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クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第二章 【オルド国の神隠し】
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いざリリー家へ!

エースは小雨に向かって構える。本気でやり合うつもりだった。


「ほら、早く準備しろ」


「俺武器持ってないんですけど!それ以前に魔法使えないし」


その言葉と共にしょぼんとした顔をする小雨。エースは魔法が使えないという言葉にありえないという顔をした。


「あ、そうそう!コサメくんは異世界から来たから魔法が使えないんだって!」


二人から距離を取って見守っていたセリシアがエースに向かって言った。


「魔力が感じられないのはそういう事か。聞きたいことは色々あるが……わかった。この模擬戦じゃ俺は魔法を一切使わない。それでいいか?武器はリリー家貸出しの剣を使え」


「はいコサメくん!」


セリシアは小雨に貸出しの剣を渡した。まだOKも言っていないというのに話が着々と進んでいっている事に小雨は困惑した。しかしここで勝たなければここで働くのはまず無理だろう。そしてその後一人で生きていくことも無理だ。


「……わかった、やってやるよ!」


「頑張れー!ふったりともー!」


セリシアは少し遠い位置から二人を応援する。

小雨は制服の袖を折り、戦う体制に入った。


小雨はセリシアから受け取った剣を見る。意外だったのが先日小雨がアレクサンダー家に行った際に使った剣と同じだったこと。


「準備は出来たか?」


「……あぁ」


二人は向き合った。どっちが先に動き出すか、二人はお互いをじっくり観察する。しかしいくら時間が経っても二人は動き出さなかった。


「二人ともー!早く戦わないと!ご飯遅れちゃう!」


「「……」」


二人はまだ向き合ったまま、一ミリも動かなかった。それから数分が経過しても二人は向き合ったままだった。


「……おい早く動けよ」


「いやお前が動けよ」


エースの言葉に小雨が言い返す。


「俺カウンター狙ってるんだよ」


「……ああそう。正直で助かる」


小雨がつい言い放った言葉を聞いたエース。カウンターを狙っているならカウンターをされないように工夫すればいいだけの話。エースが勢いよく小雨に向かって剣を振り下ろす。


その後、エースは左に移動するふりをして小雨にフェイントをかけ、右側に移動した。


「っと……!」


鍛えられた小雨はエースの攻撃をかわし、右に移動したエースの懐に攻撃を入れた。剣先が執事服を横に切る。


エースはフェイントを入れることで攻撃を入れられないようにしたつもりだったが小雨に先の先を読まれたせいで攻撃を入れられたことに驚いた。


「ふん、まぁまぁだな」


「いけいけこっさめー!」


「エンゲルから教えてもらったんだ!相手の先の先を読めって!」


エンゲルという言葉が出た瞬間エースの顔は凍りついた。明らかに機嫌が悪い顔をしていた。


「エンゲルって、アレクサンダーの?」


「そうそう!」


「あれ?エース知ってるの?」


「……まぁな」


この時間、小雨は完全に油断していた。その時エースが一気に間合いを詰め、小雨の剣の鍔に剣先を当て掌から剣を引き抜いた。


剣が空中を回転して小雨の足元の地面に刺さる。


「うえっ?!」


このことに小雨は思わず声を上げる。それを見ていたセリシアも驚いた様子で口元に手を当てていた。


「すごいすごい!そんなに繊細な剣裁き私にはできないよ!」


「はい、俺の勝ち〜」


エースは煽るように小雨に向かってドヤ顔した。少し油断しただけで負けた小雨はとても悔しいのを顔に出ていた。


「っ……今のはタンマだろ!なんでいきなり攻撃してくるんだよ!」


「タンマなんて一言も言ってないけど」


冷たい声で小雨に言い放った。しかし小雨は怯まずむしろ攻めた。


「まぁそれはそうだけどさ!あるじゃん、魔法少女が変身している間は攻撃しない謎ルールとか!それと同じ!」


「……はぁ?お前の言葉なんてしらね」


エースがそう言って箒を持ち、館に戻ろうとして背を向けた時。エースの背後から気配を感じた。


「っ……!!」


小雨がエースの背後から剣を振りかざす。斬られる手前、間一髪でエースが箒で攻撃を防いだ。小雨の攻撃を受けた箒はバキッという音と共に真っ二つに折れてしまう。


エースが小雨と目が会った瞬間、小雨の水色の瞳に白い影が現れたのが見え、目を見開いた。


「クソッ!お前なぁ!」


「……あれっ?」


遠くから見守っていたセリシアは違和感を持ち走って二人の方へ向かい小雨に問いかけた。


「コサメくん!」


「……ん?どうした?」


エースは折れた箒の片割れを投げ捨て小雨を睨む。セリシアが小雨とエースの元へ走ってきた。


「コサメくん特異魔法使えるの?!ね、説明してよ!」


「……え?」


「説明しろ、お前異世界から来たって言ってるくせにどうして魔法が使える?


走ってきたセリシアは息が荒いまま小雨に問い詰める。その事を知ったエースも小雨に詰め寄った。二人に押された小雨は冷や汗をかき、正直に話す事にした。


「お、俺異世界からきたんだけどつい最近特異魔法が使えるようになったんだ!」


その言葉に二人は目を丸くした。


「……うっそだぁ!コサメくん本当に異世界から来たの?」


「異世界から来たのもそうだが、今までに事例が無いからなんとも言えないな……で、お前の特異魔法は何なんだ?」


「俺にもわっかんねぇの」


小雨は肩を落とす。


「俺だってみんなみたいにバンバン魔法使ってかっこいいことしたい!なのにまだ一回しか使えてない!それ以前に使い方が分からないんだ」


「……後天性なら……まぁ有り得る話だな」


「エースの言う通り!特異魔法は普通の魔法と全然使い方が変わるからすぐな扱えないのが当たり前!」


「そ、そうなのか!」


小雨はエースとセリシアの言葉に顔がぱあっと明るくなる。今後にまだ希望がある事を知った小雨はその場で後ろにバタッと倒れた。


「何してんだよ」


エースが足で小雨をつつく。


「ちょっとエース、何してんのよ!コサメも!早く立って!」


「そういえば俺一応負けたってことになってるけどどうなんだ?もう帰れってか?」


小雨からの問にエースは黙り込んだ。異世界から来た訳の分からない少年をここで働かせても良いのか。エースの深紅の目が泳ぐ。


「ハイリスク……ハイリターン。セリシア、お前はどう思う?」


「コサメは大丈夫!ちゃんと私も様子を見るし、もし何かあったら私が責任取るから!」


「お願いします!エース様!」


小雨はその場で土下座と言うより四つん這いに近い体型になって頭を下げた。その土下座もどきを見たエースは顔をしかめる。しばらく悩んだ後、エースが口を開いた。


「わかった、別にここで働いてくれてもいい。ただし、絶対にやらかさないこと。裏切るような行為をしたら即クビだからな」


「よっしゃ!俺は絶対にやらかさないから任せろ!」


「コサメくんとこれからここで働くの〜?!考えただで楽しいわね!」


エースは先々と足を進める。大きな玄関の扉を開けた時、大きくて広いロビーが見えた。


ツヤツヤと輝く木の床に長く、赤い絨毯が敷かれているのが見える景色。ローレンス家の大理石の家とは違い、本当のザ・貴族の家という感じだった。


「ほら、見とれてないで早く入って」


セリシアが小雨の背中を押す。中に入ると召使いがちらほら小雨の事を見たが当の本人は全く気にしていなかった。ロビーに少し入ったところでエースは小雨に向かって言った。


「とりあえず先にフランに挨拶だけしたらどうだ?」


「フラン?」


小雨は首を傾げる。その次にセリシアが口を開いた。


「そうそう、小雨くんがこれから臨時でお世話する子だよ。あの子結構人見知りだけど、頑張ってね!」


「じゃあ俺はまだこなせてない仕事があるからセリシア、あとは頼んだ」


そう言ってエースは背を向けて廊下の奥へと歩いて行った。


「おっけー!まっかせて!小雨!早速フランに挨拶しに行こ!」


「あぁ!」


セリシアと小雨は並んでロビーの中央にある階段を上り、フランの部屋までの廊下を歩く。真っ赤な絨毯が途切れることなく続いており、歩く度に絨毯のパフっとした感覚が足に心地よく広がる。


セリシアと小雨はしばらく歩いているとセリシアはドアにかけられた子供の字でフランと書かれたプレートの扉の前で止まった。


「さぁ!ここがフランの部屋よ!……フラン様〜!今お時間よろしいでしょうか!」


セリシアはフランの部屋のドアを開ける。

薄暗い部屋の中、そこには水色髪の幼い少女が背を向けてベッドの上で座っていた。

最後までお読み頂きありがとうございました!

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