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番外編④/拝啓どこかにいる君へ

小雨くんがいなくなってからもうちょっとで一ヶ月が経つよ。


小雨の同級生で一番の友達である私は未だにこの事実を信じられなかった。今日も学校の帰りに小雨くんの家の前にある公園のベンチに座って小雨のくんのことを考える……小雨くんから貰ったパーカーを着て。


「小雨くんがいなくなってちょっと大きなニュースになったんだよ」


風に揺れる長い横髪を耳にかけながら小雨が住んでいた階を見上げながらふと呟いてしまった。小雨くんがいなくなってから毎日ニュースが流れて、その度に私の心は痛んだ。


どこの防犯カメラにも小雨くんの姿は映ってなくて、警察がいくら探しても見つからなかったみたいで捜索は打ち切りになった。その約一週間後小雨くんの話題はニュースから消えたんだよ。


だけど小雨くんの家族は今も必死に探しているみたい……街のあちこちに小雨くんの貼ってあったから。

小雨くんのことを探している親をチラッと見たけど汚れた服で身体のあちこちに傷もあって喧嘩でもしたのかってくらいボロボロだったんだよ。


いつもニコニコしていた小雨くん、休み時間が始まったら私の所へ真っ先に来てくれる小雨くん、まだ実感が湧かないよ。小雨くんと一緒にいた時間は、長かったようで短かったな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

高校入学式、髪の毛が目にかかるくらい長く、メガネをかけている地味っぽい女の子が構内地図を持って廊下に一人、ポツンと立っていた。


「……どうしよう、迷子になっちゃったかも」


そこに一人、黒いパーカーを着た少年が少女に近づいて声をかけた。


「どうした?迷子?」


「あっ……その!」


髪の毛を左下に結んだ少年が少女に話しかけた。いきなりの出来事に声が上手く出ておらず、カタコトだった。その様子に小雨はクスッと笑い、次の言葉を発した。


「俺も一年、スリッパの色同じだろ?これからよろしくな!お前同じクラスだろ?式の時に見た」


「えっ……あ、よろしくお願いします」


「一緒に教室行くか?」


「い、いいんですか?!」


小雨を先頭に二人は教室へ向かう。それまでの間、無言に耐えられなかった小雨は身体を半分後ろに向けながら少女に問いかける。


「俺は小雨、お前は?」


「あ……私は……露乃って言います」


人と喋るのが苦手な露乃は、はにかみながら小雨に向かって自分の名前を言った。


「そこまで恥ずかしがらなくてもいいんだぞ!」


「え……えぇっ」


小雨のテンションに戸惑いながらも露乃は思わず口元に手を添えて笑ってしまった。


その日から二人は仲良くなり、一緒に居ることが増えた。周りからは付き合ってるなどごちゃごちゃ言われることが多かったがその度に小雨がクラスメイトに向かって決してそんな感情は持っていないと言い放った。


「お前メガネ外したら?あと前髪も切れ!」


「ええっ?でもメガネがないと……」


「コンタクトってもんがあるじゃん?お前はメガネない方が目がおっきく見えて可愛いぞ?」


「……」


次の日、二人は一緒に学校へ行くため、待ち合わせをしていた。小雨の方が早く集合場所に到着してしまったため、スマホをいじっていると後から来た露乃が小雨に声をかけた。


「小雨くん」


「おはよう……てっ」


「どうかな?」


「え、めっちゃいい。可愛いじゃん」


「……ありがとう」


小雨の言葉に露乃は思わず微笑んだ。露乃は小雨のお陰で次第に自分に自信を持つようになり、思い切って髪の毛を短くしたり、ファッションにも興味を持つようになった。


二年生になってから冬が来た。


「んで晴がさ〜……」


「うっ……寒っ」


屋上に風が吹いたと共に露乃の口から心の声がつい漏れた。


「……お前上着ないのか?」


昼休み、屋上で黒いパーカーを着た小雨は紙パックのジュースを飲みながらワイシャツ一枚の露乃に向かって問いかけた。


「だってセーターとかパーカーとか高くて買えないし」


小雨達が通っている学校はバイトが禁止だった。その為自由に使えるお金は少なく、月のお小遣いで買おうとしてもその三分の二は使ってしまう。


「あげる」


小雨はパーカーを脱いで露乃に向かって投げる。


「うわっ……とっ」


投げられたパーカーをキャッチした。そのパーカーには小雨の体温がまだ少し残っていたためほんの少し温もりが感じられた。


「着ないのか?」


「え、でもこれで教室行くの……?」


「人の反応とかいちいち気にしてたら疲れるくね?人の反応とかそんなのどうでもいいんだよ」


「……」


小雨の言葉に納得してしまった露乃は小雨がくれたパーカーを着た。やはり男子が着ている服は一回り大きかったため、袖から手を出すのに少し苦労した。


「小雨くんは寒くない?」


「じーつーはー、背中にカイロ貼ってるんですー!」


自慢げに言い放った小雨の言葉を聞いて露乃の心の中にある罪悪感が少し減った。


その日から露乃は小雨のパーカーを毎日着るようになった。幸いクラスメイトは露乃が着ているパーカーは元は小雨のパーカーだと誰も気が付かなかった。


それから高三になって受験が始まると言う時、小雨はいなくなってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


小雨くん、君は耐えられなかったんだよね。だから姿を消しちゃったんでしょ?


入学式の日、あの日本当は先生に呼ばれていたけど迷子の私を優先してくれたよね。学校帰り、下駄箱に向かっている時に職員室の前で先生に怒られてる小雨くんを見たんだよ。


パーカーをくれたあの日だって本当は背中にカイロなんて貼ってなかったよね。一年の冬にカイロなんて服が引っ張られて重いし熱いから嫌いって言ってたから。


妹ちゃんのこと、よく話してくれていたよね。あの時はただの仲がいい兄妹だと思っていたけれど、こうして毎日小雨くんとの会話を思い出しているともし私が妹ちゃんの面倒を毎日見るとなったら私だったら耐えられないなって思ったよ。


「……なんで相談してくれなかったの」


涙が目に溜まって視界がぼやける。


「どこかのタイミングで私が相談に乗ってあげていたら良かったのかな……」


震える声で涙を流しながら言った。震える手でスカートを握りしめる。露乃が流す涙が太陽の光に反射して光りながらスカートに落ちてシミを作っていく。


「相談してくれたらずっと一緒にいてあげたのに……小雨くんが逃げたいって言うなら一緒に逃げてあげたのに」


相談に乗ってあげられなくてごめんね。小雨くんの事に気がついてあげられなくてごめんね。あの日、帰り道で別れる前に少しでも引き止めていたら何か変わってたのかな……?


こんなのってないよーー


「こっちは入学式の時から小雨くんの事がずっと好きなのに」

最後までお読み頂きありがとうございました!


十六日から始まる二章についてなのですが、ストーリー大幅変更のため、一から書き直しています!なので毎日投稿はしますが今回時間も変更となり午後十七時半より三十分早い午後十七時のみの一日一話投稿となります!しかしストックが溜まり次第、一日二話投稿にさせて頂きます!予定と変わってしまって本当に申し訳ございません!

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