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クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第二章 【オルド国の神隠し】
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ナクライヤからオルドへ

「ままま待って待って待って!落ちる落ちる!!」


「安心して!絶対落ちないから」


気が付いた頃には上空にいた。その事実に小雨はパニックになり横に傾くが魔法のせいなのか、身体が箒にがっちり引っ付いている。


「そんなの信用できるか!」


「えぇ〜?信じてよ。私が操縦するんだから絶対落ちるわけなーー」


「「……え」」


その瞬間、二人はバランスを崩して下に落ちた。まるで撃ち落とされたように。


「はぁあああああ?!お前落ちないって言っただろ!」


「そんなの知らないよ!今までこんなことなかったのに……!」


下へと落ちながら小雨はセリシアに文句を言う。まさかこんな所で死ぬなんて思いもしなかった。この時小雨はこの世界に来る前のことを一度思い出した。


「……そういえばあの時もこんな感じだったな」


「……?」


もう地面にぶつかると思って半分諦めかけていたその時ーー


「あれ、コサメもいるんだな」


「久しぶりですね、コサメさん」


驚いて目を開けた時には小雨とセリシアは先程の地面に座っていた。目の前には二人の男性が立っている。二人とも見覚えがあった。


「あっれ、レオとルカ!」


小雨は物覚えが早いためすぐに名前が出てきた。一方セリシアはまさかこんな所でレオと出会うとは思いもせず驚いて固まっていた。


「れ……レオさん。こんばんは」


「あぁ、撃ち落とすような真似をしてしまってすまない。ミッシェルにこれを渡して欲しいんだ」


「お使いですか?!任せてください!」


レオの言葉にセリシアは箒を持ち、勢いよく立ち上がる。よく見ると箒は先程の新品のような輝きを失っており元の姿になっていた。


勢いが良いセリシアの姿を見たレオは思わず笑みを漏らし、セリシアに白い封筒を渡す。


「これは手紙……ですか?」


「その通り、急ぎでは無いから時間がある時に渡してくれたらいい」


「わかりました!」


レオの頼みにセリシアは嫌がる素振りを何一つせず受け入れた。レオの隣で様子を見ていたルカは話に一区切りついたところで小雨とセリシアに問いかける。


「そういえばお二人さんは今から何をなされるのですか?」


「俺は今からリリー家にバイトをしに行くんだ!」


「そうそう!コサメったらこのチラシ見た瞬間働かせて欲しいって言ってくれてね〜!」


「そうなんですか」


「バイト?アランからお金出して貰ってるのに?」


レオの発言を聞いてギクッとする。レオはブラコンのため、小雨が昼にアランに向かって言ったこと、もうお金を出して貰えないことをレオに知られたら小雨の身が非常に危うい。


「そりゃ自分のことは自分でやらないといけないからだろ」


「……へぇ、なるほど」


レオは腕を組んで小雨をしばらくじっと見る。しかしすぐにパッと笑顔になるりその変化に妙に違和感を感じたが何も突っ込まなかった。


「じゃあ俺たちは失礼するよ、止めてしまって申し訳ない」


「では、またどこかで」


別れの言葉を述べた後、レオとルカの二人はアレクサンダー家の方へ向かって行った。


「じゃあな〜!レオー!ルカー!」


小雨が歩いて行く二人に向かって叫んだらレオが片手を上げてくれた。二人を見届けた後、小雨はセリシアの元へと駆け寄った。


「じゃあコサメ、もっかいいくよ!」


「おっけー!」


箒を持ったセリシアは再び呪文を唱えると再びセリシアの掌から光が溢れる。数秒もすると箒は輝きを取り戻した。


新品のような輝きを取り戻した箒に二人は再び乗る。しかし先程の出来事が少しトラウマになったのか、セリシアはなかなか箒を動かせずにいた。


「よし、今度こそ大丈夫……多分」


「多分ってなんだよ」


「だ、だって怖いんだもん!」


「……まぁ、あんな事があればな」


「……ふぅ……よし」


小雨はすぐに理解できた。一度失敗したら次が怖くなるのは当たり前だ。セリシアは深呼吸を何度かして落ち着いてから箒を操縦する。


「よし!もう大丈夫!」


自信を取り戻したセリシアは一気に上空まで行った。小雨は恐怖で下を見ることが出来なかった。


「うおっ!いきなり飛ばしすぎだって!」


「こんぐらいがちょうどいいの!」


セリシアは一気に飛ばす。小雨は勢いで吹き飛ばされると思いつい身構えたが意外と余裕だった。しかしまだ下を見るのは怖い。


「月が綺麗だな」


上空にいるため、普段より月が近くにあるようだ。紺色の空、周りの星と相まって魅力的に見える。


「月が綺麗ですねって……え?もしかして」


セリシアは頬を赤らめて言った。気持ちが揺らいだのか一瞬箒がガクッと下がった。


「違う、絶対違うからな!」


「えぇ〜?ほ〜んとっかな〜?」


「俺そういうの嫌いなんだよ、ゴムを腕につける本数に意味があるとか……そんなもののせいであいつから死ぬほどいじられたし」


「ふ〜ん?」


セリシアは信じていない様子だった。ニヤニヤしたセリシアに小雨は呆れた。


「まぁまぁどう思うかはお好きにどうぞ」


「じゃあ好きに思っときまーす!」


しばらく無言が続いた。ある程度時間も経ったため、箒にも慣れてきた頃、小雨は意を決して下を見た。


「……わぁ」


ナクライヤが驚くほど小さく見え、該当などがキラキラと星のように光って見えた。ナクライヤから少し離れたところには森があり、川もある。遠くには雪山も見えた。


「すごいでしょ、箒からの景色」


「うん、綺麗だな」


小雨は上空から見える景色に見とれていた。頬に当たる風が心地いい。この景色を見ている時だけ、嫌なことも全て忘れられる気がした。


「乗りたいときはいつでも言ってくれていいよ!コサメくんは特別に半額にしてあげる!」


「金取るのかよ」


「当たり前じゃん、私の時間を使ってあげてるんだから」


セリシアの言葉に小雨は苦笑いを浮かべる。無料で乗せてくれると思いきやまさかのお金が必要だという事に現実味を感じた。


ナクライヤからオルドまでは徒歩で行こうとするとかなりの距離があるがセリシアの箒のおかげで徒歩の役三分の一の速さでオルド国に到着した。


「よし、とうちゃーく!」


セリシアは箒にかかった魔法を解くとその瞬間、箒は本来の姿を取り戻し見た目がボロくなった。


オルド国の東の方にあるリリー家。

小雨はその洋館の大きさに驚き目を丸くした。


「え、ここがリリー家?」


「そうそう!これからよろしくね、コサメ!」


「おい」


後方から声が聞こえた。小雨はビクッとして振り返るとこそには執事服を着た男性が居た。


「あれ、エースじゃん!こんな時間に何してるの?」


「こんな時間に何してるの?じゃないんだ。予定より二時間帰ってくるのが遅い。そのお陰で俺はお前分の仕事までこなしたんだぞ……あと、隣のヤツは誰だ」


エースという名の男は深紅の瞳で小雨を睨む。まるで敵を見るような目で。


「俺の名前は小雨!今日からここで働かせて頂きます!」


「あ、そうそう!コサメくんはチラシを見て臨時で働きたいって言ってるの」


「……初対面でタメ語使うやつにそんな事できるのか?」


「うっ……」


エース言葉に小雨はトゲが刺さった感覚がした。


「それに弱そうだし、魔力すら感じられないし」


「ぐっ……うぅ」


エースが発言する度に小雨に言葉のトゲが刺さっていく。そんな小雨は大袈裟に地面に倒れ込んだ。


「ちょっとエース、そこまで言わなくても」


「言うだろ。それに知らない人をほいほいこの館に入れてまた誰かが消えたらどうするんだ?誰が責任取る?」


エースの言うことはごもっともだ。人が消えていくこの国では現状一秒でも油断はできない。


「それはエースの言う通り!だけどコサメは絶対悪いやつじゃない!」


「根拠は?」


「ローレンスの友達!」


「……!」


「そうそう!俺はあのローレンス家の次な……長男と仲がいいんだ!」


ローレンスと言う言葉が出てきた瞬間エースは一瞬驚いた表情を見せた。例え同じ国の者ではなくても他の国の最高権力者くらい知っている。


「……そうか」


「そうそう!だからコサメくんは悪いやつじゃないって!」


エースは腰に下げていた剣を取り出す。その姿を見た小雨は最悪の展開が頭によぎり顔色が悪くなった。


「コサメ……って言ったな?早速だけど一発やろう、それから今後を決める」


エースは剣を鞘から引き抜き小雨の方へと向かう。エースの赤い髪が風で揺れ、深紅の瞳がはっきりと見える。

小雨が想像した最悪のシナリオが現実になってしまった。

最後までお読み頂きありがとうございました!


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