コサメ、と言ったな」
警備兵と同じ敬礼のポーズをしながら
「はい!小雨です!」
小雨のふざけた態度に少しピキった。しかし初対面で、ましてや年下に着れるなどミッシェルのプライドが許さなかった。
背を向けて歩き出しながら
「ついてこいコサメ」
手を挙げながら
「はーいついてきまーす」
ミッシェルは小雨の前をずかずかと歩いていく。一方小雨はどこに連れていかれるのかも分からないのにも関わらずただついて行っている。
辿り着いたのは広い部屋だった。壁も床もテーブルも照明も金ピカでいかにも偉くて金持ちの人の部屋という感じだった。
中央に置かれているテーブルの椅子に座り、小雨の方を向いた。
向かいの椅子を指さしながら
「お前はこっちに座れ」
「あ、じゃあお遠慮なく〜」
向かい合って二人は座る。絶望的な空気だったが小雨は気にする様子がなかった。こういう空気は苦手では無いタイプなのかヘラっとしていた。
そんな小雨の態度を見たミッシェルは小雨のことを鋭い目つきで睨み、額に青筋を立てた。
机をバンっと叩き立ち上がりながら
「貴様!さっきから何なんだその態度は!」
ビクッとしながら
「えっ……あ、すんません」
いきなりキレ出したミッシェルに小雨は怯んだ。
小雨を指さしながら
「ボタンは第一ボタンまで閉める!前髪も短く!なんだそのだらしない後ろ髪は!」
「うっ……ぐっ」
ミッシェルが言葉を発する度に小雨に次々に言葉のトゲが刺さる。その後、小雨は大袈裟に床に倒れ込んだ。
胸を抑えながら
「ひ、酷いよ!」
嘘泣きをする小雨にミッシェルは呆れた。国家の最高権力者の前でふざけるなどこの世界どこを探しても小雨しか居ない。
小雨の前に立ち、腕を組み
「貴様私の前で随分とふざけた態度を取っているな……いやはやしかし、怒りたいところだがまずは貴様の名を聞こう」
ぴょんっと立ち上がり
「俺の名前は小雨、別に忘れてもいいぞ!」
小雨と言う名が出た時、ミッシェルは一瞬目を見開いた。しかしすぐにいつもの厳しい顔に戻る。
「小雨……あの異世界から来た人か」
「えっ、なんで知って」
首を傾げながら
「当たり前だろう?最高権力者同士、情報共有くらいする」
手をポンっと叩きながら
「あぁ!報連相か」
「ほう……れん?まぁいい、話を続ける。座れ」
二人は再び席に着く。小雨も念の為に先程指摘された所を直す。髪の毛に関しては仕方が無いため放っておいた。
一方、ミッシェルは小雨が身だしなみを整えるまでの間、右手の人差し指で机をリズム良く叩く。その後身だしなみを整え終えたのを確認し、話の続きを始める。
小雨を凝視しながら
「ではまず、貴様がどうしてここに来たか、魔法は持っているのか話してもらおうか」
愛想良く
「了解です!俺がここに来たのはまぁ、ちょっとした事故?みたいな感じで、魔法はつい最近使えるようになったって感じ?」
大きめな声で
「話を曖昧にするな、はっきり言え。もう一度聞く、どうしてここに来たのか、あと魔法の詳細も」
どうしてここに来たのかという痛い所をつかれた小雨はしばらく黙る。しかしこのまま黙り続けば未来は無い。小雨は口を開いた。
目を逸らしながら
「ここに来たのは、転落?元居た世界でちょっと滑って落ちてしまって、魔法の詳細は、俺も一回しか使えてないので何とも……」
背もたれにもたれ、腕を組みながら
「ほう?まぁ魔法に関しては後天性の特異魔法だとして、元居た世界はどんな世界だったんだ?」
二人の会話は長い間続いた。元いた世界の話、小雨が通っていた学校の話、レオの話などミッシェルと喋っているうちに少し二人の仲が深まった。
椅子から立ち上がりながら
「さ、そろそろいい時間だ。今日はもう帰れ」
愛想良く笑い、椅子から立ち上がりながら
「はーい、楽しかったでーす」
初めて会った時と比べると明らかにミッシェルの表情が柔らかくなっている。
ミッシェルは小雨を玄関まで見送った。中身と見た目は怖い人だったが意外といい人だと分かったのが今日一番の収穫。
ミッシェルに向かって手をふりながら
「今日はありがとうなー!!」
手を振り返しながら
「あぁ、また会おう」
小雨はリリー家の屋敷に向かって歩いていく。夕方の日差しが眩しく、手で影を作った。
その後ろでミッシェルは小雨の姿が見えなくなるまで玄関の門に背中を預けて立っている。右手にはレオからの手紙。
小雨の後ろ姿を見て、ニヤッとする
「これはこれは大変なことになったな……レオが頼み事をしてくるなんて、よっぽどの事だ」
鼻歌を歌い、歩きながら
「いや〜、あの後お菓子も貰っちゃったし〜?嬉しいな〜」
もう少しでリリー家の玄関という所でどこかから話し声が聞こえた。
「??」
話し声を辿り、慎重に向かう。声を辿っていると開けた森の所に黒い影が二つ。小雨は咄嗟に木の影に隠れ、話を盗み聞きする。その内容はーー
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