番外編②/王様達のお茶会
某日午後一時。
この世界にある国の王様達が年に三回、定例会議という名のお茶会を開催している。毎回議題は特に決めておらず、本日は一年のうちの二回目の定例会議である。
どこで開催するかは予め順番を決めており、本日はナクライア王国のローレンス家での開催の日だった。ローレンス家の談話室は大理石の高級感のある床で、大きな窓に深い赤色カーテンが取り付けられている。その中央にはラグとその上にアンティーク風の長方形のテーブルと六つの椅子が並べられている。
約束の一時になり欠席者を除く計三人の王様が談話室に集まった。今回はローレンス家での開催の為、司会者もナクライア王国の最高権力者であるレオが担当だった。
「う〜ん、今日はちょっと少なめかな」
三席空いた椅子を見てレオは少し寂しそうに呟いた。
「仕方の無いことだろう?全員が全員、都合良く予定が合うわけがない」
レオの前に座っていた鋭い目つきの女性が喋る。名前はーー
「ミッシェルは相変わらずズバズバ言うな……そういうとこ嫌いじゃないよ」
「たまにはいいこと言うじゃないか」
ミッシェルが足を組み直してからテーブル上にあるお皿に乗ったスイーツの中からマカロンを摘んで食べた。ミッシェルの隣に座っている男性がレオに向かって口を開く。
「レオさん、本日御欠席した方達には僕から伝えておきますね」
「ありがとう。相変わらずネロは気が利くな。まさか何か企んでたり?」
「ええぇ?!決してそんなことはありませんよ!」
ミッシェルの隣に座っているネロという男性はレオからの冗談の言葉に笑みを浮かべた。一方ミッシェルはと言うと、スイーツを紅茶と共に味わっていた。
「そういえばみんなに聞いて欲しいんだ」
レオは真剣な表情で言う。並んでいた二人も姿勢を整え、レオの言葉に耳を傾けた。
「ついこの前、異世界から来たって言う子と出会ったんだ」
「異世界だと?」
「……それって本当なんですか?」
レオの言葉に二人は目丸くした。しかし異世界から来たなどとても現実的では無かったため、完全には信じていない様子だった。
「あぁ、本当だ。俺がこの前会った時彼からは一切の魔力を感じなかった」
「自分の魔力を隠す特異魔法の可能性は……?」
「ネロの言う通りだ。しかし実際に会ったことが無いから何とも言えないな」
「はは、信じなくて結構。だけど俺は信じている、彼は悪い奴じゃないって。だけどもし奇襲を仕掛けてきた場合……俺が責任を持って対処する」
レオの言い切る姿に二人は静かに頷いて納得した様子を見せた。少し間が空いてからネロが話題を変えようと口を開いた。
「そういえばレオさん、この頃のファミリーの様子なんですがーー」
ネロが発言している最中、森の方向から爆発音が聞こえた。その音に三人は一斉に窓の方を向く。
「……向かいますか?」
ネロの言葉にレオが答える前にミッシェルが口を挟む。
「警備兵に任せたらどうだ?あいつらの本業だろう?」
「ミッシェルの言う通り、警備兵に任せる」
「……わかりました」
レオの断言にネロは納得したように口を慎んだ。お茶会が続行されるが、三人の中に間ができてしまった。しかしそれを壊すように今度はミッシェルが口を開く。
「お前ら二人は、魔女遊戯会と名乗る者の存在は知っているか?最近私の国で風の噂になっていてな」
「まじょ、ゆうぎかい?僕の国ではそんな噂はありません。少なくとも僕はその組織について存じ上げません」
ミッシェルの言葉にネロは首を傾げた。一方レオはその名前を聞いて、少々気まずそうな顔をした。
「ネロは知らないのか……レオ、お前は知っているな?顔を見たら分かる」
「あぁ……この場で隠し事をするつもりは無いから正直に言うと……魔女遊戯会には俺の友人がいるんだ」
「……友人だと?」
レオの発言に場が凍った。一国家の王様が恐らく敵の組織であろう者達と関わりがあり、その上親しい仲だとしたら国家の問題になってしまう。しかしレオはすぐに弁明する。
「無論、その組織に一切の協力はしていないし、関わりもない。最後にその友人に会ったのは5年以上前だ」
「……じゃあどうして友人が組織に入っているのを知っているんですか?」
「ネロの言う通りだ。そこら辺のちびっ子でも理解できるように説明しろ」
ネロとミッシェル、二人の視線がレオに突き刺さる。しかしレオは何一つ表情を変えずに言葉を続けた。
「簡単に言えば……俺はあいつを救えなかった。それだけだ」
「救えなかった……か。もう少し説明が欲しい所だが、これに関しては言いたくない事情もあるだろう。この説明だけで十分だ」
その言葉を言い終えたミッシェルは再びマカロンに手を伸ばし、口に運ぶ。
「……そもそも、魔女遊戯会ってどんな目的で何をしているのでしょうか?」
ネロの言葉にミッシェルとレオの二人は目を合わせた。
魔女遊戯会の謎は多いまま、五年以上の月日が経っているが魔女遊戯会が絡んだ目立った事件は起きていない。ここ最近の事件と言うと強いていえばーー
「最近俺の国でファミリーの奴らがしつこくなったんだ。以前までは無害な組織だったここ最近攻撃的になってな」
「あのいかにも怪しい組織のことか。だが今は魔女遊戯会の話だぞ?関係ない話題をいきなり出すーー」
「少し前、ファミリーは予言というものに異常なくらい執着しているのをアランから聞いた。そこで俺は思ったんだ……魔女遊戯会が裏でファミリーに予言と言う言葉で釣り、この国に攻撃を仕掛けるよう教唆している可能性を」
レオが真剣な表情で言う。
「まぁ、これはただの憶測だから外れてる可能性の方が大きい。今のは忘れてくれ」
レオは両手をパンッと叩いた瞬間、場の緊張の糸が切れたようだった。ネロとミッシェルは固まった肩の力が抜けたように肩を下げ、再び和やかな雰囲気になる。
時刻は午後三時を過ぎた。
「じゃあ時間も近いですし、魔女遊戯会の事は一旦保留ですね」
「ネロの意見に賛成だ。私は帰るとする……レオ、ファミリーの攻撃にくれぐれも気をつけてくれ」
「この俺が負けるわけないだろ?」
レオの言葉に二人は目を細め、頬を綻ばせる。その日はレオの言葉と共に、本日の定例会議は幕を下ろした。
最後までお読み頂きありがとうございました!
次回の投稿は十月十一日です!アランがメインとなっております!




